毎週木曜は、最新のビルボードジャパンソングスチャートから注目点を紹介します。
9月13~19日を集計期間とする9月22日公開(9月27日付)ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)。フィジカル関連指標初加算に伴い、Kis-My-Ft2「Fear」が初登場で首位を獲得しました。
【ビルボード】Kis-My-Ft2「Fear」137,484枚を売り上げ総合首位獲得 YOASOBI「大正浪漫」総合2位に初登場 https://t.co/5j2OuX9Meg pic.twitter.com/ugytbRpsHi
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2021年9月22日
Kis-My-Ft2は今夏のベストアルバム以降、期間限定、曲数限定およびLINE MUSIC限定でサブスクを解禁。そのLINE MUSICが得意とする再生回数キャンペーンを展開したこともあり「Fear」ではストリーミング指標が加算対象となっています。そのストリーミング再生回数2,810,064回、同指標34位という数値をどう見るかですが、個人的には決して多いと言えないのではと捉えています。
限定解禁はそのデジタルプラットフォームにとっては有益かもしれませんが、音楽業界全体にはプラスになったとは言い難く、Kis-My-Ft2がエイベックスに所属していることを踏まえればそのエイベックスが大きく関わるAWAで大々的な訴求・展開が行われないのは機会損失ではとも考えます。またダウンロード未解禁という状態も気掛かりです。デジタルが十分に解禁されていたならば、1万ポイント超えは十分有り得たはずです。
デジタル解禁を一部に限定したことに加えてキャンペーン対象曲となったことで、先行解禁された「SO BLUE」はそのキャンペーン効果が消えた当週にストリーミングそして総合でも100位未満となってしまいました*1。またフィジカル初加算週はダウンロードも伸びる傾向があるゆえ、ダウンロード未解禁は大きなロスとなったという印象は拭えません。
前週首位を獲得したKAT-TUN feat. AK-69「We Just Go Hard」は今週100位以内から姿を消しました。フィジカルリリース日にダウンロードおよびサブスクを各種デジタルプラットフォームで解禁しておりダウンロード指標は今週もポイントを獲得した一方、ストリーミングおよび動画再生といった接触指標群は2週続けて300位以内にも入っていません。前作「Roar」が2週続けて総合トップ10入りした状況とは大きく異なります。
ともすれば、デジタル解禁状況は異なれどKAT-TUNそしてKis-My-Ft2は似た動きをなぞっていると捉えられかねません。レコード会社も違いますが、この2週の動向を踏まえて(さらには翌週、仮に「Fear」が急落するならば尚の事)ジャニーズ事務所側がデジタルに後ろ向きになるのではないかと危惧する自分がいます。
しかし前週のブログエントリーで「We Just Go Hard」においては改善案を提示し、ジャニーズにおけるこれまでのデジタル好例も記しています(下記リンク先参照)。すべての歌手が毎回デジタル、特に接触指標群で成功を収めているわけではないため、いつ何時”見つかる”ことで大ヒットに至ってもいいように、きちんとデジタルを用意し浮上のきっかけを作る必要があるというのが私見です*2。
Kis-My-Ft2は「SO BLUE」において、リリックビデオをフルバージョンで用意しました。この試みには好感を抱きます。このような施策を徹底し、Kis-My-Ft2のみならずジャニーズがデジタルを徹底しているという姿勢を広く世間に認知、浸透させることが非常に重要です。
KAT-TUN feat. AK-69「We Just Go Hard」の総合首位→100位未満へのダウンは、その前週におけるSKE48「あの頃の君を見つけた」をなぞります。フィジカルセールス指標のウェイト減少(係数処理対象枚数の引き下げ)というチャートポリシー変更を実施した今年度下半期以降で2週続けてこの事態が発生したことから、フィジカルセールス指標のさらなるウェイトダウンは必要でしょう。チャート側も検討しているものと考えます。
ジャニーズがデジタルに後ろ向きになるかは不明でも、フィジカルセールス指標のさらなるウェイト減少は近い将来やってくるものと考えます。フィジカルセールスが大きなポイント獲得源となる歌手は、その措置が採られるまでに如何にデジタルに強くなるかを早急に対策する必要があります。その一案として、TikTokでのプレビュー(リリース前のいわばチラ見せ)効果を昨日紹介していますので是非ご参照ください。
無論こちらも、デジタルをきちんと解禁しているからこそ有効な施策です。
最後に。毎週水曜夜にポッドキャスト【Billboard Top Hits】を配信しています。SpotifyではMusic + Talk機能を使い、毎回2曲を紹介しています。Spotify有料会員の方は曲をフルサイズで聴くことができますので是非チェックを。今回採り上げた邦楽曲については後日ブログ内で言及する予定です。
*1:LINE MUSIC再生回数キャンペーンの詳細はこちらに。またフィジカルシングルがダブルAサイドの場合、フィジカルセールスおよびルックアップ指標は1曲のみに加算されます。Kis-My-Ft2の今作では「Fear」が加算対象となっています。
*2:この、主にライト層に"見つかる”ということがヒットの上で非常に大事だと考えます。