イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記・訂正あり) 50週連続トップ50入り、平井大「Stand by me, Stand by you.」がロングヒットした理由

(※追記(9月3日9時28分):今年リリースした曲でのビルボードソングスチャート50位以内ランクインは「Buddy」「MIRROR MIRROR」のほか、1月27日リリースの「題名のない今日」および2月10日にデジタルリリースされたアルバム『Life Goes On』収録の「Romeo+Juliet -Love goes on-」も該当していました。大変失礼いたしました。「題名のない今日」もアルバム『Life Goes On』に収録されておりますので、文面を”今年リリースした曲のうち、アルバム『Life Goes On』リリース後の作品において”に訂正しています。)

 

 

 

昨日のブログエントリーに多くのアクセスをいただき、感謝申し上げます。

いただいた反応の中に、フィジカルリリースしていないBE:FIRST「Shining One」のストリーミングの強くなさをを取り上げ、一曲単位ではなく連続リリースによって歌手として認知度を上げる必要性を説くものがありました。個人的にはそれも有りではないかと感じた次第です。

 

というのも、連続リリースが功を奏している例があります。それが平井大「Stand by me, Stand by you.」なのです。

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最新9月1日公開(9月6日付)ビルボードジャパンソングスチャートにて「Stand by me, Stand by you.」は40位を記録。とりわけストリーミング(上記CHART insightにて青で表示)が下がっていないこと、そしてそれに呼応するかのように総合(黒)もキープしていることが特筆すべきと言えます。

 

平井大「Stand by me, Stand by you.」は昨年9月18日公開(9月23日付)で78位に初登場すると、翌週からは50週連続でトップ50をキープしています。今年度に入り50位以内に入り続ける曲は10作品ありますが、その中でも「Stand by me, Stand by you.」はそのキープ力がかなり強いのです。

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10曲のポイント推移を上記に。昨年度末から今年はじめにかけて社会的なヒットとなったLiSA「炎」との差は、今週には28ポイントにまで縮まっています。

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「Stand by me, Stand by you.」が3000ポイントを割り込んだ3月31日公開分以降に絞ってみると上記の通り。最新9月1日公開におけるポイントは3月31日公開分の74.4%となり、10曲の中では2番目に高いのです*1。それに次ぐ3位が優里「ドライフラワー」の74.2%であり、同曲が今年を代表する作品であることはこの割合からもよく解ります。

優里「ドライフラワー」はテレビで取り上げられる度にポイントが上昇し、7月まで7000ポイント台をキープ。最新週も6841ポイントと高水準を記録していますが、自身のYouTubeチャンネルの更新頻度の高さやストリーミングでヒットを続ける歌手とのコラボレーションが功を奏しています(上記ブログエントリーにて紹介)。そして平井大さんの成功もまた、頻度の高さが大きな要因になったと言えるでしょう。

 

「Stand by me, Stand by you.」も昨年の連続配信の一環でリリースされた作品ですが、同曲がTikTok等を機にヒットしたことや連続配信に至る経緯について、音楽ジャーナリストの柴那典さんがYahoo!JAPANのコラムに記載されています。

コラムが掲載されたのは今年5月で、この時は今年第3弾となる配信シングル「Hero」のリリース直前でした。3週に1曲というペースで新曲をリリースしていた平井大さんは、その後7月11日リリースの「小さな丘の木の下で」から8月22日の「ily...」まで7週連続で新曲を配信する“Sunday Goods -Special Summer Edition-”企画を実施。それにより平井大さんへの興味がさらに高まったと言えます。

 

平井大さんが今年リリースした曲のうち、アルバム『Life Goes On』リリース後の作品においてビルボードジャパンソングスチャート50位以内に登場した作品は「Buddy」と「MIRROR MIRROR」の2曲。多いとは決して言えないかもしれません。

しかしこれは平井大さんサイドが『日曜日の朝に起きて窓を開けて聴いてもらう』意思にて日曜にリリースしていることも影響しています(『』内は上記Yahoo!JAPANのコラムより)。集計期間が月曜開始となるチャートにおいては日曜リリースが不利になることは自明ですが、それでも日曜リリースにこだわったのは戦略以上に自身の音楽性を大切にすることの表れでしょう。

より評価される曲はきちんと結果を残します。最新週までに「Buddy」は現段階で通算10週、「MIRROR MIRROR」は5週連続で50位以内に登場。ロングヒットはその音楽性の浸透の証明と言え、そして「Buddy」や「MIRROR MIRROR」等の連続リリースが「Stand by me, Stand by you.」の勢いをキープする要因であることは自明でしょう。

 

 

柴那典さんはコラムにて、『平井 大の成功の秘訣は、リスナーの生活に寄り添うために、楽曲制作だけでなくリリースやコミュニケーションも含めて活動のやり方をゼロからデザインした新たな音楽活動のモデルにある』と結んでいます。既存の音楽モデルに迎合するよりも自分の考えや楽しみ方を優先した結果が「Stand by me, Stand by you.」のロングヒットにつながったことは、あまりにも格好良いと思うのです。

*1:なお1位はOfficial髭男dism「Pretender」の88.2%。アルバム『Editorial』が初登場する前の週に2738ポイントにまで上昇し、最新週は2472ポイントと好調をキープ。アルバムリリースが88.2%という高水準につながったと言えます。