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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

米津玄師サブスク解禁、Official髭男dism"ヒゲダンフェス"の影響が総合ポイントの底上げに…8月24日付ビルボードジャパンソングスチャートをチェック

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点を紹介します。

8月10~16日を集計期間とする8月24日付ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)は、Twenty★Twenty「smile」がシングルCDセールス初加算に伴い、前週の100位圏外からトップに躍り出ました。

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ジャニーズ事務所所属歌手の作品では珍しく、シングルCDセールスに先駆けてダウンロードおよびサブスクが解禁され、7月6日付で5位を記録。この曲がシングルCDセールス初加算に伴い首位に立ちましたが、次週の急落は免れないのではと考えます。ひとつはチャート構成比においてシングルCDセールス指標がおよそ8割と高いこと。そしてもうひとつは接触指標群が加点されていないこと。サブスクは解禁されているものの、この再生回数に基づくストリーミング指標は今週300位に満たず加点対象外に。またミュージックビデオはショートバージョンも上がっていないため、動画再生指標もゼロとなっています。デジタル先行で後日CDリリースというケースがこれまでジャニーズ事務所所属歌手にはなかったため他の作品と比べることができませんが、シングルCDセールス初加算週のチャート構成が所有指標一辺倒になっているのは予想外でした。最近のジャニーズ事務所所属歌手の作品の中ではラジオエアプレイ指標が46位と低いこともあり、次週の動向が気掛かりです。

 

さて、今週は米津玄師さん、そしてOfficial髭男dismの活躍が目立ちます。米津玄師さんは『STRAY SHEEP』が今週もアルバムチャートを制し、且つチャート構成3指標すべてで1位を獲得。2週連続の完全制覇を達成しました。

CDセールスは2週目でミリオンを達成、そして『ルックアップも2位に5倍以上の差をつけて』います(『』内は上記記事より)。そのルックアップで2位、総合でも2位に浮上したのがOfficial髭男dism『Traveler』。

総合2位には、Official髭男dismの『Traveler』が前週総合5位から上昇してチャートイン。これは、8月10日に放送された『CDTVライブ!ライブ!4時間スペシャル』内で1時間に及ぶ「ヒゲダンフェス」が行われたことが影響していると考えられ、CD・ダウンロード・ルックアップすべての指標でポイントが上昇した。CDセールスは14週ぶりの2位、ダウンロードは14週ぶりのトップ3入りとなった。ちなみに、『エスカパレード』も前週総合32位から13位に、前週の2倍以上のポイントを獲得して大きく上昇している。

【ビルボード】米津玄師『STRAY SHEEP』が2週連続の総合アルバム首位 ヒゲダン/MY FIRST STORYが続く | Daily News | Billboard JAPAN(8月19日付)より

CDTVライブ!ライブ!』で行われた”ヒゲダンフェス”の影響は、アルバムのみならずソングスチャートにも反映されています。

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"ヒゲダンフェス"で披露した曲のうちソングスチャート50位以内に入った6曲、および前週と今週共に50位以内に入った「宿命」「イエスタデイ」の動向をまとめたものが上記。参考として記載したCD売上は、2週続けてシングルCDセールスチャートで50位以内に入った「HELLO」および「I LOVE...」のみ記載しています。

これをみると「HELLO」以外はすべてポイントが上昇。一方で「HELLO」はポイント前週比が77.0%とダウンしているものの、シングルCDセールス加算2週目における加算初週からの反動に伴うものであり、シングルCDセールスが前週の4分の1未満となりながらポイントの落ち込みが2割強にとどまっているのは他指標の上昇によるものであり、明らかに"ヒゲダンフェス"の影響と言えます。アイドル曲等はシングルCDセールス加算2週目におけるポイント前週比が高くても2割強(言い換えれば7割以上ダウン)であり、如何にCDセールス以外の指標を押さえることが重要だと解ります。しかもほぼすべての曲でストリーミングおよび動画再生指標という接触2指標が上昇し、全曲2指標50位以内となっていることを踏まえれば、チャートを押し上げるのに効果的且つメディア露出が反映されやすいのはこれら接触指標群と言えるでしょう。

 

順番は前後しましたが、米津玄師さんもソングスチャートで引き続き大きな影響を及ぼしています。今週もソングスチャートには20曲がランクイン、ストリーミングソングスチャートでは21曲が登場と、アルバムチャートのみならずソングスチャートでも強さを発揮していますが、これは間違いなく8月5日のサブスク解禁に因るもの。解禁週の動向は8月17日付ビルボードジャパンソングスチャート等に反映されていますが、今週はストリーミング指標が初めて1週間フルでカウント対象に。その結果。

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ポイントが判明している50位までに2週続けて入った曲の動向をみると、前週はサブスク解禁効果で勢いが凄まじかったためか今週若干の反動はあるものの、ポイントを最も大きく落とした「カムパネルラ」でもその下落率は3割弱であり、「感電」はほぼ変わらず、そして「馬と鹿」に至ってはポイントが増加に転じています。

 

米津玄師さんが好調をキープし、Official髭男dismが”ヒゲダンフェス”で浮上したことは、今週もこの2点に大きく寄与しました。

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ストリーミング指標、10位の再生回数は2週続けて最高を更新。それも前週から20万近く伸ばしています。そして。

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ソングスチャート50位のポイントも2週続けて最高を更新。前週から5ポイント増加しているのです。

 

この2つのグラフについては前週も取り上げており、同じ点を再度強調することとなりましたが、前週のエントリーで書いたことが当たっているという実感をより強く抱いた次第です。前週のブログエントリー、および下記『』内の引用元はこちら。

『今後は"総合50位=2000ポイント"が基準になっていく』『シングルCDセールス主体にポイントを獲得する曲の首位獲得は難しくなり、且つ全体のポイントが上昇したならばロングヒットの点においても厳しくなる』ことで、『そもそもデジタルに明るくなかったり、また新譜のみサブスク未解禁という手法を用いる歌手』は即座に対策を立て(直さ)ないといけないのでは、と強く感じています。

今月リリースされた良質なリミックス3選、そしてあらためて日本市場のリミックス文化拡大を願う

毎月【私的トップ10ソングス+α】なる企画を行い、1ヶ月間にリリースされた作品の中で特に好きなものを洋楽邦楽問わず取り上げています。今月も良作が多く選出や順位付けで既に迷っているのですが、そんな今月はいつも以上に良質なリミックスが多くリリースされている気がします。

 

3月末にリリースされたデュア・リパ『Future Nostalgia』は1980年代感をブラッシュアップした(いや、時にはそのいなたさをそのまま表現した)セカンドアルバムで、本国イギリスで初の1位、アメリカで4位をマークしたほか、先行曲の「Don't Start Now」は米ビルボードソングスチャートで自己最高の2位に達し、「Break My Heart」は最新8月22日付米チャートで13位まで上昇しています。そんな中、デュア・リパはアルバム収録曲「Levitating」のリミックス版を今月リリース。しかもあのマドンナそしてミッシー・エリオットを客演に迎えています。

「Levitating」のリミックスバージョンは、8月28日にリリースされるリミックスアルバム『Club Future Nostalgia: The Remix Album』からの先行曲で、他にも「Physical」ではマーク・ロンソンがリミックスを手掛け、しかもグウェン・ステファニーが参加というのですから面白いことになりそうです。

チャートアクション的には「Break My Heart」のリミックスを出すことでオリジナルバージョンとリミックスのポイントを合算させ、米ビルボードソングスチャートでトップ10入りを狙うのがベストではと思いつつ、マドンナとミッシー・エリオットを招いたというトピックはリミックスアルバムの存在を示すには最適。両者は以前も1980年代感溢れるコラボレーションを果たしており、これがデュア・リパが招くに至った要因でしょう。

なお今回の『Club Future Nostalgia: The Remix Album』をデュア・リパと共に手掛けたのはDJでプロデューサーのザ・ブレスド・マドンナ(The Blessed Madonna)。マドンナつながりです。

 

オリジナルアルバムのリミックスといえばベックも。昨年リリースした『Hyperspace』の2020年版が先週リリースされています。

1月にリリースされていた「Uneventful Days」のセイント・ヴィンセントによるリミックスや、4曲の2020年バージョンが収録。一方で7月に配信を開始した「No Distraction」のリミックスはクルアンビンが担当。オリジナルバージョンが2017年のアルバム『Colors』に収められているためか今回の『Hyperspace』2020年版には含まれていませんが、こちらも素晴らしいので是非。

 

そして今月の私的ベスト級となっているのが、リアン・ラ・ハヴァス「Please Don't Make Me Cry」。先月リリースされたサードアルバムにしてセルフタイトル作に収録されていた曲で、オリジナルバージョンは先月の私的トップ10で7位に選出。

この曲をリミックスしたのがジョーダン・ラカイ。日本で人気のトム・ミッシュとの流れで紹介されることも多く、ジョーダンについては音楽ジャーナリストの高橋芳朗さんもラジオ番組で勧めています

全体を支配する浮遊感、サビに入った瞬間のコードの展開にセンスを感じます。「Please Don't Make Me Cry」のオリジナルバージョンを含むアルバム『Lianne La Havas』は批評家やユーザーレビューをまとめたサイト、Album of The Yearで高評価を得ていますので是非聴いてみてください。

 

 

海外ではリミックス版のリリースが多く、米ビルボードソングスチャートではオリジナルバージョンと合算されチャート浮上のきっかけとなることから戦略としても有効に作用しますが、たとえば自分が毎回チェックするSpotifyの新曲プレイリスト”New Music Friday”に今回の3曲がすべて登場しているのが興味深いところ。現段階で367万ものユーザーが支持しているこのプレイリストに載ることで、リミックス版が新曲の一形態として定番化していると言ってもいいでしょう。

日本でもこのリミックス文化が広まることを願うばかりです。下記ブログでも書きましたが、願う理由は【リミックスや客演文化の醸成】【海外作品の日本市場での流通拡大】【チャートの仕掛けや戦略の活性化】【新鋭歌手の認知度向上】【ヒップホップの人気拡大】【リミキサーの育成】【クラブカルチャーの復興】等、様々な効果が期待できるため。チャートポリシーの変更や音楽業界の意識変革を伴いますが、是非ともお願いしたいところです。

カーディ・B feat. メーガン・ザ・スタリオン「WAP」が圧倒的な強さで首位初登場…8月22日付米ビルボードソングスチャートをチェック

ビルボードのソングスチャートをチェック。現地時間の8月17日月曜に発表された8月22日付最新ソングスチャート。前週首位を獲得したハリー・スタイルズ「Watermelon Sugar」は5位に後退、カーディ・B feat. メーガン・ザ・スタリオン「WAP」が初登場で首位を獲得しました。

(※これまで弊ブログではMegan Thee Stallionをミーガン・ジー・スタリオンと表記していましたが、発音を踏まえ今後はメーガン・ザ・スタリオンと表記することにします。)

 

今回は「WAP」の首位登場のみで別途記事が用意されるくらい、その勢いは圧倒的です。

「WAP」以外のトップ10についてはこちらに。

2位をキープしたダベイビー feat. ロディ・リッチ「Rockstar」はストリーミングが前週比4%ダウンの2900万(同指標2位)、ダウンロードが同6%アップの10000(同指標6位)、ラジオエアプレイが前週とほぼ変わらず7080万(同指標3位)となりましたが、カーディ・B feat. メーガン・ザ・スタリオン「WAP」はストリーミングが9300万、ダウンロードが125000と圧倒的な強さで2指標を制覇、ラジオエアプレイも1160万で同指標50位に届かなかったものの初登場曲では高い数字となっています。

ダウンロードについては今作でもフィジカル施策が採られており、カーディ・Bのホームページにて12種類、サイン入りのフィジカルが用意。125000という数値は、昨年5月11日付におけるテイラー・スウィフト feat. ブレンドン・ユーリー「Me!」の193000以来となる高水準で、今年最高となりました。

またストリーミングの9300万においても、ロディ・リッチ「The Box」が1月25日付でマークした7720万を破り今年最高、リリース初週における数値でもアリアナ・グランデ「7 Rings」が2019年2月2日付で記録した8530万を上回り記録更新。女性歌手によるストリーミング記録ではそのアリアナが「Thank U, Next」で達成した9380万(2018年12月15日付、ミュージックビデオが初加算された週)に次ぐ歴代2位、全歌手では歴代18位の高さとなっています(なお首位はリル・ナズ・X feat. ビリー・レイ・サイラス「Old Town Road」が2019年4月20日付で記録した1億4300万)。

(このストリーミングの数値は、今年1月18日付以降にYouTubeに関するUGC(ユーザー生成コンテンツ)の扱いが変更されて以来最高となっています。チャートポリシー変更については【米ビルボード・ソング・チャート】ロディ・リッチ、ジャスティン・ビーバーを抑え自身初の首位に | Daily News | Billboard JAPAN(1月14日付)をご参照ください。)

カーディ・Bにとっては「Bodak Yellow (Money Moves)」(2017)、バッド・バニー&J・バルヴィンとの「I Like It」(2018)、マルーン5に客演参加した「Girls Like You」(2018)に次ぐ4曲目、メーガン・ザ・スタリオンにとってはビヨンセを招いた「Savage」(2020)に次ぐ2曲目の首位獲得となりました。初登場での首位獲得は今回が42曲目、今年だけで7曲となり、初登場首位獲得曲数の記録を更新しています(なお2位は2018年および1995年の4曲)。

女性だけの複数アクトによる首位獲得は、バーバラ・ストライサンド&ドナ・サマー「No More Tears (Enough Is Enough)」(1979)にはじまり今回が9曲目。レディー・ガガアリアナ・グランデ「Rain On Me」(6月6日付)以来となり、今年だけで4曲目となりました。

 

カーディ・B feat. メーガン・ザ・スタリオン「WAP」の大記録もさることながら、こちらも新記録を樹立。

ザ・ウィークエンド「Blinding Lights」は前週から1ランクアップし3位を獲得。そしてこの曲は19週連続且つ通算19週目のラジオエアプレイ制覇となり、ラジオエアプレイソングスチャートがはじまった1990年12月以降、グー・グー・ドールズ「Iris」(1998)の18週を抜き、単独最長首位記録を達成しました。しかもラジオエアプレイ指標は前週比1%アップの8050万となり8千万台を回復したことで、今後この記録がどこまで伸びるかに注目です。

 

そのザ・ウィークエンドが参加したジュース・ワールド「Smile」が8位に初登場。

ストリーミングは2400万を獲得し同指標4位、ダウンロードは8000で同指標10位発進。昨年亡くなったジュース・ワールドの遺作アルバム『Legends Never Die』が7月25日付米ビルボードアルバムチャートを初登場で制し、ソングスチャートにも複数エントリーを果たしましたが、ジュース・ワールドは今回の「Smile」で今年7曲目(生前も含め9曲目)のトップ10入りを達成。ザ・ウィークエンドは11曲目のトップ10入りとなりました。

 

10位にはルイス・キャパルディ「Before You Go」が前週から1ランクアップし初のトップ10入り。

ラジオエアプレイは前週比6%アップの6260万(同指標7位)、ダウンロードは同1%ダウンの5000(同指標18位)、ストリーミングは同2%ダウンの870万(同指標48位)。昨年通算3週首位を獲得した「Someone You Loved」以来となるトップ10入りを果たしました。

 

最新のトップ10はこちら。

[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (初登場) カーディ・B feat. メーガン・ザ・スタリオン「WAP」

2位 (2位) ダベイビー feat. ロディ・リッチ「Rockstar」

3位 (4位) ザ・ウィークエンド「Blinding Lights」

4位 (3位) ジャック・ハーロウ feat. ダベイビー、トリー・レーンズ & リル・ウェイン「Whats Poppin」

5位 (1位) ハリー・スタイルズ「Watermelon Sugar」

6位 (5位) セイント・ジョン「Roses」

7位 (7位) ジョーシュ・シックスエイトファイヴ × ジェイソン・デルーロ「Savage Love (Laxed - Siren Beat)」

8位 (初登場) ジュース・ワールド&ザ・ウィークエンド「Smile」

9位 (9位) クリス・ブラウン&ヤング・サグ「Go Crazy」

10位 (11位) ルイス・キャパルディ「Before You Go」

前週6位初登場のビリー・アイリッシュ「My Future」、2週前に首位に初登場を果たしたテイラー・スウィフト「Cardigan」が早くもトップ10陥落。そして前週新たな動画を解禁、フィジカル施策を実施且つ集計期間中の”スイカの日”効果で自身初の首位を獲得したハリー・スタイルズ「Watermelon Sugar」は5位に転落。ラジオエアプレイは前週比1%アップの7300万(同指標2位)、ストリーミングは同2%アップの1440万(同指標14位)となった一方、ダウンロードは前週比85%ダウンの10000でこの指標8位という結果に。「Cardigan」とは異なりある程度ヒットしたタイミングでフィジカル施策を打った「Watermelon Sugar」ですが、フィジカル施策の反動はやはり大きいと言えます。

『関ジャム完全燃SHOW』で紹介された藤井風のアルバム『HELP EVER HURT NEVER』はチャート再浮上なるか? 行うべき施策を考えると共に、既存メディアへのお願いを記す

昨日の『関ジャム完全燃SHOW』(テレビ朝日 日曜23時)、これまでにない特集が組まれました。

放送にあわせて、自分がこれまで弊ブログで取り上げてきたチャートアクション等を、実況的な形で紹介してきましたのでよろしければTwitterを御覧ください。

 

 

今回このブログで取り上げるのは藤井風さん。ヒャダインさんが"ここ数十年の中で一番天才"と評しており、放送後には藤井風さんがトレンド入りを果たしています。その流れで、アルバム『HELP EVER HURT NEVER』が再浮上を果たすか、注目したいと思っています。

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5月リリースのファーストフルアルバム『HELP EVER HURT NEVER』はCDセールス、ダウンロードおよびルックアップの3指標から成るビルボードジャパンアルバムチャートを初登場で制覇。その後緩やかに降下しながらも、登場12週目となる最新8月17日付では41位となっており、好位置にとどまっていると言えます。『関ジャム完全燃SHOW』の放送終了時である8月17日月曜からの1週間が8月31日付チャート(8月26日発表分)に反映されるため、この週の動向をチェックし番組の反響を確かめる必要があります。また内容的に非常に素晴らしいため上がってほしいという個人的な思いもあります。

 

さてこの『HELP EVER HURT NEVER』、ロングヒットの可能性を以前示唆しました。

ただひとつ気になる点が。それは先述したチャートを構成する3指標の構成比。ロングヒット中の作品と比較すると。

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最新8月17日付ビルボードジャパンアルバムチャートでトップ20入りした作品のうち、『HELP EVER HURT NEVER』を上回る13週在籍している4作品のチャート構成比に注目(ビルボードジャパンのCHART insightにおいて、チャート構成比は直近のものが表示されます)。米津玄師『BOOTLEG』はニューアルバム『STRAY SHEEP』初登場週に伴い所有指標を中心に伸びたため他とは大きく異なりますが、他3作品はポイント全体におけるルックアップが4分の1を超えています。ルックアップとはパソコンにCDを取り込んだ際にインターネットデータベースへアクセスされる数であり、CDセールスに対する実際の購入者数(ユニークユーザー数)のほか、レンタルの利用者数を推測可能。つまり、『HELP EVER HURT NEVER』はレンタルの回数が他作品に比べてそこまで伸びていないだろうと予想できるのです。ならばこの状況を打破することが、藤井風さんのアルバムの再浮上、そしてさらなるブレイクにつながるものと考えます。

 

具体的には、今回の『関ジャム完全燃SHOW』で取り上げられたことを機にレンタルショップが面陳列やポップ等で見つけやすい場所に置くことが必要です。ただしそのような独自展開をする店は減ってきている印象ですので、もっと単純に言えば面陳列できるくらいの在庫の用意が必要でしょう。藤井風さんは9月4日、アルバムの最後を飾る「帰ろう」のミュージックビデオを公開する予定となっており、アルバムの訴求を長期に渡り行っています。であれば尚の事、それに呼応した売場展開が求められるところです。

さらなるブレイクにつながるにはメディアへの露出も必要かもしれません。とりわけ地上波テレビ番組については、視聴率は高くないとしてもバズを起こしやすいという性質があります。今回ヒャダインさんが取り上げたことでいわゆる”見つかった”状態になったのですから、出演への(特に、テレビ番組側が打診するという意味での)ハードルは低くなったと思われます。今のコロナ禍の状況を踏まえれば難しいかもしれませんし、何より本人が出演を希望するかは不明ですが、テレビ出演は大きなステップアップとなるはずで、それがレンタル増にもつながり相乗効果をもたらすでしょう。

勿論、購入していただくほうがいいに越したことはないのですが、サブスク利用率はそこまで高くありません(し、中には抵抗を抱く方もいらっしゃると聞きます)。ならば既存の媒体で接触してもらうことは必要です。そこからコアなファンに昇華し、購入につながることはあるはずです。

 

 

最後に、これはテレビやラジオといった既存メディアへのお願いを記すならば。

 

ビルボードジャパンソングスチャートを追いかける身として、所有と接触指標で構成されるこのチャートが時代に即しブラッシュアップ(チャートポリシーを改正)し続けたことで、どんどん社会的なヒットの鑑となっています。昨年の『NHK紅白歌合戦』においてはCDセールス以上にダウンロードやサブスクでの人気に長けた(そしてその勢いがCDセールスにも反映されていった)、Official髭男dismやKing Gnu菅田将暉さんやLiSAさんが出演していましたが、CDセールスが高くないからといって彼らの出演に異議を唱えた方はほぼ皆無だったはずです。

今年に入り、コロナ禍による自粛の影響で尚の事TikTokに注目が集まりましたが、しかしTikTokがヒットの源泉となる傾向は昨年のリル・ナズ・X feat. ビリー・レイ・サイラス「Old Town Road」を中心に海外では既にみられていたもので、日本でようやくとも言えるでしょう。となると、TikTokの流行を先取りしたサブスクチャート(ビルボードジャパンソングスチャートにおいてはストリーミング指標として反映される)を”知らないから紹介しない”というのは古いと思うのです。昨日の番組冒頭でロバート秋山竜次さんがLINE MUSICの月間チャートを”闇のランキング”と形容していたのは、その後様々なことが明らかになるにつれて得られる気付きをより増幅させるための前フリだったのかもしれませんが、さすがに”闇”という形容は曲や歌手、そしてその作品を好んでいた方に失礼ではないでしょうか。

 

ようやくサブスクチャートの特性等が地上波テレビで大きく取り上げられるようになりました。複合指標から成るビルボードジャパンソングスチャートでこのサブスクが大きな影響力を持つようになったわけで、ならば知名度は高くないものの曲は認知されているという方々を積極的にフックアップすることこそ既存メディアの役割であり、矜持なのではないかと思うのです。

ジャニーズ事務所所属歌手のシングル曲における"完全なデジタル解禁"が未だにゼロである理由を考える

8月12日水曜、ジャニーズ事務所所属歌手15組75名が参加したユニット、Twenty★Twentyによるシングル「smile」がCDリリースされました。この曲は6月22日にダウンロードおよびサブスクで先行解禁され、年内限定でデジタルリリースとなっています。

 

ジャニーズ事務所所属歌手では嵐、堂本剛さんさんの各種プロジェクトがサブスクを解禁していますが、同事務所所属歌手のシングルCDリリース曲で"完全なデジタル解禁"を成し遂げた曲は未だありません。"完全なデジタル解禁"とはシングルCDがリリースされるまでにダウンロード、サブスクおよびYouTubeにてフルバージョンのミュージックビデオが解禁されることを指します。米津玄師さんが提供し、昨年の『NHK紅白歌合戦』で初披露された嵐「カイト」が7月29日にCDリリースされるタイミングで、この曲がジャニーズ事務所所属歌手初の"完全なデジタル解禁"となるのではと考え、以前エントリーを記載しました。

しかし蓋を開けると、嵐「カイト」は"完全なデジタル解禁"とは真逆の状況。そして今月CDリリースされたTwenty★Twenty「smile」も、現段階でミュージックビデオが解禁されておらず、短尺版も出ていません。

 

7月10日付ブログエントリーを活用した表を元に、現段階での解禁状況をまとめてみました。

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嵐においては「Turning Up」「IN THE SUMMER」といったデジタル(オンリーの)シングルを用意しており、これは今のCDをリリースしない風潮に合致します。昨秋「BRAVE」までのシングル曲がデジタル解禁されたことで、ならば「カイト」も…という期待はあったはずです。未解禁の理由について、当初はシングルCDをミリオンにする目的かと捉えていましたが(嵐「カイト」、CDリリース日ながらデジタル未配信の理由を考える(7月29日付)参照)、もしかしたら「Turning Up」「IN THE SUMMER」等のデジタル解禁が異例であり、「カイト」のデジタル未解禁手法こそジャニーズ事務所側にとってのデフォルトなのではないかと捉えるに至っています。

7月29日付ブログエントリーでもその傾向を紹介しましたが、嵐の公式Twitterにおける楽曲の言及回数は現時点までに「IN THE SUMMER」が14回(その他引用リツイート多数)なのに対し「カイト」が2回のみというのはあまりにも差がありすぎます。「smile」については3回であり「カイト」のほうが少ないというのも気掛かりです。仮に、音楽面のみならずSNS等デジタル全般についてジャニーズ事務所側がその採り入れを望まず、従来どおりのデジタル未解禁手法を採る曲はそのSNSでほぼつぶやけないという制約を設けているとしたら…無論これは考えすぎではあるものの、しかしあり得ない話ではないのかもしれません。「カイト」を曲提供した米津玄師さんが、嵐のシングルCDリリース前後に「カイト」について一切つぶやいていないのもまた不自然だと思うのです。

 

 

嵐「カイト」は翌週リリースの米津玄師さんのアルバム『STRAY SHEEP』および米津さんのサブスク解禁効果もあり、ビルボードジャパンソングスチャートにおけるシングルCDセールス加算2週目のポイント前週比が2割を超えています。ここ数作に比べても高い前週比ではあるものの、仮に「カイト」がデジタル解禁されていたならばポイント前週比はこの比ではなかったのではないかと思うのです。

その意味でも、またNHKの動画がおそらくはISRC(国際標準レコーディングコード)を付帯していないゆえに動画再生指標を加算できないこと(MISIA「好いとっと」ミュージックビデオのYouTube掲載先に安堵する理由…Foorin「パプリカ」や嵐「カイト」の動画再生指標が加算されない問題に関連しているのです(8月9日付)参照)も含め、デジタルに明るくない「カイト」はチャートアクションにおいて、そしてデジタルに明るくないゆえライト層に届きにくい点でも、機会損失が大きいのではないかと考えてしまうのです。

LINE MUSICの再生回数上位対象プレゼントキャンペーン実施曲が今月10曲以上登場…中長期的な視点でこの施策を考えたい

ここ最近のブログエントリーでは米津玄師さんのニューアルバム『STRAY SHEEP』およびリリース同日のサブスク解禁について幾度となく行っていますが、今週早くも『STRAY SHEEP』はCDセールスがミリオンを突破したことを踏まえれば、やはり注目しないわけにはいかないのです。

首位で初登場を果たした8月17日付ビルボードジャパンアルバムチャートではCDとダウンロードセールスでミリオン直前の状況でした。アルバム単位でのダウンロード1回がCDセールス1枚に比べてウェイトが大きいことについてはビルボードジャパンアルバムチャートにおけるデジタルの考え方について、最新チャートから推測してみる(2019年10月12日付)で説明しています。強引な考えかもしれませんが、初週におけるダウンロード数をCDセールスに換算すればミリオン突破と言えたのではないかと思うのです。兎に角、『STRAY SHEEP』がどこまで売上を伸ばすか楽しみであり、オリジナルアルバムでのミリオン獲得は尚の事素晴らしいと思います。

 

 

さて、米津玄師さんのサブスク解禁が8月17日付ビルボードジャパンソングスチャートに大きく反映されていることはここ数日のブログエントリーで触れた通りです。

8月3~9日を集計期間とする8月17日付ビルボードジャパンストリーミングソングスチャートで米津玄師さんはトップ10内に5曲を送り込んでいますが、同チャート(およびストリーミング指標)の元となる各サブスクサービスではこのチャートに差がみられます。とりわけLINE MUSICにおいては、その内容が大きく異なってくるのです。他サービスとの差は、5月等に比べて際立ってきています。

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8月5日からの1週間を集計期間とするLINE MUSIC週間チャートでは米津玄師さんが6曲トップ10に送り込んでいる一方、SUPER★DRAGON「SAMURAI」の2位を筆頭に、TOMORROW X TOGETHER「Drama (Japanese Ver.)」が4位、TREASURE「BOY (KR Ver.)」が5位にランクイン。これらはLINE MUSIC独自の特徴、すなわち”沢山聴いた方が当選もしくはその条件に該当する”再生回数上位対象プレゼントキャンペーン実施曲に該当します。このLINE MUSICのキャンペーンについての内容および私見は前週記載したのですが、先述の3曲はキャンペーンの成果により上位進出できたと言えるでしょう。

 

そしてLINE MUSICではこの3曲を皮切りに、今月に入り様々な楽曲でこのキャンペーンが行われ始めています。一部楽曲はRakuten Musicでも同種のキャンペーンが組まれていますが、SpotifyApple Music等で再生回数上位対象プレゼントキャンペーンは行われていません。

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上記表に記載された楽曲はすべて、LINE MUSICのリアルタイム等チャートで上位進出を果たしています。なお、豆柴の大群「サマバリ」は今日の段階で聴き始めても、期間中に9600回に到達することはできません(さらに到達したとしても当選するとは限りません)。8月5日からの1週間を集計期間とするLINE MUSIC週間チャートにおいてはその「サマバリ」は57位に入り、他にもBALLISTIK BOYZ from EXILE TRIBE「SUMMER HYPE」は27位、Da-iCE「DREAMIN' ON」は43位、スカイピース「青青ソラシドリーム」は59位につけています。なお「青春ソラシドリーム」についてはアルバム収録分が対象という指定があります。

その一方で、先程の8月17日付ビルボードジャパンストリーミングソングスチャートにこれら楽曲はどれくらい入っているのでしょう。集計期間の9日までにリリースされた4曲(「SAMURAI」「Drama (Japanese Ver.)」「BOY (KR Ver.)」「サマバリ」)のうちランクインしたのは「SAMURAI」のみ、それも74位という順位にとどまっています。そしてダウンロード等も含め複合指標から成る同日付のソングスチャート(Hot 100)では「BOY (KR Ver.)」が89位に入った以外、ランクインしていませんでした。

 

 

LINE MUSICのチャートの独自性については、SpotifyおよびApple Musicと比較して以前述べています。今年に入ってから動画を機にヒットする曲が増えていますが、そのきっかけのひとつである『TikTokの流行等をとりわけ敏感に取り込み』、『若年層を中心にさらなる広がりをみせる可能性は高く』、歌手側にとって『ブレイクのチャンスはどんどん広がっているのではないか』…これら『』内は下記ブログエントリーに記載したものですが、これを記した5月半ばの順位では、今回取り上げた再生回数上位対象プレゼントキャンペーンによる上昇曲はほぼなかったか、あったとしてもそこまで目立ってはいませんでした。これは7月の観測においても同様です。

それが、8月に入りチャートの状況が一変しています。

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20位まではこちら。

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8月14日付デイリーチャートではYOASOBI「夜に駆ける」や米津玄師「感電」を、再生回数上位対象プレゼントキャンペーン実施曲であるBALLISTIK BOYZ from EXILE TRIBE「SUMMER HYPE」が上回っています。しかしながら「SUMMER HYPE」を例に挙げると、日本のSpotifyでは同曲がリリースされた8月10日から現段階で確認できる13日までのデイリーチャート200位以内に入っておらず、また『純粋にファンが聴いて共感共有した音楽のデータを示す指標』であるSpotifyバイラルチャートにおいても13日までに一度も50位以内に入っていません(『』内はSpotify、新しいバイラルチャートを発表。「売上枚数」ではなく聴き方に最適化した指標を訴求 | All Digital Music(2014年7月26日付)より)。LINE MUSICで爆発的人気となっているならばそれがSNS等で話題となり他サービスに波及してもおかしくないと思うのです。そして、LINE MUSICやSpotify等複数のサブスクサービスを合計したビルボードジャパンのストリーミングソングスチャートにおいて、次週8月24日付(8月19日発表分)の速報段階でも10位以内に入っていない状況です。

他方、8月15日5時の段階のリアルタイムチャートをみると、トップ10入りした曲のうち6曲が再生回数上位対象プレゼントキャンペーンの実施曲となっています。これは仮説と前置きして書きますが、多くの方が寝静まった時間に応募者が曲をリピートし続けたことで他の時間に比べてキャンペーン実施曲の再生回数がより際立ったのではないかと思うのです。もしも応募者自身も寝ていた、しかし曲は繰り返していたのであれば、キャンペーン実施曲はライト層ではなくコアなファンにばかり、それもきちんと聴かれていない可能性が出てくると思うのですが、これは邪推でしょうか。

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LINE MUSICにおける再生回数上位対象プレゼントキャンペーン実施の連続、そして実施曲の上位寡占は、同サービスのチャートが健全なものでなくなっていると感じるに十分だと捉えはじめている自分がいます。不定期ながら二度チャートの中身を確認していたゆえ尚の事です。しかしながらLINE MUSICのチャートを無視していいかというとそうではありません。たとえば上記8月15日5時のデイリーチャートでトップ10入りしている ひらめ「ポケットからきゅんです!」は、TikTokでの人気を機に8月14日に配信されたもので、その成果が既に表れています。

ひらめ「ポケットからきゅんです!」が現段階でLINE MUSIC限定となっていることについては、サブスクサービスを限定する手法が大きなヒットに結びつきにくいという過去の事例を踏まえれば疑問に思うのですが(ストリーミングサービス限定解禁では効果が薄い? 新しい地図 join ミュージック「星のファンファーレ」から考える(2019年6月9日付)参照)、しかしLINE MUSICが他サービスよりも『TikTokの流行等をとりわけ敏感に取り込み』、『若年層を中心にさらなる広がりをみせる可能性は高く』なっているサービスであれば、LINE MUSICを意識して活用する方は少なくないでしょうし、総合でもヒットに至っている瑛人「香水」やさらなるヒットが期待されるTani Yuuki「Myra」等はまさにLINE MUSICの特色が上手く表れた結果と考えます。つまりはヒットの源やきっかけをLINE MUSICチャートで知ることができるのです。

しかしながら、LINE MUSICを主に活用しヒットに至りたいと歌手側が考えたとしても、リアルタイムやデイリーチャート、果てはウイークリーにまで”沢山聴いた方が当選もしくはその条件に該当する”再生回数上位対象プレゼントキャンペーン実施曲が上位を占拠する状況では、歌手側のLINE MUSICへの気概が薄れるのは自然ではないかと思いますし、あれだけ祭り状態となった米津玄師さんの曲が他サービスに比べてチャートの上位にあまり登場していないとなると、LINE MUSICのチャートに違和感を抱くユーザーが出てきてもおかしくないかもしれません。これらのネガティブな感覚が増えれば歌手側、ユーザー双方のLINE MUSIC離れに繋がる可能性もゼロではないわけで、LINE MUSIC独自の再生回数上位対象プレゼントキャンペーンが中長期的にみて果たして得なのかと考えてしまいます。"あれだけ再生しても当選しなかった"と不信感を抱くコアなファンも出てくるのではと懸念します。

 

 

ここまで書くと、再生回数上位対象プレゼントキャンペーン実施曲への批判と聞こえるかもしれませんが、前週のブログエントリーでも書いたように『むしろ上手く用いれば対象曲やその歌手の認知度を向上させる大きな武器になることも』あると思うのです。ただし他サービスやダウンロード等他指標に波及していないだろうことは先述した8月17日付ビルボードジャパンソングスチャートやストリーミングソングスチャートで指摘した通りであり、また例えば一昨日キャンペーンを終了したTREASURE「BOY (KR Ver.)」が8月14日付LINE MUSICデイリーチャートで19位に後退したことがコアなファンの再生離れおよびライト層が増加していないことの結果によるものだとすれば、再生回数上位対象プレゼントキャンペーンが限定的であり大きな武器にならないのではと思うのです。

米津玄師が席巻した8月17日付ビルボードジャパンソングスチャート、共演曲や提供曲に影響は見られたのか

昨日オリコンが報じた分析記事は、自分が昨日書いたビルボードジャパン最新チャート振り返り、そしてそのエントリーでも触れた米津玄師さんのサブスク解禁効果を検証すべくSpotifyの動向を振り返った一昨日のブログエントリーが正しかっただろうと思わせるに十分でした。とりわけ、サブスクの再生回数に基づくストリーミングの週間総再生回数、ストリーミング100位の再生回数への言及に納得した次第です。

 

さて、一昨日のブログエントリーでは米津玄師さんの共演や客演曲についても触れましたが、複合指標から成るビルボードジャパンソングスチャート、最新8月17日付の動向について、共演や客演、提供曲の動向を振り返ってみましょう。

 

まずは共演作となるDAOKO×米津玄師「打上花火」。

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直近150週と11週のCHART insightをみると、100位圏外(300位以内)から今週45位に再浮上しているのが解ります。それも、ルックアップを除く全指標が増加。最新チャートの集計期間中である8月7日、主題歌に起用された映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』が地上波テレビで放送されたことも影響していると言えるでしょう。

 

続いて、中田ヤスタカさんに客演参加した「NANIMONO」。

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直近150週と11週のCHART insightをみると、全週の300位圏外から100位圏外(300位以内)へ復帰。Spotifyでは日本におけるデイリーチャートで8月5日以降200位以内に復帰していましたが(おそらくはSpotifyの米津玄師さん公式プレイリストに「NANIMONO」が入っていたことが、同サービスでの再生回数増加に影響を及ぼしたと言えるでしょう)、サブスクの再生回数に基づくストリーミング指標では300位以内には入らず。しかしながらストリーミングと同様に接触指標群で重要な位置付けにある動画再生指標では、今週300位以内に復帰を果たしています。

 

提供曲をみてみましょう。まずはFoorin「パプリカ」。

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全週および直近11週のCHART insightをみると、シングルCDセールスおよびルックアップ指標の順位が上昇、ラジオエアプレイは300位以内に復帰した一方でTwitter指標は300位未満となり加算対象外となっています。順位的には100位圏外(300位以内)の状況が続いていますが、前週より順位は伸びたと捉えて良さそうです。

 

そして「パプリカ」同様に米津玄師さんが『STRAY SHEEP』にてセルフカバーした、菅田将暉まちがいさがし」。

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全週および直近11週のCHART insightをみると、ストリーミングやラジオエアプレイ、動画再生指標がダウンした一方でダウンロードおよびTwitter指標は増加。この結果、順位は1ランクアップの36位、そしてポイント前週比は108.4%となっています。尤も、前週におけるポイント前週比も107.8%と高いことから、『STRAY SHEEP』リリース(セルフカバー版公開の)前後にオリジナルバージョンを聴き(比べ)たいというニーズが生まれていたのではないでしょうか。

 

最後に、前週首位に立っていた、米津玄師さんの最新提供曲となる嵐「カイト」。

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全週および直近11週のCHART insightをみると、前週からはダウン。しかしこれはシングルCDセールス2週目における初週からの反動に因るもの。2018年度以降にリリースされた嵐のシングルCD表題曲におけるシングルCDセールス加算2週目のポイント前週比をみると、「Find The Answer」が15.9%、「夏疾風」が19.8%、「君のうた」が14.7%、「BRAVE」が15.7%に対し、「カイト」は22.3%をマーク。ジャニーズ事務所所属歌手の場合、シングルCDセールス加算2週目のポイント前週比が10~20%の範囲であることを踏まえれば、「カイト」には米津玄師さん効果が表れているのではないかと考えます。ただ、仮に「カイト」がダウンロード、サブスク、およびミュージックビデオフル尺で解禁されたならば、このポイント前週比はさらに上昇したのではないかと思うのです。特にサブスクにおいては米津玄師さん楽曲を再生した方に「カイト」がおすすめされる可能性があったため、尚の事機会損失ではと感じてしまいます。

 

 

効果の大小こそあれ、米津玄師さんのアルバムリリースおよびアルバムリリース日のサブスク解禁は、共演や提供曲にも影響を及ぼすことが判明したと言えます。旧譜のみならず新譜も同時に解禁したことが「パプリカ」や「まちがいさがし」に影響を及ぼしたとも言えそうで、その点からも新譜の同時公開は必要だと断言して好いでしょう。