イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングスチャートなどを紹介します。

デジタルはチャート戦略に必須、ジャニーズにも大きなプラスに…3月29日付ビルボードジャパンソングスチャートをチェック

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点を紹介します。

3月15~21日を集計期間とする3月29日付ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)。前週2位の宇多田ヒカル「One Last Kiss」が首位の座を射止めました。

f:id:face_urbansoul:20210325053418j:plain

登場2週目におけるポイント前週比は65.8%。ダウンロードが前週比45.9%、ストリーミング再生回数が同88.3%と共に前週割れを起こしており、特にストリーミングにおいてはアニメ主題歌という立場が同じであるLiSA「炎」と大きく異なります(「炎」はCDセールス加算2週目でポイント前週超え…LiSAの勢いが凄まじい11月2日付ビルボードジャパンソングスチャートを掘り下げる(2020年10月29日付)参照)。それゆえロングヒットに至れるかは気になるところですが、まずは次週のポイント推移を注視したいところです。

 

フィジカルセールス首位曲が総合60位となり、前週の上位曲による争いとなった今週のソングスチャートで、優里「ドライフラワー」はまたも首位の座を逃す結果となってしまいました。

この「ドライフラワー」はディレクターズカット版ミュージックビデオが集計期間中の木曜午後に公開されましたが、月曜を集計期間初日とするビルボードジャパンソングスチャートでは大きな効果が見えにくかったと言えます。

ブログ執筆の3月25日5時半の段階でYouTubeにて”ドライフラワー”を検索すると、上記動画は3番手に登場。そして短尺版化して久しい元のミュージックビデオには、当初はなかったショートバージョンの表記が追加されていることが解ります。

f:id:face_urbansoul:20210325054230j:plain

ディレクターズカット版が登場するまでの間にミュージックビデオをショートバージョン化したことが、強力なフィジカルセールスのなかった3月15日付ビルボードジャパンソングスチャートにおいて首位を逃した大きな要因になったと捉えていることは以前記載した通りです。

今回、優里さん側はディレクターズカット版ミュージックビデオを投入することで首位を狙ったのかもしれませんが、その公開タイミングもチャートアクション的に巧いとは言えませんでした。ともすれば優里「ドライフラワー」はこのままチャート制覇を逃すことになるかもしれません。

 

さて、前週首位だったKAT-TUN「Roar」が10位にとどまっています。

f:id:face_urbansoul:20210325054718j:plain

3年前のシングル「Ask Yourself」がフィジカルセールス加算2週目にポイント前週比11.5%となり首位から23位にダウンしたことを踏まえれば、「Roar」の1→10位ならびにポイント前週比19.9%は大きな飛躍と言えます。無論CDの種類を増やしたことも影響しながら「Roar」がダウンロードおよびサブスクを解禁し、この2指標で1割以上のポイントを確保していることが大きいのです。フィジカルセールス加算2週目におけるポイント前週比2割という数値はジャニーズ事務所所属歌手の中でも高く、デジタル効果が表れていると言えます。

ジャニーズ事務所関連では、Kis-My-Ft2Luv Bias」が31→13位となり再浮上を果たしています。

f:id:face_urbansoul:20210325055229j:plain

上記チャート構成比(CHART insight)では濃い紫で表示されるダウンロード指標が全体のおよそ3割を占めていますが、これは主題歌となったドラマ『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』(TBS)の最終回が放送された3月16日に、ダウンロードを一部デジタルプラットフォーム限定ながら解禁したため。

11921ダウンロードを売り上げたことは非常に大きいといえます(数値は【ビルボード】宇多田ヒカル「One Last Kiss」DLソング2週連続首位、『ウマ娘』2曲がトップ10デビュー | Daily News | Billboard JAPAN(3月24日付)より)。このような再浮上もまたジャニーズ事務所所属歌手では珍しく、こちらもデジタルが功を奏した形です。

 

Kis-My-Ft2Luv Bias」のダウンロード解禁におけるSNSのリアクションをみると、ビルボードジャパンではレコチョク購入分が加算対象になるというファンのやり取りが散見されました。つまりファンの間で、複合指標から成るビルボードジャパンソングスチャートの重要性が認知されてきていると言えるでしょう。このチャートでロングヒット且つ年間上位に来なければ『NHK紅白歌合戦』では過去の曲を歌うことになりかねないと個人的には捉えているため、「Luv Bias」がこの勢いをキープできるかに注目しています。尤も「Luv Bias」においてはサブスク解禁していないことがネックとなっているのですが。