イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

米ビルボードソングスチャート活性化の意味も持つリミックス追加投入、しかしその投入がチャート対策最優先である可能性を懸念する

このブログで毎週追いかけている米ビルボードおよびビルボードジャパンのソングスチャート。この日米のチャートで大きく異なるのが、リミックスバージョンをオリジナルに合算するかしないかという差にあります。合算対象となる米ソングスチャートにおいて、リミックスの後日投入はオリジナルバージョンバージョンのチャート上昇につながる(仮にオリジナルよりもリミックスのほうが支持されればクレジットはそのバージョンとなる)ほか、新人の注目作品にベテランが客演参加することでその新人に箔が付くことにも。ドージャ・キャット「Say So」にはニッキー・ミナージュが、メーガン・ザ・スタリオン「Savage」にはビヨンセが参加したことでそれぞれ初となる米ビルボードソングスチャート制覇を成し遂げたことはまさにその象徴と言えます。無論これらリミックスの投入はチャート施策のみならず、先述した新人のフックアップやリミックスの楽しさそして文化の流布という側面が前提としてあるものと捉えています。

このような客演参加の形でのリミックスの投入が、一昨日のリリース作品でも複数みられるので今日はそちらを紹介しましょう。

 

 

9月18日付の米Spotifyデイリーチャートにて、リミックスバージョンのニューリリースとして最上位に登場したのはマネーバッグ・ヨー「Said Sum」のシティ・ガールズ&ダベイビー参加によるリミックス。オリジナルは最新9月19日付米ビルボードソングスチャートで71位にランクインしていますが、最高位は44位でありマネーバッグ・ヨーにとって自己最高位。リミックスの追加により最高位を更新する可能性は十分です。

 

今年2月、20歳という若さで亡くなったポップ・スモークですが、7月3日にリリースされたオリジナルアルバム『Shoot For The Stars, Aim For The Moon』が米ビルボードアルバムチャートで首位を獲得したのみならず、17日後にデラックスエディションが登場したこともあってロングヒットを記録し、最新9月19日付米アルバムチャートでは2位につけています。アルバムからは現在3曲が最新米ソングスチャートに登場していますが、現在21位に登場している「Mood Swings」に(オリジナルバージョンで客演するリル・ティージェイに加えて)サマー・ウォーカーが追加で客演参加したリミックスが登場。先述した9月18日付米Spotifyデイリーチャートでは116位発進となり、リミックスが合算されれば米ソングスチャートにおいてオリジナル版の最高位である17位を上回る可能性は十分です。

 

そしてBTS「Dynamite」。既に4つのリミックスが出ているのですが、9月18日にはさらに4バージョンが追加投入。加えて0.69ドルの安価販売を続けており、米ビルボードでは日本時間の9月29日に発表予定の10月3日付ソングスチャートにて「Dynamite」が首位を奪還する可能性もあるという見方があります。リミックス等戦略については以前紹介しています。

Spotifyにおける日本向けの新曲プレイリスト、New Music Friday Japanでは9月18日更新分に「Dynamite (Retro Remix)」が登場。これまでの4つのリミックスがオリジナルバージョンとそのインストゥルメンタル共々”DayTime Version”としてまとめられているのに対し(→Spotify)、Retro Remix等は(こちらもオリジナルとそのインストを含め)”NightTime Version”としてパッケージされています。Spotifyは下記に。

おそらくチャート上の施策としてBTS側が複数のリミックスを投入しているものと考えます。しかしながら、個人的にはこのようなことを感じた次第。

リミックスの投入が続けば、米ビルボードは近いうちにリミックスバージョンのオリジナルへの合算の是非も含めた議論を実施し、リミックス投入に関して何かしらの規制を伴ったチャートポリシー変更を行う可能性があるのではと考えます。今年目立ったフィジカル施策に伴うチャートの非健全化を是正すべく米ビルボードがチャートポリシー変更に至らせた前例があるゆえ、気になるのです。フィジカル施策、そして10月上旬実施予定の改正については以前紹介しています。

上記のツイートに続いて自分はこうもつぶやきました。

複数のリミキサーを起用したリミックスの複数バージョン投入、以前はよく行われていました。

 

上記は一例ですが、しかしこれらは少なくとも2名以上のリミキサーが参加し、そのリミキサーの名前が付けられているバージョンが見受けられます。一方でBTS「Dynamite」についてはリミキサーが不明であることもあり、リミックス文化を広めるという意義よりも、数多くのリミックスを投入して特に彼らの強みである所有指標(ダウンロード)の拡大に努めたいのでは…そう思われてもおかしくないのではないでしょうか。実際に米ビルボードソングスチャートにおいて「Dynamite」がこの3週間強さをキープする、その最大の理由は所有指標にあるわけです。リミックス”文化”については下記ブログエントリーをご参照ください。

上記ブログエントリーでは文化拡大のみならず、リミックスにチャートの仕掛けや戦略を活性化させる側面もあると書きました。その他にも様々な効果が期待できることからビルボードジャパンにおいても合算してほしいとの懇願を記載したのですが、BTS「Dynamite」の戦略が仮に自分の推測した意向を踏まえてのものであるならば、ビルボードジャパンのリミックス合算が叶うどころか米ビルボードソングスチャートでも合算から切り離しの方向にシフトするという懸念を抱く自分がいます。リミックスを施すならばこれまで組んできたスティーヴ・アオキ等に依頼したほうが、自分が抱いたような疑念が生まれにくくなったものと考えます。