イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

優里「ドライフラワー」のYouTubeショートバージョン化は何のため? チャートへの悪影響の点でも強く疑問視する

はっきりいって、ショートバージョンは非常に残念です。

チャート分析家のあささん(Twitterこちら)が指摘していたのは、優里「ドライフラワー」のミュージックビデオ"短尺版化"の問題。自分は指摘されるまで知らなかったのですが、如実な再生回数の減少はメディア出演の増減以上に短尺版化に因るものであることは間違いないでしょう。加えて、再生回数を継承しつつショートバージョンにすり替わり、且つショートバージョンであることをタイトルで謳わないのは厳しい物言いを承知で書くならば卑怯であり、チェックした方に愕然とした思いを芽生えさせかねません。

 

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3月1日5時台の上記キャプチャ。尺の長さから動画がショートバージョンであることが判ります。そして気になるのは概要欄。

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ショートバージョンに関連したコメントの中に『後日新しい解釈のMVが出るみたいです。それまで楽しみにしときましょう!!!!』というものがありましたが、これはおそらくディレクターズカットver.を指すものと考えられます。しかし、ならば元のミュージックビデオを短尺版化せず新バージョンのリリースタイミングで差し替えるか、もしくは短尺版化しないオリジナルバージョンとディレクターズカット版とを2本用意すればいいだけの話でしょう。

 

今回の短尺版化の判断は優里さんサイドが下したものなのか、所属するソニーミュージックによるものかは解りかねますが、いずれにせよ強い不信感を抱かせるに十分です。

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どちらの判断かは難しいのですが、しかしあささんとやり取りされた方のツイートで判明した、「ドライフラワー」のみ短尺版化という状況(上記キャプチャ参照。「桜晴」は今後ミュージックビデオが登場するものと推測)からは、今最もヒットしている曲だからこそ何か仕掛けたいという思いが透けて見えます。その仕掛けのひとつがディレクターズカットバージョンの登場と言えるでしょうし、YouTubeからサブスクやダウンロード、もしくは来たるべきアルバムに接触先を(もしくは所有へと)移行させる意図があるのかもしれません。しかし短尺版化は、YouTube接触する方の信頼を著しく失墜させる行為だと思います。

 

個人的には、せっかくこの1年でソニーミュージックの意識が変わったにも関わらず元に戻ってしまったのか?と思っており、どちらかと言えばレコード会社の問題だと捉えています。また仮に今回の判断が優里さん側だったとしても、今のソニーミュージックならばその愚策と断言してよいこの件を止められたのではとも思うのです。ソニーミュージックの意識の変化について記載したブログエントリーは、下記ツイート内にリンクを掲載しています。

 

今回のミュージックビデオ短尺版化は、あささんが指摘されているように既にYouTube再生回数の大幅減という形で表れています。そしてこれは優里さんのビルボードジャパンソングスチャート初の首位獲得の可能性をも下げかねません。

優里「ドライフラワー」は最新3月1日付ビルボードジャパンソングスチャートで6週連続6週目の1万ポイント超えを達成し、順位も5→4→2→2→2→3位と推移。ポイント推移も最も低いときで前週比95.3%であり、極めて好調です。しかしその6週間は常にシングルCD初週セールスに強い歌手が入れ替わる形で「ドライフラワー」の首位獲得を阻止してきました(首位に立ったのは順にジャニーズWESTSnow Man乃木坂46SKE48関ジャニ∞SixTONES)。

次週(3月8日付)のソングスチャートはKis-My-Ft2Luv Bias」が「ドライフラワー」を阻むことが予想されますが、サブスク未解禁の「Luv Bias」がCDセールス加算2週目に大きくダウンすることもまた見込まれます。「ドライフラワー」が首位に立てるかの勝負どころはその翌週、3月15日付のソングスチャート。この週は強力なライバルが不在と言えるのです。

この週、最もシングルCDセールスを獲得しそうなのがBEYOOOOONDS「激辛LOVE」(3月3日発売)。「眼鏡の女の子」以来となるセカンドシングルですが、その「眼鏡の女の子」は初週94375枚を売り上げ2019年8月19日付ビルボードジャパンソングスチャートで9622ポイントを獲得。しかし総合チャートでは「眼鏡の女の子」より2万7千枚近くフィジカルセールスが少ない三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBE feat. アフロジャック「SCARLET」が307ポイント差を付けて逆転し首位の座に就いています(2019年8月19日付ビルボードジャパン総合チャートはこちら、フィジカルセールスチャートはこちら)。

BEYOOOOONDSにとって「激辛LOVE」は2作目のシングルであり(「眼鏡の女の子」同様にトリプルAサイドシングルの1曲目。ダブルやトリプルAサイドシングルの場合、フィジカルセールスおよびルックアップ指標は1曲のみに付帯されます)、1年半ぶりということで売上枚数が正直読めないのですが、しかし仮に前作並の1万ポイント獲得となれば優里「ドライフラワー」が優勢と言えます。しかし。

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翌週以降、ミュージックビデオの短尺版化で動画再生指標がダウンすることは間違いありません。最新3月1日付ビルボードジャパンソングスチャートでは「ドライフラワー」獲得ポイントの1割弱を動画再生指標が占めています(上記CHART insightのキャプチャ参照)。同指標のポイント減少だけならばまだ首位獲得の可能性は高いのかもしれませんが、短尺版化したことへの信頼度の低下が他指標にも波及する可能性はゼロではないでしょう。純粋に他指標へ遷移する回数が減るものと考えます。

 

あささんは『人気拡大の必須施策を一つ捨ててまで何を得たいのかが分かりません』と書いており、自分も完全に同意します(あささんのツイートはこちら)。優里「ドライフラワー」のYouTubeの動向に注視すると共に、優里さんサイド、そしてソニーミュージック側の動向も気にしていかないといけません。何より、"信頼失墜の可能性を考えてはいないのか? 信頼とは何だと思っているのか?"と尋ねたいところです。

 

 

追記として、こちらの問題にも私見を記載しておきます。

優里さんのYouTube動画のコメント欄には心無い言葉が目立ちます。"アイドルと恋愛"については、恋愛したらクビや左遷になる人権無視のシステムこそ問題ではないでしょうか。そしてそれを議論するに至れない(議論しようとしない)感情論が文字となって溢れる状況こそ、そもそもの問題解決に繋がらない理由でしょう。人権と書くと大袈裟かもしれませんが、長きに渡りそれに対して都合よく蓋をしてきたのは業界のみならず、無意識のままに/意識しながらもスルーしてきた市井の問題だとも思います。議論する場を設けることを強く望みます。