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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

Kis-My-Ft2、超特急…LINE MUSIC再生回数キャンペーンや限定解禁というサブスクへの姿勢を思う

最新8月11日公開(8月16日付)ビルボードジャパンソングスチャートでは超特急「CARNAVAL」が100位圏外へ急落。18→14位と推移したこの曲が姿を消しました。

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フィジカル関連を除く6指標で挑んだ「CARNAVAL」はストリーミングおよびTwitter以外の指標が3週続けて加算されず。また総合チャート上位進出の原動力となったストリーミングは2週連続の9位を経て、今週は100位圏外に。LINE MUSIC再生回数キャンペーンが前週の集計期間で終了したこと、そしてサブスクサービス全体で1000万回再生を目標としたキャンペーンが前週の集計期間内に達成したことの反動が表れた形です。

つまり、超特急「CARNAVAL」はコアなファンがほぼLINE MUSICで聴き続けたことによる上昇である一方、ライト層に拡がっているとは言い難いというのが私見です。

(中略)

超特急「CARNAVAL」は次週もストリーミングが上位にとどまり、総合でも勢いをキープできるものと思われますが、その次週においてダウンロードや動画再生といった他指標が加点されるか、またその翌週(8月11日公開(8月16日付))にストリーミングが急落しないか、注視する必要があります。

2週前、「CARNAVAL」が初登場した際に上記の内容を記しました。LINE MUSICの再生回数キャンペーンはコアなファンを動かしたもののライト層との乖離を招き、また上記ブログエントリーを引用して"自分は引いてしまった、参加できない"とネガティブな感情を吐露するファンの方もいらしておりファンの間でも乖離が生まれたと感じています。運営側はこれら反応を踏まえる必要があると考えます。

 

 

さてLINE MUSICといえば、Kis-My-Ft2のベストアルバム収録曲を期間限定でサブスク解禁したことで注目が集まっています。

このベストアルバムに収録された新曲が、次週8月18日公開(8月23日付)ビルボードジャパンソングスチャートのストリーミング指標において、週前半3日間の速報値で19位に登場。解禁は火曜ゆえ、実質2日間でトップ20入りを果たしたことになります。

また19位には、Kis-My-Ft2が新曲「A10TION」で初めてストリーミング・ソング・チャートの速報に登場。「A10TION」は、Kis-My-Ft2のデビュー10周年を記念したベストアルバム『BEST of Kis-My-Ft2』の収録曲。同アルバムは、8月10日よりLINE MUSICにて独占配信がスタートしている。

解禁日となる8月10日火曜正午時点でのリアルタイムチャートでは、ベストアルバム収録の66曲がLINE MUSICリアルタイムチャート66位までを独占していました。

(ツイートを取り上げさせていただきました。問題があれば削除いたします。)

 

LINE MUSICでは様々な企画を実施しており、本日開催の生配信もそのひとつですが(詳細はこちら)、「A10TION」については再生回数キャンペーン対象となっています。

期間は8月17日火曜までの8日間。ユーザーの名前を呼ぶ動画においては上位者の中から抽選という形ではなく最上位の7名となっているため*1、コアなファンの熱量は相当なものがあると予想します。となると、先述した超特急「CARNAVAL」と似たようなチャート推移が「A10TION」でも発生する可能性がありそうです。

次週8月18日公開(8月23日付)ビルボードジャパンソングスチャートにおいてはKis-My-Ft2のストリーミング指標に注目。「A10TION」以外の曲の推移、そしてLINE MUSICで再生回数キャンペーンを施した「A10TION」の動向についてはそのキャンペーン効果がなくなるまでの3週分を追いかける必要があります。

 

 

Kis-My-Ft2のサブスク解禁に対し私見を述べるならば、公開範囲をLINE MUSICに限定したことに疑問を抱きます。ベストアルバム収録曲や期間を限定したこともさることながら、LINE MUSIC限定であることを大きく謳わないメディア、そして表題からは公開範囲限定が判りにくいレコード会社発の動画(下記参照)にも違和感を覚えています。

その上で、サブスクサービスの限定はそこまで効力が大きくないだろうことも付け加えておきます。

back numberもLINE MUSIC限定で先行解禁した歌手ですが、今回1億回再生を達成した「花束」は限定解禁を解除したことで初めてストリーミング100位以内に到達したわけです。

 

限定解禁にはどのような意図があるかは解りません。サブスクサービスを試すという意味合いもあるでしょうし、フィジカル優先の姿勢もあるかもしれません。しかし限定解禁は届きにくいという側面を持ち合わせていると断言していいでしょう。またLINE MUSICにおける再生回数キャンペーンの実施はコアなファンをも疲弊させかねず乖離、より強い表現を敢えて用いるならば分断を招く可能性もあるのです。

また、独占配信を有益なコンテンツとしてLINE MUSIC側が捉えているならば、その姿勢はいちサブスクサービスには有益でも音楽業界全体にとってはそうとは言えないだろうと、厳しくもそう考えます。レコード会社や芸能事務所もさることながらデジタルプラットフォームもまた、歌手そして音楽業界全体の盛り上がりのためにどうするかをきちんと考えてほしいと思うのです。

 

独占や一部限定といった問題については、今年のシングル「Luv Bias」をフィジカルから遅れてレコチョク等一部限定でダウンロード解禁したことにもある意味当てはまります。

同曲は「A10TION」に次いでLINE MUSICで好調に推移していますが、仮にiTunes Store等でも解禁していたならば、そしてサブスク解禁があったならば、「Luv Bias」はより大きなヒットになっていたことでしょう。今年のジャニーズ事務所を代表する曲のひとつがより大きなヒットに至れなかったことは非常に勿体ないと思わずにいられません。

*1:ただしLINE MUSICでは『※上位再生者に同数の再生者が複数いた場合は、抽選を実施します。』と記載されています。