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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

乃木坂46「帰り道は遠回りしたくなる」が2連覇を逃した原因はレンタル解禁日設定の問題か

昨日発表された、最新12月3日付ビルボードジャパンソングスチャート。back number「オールドファッション」が制しました。

上位3曲が1万ポイント超えを達成、接戦の中でシングルCDセールス指標4位の「オールドファッション」が制覇。乃木坂46「帰り道は遠回りしたくなる」は2連覇を阻まれた形です。

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そして、各指標毎の成績はCHARTinsightで確認出来ます。

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「オールドファッション」はミュージックビデオが公開されていながらも動画再生指標ゼロというのが気になります。動画は今朝の段階で154万回以上再生され、しかも最新チャートにおいて動画再生指標の初動分が高く反映されることを見越してか、集計期間初日である11月19日月曜に解禁しているのですが。

その「オールドファッション」の各指標毎の構成はこちら。
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そして「帰り道は遠回りしたくなる」はこちら。

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 「帰り道は遠回りしたくなる」は全指標50位以内を記録。動画再生指標が42位と低いことを除けば他が全て20位以内でありながらも総合2位という結果に。back numberがストリーミング未解禁ゆえ「オールドファッション」がストリーミング指標を得られないという不利な状況ながら、今回そのback numberに乃木坂46が首位を奪われた原因…個人的にはルックアップが鍵だと考えています。

 

ルックアップはCDをパソコンにインポートする際、インターネットでCDデータベースに接触した回数のこと。CDを購入した人全てがパソコンに取り込むわけではないものの、たとえばCDをグッズ的な意味合い(目的)で購入しているファンが多い歌手の場合はシングルCD売上枚数に対するルックアップの比率が小さくなり、実際にCDを買った人(ユニークユーザー数)は少ないということがルックアップから見えてきます。そしてこのユニークユーザー数を推測するほか、ルックアップではCDがレンタルされた回数も推し量ることが出来ます。

 

今回、2つの曲のチャート構成比率の円グラフをみるに、ルックアップの割合は2曲ともほぼ同じと推察出来ます。仮に13%とした場合、12月3日付ソングスチャートの総合ポイント数から割り出すと「オールドファッション」が1508ポイント、「帰り道は遠回りしたくなる」は1393ポイント。2曲の総合での差は884ポイントであり、後者がルックアップだけでその差を埋めるのは一見難しいようにみえます。

しかし、この2曲には大きな違いが。それは、先述したCDレンタルにおいて、「オールドファッション」が発売当日である11月21日に解禁していたのに対し、「帰り道は遠回りしたくなる」が発売から17日後の12月1日に解禁を設定。これにより、後者はCDレンタルでのルックアップを加算出来ません。ルックアップが幾分上乗せ出来れば、両者の差は埋まるかあわよくば逆転もあったのではないか…特に乃木坂46の場合レンタル在庫が豊富に用意されていることを踏まえると、乃木坂46が2連覇を逃したのはレンタル解禁日設定にある気がして至極勿体無いと思うのです。

 

シングルCDレンタルについては、解禁設定に明確な設定がない模様です。仮に曲数で設定していたならば、10月24日にリリースされた嵐「君のうた」が4曲+全曲のインスト収録にもかかわらず発売同日に解禁されたわけですし、逆に昨年7月5日にリリースされたSuchmosの2曲入りEP『FIRST CHOICE LAST STANCE』が17日後にレンタル解禁となっている事態も発生していることから、曲数での設定は説得力を有しません。

で、このレンタル解禁日設定において最近面白い動きが。あいみょん「今夜このまま」が11月14日の発売にもかかわらずレンタル解禁が12月1日に設定されていることがそれで、実は前のシングル「マリーゴールド」が 8月8日リリース同日にレンタル解禁されていたこと、またこれはキャプチャしていないためれっきとした証拠にはなりませんが10月下旬の段階ではレンタル解禁が発売日と同日になっていたのを(目視したことを)踏まえるに、ドラマ主題歌等を踏まえ急遽解禁日を設定変更したものと考えます。つまりは、レコード会社や歌手側の意向によって直前でも変更出来るものと考えることが出来そうです。

このレンタル解禁日設定はある種、歌手毎にその傾向が分かれています。たとえばAKBグループは発売日と同日にレンタル解禁、他方乃木坂46欅坂46は17日後です。ジャニーズ事務所所属アイドルは発売日と同日でありK-Popの歌手も主に発売日と同日。星野源さんや米津玄師さん等は17日後…といった具合。これはシングルCDをレンタル解禁前により多く売るための戦略だったり、もしかしたらレンタル自体をよく思っていないことが背景にあるかもしれませんが、しかしながら今回の「帰り道は遠回りしたくなる」の敗因がこのレンタル解禁日設定にあるのであれば、レンタル解禁日を再考してみるのもいいかもしれません。また先述したあいみょん「今夜このまま」はシングルCDセールス2週目にして同指標が42位に後退していることを踏まえれば、シングルCDセールス指標に頼るのではなくレンタルに伴うルックアップも含めた総合指標の獲得を前面に打ち出し、この作品も(当初の予定通りに)発売日と同日にレンタル解禁していたならば総合チャートでより上位に進めた気がして、こちらも物凄く勿体無い気がします。というかそれ以前に、解禁日がバラバラであること自体、あまりにもユーザーにとってアンフレンドリーであるため、業界には統一してほしいと思うのですが。