イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

トップカルチャーによるレンタル事業撤退への理解と、業界全体のレンタル事業継続を願うべく様々な提案を記す

怖れていた事態が起きた、というのが率直な私見です。なおこのブログでは主に音楽の話題を取り上げていることから、CDをメインに記載します。 

カルチュア・コンビニエンス・クラブTSUTAYAチェーンにおいて、最大のフランチャイズ加盟会社として、1都9県で蔦屋書店・TSUTAYAを74店舗展開しているトップカルチャーは15日、2023年10月期を目処にレンタル事業からの撤退を発表。

(中略)

売上高は2013年10月期をピークに減少傾向で、レンタル事業比率も縮小傾向。2018年10期には、レンタルの仕入原価が大幅に上昇し、営業損失に。レンタル事業の売上は、10年前と比べると35.9%まで減少。「時代のニーズに合っていない店舗フォーマットで、レンタル事業の売上高減少が急速」、「急速な収益力の低下」が起こっているという。

サブスクが台頭したことも影響しているでしょうが、個人的には記事における『2018年10期には、レンタルの仕入原価が大幅に上昇』という点が気になります。時代のニーズに合っていないと言われればそれまでですが、仕入原価の面が大きく影響したならばそれを検証する必要はあるはずです。

 

それにしても今思えば、昨年末に指摘したCDのレンタル解禁曜日統一措置が、事業撤退の予兆だったのかもしれません。

 

 

チャート面からも、今回の措置に至る理由が見えてくるようです。

ビルボードジャパンソングスチャートの構成8指標のうち、レンタルが関わるのはルックアップ。CDをパソコン等インターネット接続機器にインポートする際、インターネットデータベースのGracenoteにアクセスされる数を示すこの指標から、レンタルニーズを推測することができます。なおこのルックアップは、CD売上枚数に対する実際の購入者数(ユニークユーザー数)も読み取る指標でもあります。

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最新7月14日公開(7月19日付)ビルボードジャパンソングスチャートにおけるルックアップ上位10曲は上記に(CHART insightでは無料会員は20位まで、有料会員は100位まで確認できます。CHART insightはこちら)。ルックアップ上位10曲のうち、総合ソングスチャートでも10位以内に登場するのは3曲にとどまっており、これはストリーミングやダウンロードの7曲、動画再生の6曲、ラジオの4曲と差が開いています。

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同日付ソングスチャートの総合10位までを上記に。ルックアップでも総合でもトップ10入りしたENHYPEN「Given-Taken」、米津玄師「Pale Blue」そしてYOASOBI「怪物」以外の7曲はすべてシングルでのCDリリースがなく、これだけをみてもフィジカルセールス自体が時代と乖離しているだろうことが解ります。なお、フィジカルセールス指標でトップ10入りした曲の総合10位以内登場はENHYPENのみです。

 

売上の減少は他の店舗や、TSUTAYAのみならずGEOでも起こっていると予想され、レンタル仕入原価の大幅な上昇に因る圧迫も相俟って、今後さらなるレンタル事業撤退の動きが登場することは自然なことでしょう。そして最終的には、ビルボードジャパンにおけるルックアップ指標が弱体化し、レンタルでの接触が測れなくなってきたとして同指標が除去される可能性もゼロではないと思われます。

 

 

とはいえ、レンタルニーズは決してなくなったわけではありません。ゆえに、私見と前置きした上で希望を掲載します。

またレコード会社は今回の判断を踏まえ、レンタル事業者との協議を願います。レンタルの仕入原価が大幅に上昇したことが利益の圧迫を生んだのならば、その検証は必要です(ただしすべてレコード会社に因るものとは限りませんが)。

直近のシングルCDにおいては坂道グループやジャニーズWEST星野源さんや米津玄師さん等がレンタル解禁日の遅らせ措置 (発売の17日後解禁)を採っています。そのようなレンタル解禁日の非統一がレンタルの魅力を削いた可能性も考えられることから、レンタル解禁日を発売週の土曜に統一化させることを願います。

さらには、このような動きもあります。レンタルニーズの掘り起こしに一役買うかもしれません。

 

これら以外にも、できることは色々あるはずです。何もせず最悪の状況を迎えるよりも、レンタル事業者はできることをやってみてから判断することを望みます。またレコード会社にとっても、ルックアップ指標が弱体化しビルボードジャパンソングスチャートで強さを発揮できなくなることに、少なからず危機感を抱いているはずです。レンタル事業者と一度話し合いのテーブルを設けてほしいと思います。