イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

back number「エメラルド」、LiSA「炎」が本日解禁…月曜解禁には大きな意味があった

来週水曜に発表される10月26日付ビルボードジャパンソングスチャートが今から楽しみで仕方ありません。というのも、上位登場が確実な2曲が本日解禁されたのです。

 

back numberについては、「エメラルド」サブスク解禁に向けての準備が行われていました。

ベストアルバム『アンコール』(2016)より後の作品がサブスクおよびフルバージョンでのミュージックビデオ未解禁だったことへは以前にも疑問視していたのですが、これでback numberもサブスクを積極的に活用する姿勢が見えてきました。

 

そして本日はLiSA「炎 (ほむら)」も先行解禁。

LiSAさんは既にデジタルのみで解禁する曲もありましたが、シングルCD表題曲を、CDが明日以降手に入る状況ながら配信を先行で用意したのは面白い試みです。

 

 

back number「エメラルド」そしてLiSA「炎」が本日解禁した理由は、タイアップ作品の余韻をさらに強固なものにしたり、作品公開への期待を膨らませる役割もありますが、ビルボードジャパンソングスチャートのデジタルやシングルCD初加算週のポイントを大きく伸ばすためでもあるはずです。同チャートは構成される8指標がすべて月曜集計開始となり、10月26日付ソングスチャート(集計期間:10月12~18日)においてはデジタル解禁日から一週間分がフルで加算されるわけです。

 

 

月曜解禁により大きなうねりを作り上げることができた曲には馴染み深い作品が多いのです。たとえば星野源「アイデア」。

朝の連続テレビ小説主題歌として、そのドラマスタートから3ヶ月以上経過してのリリース。シングルCDは未リリースながら上記ミュージックビデオもデジタル解禁に合わせ、しかもフルバージョンにて公開、Twitter施策等も採られたこの曲は2018年9月3日付で首位を獲得し翌週も連覇を達成しています(ただしサブスク解禁および他の曲のフルバージョンでのミュージックビデオ解禁は翌年夏となります)。実は初登場で首位に立った週、back number「大不正解」もシングルCDセールス初加算週に当たるのですが、ダブルスコアに近いポイント差となっているのです。

 

またCDでもリリースされた曲の例としては米津玄師「Lemon」が挙げられます。今年8月リリースのアルバム『STRAY SHEEP』発売日までサブスクを解禁しない状況は上記「アイデア」と同じですが、ダウンロードをドラマ『アンナチュラル』(2018 TBS)の放送回直後ではなく月曜0時に解禁したことでこちらも大きなうねりを作ることができました。ダウンロード初加算週である2018年2月26日付ビルボードジャパンソングスチャート2位に初登場すると、シングルCD初週セールスに長けた作品に阻まれ5週間首位を獲れなかったものの高ポイントをキープ。そしてシングルCDセールス加算2週目である同年4月2日付にて遂に首位を獲得したのです。

「アイデア」とは異なり、解禁スケジュールはダウンロード開始→ミュージックビデオフルバージョン公開→シングルCDリリース→シングルCDレンタル開始と2~3週の間隔が空いていますが、言い換えればタイミングをずらして投入することで4つの波を作ることができ、首位に至るまで常時1万ポイント以上を獲得し高い熱を持続させたのです。LiSA「炎」においてもCDレンタル解禁日はCD発売から17日後に当たるため、この「Lemon」シフトに近い形となるでしょう。

(ただ、私見と前置きして書くならば、シングルCDレンタル解禁において歌手もしくはレコード会社の意向が反映され解禁日が一斉にならないことは気になります。レンタル解禁日遅らせ施策は米津玄師さんや坂道グループ等、特にソニーミュージック系列に目立つ気がします)。

 

 

back number「エメラルド」そしてLiSA「炎」からはこの2曲が想起された次第。曲への支持、タイアップ作品の人気により大ヒットも見込めるのではないかと思うのですが、あとは現在未解禁のミュージックビデオがどのタイミングで発表されるかが気になるところ。back numberは自身のYouTubeアカウントを解説し『MAGIC』収録曲を含めフルバージョンで解禁しているため「エメラルド」でもフルバージョンでの解禁が期待できる一方、LiSAさんは大ヒットした「紅蓮華」(2019)がショートバージョンとなっていることが引っ掛かります。ショートバージョンが動画再生指標上昇に貢献しづらい件はこのブログで幾度となく述べています。

ショートバージョンの可能性は懸念されるものの、しかしミュージックビデオにおいても両者は最高のタイミングでの投入を狙っていることでしょう。次週以降のチャート動向が実に楽しみです。そしてこれら楽曲の投入タイミングである集計期間初日0時の解禁が標準化されれば、チャート上でも、そして音楽業界全体が活性化されるものと考えます。