毎週木曜は、最新のビルボードジャパンソングスチャートから注目点を紹介します。
6月14~20日を集計期間とする6月23日公開(6月28日付)ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)。フィジカルセールス初加算に伴い、米津玄師「Pale Blue」が初の首位を獲得しました。
【ビルボード】米津玄師「Pale Blue」、BTSとNMB48を抑え逆転総合首位獲得 https://t.co/DCN4WwTHT7 pic.twitter.com/mr115EEsMJ
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2021年6月23日
フィジカルセールスではNMB48「シダレヤナギ」におよそ2700枚差で敗れた「Pale Blue」ですが、他指標では圧倒。ビルボードジャパンでは今年下半期からフィジカルセールスにおける係数処理適用枚数を大きく減らし同指標のウェイトを下げるチャートポリシー変更を実施していますが(30万→10万と推測)、フィジカルセールス加算作品では下半期最高となる23354ポイントを記録しました。
2万3千を超えるポイントは、下半期初週における日向坂46「君しか勝たん」(20563ポイント)、前週の乃木坂46「ごめんねFingers crossed」(20472ポイント)を大きく上回るのみならず、今週フィジカルセールスを制したNMB48「シダレヤナギ」(8493ポイント)の2.7倍以上となっています。
当週における米津玄師「Pale Blue」とNMB48「シダレヤナギ」のCHART insightをみるとその差は歴然。チャート構成比においてポイント獲得源がバランス良い前者と、フィジカルセールス指標に偏る後者という状況が見て取れます。フィジカルセールス以外から如何にポイントを獲得するかがヒットの鍵となるのは以前から変わりませんが、下半期のチャートポリシー変更がその重要性をより際立たせています。
「シダレヤナギ」においてはダウンロードやラジオが100位未満ながら300位圏内となりポイントを獲得しているものの、ストリーミングや動画再生は300位にも満たずポイント加算に至れていません。上記ミュージックビデオは前週水曜0時公開ながら、ブログ執筆段階(6月24日5時時点)では再生回数が20万にも達していないのです。
一昨日放送の『うたコン』(NHK総合)にて、振り付けに特徴があると紹介された「シダレヤナギ」。ならばダンスプラクティス動画の需要も高いのではと思いつつ、前週末に公開された上記動画の再生回数は現時点で7万4千にとどまっています。
アイドル作品はフィジカルセールスのニーズが高くデジタルに強くないと言われますが、大事なのは工夫です。コアなファンを確保しつつ、ライト層を取り込みコアなファンに昇華できるかが重要であり、そのためには接触機会を如何に増やすかが重要となります。
特徴的なダンスを広めたいとするならば、ダンスプラクティス動画を前もって公開することが必要でしょう。そしてそもそもミュージックビデオの公開タイミングをフィジカルセールスと同時にしたところで、コアなファンはCDに同梱される映像盤でチェックする傾向が強いはずです。
ジャニーズ事務所所属歌手についてはフィジカルリリース後に動画再生指標がダウンすることから、ミュージックビデオ公開はライト層獲得につながっていないのではと昨年末に記しました。尤も動画が短尺版であるためとも言えますが、しかし今年以降の攻めの音楽性がライト層にも興味を持たれ、状況が変わりつつあると感じています。検証は必要ですが、リリースに先立った公開が効きはじめているかもしれません。
ジャニーズ事務所による動画施策は、ダウンロードやサブスクに未だ明るくない同芸能事務所におけるデジタルへの前向きな模索とも言えますが、その点においてAKBグループはデジタルに明るく、サブスクではフィジカル全形態のカップリング曲を網羅したスペシャルエディションとして配信しています。このような施策を行えるならば、他にも様々な工夫ができるはずです。
NMB48側はビルボードジャパンを気にしていることが、上記リツイートから解ります。フィジカルセールスがトップになった喜びを示す以上の意味合いはないのかもしれませんが、ここからその姿勢がみえてくると感じています。
フィジカルセールスを要としつつ、如何にそれにこだわらずにポイントを獲得するかが勝負の鍵であり、その方針転換はライト層獲得、そしてグループ活動を長続きさせるために必要と考えます。