イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(ほぼ)同じ発音の歌手名が増えた問題

1月27日付ビルボードジャパンソングスチャート、ラジオエアプレイ指標でトップに立ったのはFAITH「Party All Night」。総合では49位とそこまで高くはなく、またポイント源がほぼラジオエアプレイのみという偏りは気になりますが、注目すべき歌手が登場したと言えます。

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FAITHはオフィスオーガスタ所属の5人組バンド。当該事務所がラジオに強いのは秦基博さんやNakamuraEmiさん等でもみられたことゆえ納得なのですが、しかしこのバンド名を耳にした自分は真っ先にこのグループが浮かんだわけです。

YouTubeに公式な形でミュージックビデオがアップされていないため掲載は控えますが、2000年代に活動した女性2人組ユニットがfaith。大文字小文字の差異はあれど、同じ発音であることに間違いありません。

 

そういえば、最近そのような同じ発音の歌手名が登場してきている気がするのです。たとえば、シンガーソングライターのEve。

と、女性グループのEVE。

ちなみに海外ではEveというラッパーもいます。

または女性歌手のAnly。

彼女の場合、発音は"アンリィ"とのことですが、同じく女性歌手のANRI(杏里)を想起する人は少なくないはずです。

他にも事例があるかもしれません。

 

発音がほぼ同じとして取り上げた元の歌手は昔から活動している、もしくは今活動していないとしても最後のリリースから10年程度しか経過していないため、それら歌手から混同を指摘されるのではないかと危惧しますし、ならば最初から紛らわしい名前を付けず改名等すべきではないかと思ったのです。しかし、今回混同しかねない3つの例を紹介する際、元の歌手をYouTubeで検索したところいずれも公式アカウントは存在しない模様であり、またANRIさん以外はサブスクリプションサービスにも見当たりません。となるとこれらサービスにおいては混同を避けることが出来るわけで、ならば似た名前でも付けて問題ないという判断が下された可能性も否定出来ないでしょう。ちなみにX JAPANや[Alexandros]等、バンド名変更した理由が海外との折り合いという方もいらっしゃいますが、日本の場合は名付けの面が緩いのかもしれません。

 

今後もこのような(ほぼ)同じ発音の歌手が出てくるかもしれませんが、ならば似せられた方の歌手がすべきことはその緩さの打開もさることながら、彼らが登場する前に公式YouTubeチャンネル開設やサブスクリプションサービス解禁等デジタルを徹底し、新しい歌手が似た名前で登場しても検索結果で埋もれかねないという意識を持たせることかもしれません。

(追記あり) "SixTONES vs Snow Man"と"Snow Man vs SixTONES"のCDセールスは分けるのか一緒くたなのか…ビルボードジャパンとオリコンの見解が出る

(※追記(13:00)引用したツイートがうまく反映されなかったため、一部修正しました。)

 

 

1月22日にCDデビューした、ジャニーズ事務所所属のSixTONESおよびSnow Man。レコード会社の異なる2組が、それぞれの会社から別グループのシングルCD表題曲をダブルAサイドとして用意したスプリットシングルを同時発売しています。

それぞれのレコード会社毎にvsの前後が異なるスプリットシングルのフラゲ日におけるセールスが、ビルボードジャパンおよびオリコンの双方で発表されています。

【先ヨミ速報】SixTONES vs Snow Man、デビューシングルが共に40万枚超えでハーフミリオン目前 | Daily News | Billboard JAPAN(1月22日付)

SixTONESvsSnowManデビューシングル、初日売上70万枚超え デイリーランキング今年度最高売上 | ORICON NEWS(1月22日付)

これを読むに、ビルボードジャパンが"SixTONES vs Snow Man"と"Snow Man vs SixTONES"を分けてカウントし、オリコンが一緒くたにしていることが判明。両者のスタンスがはっきりしました。

ビルボードジャパンにおいてはTwitter指標主体に2組のデビュー曲がCDリリース前から既に登場していること、いわゆる中の人によるポッドキャストでも分けてカウントされることが半ば明言されたことを踏まえるに、分けることは予想していたものの、蓋を開けてみるまで分からない思っていたため安堵しました。

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次週はそれぞれの曲にシングルCDセールスおよびルックアップの各指標が加算されることでしょう。

 

仮に2組がCDデビュー当日にデジタルダウンロードやサブスクリプションサービスを解禁していたならば、2組を一緒くたにしたシングルCDランキングがベースとなるオリコンの合算ランキングが成立しなかった、矛盾が生じたものと考えられます。ゆえにデジタル解禁しなかったのはオリコンの問題点を浮かび上がらせない意味ではよかったのかもしれません。

 

ビルボードジャパンとオリコンのスタンスの違いについては幾度となく記載していますが、昨年末に両者の姿勢の差をあらためて明記しました。

”売上重視”のオリコンと”社会的ヒットの鑑”を目指すビルボードジャパンのスタンスの違いは当該年度振り返り記事ひとつを見ても明確。それが来年リリースされる2組のデビュー曲のランクイン時の対応にも表れるかもしれません。

(中略)

オリコンのスタンスを踏まえれば2組のシングルCDセールスをまとめるのが自然かもしれませんが、個人的にはそれは2組でどちらがより優れているかを示すことにはならないと考えます。売上ランキングが社会的ヒットと乖離している現代とはいえ、競争原理を壊す方策をオリコンが採るならば、オリコンの信憑性はさらに降下の一途だと思うのです。

年間ランキングを発表したオリコンの記事から、オリコンとビルボードジャパンが何を重視しているかを理解する - face it(2019年12月23日付)より

2組のどちらがより優れているか、オリコンでは"SixTONES vs Snow Man"と"Snow Man vs SixTONES"の内訳が見えないことから一切知ることが出来ません。その不透明さも相俟って、2組の合計セールスでミリオンを獲ったとしても、果たしてそれでミリオンを言い切っていいのか説得力を有さない気がするのです。現に各種メディアでミリオンという文字が目立ちつつあるのですが(スポーツニッポンこちら、日刊スポーツ→こちら、スオポーツ報知→こちら等)、ファン以外(いやファンの中にもおそらく)、2組一緒くたでミリオン扱いはおかしいと思う方が生まれてもおかしくないはずです。

上記ブログエントリーにてオリコンは売上重視と書きましたが、仮にオリコンが自身の名をメディアで取り上げてほしいと望みミリオンセールスと吹聴した、そうなるように一緒くたにすることを決めたならば、それはオリコンが競争原理を無視し自己保身に走ったものとして自らの信頼を地に落とした行為と言っても過言ではないでしょう。オリコンの中に一緒くたはおかしいと思う方がいたとして、ミリオン発信という至上命令に反抗心を萎ませたのだとしたら、オリコンが客観性を求められるランキングを作成してはいけないとすら思います。2組のデビュー曲のシングルCD初週セールスはそれぞれおそらく50万を突破するでしょうが、それ自体凄いことだと思うのです。

King Gnu、アルバムチャートを制した『CEREMONY』の勢いがソングスチャートに波及…1月27日付ビルボードジャパンソングスチャートをチェック

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点をソングスチャート中心に紹介します。

 

1月13~19日を集計期間とする1月27日付ビルボードジャパンソングスチャート、5週連続で首位に就いていたOfficial髭男dism「Pretender」からその座を奪ったのは、SKE48「ソーユートコあるよね?」でした。

チャート構成比におけるシングルCDセールスは9割以上であり、これは昨年リリースされた2曲と同様の動きと言えますが、2曲ともシングルCDセールス加算2週目におけるポイント前週比が12%台、且つトップ10落ちとなっており、仮に今作でもその動きをなぞるならば「ソーユートコあるよね?」が真のヒット曲とは言えないでしょう。実際、ストリーミングおよび動画再生の接触指標群が300位以内に入っていないこと、シングルCDセールスに対するルックアップが非常に弱いこと(前者1位、後者10位)を踏まえれば、CDを複数買いするファンが少なくなく、またレンタルも少ないためライト層に広がっていないものと考えます。

 

シングルCDセールスが極度に高い曲に阻まれ、King Gnu「白日」は遂にOfficial髭男dism「Pretender」を逆転しながらも2位止まり。しかしながら「白日」はストリーミングで過去最高の週間再生回数を記録しました。

King Gnuのアルバム『CEREMONY』が今週のアルバムチャートで初登場首位を獲得、それも全指標首位という完勝となりましたが、そのCDセールスの途中経過が発表された段階で「白日」のストリーミング指標逆転はあり得ると書きました。

そして実際、その通りとなったわけです。 

ストリーミングに長けた歌手がアルバムチャートに初登場を果たしたタイミングで、ストリーミングソングスチャートそして総合ソングスチャートで軒並みランクインを果たす傾向があります。

今週のストリーミングソングスチャートトップ10はKing Gnuが5曲、Official髭男dismが3曲を占める結果となりました(なお、Official髭男dism「I LOVE...」は11位に初登場)。上記ツイートをパッと見ただけでは硬直度の高いチャートと捉えられるかもしれませんが、実際はアルバム初登場に伴い、アルバム収録曲そして新作アルバム以前の曲も存在感を増しているわけです。

というわけで、ストリーミングで強い歌手がオリジナルアルバムをリリース、アルバムチャートに初登場した週の動向をみてみましょう。STはストリーミングソングスチャートを、総合は総合ソングスチャートを指します。順位は前週→今週を示しています。

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取り上げたのはいずれも昨年ヒットしたアルバムであり、ストリーミングソングスチャートではOfficial髭男dismが『Traveler』から「Travelers」と「052519」を除いた以外、アルバム収録曲はほぼすべてストリーミングソングスチャート100位以内に登場。初登場したアルバムに収録されいない曲は順位を落としているものの、新作アルバムからの大量エントリーに伴い順位が下がることを考えれば踏みとどまっているとも言えます。そして、あいみょんさんは『瞬間的シックスセンス』初登場週における、King Gnuは『CEREMONY』初登場週での総合ソングスチャートで、共に100位以内に13曲も登場。そのあいみょんさんは昨年度の歌手別チャートでストリーミング指標を制し、同年のトップアーティストチャートを制覇いるのは興味深い動きです。

アルバムチャート初登場週のソングスチャートへの波及、特にストリーミング指標が優れている歌手にはこの傾向が生まれることが証明されたように思います。実際アメリカではよく見られる動きですが、ストリーミング指標の基となるサブスクリプションサービスの人気が高まりつつある日本でも今後この動きは増えてくることでしょう。そして『CEREMONY』がアルバム単位および曲単位でもロングヒットとなれば、今年はKing Gnuがトップアーティストを制する可能性は低くはないでしょう。

ロディ・リッチ2連覇、ドレイクは100位以内エントリー曲数歴代最多タイ達成…1月25日付米ソングスチャートをチェック

※本日のエントリーは2つ目となります。これは今回のチャート速報が日本時間の本日午前8時までに公開されず、他のエントリーを記載したもののその後同日午前中に公開されたためです。

 

 

ビルボードのソングスチャートをチェック。現地時間の1月19日月曜が祝日のため、翌20日に発表された、1月25日付最新ソングスチャート。前週初の首位に立ったロディ・リッチ「The Box」が2週連続で制覇、フューチャー feat. ドレイク「Life Is Good」が2位に初登場を果たしました。ドレイクはこの曲により、歴代最多エントリーのタイ記録達成です。

ロディ・リッチ「The Box」の勢いが止まりません。ストリーミングは前週比13%アップの7720万を獲得、同指標3週目の首位を達成しました。この数字はリル・ナズ・X feat. ビリー・レイ・サイラス「Old Town Road」が昨年7月27日付で記録した8620万以来の高水準となっています。尤も「Old Town Road」は昨年4月20日付で1億4300万を記録しており桁外れの人気となりましたが、「The Box」はその水準を狙えるかもしれません。というのも現段階でミュージックビデオがまだ解禁されていないためで、ミュージックビデオの登場如何では1億超えの大記録も期待出来ます。「The Box」はダウンロードが前週比26%アップの13000(同指標7位)、ラジオエアプレイが同70%アップの1850万(同50位)と全指標2桁成長を遂げています。

2位にはフューチャー feat. ドレイク「Life Is Good」が初登場。ダウンロードは25000をマークし同指標制覇、またストリーミングは5070万を獲得し同指標2位発進。ストリーミング5千万超というのはかなり立派な数字ですが、ロディ・リッチには敵わなかったということに。「Life Is Good」が2位になったことで、フューチャーは自己最高位を更新。これまでは「Mask Off」(2017)の5位が最高でした。

そしてドレイクは大記録を樹立。今回の「Life Is Good」が通算207曲目となる100位以内エントリーとなり、ドラマ『Glee』の役者陣によるグリー・キャストに並び歴代最多となる100位以内ランクインを達成しています。ドレイクは2009年5月23日付で100位以内に初登場を果たしてから10年半で大記録に並んだことに。歴代3位のリル・ウェインの163曲を大きく引き離しています。またトップ10ヒットとしても36曲目となり、マドンナの38曲にあと2と迫りました。トップ40で括ればドレイクにとってちょうど100曲目のヒットとなりこちらは過去最多となります(2位はリル・ウェインおよびエルヴィス・プレスリーの81曲)。

 

今週『Rare』がアルバムチャートを制したセレーナ・ゴメスは、アルバムの勢いにより「Lose You To Love Me」が5ランクアップの5位に到達しました。またSpotifyから火が付いたアリゾナ・ザーヴァス「Roxanne」(総合9位)はここにきてラジオエアプレイが上昇。前週比16%アップの5730万を獲得し同指標8位、ラジオエアプレイで初のトップ10入りを果たしました。なおラジオエアプレイのトップはポスト・マローン「Circles」(総合3位)で、前週比1%ダウンしたものの1億30万となり、1億超えをキープしています。

 

最新のトップ10はこちら。

[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (1位) ロディ・リッチ「The Box」

2位 (初登場) フューチャー feat. ドレイク「Life Is Good」

3位 (3位) ポスト・マローン「Circles」

4位 (4位) マルーン5「Memories」

5位 (10位) セレーナ・ゴメス「Lose You To Love Me」

6位 (6位) ルイス・キャパルディ「Someone You Loved」

7位 (5位) ダン+シェイ&ジャスティン・ビーバー「10,000 Hours」

8位 (7位) トーンズ・アンド・アイ「Dance Monkey」

9位 (9位) アリゾナ・ザーヴァス「Roxanne」

10位 (2位) ジャスティン・ビーバー「Yummy」

ジャスティン・ビーバー「Yummy」の落ち込みが気になるところです。公式ホームページでのレコードやカセットテープ等販売施策により前週ダウンロードが8万近くを稼いだものの、今週は前週比85%大幅ダウンとなる11000(同指標10位)、ストリーミングは同17%ダウン2430万(同6位)、そしてラジオエアプレイは同9%ダウンの4610万(同17位)と全指標大きく落ち込んでいます。特にラジオエアプレイが登場から1ヶ月以内にもかかわらずダウンに転じるのは珍しく、「Yummy」の動きには注視が必要です。

1月22日はジャニーズ事務所のデジタル解禁への転換点となったのか

ビルボードソングスチャートの更新が遅れています。通常は日本時間の火曜早朝(現地時間の月曜)に速報がアップされますが、現地が月曜祝日の場合は翌日に(今回はこれに該当していました)。しかし。

これまでチャートを追いかけてきた身として、ここまで遅れるのは聞いたことがありません。弊ブログでは木曜がビルボードジャパンソングスチャート紹介日となるため、金曜にずれ込むことになることをご了承ください。

 

さて今日は1月22日。ジャニーズ事務所にとってターニングポイントになるかもしれない日だと書きました。

MISIAさんが今日リリースしたベストアルバム『MISIA SOUL JAZZ BEST 2020』には新曲として、堂本剛さんとの「あなたとアナタ」が収録されていますが、サブスクリプションで当該曲が外されるのではと懸念していました。しかしその心配は杞憂に終わっています。

当然ながら、堂本剛さんの声も聴こえています。

 

他方、今日初となるCDをリリースしたSixTONESおよびSnow Manについては双方共にサブスクリプションサービス未解禁であり、またダウンロードもありません。ジャニーズ事務所が運営しない外部レコード会社所属の場合はレコチョク等一部サービスに限ってフルバージョンでダウンロード解禁していますが、外部所属のSixTONESSnow Man共に本日の段階でレコチョクでも未掲載となっています(レコチョクジャニーズ事務所所属歌手ページはこちら)。

SixTONESおよびSnow Manについては”SixTONES vs Snow Man”(その逆もあり)のスプリットシングルとしてシングルCDセールスでミリオンを獲るという意気込みが感じられるため、その狙いを優先したものと思われますが、あくまで私見と前置きして書くならば、その手法ではコアなファン(ミリオンにすべく複数買いも厭わない方)とライト層との乖離を生むのではないかと思うのですが、如何でしょう。尤もこの2組についてはメディア戦略が凄まじいため、彼らの存在やデビューすることはライト層にも浸透しているとは思われます。

 

他方、ジャニーズ事務所先輩の嵐からは昨日、驚きのアナウンスが。

リミックスや客演ありバージョンを用意することは海外においてはデフォルトとも言え、たとえば米ビルボードソングスチャートではオリジナル版と合算されるためにチャート戦略上でも有効に作用するのですが、そのリミックス手法を嵐が採るというのにはいい意味で驚かされました。金曜リリースは日本のチャートでは有利に働かないものの(ビルボードジャパンソングスチャートの集計期間は月曜はじまり)、海外では金曜リリースが基本的なことから、嵐は世界を視野に動いていると言っていいでしょう。

ちなみにこの件を踏まえ、ビルボードジャパンには米と異なり合算しないというチャートポリシーを見直してほしいと切に願います。この合算希望の旨は今年初めに記載したのですが、あらためて。

 

1月22日とその前日の動きをみるに、ジャニーズ事務所が運営するレコード会社所属の2組(嵐および堂本剛さん)がデジタルに前向きで、外部に所属するSixTONES(ソニー)およびSnow Man(エイベックス)がCDオンリーとなるわけですが、これまでとは真逆ではないかと驚いた次第です。SixTONESおよびSnow Manはデビュー曲を特大ヒットに至らせるという目標があるだろうゆえ次のシングルからはデジタルに積極的になるかもしれませんが、ジャニーズ事務所運営レコード会社の所属歌手がデジタルにシフトする動きが出てくるのではないかという希望を感じています。

 

ジャニーズ事務所がデジタルに前向きになる以上、他事務所は旧態依然のやり方ではいけません。彼らが追いつく前にきちんとデジタル環境を整備すること、CDリリースするとしてもデジタル解禁を当然とすることが求められます。前者においては元Spotifyの松島功さんによるnoteが間違いなく参考になるはずです。

そして後者において、先週シングルCDがリリースされた三浦大知「I'm Here」の表題曲がリリース日においてサブスクリプションサービスおよびミュージックビデオ未解禁であることへの疑問を記載したところ、今週に入り数多くの賛同の旨をいただきました。

「I'm Here」はサブスクリプションサービス、ミュージックビデオ共に未だ解禁されていません。ブログへの反応をみるに、熱心なファンによる三浦さんの所属事務所(ライジングプロダクション)への疑問が強いことが解りました。CDに特化した手法が功を奏したかはビルボードジャパンのCHART insightをチェックしようと思いますが、その分析やファンの声を踏まえて芸能事務所側には省みていただきたいと強く思います。

一方、三浦大知さんと同じライジングプロダクションに所属するw-inds.は今日、最新シングル「DoU」をCDリリース。こちらはミュージックビデオが既にフルバージョンで公開され、また今日ダウンロードおよびサブスクリプションサービスでも解禁されています。

Real Soundで毎週掲載されている、『森朋之の「本日、フラゲ日!」』ではw-inds.「DoU」がSixTONESSnow Manに先駆けて紹介されています。記事を読んで興味を持った方の中には(Real Soundに掲載された)ミュージックビデオやサブスクリプションサービスで「DoU」を聴くべく動く方も少なくないでしょう。彼らの興味をきちんと受け止められる接触サービスの充実は重要だと実感します。

Official髭男dism、星野源が紡ぐ多様な愛の賛歌が同じタイミングでローンチされた件

今週頭に音楽業界への希望として書いたエントリー(→2020年の音楽業界に対する10の願い+α)の中で、その前の日に放送された『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日 日曜23時10分)への疑問を呈しましたが、その疑問を除けばその日の放送内容は実に興味深いもので、2019年の音楽関係者が選ぶランキングに激しく納得したり、新しい発見があったりしたものです。

その中で、蔦谷好位置さんが1位に選んだのは、Official髭男dismによる「Pretender」。音楽的な素晴らしさ(そしてその技巧をいい意味で感じさせない彼らの凄さ)を蔦谷さんは語っていましたが、この「Pretender」をベストと挙げる歌手が相次いで登場しています。

中村佳穂さんは歌詞の助詞の扱いについて音楽ナタリーで紹介し、またDa-iCE花村想太さんはOfficial髭男dismのボーカル、藤原聡さんのボーカル力について、メンバーの工藤大輝さんによるラジオ番組『TALK ABOUT』(TBSラジオ 土曜22時)の中で語っています。

様々なアプローチから「Pretender」が如何に素晴らしいか紐解かれる中で、個人的に思い出したのがこの曲をクィア・リーディングの観点から語った論評でした。

そして、「Pretender」ミュージックビデオの世界観を一歩推し進めたとも言えるのが、アルバム『Traveler』(2019)以降初の新曲として先週デジタル先行で解禁された「I LOVE...」。恋愛ドラマ『恋はつづくよどこまでも』(TBS 火曜22時)の主題歌ですが、ミュージックビデオでは女性同士の恋愛要素も含む様々な愛の賛歌となっています。その前向きな思いを、2番サビ前にゴスペル的なクラップを挿れることで押し進めている気がします。

 

さて、「I LOVE...」がリリースされたのと同じ週、星野源「Ain't Nobody Know」のミュージックビデオも解禁されました。トム・ミッシュと共作し、昨年リリースされたEP『Same Thing』に収められたこの曲では、女性と女性、男性と男性の愛が美しく紡がれ、最後は星野源さんと小松菜奈さんが出会うというストーリー。

YouTubeのコメント欄で知ったのですが、同性同士のカップルは実際にお付き合いをされている方だそうです。映像の美しさも相俟って、惹かれてしまいます。

 

日本を代表する歌手となったOfficial髭男dism、星野源さんが同じ週に、同性同士の愛情を描くミュージックビデオをリリースしたのは実に興味深いこと。しかしながら特段狙ったわけではないだろうことは、以前の星野源さん…もとい”おげんさん”の発言からも理解出来るでしょう。昨日のブログエントリーでも取り上げましたが、あらためて。

LGBTQについて語ることは政治的とされる風潮もあり、また日本のエンタテインメント業界では政治的な発言が極度にタブー視されていますが、その壁を軽やかに越えていく2組の姿勢には拍手を贈りたいところです。

 

LGBTQに対して頑なに認めまいとする人々が散見されますが、彼らが存在するのは事実であり、一部の方による極端な姿勢は結局彼らを許容したくないゆえの態度かもしれません。嫌いならば余計な介入はすべきではないと思います(ましてや汚い言葉を吐くことは論外です)が、「I LOVE...」や「Ain't Nobody Know」のミュージックビデオに触れてその偏った感覚が氷解する方が出てくるならば好いですね。

2020年の音楽業界に対する10の願い+α

2020年がはじまってわずか半月ちょっとですが、前週は米ビルボードソングスチャートでジャスティン・ビーバー「Yummy」が2位に初登場したり、週末にはエミネムのニューアルバムが突如ドロップ。日本ではKing Gnu『CEREMONY』がCDセールスだけで初週20万突破を確実にしている等、濃いトピックが続々。今年はどんどん面白いことが起こりそうな予感がします。

さて、弊ブログでは年明けにビルボードジャパンソングスチャート、ヒット曲のアプローチ(”新しいヒットの形”という言葉を用いて)についての今年の希望を記載しましたが、その他にも望むところが多々あるゆえ、10の項目を記載してみます。

 

 

ビルボードジャパンへのリカレントルールの設定

これは先日書いた内容に追記する形にはなるのですが。

昨年のビルボードジャパン年間ソングスチャートを制したのは米津玄師「Lemon」でした。一昨年の年末以降、主題歌に起用されたドラマ『アンナチュラル』(TBS)の再放送~『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)での歌唱でさらなるヒットとなったわけですが、2019年産の曲のヒットが「Lemon」を超えなかったこと、そして旧曲が強い力をつけすぎてやいないかという点が気になります。前者については旧来の曲以上に大ヒットする曲が生まれてほしいと思うばかりですが、後者においては米ビルボードに倣った【リカレントルールの設定】を、ビルボードジャパンは導入するしないにかかわらず議論してほしいと思います。一定の条件を下回ればチャートから消えるというリカレントルールについて、こうすれば好いという提案があり興味深いゆえ、勝手ながら紹介させていただきます(問題があれば削除いたします)。

 

② 米津玄師のオリジナルアルバムリリース

先述した「Lemon」以降、米津玄師さんは日本を代表する歌手としての地位を確立した感がありますが、オリジナルアルバムは2017年秋の『BOOTLEG』以来リリースがありません。これまでのアルバムのインターバルを踏まえればリリースされても好い頃ですが…未だダウンロードで解禁されていないFoorinへの提供曲「パプリカ」のセルフカバー、そして嵐「カイト」のセルフカバーも含むアルバムの登場が待たれます。アイドルやK-Pop、アニメ等以外でCDセールスに長ける歌手は珍しく、リリースの際にはCDとしての売上枚数も気になるところです。

 

 

サブスクリプションサービス未解禁歌手の解禁

その米津玄師さんは未だサブスクリプションサービス(以下サブスク)に曲を解禁していません。ビルボードジャパンソングスチャートにおいてサブスク未解禁の(ストリーミング指標が稼げない)曲が、CDの動きが一段落した段階で勢いをキープ出来ているか、楽観視はすべきではないと考えます(事実、「馬と鹿」は昨年ヒットしたものの、Official髭男dism「Pretender」やKing Gnu「白日」等と比べて勢いは劣っています。サブスク解禁と未解禁とで、翌週のポイント前週比が後者は8割を切ることも少なくありません)。サブスク解禁がCDセールスに悪影響をお呼びしかねないという危惧は抱いているかもしれませんが、解禁へ動いてほしいものです。

無論米津玄師さんに限らず、他にもサブスク未解禁の歌手は少なくありませんし、昨年解禁した嵐についても未だシングル曲に限られています。この未解禁の状況についてまとめられているブログエントリーがありますので勝手ながらですが紹介させていただきます(問題があれば削除いたします)。

広く世界中で視聴可能な昨年の『NHK紅白歌合戦』の大トリを飾った嵐がJ-Pop賛歌たる「Turning Up」を示したのならば、世界中にJ-Popの素晴らしさを示せない今の日本の音楽業界の解禁状況は矛盾と言わざるを得ません。

 

 

ジャニーズ事務所所属歌手のデジタル解禁

昨年の『NHK紅白歌合戦』ではジャニー喜多川さんの追悼企画に登場したCDデビュー前のSixTONESおよびSnow Man(そしてデビューは決まっていませんがなにわ男子も)を含め、8組ものジャニーズ事務所所属歌手が出演していましたが、サブスクリプションサービス解禁は嵐のみ(それも先述したように限定的)。世界中にジャニー喜多川さんの功績を紹介したならば、ジャニーズ事務所所属歌手の音源が世界に広まらないのは機会損失と言えます。ジャニーズ事務所が運営するレコード会社の稼ぎ頭がデジタル解禁に乗り出したのならば、少なくともソニーやエイベックスといった外部レコード会社(レコチョク等一部ダウンロードサービスでフル音源のダウンロードは解禁済)にデジタル解禁とその管理を託しても好いのではないかと考えます。

 

 

SixTONESSnow Manのスプリットシングルをレコード会社毎にカウントすること

ソニーやエイベックスといえば、先述したSixTONESおよびSnow Manの所属レコード会社となりますが、この2組は1月22日に同時デビューを果たし、しかもレコード会社の枠を超え、2組のスプリットシングルとして2社からリリースされます。となると気掛かりなのは、このシングルCDセールスがどうやってカウントされるのかということ。仮に、2組のファンの力でミリオンセールスを獲得したとしてもそれは“SixTONES vs Snow Man”としてのミリオン達成であり、グループ単独でミリオンと呼ぶのは違うと思うのです。

個人的にはソニー発(SixTONES)とエイベックス発(Snow Man)とでセールスを分けてカウントしたほうが好いと考えますし、Twitter指標の強さによりビルボードジャパンソングスチャートでは2組の楽曲が既に別々でランクインしているならば、分けて考えるのが自然なことです(ちなみに、レコード会社毎にvsの前後が入れ替わって表記されます。詳しくはこちらをご参照ください)。仮に一緒の扱いにして“ミリオン達成”と銘打つならば、そのやり方は話題性等を優先したためにチャートの客観性を捨てたとすら捉えてよく、チャートの信用を一気に失墜させる行為だと思うゆえ、チャートを扱う方は冷静客観な判断が必要です。

無論、シングルCDセールスと同時にダウンロードやサブスクリプションサービスが解禁されるかも注目で、同日解禁がなされなければジャニーズ事務所側は未だCD優先というドメスティックな手法を採り続けるとみてよいでしょう。

 

 

⑥ 『NHK紅白歌合戦』の名称変更も視野に入れた番組の意義の議論

さて、デビュー前のジャニーズ事務所所属歌手を呼び込んだ『NHK紅白歌合戦』は新時代に際し変わっていくでしょうか。昨年の内容が良かったという声はほぼ聞かれませんでしたが、賛否両論はあれどMISIAさんのパフォーマンスは彼女の一貫したLGBTQへのサポートの姿勢が伝わった(しかし説明不足ゆえ唐突感は否めず、でしたが)点で良かったと思います。また番組内の『おげんさんといっしょ』企画ではおげんさんこと星野源さんが以前紅白(男女)の枠について言及していたこともあり、番組の核にある“ジェンダーで分けること”が今の時代に求められる多様性に相応しくないだろうことは番組側も理解しているはずです。

紅白の採点方法の問題も未だ解消されないことも踏まえ、”紅白歌合戦“の名称も含めた番組のあり方や内容を議論し、変更してほしいと思います。

 

 

⑦ 嵐のデジタルシングルのフィジカル化

昨年の『NHK紅白歌合戦』まで4年連続で白組司会は嵐のメンバーが務めていますが、活動休止前の最後の年となる今年、果たして昨年披露した「Turning Up」等の楽曲はCD化されるのかが気になります。昨年ベストアルバム『5×20 All the BEST!! 1999-2019』をリリース済であり、ゆえに「Turning Up」等をオリジナルアルバムとして出す、またリプロダクション企画(「A-RA-SHI:Reborn」等)を企画アルバムとしてCD化するのかが興味深いところです。ひとつだけ気掛かりな点があるとしたら、『5×20 All the BEST!! 1999-2019』に新録曲を追加収録したデラックス・エディションとして後出しでリリースする可能性。日本でも昨年はTHE YELLOW MONKEY布袋寅泰さん、アメリカでもリゾ等がデラックス・エディション手法を用いており音楽業界の主流となりつつありますが、元のアルバムを買った方には納得いかないであろうやり方だと考えます。この点については以前指摘しました。

デジタルのみでリリースした楽曲がどのような扱い方をされるか、注視が必要です。

 

 

⑧ 日本の曲が”新しいヒットの形”の流れに乗り世界中で流行すること

年明けに“新しいヒットの形”として3つの希望を記載しました。

TikTokSNSでの口コミ→サブスクリプションサービス→総合チャートへヒットが伝播していく流れが確立された現在、たとえばアメリカでその流れに乗る曲はなにもアメリカで作られた曲に限らなくなっています。となると当然、日本の曲も世界中でヒットする可能性があるのです。日本の場合、サブスクリプションサービス利用率自体が他国に比べて低いためこの手のヒットは生まれにくいかもしれませんが、SNSでの口コミが自然発生であれ仕掛けられたものであれ、流れに乗る曲が1つでも登場するならば世界でJ-Pop全体が注目されていくきっかけになるものと考えます。

 

 

⑨ 日本におけるヒップホップの大ヒット

日本の音楽市場におけるヒップホップ(ジャンル)のシェアはアメリカ等に比べて著しく低い印象があります。インディから武道館公演を成し遂げたBAD HOP等成功例がありますがここは是非とも、メジャー所属のヒップホップアクトが大成功を遂げてほしいと思うのです。『ヒプノシスマイク』が人気コンテンツになったタイミングで、特にオオサカ・ディビジョンのどついたれ本舗に楽曲提供したCreepy Nutsが認知度を高め、実力も申し分ないことから近い将来チャート上でも結果を出すものと期待しています。このCMも痛快ゆえ尚の事です。

 

 

⑩ 不祥事を起こした者への反省と再興を促すマニュアルの策定

無論不祥事はあってはならないことですが、発生(発覚)した直後に店頭在庫の回収やデジタルサービスからの撤去という昔からの流れは変わっておらず、正直失望します。推定無罪の原則が活かされていないこと、芸術作品と人間性とを過度にリンクさせていること、撤回等には極めて前向きな一方で復帰についてはきちんと考えようとしないこと等は拙策と言わざるを得ません。

不祥事を起こした者(の関連作品)の復帰までのマニュアルを作成し、罪の大きさ等により二転三転させるのではないいわば核となるルールを作るべきです。結局二転三転させるそのやり方が、エンタテインメント業界において熟考する力や責任を持つことが宿らない癌であると言ってよいと思うのです。そしてエンタテインメント業界がきちんとしたマニュアルを作成出来たならば、他の業界、そして日本全体に”後悔ではなく反省を促す”風潮が醸成されるものと考えます。

 

 

以上10の願いや希望、今年はいくつ叶うでしょうか…と昨日までに書いたところで、昨日深夜に放送された『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日 日曜23時10分)、売れっ子プロデューサーが選ぶ年間ベスト10企画で2名が推した長谷川白紙さんに関してこんな感想を抱きました。

今の流行と未来の才能をマス向けに紹介する音楽番組の登場が、出来ればゴールデン帯に生まれることを、追加の願いとして挙げておきます。これはテレビに限らず、ラジオにおける平日の日中にも当てはまることです。