MAISONdes feat. 和ぬか & asmi「ヨワネハキ」がチャートを順調に駆け上がっています。
ブレイクのきっかけはTikTok。8月23~30日を集計期間とする最新のTikTok週間楽曲ランキングでは2位に後退するも、前週まで4連覇を達成。昨日発表の最新チャートは下記に。
TikTok人気曲はサブスクサービスで早いうちに火が付きますが、保守的な動きが特徴のSpotifyでは8月30日まで50位未満を続けていました。しかし8月末日に50位の壁を突破すると最新9月2日付では22位に急浮上。次週9月8日公開(9月13日付)ビルボードジャパンソングスチャートではストリーミング指標のさらなる上昇が期待できます。Spotifyの急浮上という特性については以前ブログに記しています。
最新9月1日公開(9月6日付)ビルボードジャパンソングスチャートでは、Spotify以外のサブスクサービスにおける堅調も相俟って、「ヨワネハキ」は26位に上昇しています。
特筆すべきは、ストリーミング(上記CHART insightにて青で表示)以上に動画再生(赤)およびダウンロード(紫)が上昇していること。TikTok人気は動画再生→ストリーミングやダウンロードに人気が波及する特徴がありますが、この急上昇の要因はTHE FIRST TAKE出演効果も大きいと考えます。9月1日公開ビルボードジャパンソングスチャートの集計期間中、8月25日水曜に公開されたことが反映したと言えるでしょう。
THE FIRST TAKEによる効果は、今年に入ってからもYOASOBI「群青」やDa-iCE「CITRUS」等でみられていました現在でもTHE FIRST TAKEが大きな影響力を持ち合わせている証拠であり、それ自体は素晴らしいことです。
しかし不思議なのは、本来オリジナルバージョンと大きく異なるTHE FIRST TAKE版がオリジナルバージョンに合算されているだろうこと。これはビルボードジャパンソングスチャートのチャートポリシーと矛盾するのです。本来、アレンジの異なる作品はストリーミング等では合算されません。合算する/しないの基準については6月5日付のブログエントリーにて記しています(下記参照)。
3年前に問い合わせた際に判明した合算する/しないの基準が変わっていないことは、今年7月7日公開(7月12日付)ビルボードジャパンソングスチャートにおいてYOASOBI「夜に駆ける」のアレンジを一切変えず英語詞にした「Into The Night」が合算され、トップ10復帰を果たしたことから明らかに。ビルボードジャパンは合算に因る再浮上と明確に報じていました(下記ブログエントリーにて紹介)。
言語の違いのみであれば合算すると明示される一方、リミックス等が合算されない旨は明示されていません。DISH//「猫」が2バージョンランクインしていたことで合算されないんだろうとおぼろげながら認識されている方はいらっしゃるでしょうが、やはり明示してほしいというのが私見です。
ともすれば、最新チャートにて合算可能なチャートポリシーに変更するのではとうっすら期待していたのですが、それは叶いませんでした。
ビルボードジャパン(@Billboard_JAPAN)が今日発表するチャートは2021年度第4四半期の初週となります。
— Kei (@Kei_radio) 2021年9月1日
今年度に入り第3四半期まで毎回チャートポリシーが変更されています。そのため、ともすれば今週チャートポリシー変更実施が有るかも。可能性は高くはないにせよ、ゼロではないと思う自分がいます。
最新9月1日公開(9月6日付)ビルボードジャパンソングスチャートでBTS「Butter」にメーガン・ザ・スタリオン参加版が初登場するタイミングゆえ、期待していたのですが。そのBTS feat. メーガン・ザ・スタリオン「Butter」はダウンロードで69位になるも、ストリーミングそして総合では100位以内を逃しています*1。
BTS feat. メーガン・ザ・スタリオン「Butter」はダウンロード指標にてオリジナルバージョンとは別扱いとなり、結局は現在もリミックスは合算対象となりません。リミックスの合算が叶わない一方、動画においてはアレンジ等に違いがあっても合算対象というのはやはり矛盾ではないかと考える自分がいます。
6月5日付のブログエントリーでは『動画指標において、オリジナルバージョンの尺をカットしたショートバージョンやティザー、曲の途中に広告等を挟んだりリミックスしたオリジナル版に手が加わった動画が加算されています』と書きました。そこで具体例を挙げてみると、まずショートバージョンについてはジャニーズ事務所所属歌手の大半の作品が現在も用いています。
広告を挟む作品としては、星野源「恋」が代表例。ミュージックビデオ本編終了後ではなく、曲中に挿し込まれています。
リミックスしたオリジナル版に手が加わった動画としては、UGC(歌ってみたや踊ってみたに代表されるユーザー生成コンテンツ)が加算対象だった時期における荻野目洋子「ダンシング・ヒーロー (Eat You Up)」のバブリーダンス動画が代表例と言えます。
(別曲も挿し込まれた動画ゆえ紹介しました。現在ではYouTubeの概要欄において、「ダンシング・ヒーロー (Eat You Up)」以外の作品もクレジットされています。)
その他、途中にオリジナルバージョンにはない音が入っていたり、逆にブランクが生じるバージョンもあります。NiziU「Make you happy」は一番終わりにコント的な展開があり、そこで一旦音楽が途切れます。
また、ライブ動画であってもオリジナルバージョンに合算される傾向もあります。これら例示した曲の動画は、YouTubeをバックグラウンド再生していればストリーミング指標へ加算されるのですが、そうなるとオリジナルバージョンと厳密に異なるものを聴いてもオリジナルバージョンに合算されるわけで、ここでも矛盾が発生すると言えます。
問題の根幹にあるのはビルボードジャパンが合算しないこととは別に、たとえば曲がフルバージョンでアップされた動画や音源未加工の動画以外を集計から外したくともできないであろうシステム側の問題にあると考えます。また動画を公開する側が、オリジナルとは異なるバージョンであるにも関わらずオリジナルバージョンと同じISRC(国際標準レコーディングコード)を付番していることも原因ではないでしょうか*2。
後者が原因であるならば動画を公開するレコード会社や芸能事務所側の問題であり、THE FIRST TAKEバージョンの動画に同バージョンのISRCをきちんと施したDISH//「猫」等が損をすることになります。厳密に、真面目に分けて登録したほうがチャート上で損をするという構図はあってはならないはずです。
合算すればリミックスを連発するチャート施策が登場するだろう可能性を踏まえ、合算を望まないという声も耳にします。しかしながら、たとえば先述したBTS feat. メーガン・ザ・スタリオン「Butter」が(初週は集計期間の2日半のみ加算対象だったとはいえど)総合100位に入らなかったことを踏まえれば、リミックスを合算しても影響度は大きくないと言えるかもしれません。
ナナヲアカリ「雷火」REMIXコンテスト開催、優勝賞金10万円&公式音源として配信リリース https://t.co/2XeX5pSAaJ pic.twitter.com/P04RxquyjU
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2021年9月3日
またリミックスについては上記コンテスト開催のような興味深い動きも登場しています。ならば尚の事、リミックスを重視できないような現状の合算に関するチャートポリシーに対し、個人的には強い疑問を抱くのです。
米ビルボードやグローバルチャートではリミックス等はすべて合算対象となります*3。グローバルな流れに逆行しない意味でも、また動画再生指標では合算するのに他指標ではしないという矛盾をなくすためにも、ビルボードジャパンは合算することを検討してほしいと願います。検討した上で合算しないのであれば、合算する/しないの基準をきちんと明示することも、強く願うばかりです。
*1:9月1日付ビルボードジャパンダウンロードソングスチャートはこちら。
*2:動画再生指標のカウント対象となる動画には、このISRCが付番されています。バックグラウンド再生の件を含め、詳細は【Billboard JAPAN Chart】よくある質問 | Special | Billboard JAPANをご確認ください。
*3:ただしテイラー・スウィフトのセルフカバーバージョン、"Taylor's Version"等は異なります。テイラー・スウィフトについてはテイラー・スウィフト「Love Story」の新バージョン、"私のもの"と宣言した理由と背景にある問題(2月16日付)をご参照ください。