和田アキ子「YONA YONA DANCE」が支持を広めつつあります。
9月2日にリリースされた「YONA YONA DANCE」はフレデリックが曲提供。フレデリックといえば「オドループ」で知られたバンドですが、一聴すれば間違いなくフレデリック節な中毒性の高いこの曲を、ソウルやブルースの側から歌謡曲に挑んできた和田アキ子さんが乗りこなすというのが面白いですね。
この「YONA YONA DANCE」、支持拡大のきっかけはTikTokでした。
キャー❗️😍
— 和田アキ子 (@wadasoul2015) 2021年9月20日
YONA YONA DANCEが、
Billboard TikTok週間ランキング14位獲得しました!
皆さんありがとうございます❣️
嬉しい〜🥰
すでにTikTokでは1万本を超えるYONA YONA DANCEの作品が上がっているみたいなので見てください😊https://t.co/BnmLTHvq3A
9月17日にビルボードジャパンが公開したTikTok週間楽曲ランキング(集計期間:9月6-12日)では「YONA YONA DANCE」が14位に初登場。『TikTokでは公式アカウントも開設され、なえなのや景井ひなといったインフルエンサーたちとのコラボ動画も話題』というのが浮上の理由と記されています。
@kageihina 和田アキ子さんと踊らにゃ損!
♬ Yona Yona Dance - Akiko Wada
@naenano 踊らにゃ損です!
♬ Yona Yona Dance - Akiko Wada
この積極的な展開をWEBザテレビジョンは”戦略”と称していますが、下記ツイートを和田アキ子さんの公式Twitterアカウント(→こちら)がリツイートしていることから、戦略の一環であることは間違いないでしょう。
和田アキ子の新曲「YONA YONA DANCE」がTikTokでバズり中!ヒットの裏にある“コラボ戦略”#和田アキ子 #YONAYONADANCE #踊らにゃ損 #フレデリック #景井ひな #なえなのhttps://t.co/vbqZnStOwI
— ザテレビジョン (@thetvjp) 2021年9月22日
上記記事にもあるように、フレデリック「オドループ」もまたTikTokでヒットし、昨年11月には週間楽曲ランキングを制しています*1。インフルエンサーのみならず、曲提供者を選ぶこともまた戦略のひとつと言えるかもしれません。本日には最新のTikTok週間楽曲ランキングが発表されるため、その推移にも注目です。
さて、このような注目が集まると決まってと言っていいほど、”『NHK紅白歌合戦』への出場は?”という記事が登場します(以下、『NHK紅白歌合戦』を紅白と記します)。
#女性自身【公式】
— 女性自身【公式】 (@jisinjp) 2021年9月22日
9月21日(火)の人気No.1⃣記事は…🏆
📌和田アキ子に6年ぶり紅白復活の期待!異色MVが300万回再生で追い風
#和田アキ子#紅白歌合戦#YONAYONADANCEhttps://t.co/jkMCLH77Fy
期待、であり内定等の話ではありません。しかしながら、今後のチャートアクション次第では十分あり得るのではないかというのが私見です。
「YONA YONA DANCE」は最新9月22日公開(9月27日付)ビルボードジャパンソングスチャートで総合100位以内には入っていないものの、動画再生指標が25→17位と上昇。TikTokのヒットが接触指標群に波及するという流れは、今回この曲でも生まれています。またラジオがここにきてエンジンがかかってきたのも面白い現象です。
一方、昨年紅白に出場した演歌・歌謡曲勢の動向はどうでしょう。今年の作品(一部は昨年)をリリース順に追いかけてみます。「YONA YONA DANCE」とは異なり、全曲フィジカルでもシングルリリースされています。
天童よしみ「残波」、石川さゆり「なでしこで、候う」および五木ひろし「日本に生まれてよかった」はフィジカルセールス指標で20位以内を獲得しておらず、チャート推移(CHART insight)を確認することができません。
坂本冬美「ブッダのように私は死んだ」は桑田佳祐さんによる提供曲という話題性の高さもあり、紅白出演後にフィジカルセールス指標の順位が上昇しますが、その他の作品においてよりフィジカルセールス指標の波が顕著なのは、カップリング曲が異なるシングルを複数種、さらに後日別種をリリースしていることが原因のひとつと考えられます。
逆に言えば、シングルを複数種、且つ時間を置いて別種リリースしなければある程度の売上に至れないというのが今の演歌・歌謡曲の状況と言えます。
そして上記CHART insight掲載曲においては坂本冬美「ブッダのように私は死んだ」以外はデジタル指標群が加算されておらず、ストリーミング指標については「ブッダ…」においても全く加算されていないという状況です。これは演歌・歌謡曲がそのジャンルのファン以外にあまり届いていないだろうことを示していると言っても過言ではないでしょう。
和田アキ子さんにおいては2018年にフィジカルセールス面でヒットを飛ばしていますが、紅白復帰は果たせませんでした。
BOYS AND MEN 研究生との「愛を頑張って」は初週フィジカルセールス10万を突破し、2018年5月30日公開(同年6月4日付)ビルボードジャパンソングスチャートでは2位に登場しながら、翌週には総合で100位未満に転落してしまいます。上記で紹介した多くの演歌・歌謡曲同様にデジタル関連指標を一切獲得しておらず、またルックアップも弱かったことが、同年の紅白復帰に至れなかった理由と捉えています。
今や演歌歌謡曲勢でシングルCDセールスのみのチャートは勿論のこと、複合指標のソングスチャートでも2位到達はほぼあり得ないこと。ならばなぜ複合指標でも、そしてセールス単体でも2週目圏外になるのか?という疑問がより強く残ってしまいます。つまりは「愛を頑張って」はシングルCDセールスに特化したものであり、近年の和田アキ子さんのセールスを考慮すれば、和田さん側には厳しい物言いを承知で書くのですが、BOYS AND MEN研究生のファンの努力の結果と言えるかもしれません。
尤も演歌・歌謡曲として捉えるならば「愛を頑張って」のフィジカルセールスは大ヒットと言えます。ただ、一部ゴシップ誌にて和田アキ子さんが落選後に紅白へ恨み節を放っていると報じられており、ともすれば紅白側が2018年段階においてはそれを考慮してしまったのかもしれません。
一方で演歌・歌謡曲の出場枠は緩やかながらも確実に減少傾向にあり、昨年は紅組の枠が2枠減ってしまいました。その意味では和田アキ子さんが復活することに伴う純増(とはいえ「YONA YONA DANCE」は歌謡曲とは異なりますが)は十分考えられます。仮に恨み節があったとして5年経過しており、以前ほどのわだかまりはないと言えるでしょう。そして今回の曲は演歌・歌謡曲以外のファンにも浸透してきていると言えます。
では、「YONA YONA DANCE」で和田アキ子さんが紅白復帰を果たすためのチャート上の条件を考えます。
「YONA YONA DANCE」のCHART insightを再掲する形となりますが、同曲が未だビルボードジャパンソングスチャートで総合100位以内に入っていないことは気掛かりです(黒の折れ線が総合チャートを示します)。そしてストリーミング指標(青で表示)が未だ300位以内入らず加点されていないのも気になります。TikTokの人気は動画再生のみならずストリーミングでのヒットに波及した上で総合でのヒットに至るゆえ、尚の事です。
追い風となりそうなのが、歌唱分析を行うしらスタ【歌唱力向上委員会】公式YouTubeチャンネルにて「YONA YONA DANCE」が紹介されたこと。近年では『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日)に代表される曲分析が曲の多角的視点の創出につながりヒットに貢献する印象があり(Official髭男dism「Cry Baby」の転調の認知が代表例と考えます)、「YONA YONA DANCE」にもTikTok以外からの注目(アプローチ)が生まれています。
重要なのはTikTok人気を早急にストリーミング指標(基となるサブスク)でのヒットに結びつけることでしょう。和田アキ子さんが音楽番組で「YONA YONA DANCE」を、できるならばフレデリックを従えてパフォーマンスすることで認知を高めるならば、TikTokや曲分析以外のアプローチ(口コミ人気等)が生まれ、サブスクが盛り上がっていくかもしれません。
ストリーミング指標のヒットは総合チャートの上昇に大きく寄与します。和田アキ子さんが紅白復帰を果たすためには、フィジカル未リリースでもビルボードジャパンソングスチャート100位以内に登場することが必要だと考えます。昨年紅白に出場した演歌・歌謡曲勢の今年の作品では総合100位以内エントリーが多くて1週ゆえ、2週以上ランクインすればより有利となることでしょう。紅白復帰の可能性は十分あると考えます。