イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり)『BTS, THE BEST』、フィジカルが『STRAY SHEEP』を超えるもダウンロード数が大きく異なる理由とは

(※追記(6月26日6時32分):『韓国語アルバムの日本国内盤があまり出ていない点』について、ブログ宛に回答をいただきました。引用許可をいただきましたので掲載させていただきます。ご回答をいただき、心より感謝申し上げます。)

 

 

 

6月23日公開(6月28日付)ビルボードジャパンアルバムチャートはBTSのベストアルバム『BTS, THE BEST』が初登場で首位に立ちました。構成3指標がすべて1位という、いわば完全制覇という形です。

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初週のフィジカルセールスは、米津玄師『STRAY SHEEP』(2020)以来となる80万枚超えを達成した『BTS, THE BEST』。ですが、ダウンロード指標は大きく異なります。

一方の『STRAY SHEEP』は10万DLを突破しており、実に14倍以上の差をつけているのです。『STRAY SHEEP』が初登場した昨年8月12日公開(8月17日付)ダウンロードアルバムチャートの記事は以下に。

この差はどこにあるのでしょう。

 

 

BTSはアイドルとしての人気が高いため所有指標に強く、また複数形態でのリリースやクリアフォトカードをランダムで封入していることがフィジカルセールスの高さにつながったと考えられますが、さらに大きな要因と言えそうなのがデジタルでの取り扱いにあります。

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上記はiTunes Storeにおける『BTS, THE BEST』のページ。当初、デジタルの価格がフィジカルとそこまで差がないためにフィジカルセールスが増えたのではと思い調べたのですが、ダウンロード価格は曲数の割に抑えられています。しかし、ディスク1の13曲目に収められえいる「Dynamite」が、ダウンロード版では収録されていないのです。これはサブスクにおいても同様であり、一例としてSpotifyを以下に掲示します。

「Dynamite」は韓国語アルバム『BE』(2020)でフィジカル化されたものの同作が国内盤化されていないため、「Dynamite」は『BTS, THE BEST』で国内盤として初のフィジカル化となりましたが、この曲がなぜボーナストラック扱いだったのかが解った気がします。韓国語アルバムは日本での国内盤化ができない契約であり、「Dynamite」は特例として許可が下りたもののあくまでフィジカルのみという取り交わしだったのでしょう。

 

(韓国語アルバムの日本国内盤があまり出ていない点については調査が必要です。ご存じの方がいらっしゃいましたらコメントや問い合わせフォームから教えていただけたならば幸いです。ブログで引用可能でしたらその旨もお伝えください。)

 

「Dynamite」は最新のビルボードジャパンソングスチャートにおいて、ダウンロードが前週比145.2%を記録。「Butter」の121.8%や優里「ドライフラワー」の133.2%等、テレビで披露された曲が伸びる同指標にあって「Dynamite」はそれらよりも伸び率が高いことから、『BTS, THE BEST』をダウンロードしながら「Dynamite」が未収録だったことに気付き単曲で追加購入したという方が少なからずいらっしゃるものと思われます。そしてこのデジタル未収録という措置が、フィジカル購入増加の理由と言えそうです。

 

 

BTS, THE BEST』のデジタル版には「Dynamite」が未収録であるということを、どのくらいの方が存じ上げているでしょう。その点について、十分に説明されていたかが気になります。また、K-Pop全体に言えることですが、韓国語アルバムの解説や歌詞対訳付き国内盤が出ないのは、それらが付いていないことを理由にフィジカルの購入をためらうライト層を生じかねないと思うのですが、如何でしょうか。

 

とはいえ、ベストアルバムの大ヒットを機に、まずは聴こうという気概が生まれているだろうことは、たとえばSpotifyの動向から推測できます。

今後は、現在大ヒット中の「Butter」がいつ国内盤としてCD化されるかについても注目していこうと思います。

 

 

 

※追記(6月26日6時32分)

『韓国語アルバムの日本国内盤があまり出ていない点』について、rock-roさんより問い合わせフォームを介してこちらの記事をご紹介いただきました。

しかし、韓国のアーティストたちはわざわざ日本で日本語版のアルバムをリリースし、日本の音楽番組にも出演し、さまざなま番組やCMのタイアップをつけ、日本各地でライブを行う。これらは、日本でメジャーデビューしたからこそできることなのだ。韓国のレコード会社からリリースされた韓国語の楽曲の大半はライセンス契約で、日本語のレコード会社が原盤・出版権を有していないため、上記のような動きがしづらいのだ。最近では、韓国語の曲でも日本のレコード会社が制作費を負担し、原盤権を譲渡してもらうというケースもあるが、そんなに多くはない。

とりわけ紹介されていた太字箇所に納得した次第です。BTSの韓国語および英語作品はこれに伴うものであり、ゆえに「Dynamite」はボーナストラック扱いとして『BTS, THE BEST』への収録が叶ったもののあくまでフィジカルでのみという取り交わしだったと想像できます。

 

また「Butter」についてはCDリリースがアナウンスされています。今回ご指摘をくださった方はこのCDが国内盤扱いとなるのではないかとのことでした。

厳密には、上記リンク先では韓国輸入盤と記載されています。契約形態の関係上国内盤は出せないため、「Butter」のCDはこの韓国輸入盤の日本流通分に限るということかもしれません。

 

ご指摘をくださったrock-roさんに、心より感謝申し上げます。なお、氏名の掲載に問題がありましたら、教えていただきましたら幸いです。よろしくお願いいたします。