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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

最新のビルボードジャパンソングスチャート、前週初めてトップ10入りした4曲に明暗が…その理由を考える

最新10月20日公開(10月25日付)ビルボードジャパンソングスチャートにおいては、前週初のトップ10入りを果たした4曲に大きな差が生じています。今回はその理由を探ってみます。

 

最新10月20日公開(10月25日付)ビルボードジャパンソングスチャート

前週初のトップ10入りを果たした曲の推移およびポイント比

 

 

1→31位 King & Prince「恋降る月夜に君想ふ」(ポイント前週比 15.8%)

(上記動画はショートバージョン。)

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フィジカルセールスが初加算された前週、動画投稿が功を奏し動画再生指標が3位*1と高位置につけた「恋降る月夜に君想ふ」ですが、今週は総合31位に大きく後退。前作「Magic Touch」は首位獲得の翌週に15位へ後退していますが、この間に2回のチャートポリシー変更が行われ、フィジカルセールスやルックアップ等に強い曲は不利になりました。変更については昨日付のブログエントリーでもまとめています。

特に下半期(第3四半期)のチャートポリシー変更により、デジタルに強くロングヒットを続ける曲が首位を幾分獲りやすい状況となりました(ただし、デジタルに相当強くないと難しいとも言えるのですが)。ジャニーズ事務所所属歌手の大半は未だサブスクやダウンロード未解禁であることから急落は避けられない状況であることは変わらず、その上で2度のチャートポリシー変更がさらなる低下につながったと考えられます。

 

 

9位→100位未満(300位圏内) B'z「UNITE」(ポイント前週比 不明)

(上記動画はティザー。)

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B'z「UNITE」は前週ダウンロード指標の首位を武器に総合9位に初登場を果たしましたが、翌週は100位未満と急落しています。ミュージックビデオが現段階で解禁されず動画再生指標を獲得できないこともさることながら、最大の問題はストリーミング指標の弱さであり、前週ポイントは加算対象となったものの100位未満(300位圏内)、そして今週は300位にも満たずポイントを獲得することができなかったことにあると考えます。

B'zは5ヶ月前にサブスクを解禁していますが、サブスクでの支持をさらに得るにはどうするのノウハウを獲得する必要があるでしょう。尤もこのノウハウ獲得はB'zに限らず、2010年代前半までにデビューやブレイクした歌手全体に言えること。back numberのサブスクでの実績を踏まえれば、そう断言して差し支えないはずです。

ファンの年代が高い歌手においては特に、サブスクサービスでの聴取やそもそもとしてサービスへの加入を促す必要があると考えます。これは演歌・歌謡曲等、ジャンルを問いません。安価で多種多様な音楽に触れることができることを、音楽業界全体が訴求する必要があるのではないでしょうか。

 

 

7→30位 BE:FIRST「Kick Start」(ポイント前週比 41.5%)

(上記動画はリリックビデオ。)

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BE:FIRST「Kick Start」もダウン幅が大きい一方、フィジカル未リリース曲で獲得可能な6指標のうちカラオケ以外の指標群を押さえているところは好ましい動きと考えます。ラジオ指標の上昇は、以前「Shining One」で紹介した際と同種の傾向ではないでしょうか。

気掛かりなのはダウンロード指標の急落(2→79位)に加え、本来ダウン幅が大きくなりにくいはずの接触指標群も下がっていること。動画再生指標(8→25位)においてはミュージックビデオが現段階でアップされていないことが要因と考えられ、またストリーミング指標(15→37位)においてはLINE MUSIC再生回数キャンペーンが10月6~12日に用意されていたことで、キャンペーン終了後に再生回数が急落したと捉えることが可能です。

昨日のブログエントリーでも書きましたが*2、LINE MUSIC再生回数キャンペーン適用曲の大半は終了後に急落します。これはキャンペーン期間内に曲がライト層に人気が広がらず、コアなファンの人気の域を出ないため。今回の「Kick Start」からもその傾向が感じられるように思います。この曲が収録されるフィジカルシングル「Gifted.」のリリースまでにどれだけのライト層を獲得し、コアなファンに昇華させるかが鍵と言えます。

 

 

3→7位 TWICE「The Feels」(ポイント前週比 78.0%)

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ポイント前週比が最も高く、トップ10をキープしたTWICE「The Feels」。ストリーミング指標は4→6位、動画再生指標は首位をキープしており、接触指標群が高値安定の要因となっています。しかし気になるのは、ダウンロード指標が最新チャートに至るまで一度として加点されていないということ。上記CHART insightでは紫で表示されるダウンロード指標が、一度も登場していないことが解ります。

「The Feels」はTWICEの日本版公式Twitterアカウントでも紹介されていますが、10月22日5時の段階で上記ツイートのリンク先からiTunes Storeに遷移することはできません。また実際にiTunes Storeで検索しても、「The Feels」は登場しません。

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リンク先は通常、サブスクサービスの他にダウンロードにも遷移するはずであり、明らかに不自然です。一方で前週発表されたグローバルチャートにおいて、Global Excl. U.S.で10位に入った「The Feels」にはダウンロードが加算されています。

TWICE「The Feels」がGlobal Excl. U.S.で10位に初登場。集計期間初日となる10月1日にリリースされた同曲はストリーミングが5090万、ダウンロードが8800を記録。初の英語詞曲でキャリア初の同チャートトップ10入りを果たしています。

 

この不自然な状況の理由がほぼ判明しました。下記ツイートを教えてくださった唄さん(ツイートはこちら)に、この場を借りてお礼申し上げます。

『購入ダウンロードは日本グローバルチャートに大きく関わる』というのはまさにその通りと言えます。世界の中でも日本のダウンロードは大きい傾向があるゆえ、「The Feels」が日本でダウンロードできていたならば同曲はグローバルチャートでより大きな存在感を示したはずです。

レコード会社が異なるといういわば"ねじれ"により日本で販売できない事態が生じたことは音楽業界に所属や精通する方ならば理解できたとして、音楽ファンにとっては到底納得できるものではないでしょう。そしてその不条理が、ともすればTWICEへの不信感に表れてしまいかねません。中長期的にTWICEの訴求力や支持を弱めかねないという点においても、レコード会社の罪は重いというのが厳しくも私見です。

ダウンロード不可の状況は勿論ビルボードジャパンソングスチャートにも表れてしまいます。そして、ともすれば「The Feels」を含むニューアルバムも日本でダウンロードできないのではという懸念が生まれるのは自然なことゆえ、関係するレコード会社がきちんと見解を発表してほしいと強く願います。

 

 

4曲のチャート動向からは、それぞれの弱点や問題が見えてきます。言い換えれば、弱点等を浮き彫りにするのがビルボードジャパンソングスチャートの特性なのかもしれません。