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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

岩橋玄樹さん脱退後、King & Prince「シンデレラガール」再浮上するも100位以内復帰ならず…その理由を考える

最新4月7日公開(4月12日付)ビルボードジャパンソングスチャート、フィジカルセールス指標で目立った動きをみせたのがKing & Princeの初期作品群でした。

トップ10外ではあるが、2018年5月23日に発売されたKing & Princeのデビュー・シングル『シンデレラガール』と同年10月10日リリースの2ndシングル『Memorial』が、それぞれ前週比アップで、2,135枚、1,331枚を売り上げた。両作品に参加している岩橋玄樹は、2018年11月より活動休止していたが、3月31日をもってグループを脱退し、新しい道に進むことを発表している。

「シンデレラガール」はフィジカルセールス指標16位、「Memorial」は同28位へ浮上。最新4月7日公開ビルボードジャパンソングスチャートの集計期間は3月29日~4月4日であり、3月末日にメンバーの岩橋玄樹さんが脱退したことが大きなきっかけになっていることは間違いないでしょう。

しかしながら2曲とも、複合指標を合算した総合チャートで100位以内に復帰することはできませんでした。

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「シンデレラガール」は今週、ラジオが100位未満ながら300位以内に入りポイント加算対象に。大きな出来事があるとOA数が増えるのが同指標の特徴であり、岩橋玄樹さん脱退のインパクトを感じるに十分です。また同曲がカラオケでも加点されているのは、ドラマ主題歌としてヒットし2018年度ビルボードジャパンソングスチャートで12位を獲得した実績が大きく反映していると言えます。

それでも「シンデレラガール」の100位以内到達が叶わなかったのは、デジタル指標群の非充実が影響していることは間違いないでしょう。ミュージックビデオはあるもののショートバージョンであり、サムネイル画像からわかるように動画があくまでフィジカルの宣伝という位置付けであること(ミュージックビデオはフィジカルを購入して楽しんでほしいという意向が反映されていると捉えるに十分です)…これが接触の少なさにつながったものと考えます。そしてダウンロードやストリーミングは未解禁のため、そもそもポイントは加算されません。

 

一方、同じジャニーズ事務所所属歌手で対照的な動きを示したのが、昨年で活動を休止した嵐。年末年始を集計期間とする1月6日公開(1月11日付)ビルボードジャパンソングスチャートにおいて、3曲の再登場を含む4曲が総合100位以内に入り、「カイト」は36→15位と大きく上昇しました。当該週における「カイト」のチャート推移(CHART insight)は下記ブログエントリーにて掲載しましたが、あらためて紹介します。

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「カイト」はアルバム『This is 嵐』に収録されていることから、活動休止前後にフィジカルを手に入れたいと思った方がシングルではなくアルバムに向かった可能性もあります。それでもフィジカルセールス指標がアップし、そして何よりダウンロードやストリーミングといったデジタル関連指標が伸びているのです(一方で、ミュージックビデオ未解禁のために動画再生指標でポイントを獲得できていないのが実に勿体ないのですが)。デジタル2指標でポイント全体の4分の3を占めており、これがランクアップに一役買ったのは言うまでもありません。とはいえ以前のブログエントリーで示したように、フィジカルリリースのタイミングでデジタルもきちんと解禁していたならば、昨年度のビルボードジャパンソングスチャートにおける上位進出は間違いなかったと思うのですが。

 

嵐「カイト」が再浮上した1月6日公開(1月11日付)ビルボードジャパンソングスチャートを制したLiSA「炎」について昨日取り上げましたが、その際このようなことを記しました。

ポイント前週超えを果たした週で特に顕著なのが、1月6日公開(1月11日付)におけるダウンロードの前週比5割以上上昇。テレビ出演効果は所有行動、それも即座に手に入れやすいデジタルにより波及することが解ります。

「炎」は当該週においてフィジカルセールスも前週比11.0%アップしましたが、デジタルの伸びが圧倒的に高くなっています。メディアでの反響が所有指標においてはフィジカルよりもデジタルにより大きく表れることはここからも明らかです。

 

King & Princeから岩橋玄樹さんが脱退するという報道が流れた際、手元にあるフィジカルをCDプレイヤーで、もしくはそれを取り込んだiTunes等で聴いた方は少なくないでしょう。またテレビ映像を(違法アップロード分を含め)YouTube等でチェックした方も多いのではないでしょうか。

フィジカルセールスにおいては、コアなファンが岩橋さんの脱退を悲しみ功績を讃える意味で追加購入することもあったでしょうが、コアなファンではなくとも曲が気になっていた方等のいわゆるライト層による購入もまた多い気がします。しかしライト層ほど、CDショップに出向いたりネット注文する等時間をかけてフィジカルを手に入れるより、即座に手に入れたいという思いが強いでしょう。またコアなファンも、ストリーミングや動画再生がチャートを形成する要素だと知っていればそれらに積極的に触れ、「シンデレラガール」等岩橋さん在籍時代の作品をチャートで上昇させようと動いたのではないでしょうか。

 

デジタルを解禁しないことは、このような脱退等の事態が発生した際にその方を"思うゆえの所有や接触"につながりにくいという点において、その結果としてチャートを押し上げられない点においても、非常に勿体ないと思ってしまいます。