イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

”青森の芸術を堪能する旅”モデルコースを地元自治体とメディアに設計、提案してほしい

シンガー/ラッパーのAwichさんが今月リリースしたアルバム『孔雀』から、kZmさんをフィーチャーした「NEBUTA - AL ver. -」が1月16日付の日本のSpotifyバイラルチャートで50位に登場しました(同日付チャートはこちら)。

元々は2018年秋にリリースされたEP「Beat」に収録された曲ですが、今後ミュージックビデオも登場する模様。

ねぶた資料館に行ってインスパイアされたのが「NEBUTA」とのことで、おそらくAwichさんが訪れたのはねぶたの家 ワ・ラッセでしょう(リンク先はこちら)。この施設は8月2~7日に開催される青森ねぶた祭りの資料館であり、受賞した作品が祭り直後に展示。2014年に受賞し展示されたねぶたを背景にCDジャケットを撮影したのが椎名林檎さんのシングル「長く短い祭 / 神様、仏様」(2015)だったのは有名かもしれません。

 

さて、青森の芸術シーンが今年大きく注目を集めることは間違いありません。今年4月11日、弘前市弘前れんが倉庫美術館が開館します。

弘前市に古くからあったシードル工場を、建築家の田根剛さんがリノベーション。地元弘前出身の奈良美智さんのイベントで数回用いられてきた場所が、美術館として完全に生まれ変わるのです。そしてこの弘前れんが倉庫美術館、東京のラジオ局が今年のはじめに連日紹介しており、青森県民として嬉しくなりました。

『アフター6ジャンクション』(TBSラジオ 月-金曜18時)では昨年から今年にかけて47都道府県ツアーを完遂したRHYMESTER宇多丸さんが、ツアーの際に訪れた青森県立美術館を絶賛したこともあり、青森や十和田市現代美術館共々この弘前れんが倉庫美術館にも興味を示していましたし、『GOOD NEIGHBORS』(J-WAVE 月-木曜13時)ではクリス智子さんが青森のホテルを検索している的発言をしていました。ラジオ好きの身には著名なラジオDJのみなさんが青森に来るかもと思うと嬉しいですし、何より青森県の芸術シーンの凄さは誇らしいと実感したものです。その一方で、宇多丸さんが地方の公立美術館の来館者数の少なさを嘆いていたこともあり、地元民こそ行かないとなあと痛感も。

 

さて、ここからが本題。各自治体やメディアには、”青森の芸術を堪能する旅”のモデルコースを設計、提案してほしいと思うのです。

どこに泊まり、移動手段はどれを使えば効率が良く、また食事や温泉のおすすめはどこか…無論旅行する方が調べても好いのでしょうが、その手ほどきとして提示するのです。美術館のある各市が作るのもさることながら、地元メディア、特にラジオが率先してやってみてはいかがでしょう。

RABラジオもエフエム青森radikoプレミアムで県外からも聴取可能であり、弘前市FMアップルウェーブはサイマル放送で全国から無料で聴くことが出来ます。モデルコースの提案により、旅行前に地元の情報を聴いてみたいという旅行者のラジオへのニーズを引き出し、同時に地元住民にも青森が美術の街であることを伝えることが可能。そしてモデルコースをホームページでも紹介することで、ホームページの拡充(アクセス増やバージョンの刷新等)につながります。仮に東京のラジオ局の番組が弘前れんが倉庫美術館等で公開放送を行えば、技術協力をした地元放送局のプレミアム感は高まるとも思うのですが、いかがでしょう。

たとえば弘前市はフレンチレストランやコーヒー、アップルパイの街としても売り出しているゆえ、1日では回りきれないくらいのポテンシャルを秘めているはず。また美術館の他、宇多丸さんが絶賛した市営の八戸ブックセンターという施設も。

美術、図書、料理、祭り…青森における芸術のポテンシャルは極めて高いはず。これを如何に県内外に届けるか? それには地元自治体やメディアの尽力は必須だと考えます。

年始のラジオでZOO「Choo Choo TRAIN」が流れまくった意味を知る

ビルボードジャパンソングスチャートを構成する指標の中で、総合チャートとかけ離れながらも独特の動きをみせるのがラジオエアプレイ。前週発表された1月13日付ソングスチャート(集計期間:2019年12月30日~2020年1月5日)ではZOO「Choo Choo TRAIN」の突如のランクインに驚き、ブログに取り上げました。

同じくJR SKISKI(当時はJR ski ski)の最新版CMに起用されたEVE「白銀」が同指標で人気になったことでランクインしたのかと思ったのですが、後日「Choo Choo TRAIN」がBGMに使われた『アフター6ジャンクション』(TBSラジオ 月-金曜18時)中に”そういえばこの曲がラジオで…”とツイートしたところ、リスナーの方から『ネズミ年なので、「チュウ」ということかと』というリプライをいただきました。激しく納得した一方、完全ダジャレ選曲なのかといい意味でも脱力感が。

しかも、干支だけにZOO(動物園)なのでしょうね。

 

自分がスタッフの一員を務めるラジオ番組『わがままWAVE It's Cool!』(FMアップルウェーブ 日曜17時)では1月5日、年始恒例企画として干支の名前が付いた歌手や曲名を特集したのですが、さすがに「Choo Choo TRAIN」は思い浮かびませんでした。”チュー”で浮かんだのは爆チュー問題(「でたらめな歌」)でしたがねずみの格好をしてるゆえのセレクト。少なくとも東北で一番、いい意味でひねくれた曲をかけると自負する番組ゆえ、「Choo Choo TRAIN」は思い浮かばなくとも特集冒頭BGMでこの曲をかけたのは有る種の意地だったかもしれません。

Spotifyは遂に「白日」が「Pretender」を逆転、King Gnuは『CEREMONY』でさらなるブレイク必至

King Gnuの勢いが止まりません。アルバム『CEREMONY』はCDセールスがフラゲ日を含む2日間で16万枚を突破しました。

昨年大ブレイクを果たしたOfficial髭男dism『Traveler』の初週CDセールス(記事はこちら)の倍以上となることが確定し、20万枚という大台も見えてきました。ビルボードジャパンアルバムチャートはCDセールスに加えダウンロードとルックアップも構成指標となっていますが、全指標首位の可能性も高いと思われます。

一方のビルボードジャパンソングスチャートでは、今週そのOfficial髭男dismによる「Pretender」に次いで2位を獲得した「白日」がストリーミング指標で絶好調。しかも。

現在、1位「Pretender」と2位「白日」の差は63万回と、今までにないほど僅差となっており、次週はこの2組のチャート動向に要注目だ。

【ビルボード】Official髭男dism「Pretender」がストリーミング34連覇 ジャスティン・ビーバー「ヤミー」が初登場 | Daily News | Billboard JAPAN(1月15日付)より

ビルボードジャパンソングスチャートにおけるストリーミング指標(サブスクリプションサービスの再生回数に基づく)は2曲とも1週間の再生回数を更新しており、『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)の効果は他指標では薄れる一方、これらロングヒット曲はサブスクリプションサービスが引っ張る形に。2曲とも、チャート構成比におけるストリーミング指標は5割近くとなっています。

そのストリーミング指標、次週は逆転する可能性を孕んでいます。同指標のカウント対象サービスのひとつ、Spotifyの動向をみてみましょう。

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日本における1月15日付Spotifyデイリーチャートをキャプチャしたのが上記(200位まではこちら)。〆の時間の関係上、『CEREMONY』からの楽曲は前日付で大挙初登場を果たし、この日は『CEREMONY』収録曲が5曲トップ10入り。しかし「白日」は「Teenager Forever」に抜かれ、「Pretender」に追いつかない…ように見えるのですが。

デイリーで「白日」は初となる首位を獲得しました。また「飛行艇」についても「白日」同様2バージョンがランクイン(17位にアルバム収録版、27位に先行配信版)。「白日」と「飛行艇」をそれぞれ合算すると。

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King Gnuは『CEREMONY』収録曲が6曲トップ10入りを果たすことに。また、Official髭男dism「Pretender」の1日あたりの再生回数最高記録は207,336回(1月13日付)であり、「白日」は1日あたりでの最高記録記録も「Pretender」を抜いたことになります。そしてアルバムリリースにあたって配信した”Voice Comment”もランクインするのですから、その注目度の高さには驚かされます。

 

King Gnuの勢いを加速させたのはリリースタイミングの素晴らしさゆえでしょう。「Teenager Forever」のミュージックビデオ解禁は1月9日であり、『NHK紅白歌合戦』で「白日」を披露~「Teenager Forever」のビデオ解禁~『CEREMONY』リリースと、1週間程度の間を開けて次々と展開していくのですから、King Gnu熱が冷めやらぬどころかいっそう高まっていくのは自明。

しかもミュージックビデオ公開日の深夜には、ラジオ番組『King Gnu井口理のオールナイトニッポン0』(ニッポン放送 木曜27時)がOAされ、『NHK紅白歌合戦』の楽屋裏がメンバー本人から紹介。この内容もまた、King Gnuへの注目をさらに高める一因になったものと考えます。

この【King Gnu熱の持続】という展開はこの1年で幾度となくみられ、その度にブログで紹介しましたが、先述した『NHK紅白歌合戦』以降の流れも含むこの持続がアルバム『CEREMONY』の大ヒットにつながったと捉えていいでしょう。

 

ビルボードジャパンチャートでは次週、アルバム『CEREMONY』が1位を獲得することはほぼ間違いありませんが、ソングスチャートはSKE48「ソーユートコあるよね?」が高いシングルCDセールスを基に1位を獲得する可能性大。SKE48の昨年の2枚のシングルはいずれも、シングルCDセールス指標加算初週に24000ポイント以上を獲得しています。

さらに翌週はジャニーズ事務所所属歌手2組のワンツーフィニッシュも予想されます。しかしながら、「Pretender」が登場から半年後に1位を獲得したように、「白日」もさらなるロングヒットを経て首位の座に就く可能性は高いでしょう。次週以降のチャートアクションに注目したいと思います。

なお、シングルCDセールス指標のみ高い曲が上位に登場した直後に急落することが繰り返される昨年の状況を踏まえ、ビルボードジャパンに同指標の見直しを求める昨年末のエントリーを再掲します。ビルボードジャパンに対し、あらためて議論することを願いたいと思います。

1月20日付ビルボードジャパンソングスチャート、前週ポイント獲得に不備があった曲の問題は解消出来たのか

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点をソングスチャート中心に紹介します。

1月6~12日を集計期間とする1月20日ビルボードジャパンソングスチャートを制したのはOfficial髭男dism「Pretender」でした。5週連続、通算7週目の首位獲得となります。

次週はSKE48「ソーユートコあるよね?」が高いシングルCDセールス指標を武器に首位を獲得する可能性がありますが、King Gnu「白日」にも逆転を許すかもしれません。King Gnuについては別の機会に記載するとして、今回は年末年始のチャートで疑問を抱いた箇所が訂正されているかについて観測します。すなわち、もっとポイントを稼げるはずだったのに…という曲の問題が解決されたのかの振り返りです。

 

前週となる1月13日付ソングスチャートでは、『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)で披露された曲がトップ5を独占していましたが、5位に入っていたFoorin「パプリカ」は今週早くもトップ10落ちとなってしまいました。またLiSA「紅蓮華」っは4位をキープしながら、動画再生指標はほぼ横ばいとなっています。前週のチャートを踏まえた問題提起は下記に。

今週のチャート動向をCHART insightで追うと。

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総合チャート(黒の折れ線で表示)と動画再生指標(赤)のみを抽出すると、今週も動画再生指標は300位未満となり加算されていません。

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ビルボードジャパンと集計期間は異なるものの、1月3日からの1週間を集計期間とするYouTubeチャートでは「紅蓮華」が6位に入っています。

一発録り”THE FIRST TAKE”動画にビルボードジャパンソングスチャートの動画再生指標で加算対象となる国際標準レコーディングコード(ISRC)が未付番であること(あったとしてもオリジナルバージョンと異なる曲はビルボードジャパンのチャートポリシーにより合算出来ない可能性大。なおYouTubeチャートでは合算される模様)、そしてISRCが付番されていたとしてもミュージックビデオがショートバージョンであれば再生回数が飛躍しない…これらは「パプリカ」共々、前週から変わっていません。

 

Foorin「パプリカ」動画はNHKYouTubeアカウント発でありこれがストッパーになっているかもしれず、NHK側にレコード会社等や芸能事務所が働きかける等、メディアを含めた三者が動画への意識を高めるべきとも提案しました。

しかし「パプリカ」は変わらず、そして同じくNHKYouTubeアカウント発となる嵐「カイト」については今週も動画再生指標が未カウント。週間で動画再生が100万を突破しても300位未満ならば動画再生指標未加算とはなるのですが、しかし公開週となった前週から未カウントなのは違和感を覚えるゆえ、NHK発であることがISRC未付番の大きな要因となっていると断言してよいでしょう。結果、「カイト」はTwitter指標だけでは総合100位以内に踏ん張ることは出来ませんでした。

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NHKの意識不足、ISRCを後から付番出来ることへのレコード会社や芸能事務所の働きかけ不足が歌手や楽曲をより高い位置へ送り込めないのならば、大きな問題です。

 

他方、「カイト」について指摘した以前のエントリーで同じく動画再生指標未加算と紹介した、SixTONES「Imitation Rain」およびSnow Man「D.D.」の2曲は最新チャートにて同指標初加算となりました。

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この点については安堵しました。

 

2組の所属事務所の先輩である嵐に話を戻すと、今週は「A-RA-SHI:Reborn」に動画再生指標が初加算されました。しかし同指標は100位未満となり、総合でも32→69位と大幅ダウンを喫してしまいました。

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(下のCHART insightは総合チャートおよび動画再生指標のみを抽出したもの。)

「A-RA-SHI:Reborn」のミュージックビデオ公開は1月4日0時。上記YouTubeチャート記事では9位に入っていますが、集計期間が異なるビルボードジャパンでは今週が動画公開3日目からの集計となったため勢いがつかなかったと言えますが、ミュージックビデオがISRC未付番の可能性も否めません。

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(下のCHART insightは総合チャートおよび動画再生指標のみを抽出したもの。)

ジャニーズ事務所所属歌手では極めて珍しく11週連続でトップ20をキープしている嵐初のデジタルシングル「Turning Up」(今週16位)は動画再生指標が好調に推移しています。さて、「Turning Up」と「A-RA-SHI:Reborn」のYouTube画面をチェックすると、”この動画の音楽”というクレジットが前者に記載されながら後者には未記載となっており、この未記載がもしかしたら「A-RA-SHI:Reborn」のISRC未付番を示すものかもしれません。

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(この動画の音楽欄の確認のため、YouTubeをキャプチャしました。問題があれば削除いたします。)

「A-RA-SHI:Reborn」はオフィシャルオーディオ、ミュージックビデオのティーザー共にこの動画の音楽欄が未記載となっているため、同曲の動画再生指標はユーザー生成コンテンツ(UGC)のみカウントされている可能性も否定出来ません。ISRC未付番が事実だとしたら極めて勿体ないと思ってしまいます。

 

以前記載したことの再掲になりますが、メディア、レコード会社そして芸能事務所の三者が、管理する音楽をきちんと社会に流布させる責任およびそのための自身の役割を強く意識することは絶対に必要なのです。動画再生指標におけるISRC未付番について監視し問題の是正に努めなければ、所属歌手が不幸を被るだけです。

三浦大知「I'm Here」のミュージックビデオ・サブスクリプションサービス未解禁はグラミー賞の夢を遠ざけやしないか

昨年の音楽業界を賑わせたKing Gnuがアルバム『CEREMONY』を本日リリース。フラゲ日となった昨日はTwitterで盛り上がりを見せていましたが、メンバーの井口理さんはこのようなツイートを。

作品が発売日にきちんとサブスクリプションサービスでも聴取可能である旨を紹介しています。作品への自信や伝えたい思いが感じられます。

他方、同日発売となった三浦大知さんのシングル、「I'm Here」はサブスクリプションサービス未解禁の措置が採られました。今日のSpotifyアーティストページをみると、先行配信され後にシングルのカップリングに収録された「COLORLESS」が最新のリリースとして表示されています。

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解禁しない等の措置については今週月曜、三浦大知さんがInstagramライブ配信の中で明かしています。視聴された方によると、1月31日にミュージックビデオおよびサブスクリプションサービスが解禁されるとのことですが、個人的にはどうも腑に落ちません。カップリング曲で昨年サブスクリプションサービスで解禁されるや否や多くの方に衝撃を与えた「COLORLESS」の、サプライズ配信でいっそう増幅された喜びは一体何だったのでしょう。

 

CDを売りたいこだわりは今作のキャンペーンから見えてきます。

しかし、キャンペーン開始日が本日であるにも関わらずフラゲ日となった昨日には既にパネルが置かれていた店舗が多数あった模様。こういう不徹底は不信すら招きかねないと考えます。

 

尤も、三浦大知さんの楽曲伝播の手段に違和感を抱いたのは今回が初めてではありません。

前作「片隅」(2019)がYouTubeにてショートバージョンで公開され、さらには”ショートバージョン”と銘打たず、あたかも2分ちょっとの曲であるかのようにエディットしているやり方は、動画を機に楽曲を所有/接触した方に戸惑いを抱かせるのに十分。前作「Blizzard」(2018)がフルバージョンでの公開だっただけに、尚の事ショックでした。そしてこの「片隅」が、「Cry & Fight」でブレイクを果たして以降の三浦さんの作品の中ではチャートアクションが最も低くなってしまったのです。

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ビルボードジャパンソングスチャートでは100位以内に4週のみ在籍。シングルCDセールス指標が初加算された週の総合22位という順位、そしてシングルCDセールス指標加算2週目の100位圏外というのは2016年以降のシングルCD表題曲ではワーストとなってしまいました。他方、Twitter指標での盛り上がり(ファンの間では”ブリ活”と呼ばれたツイート活動)も功を奏した「Blizzard」は、昨年の『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)でのパフォーマンス効果で100位以内に再浮上したのみならず、一昨年の暮れから昨年春にかけてロングヒット。

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「Blizzard」と「片隅」での大きな違いは、ストリーミング(サブスクリプションサービスの再生回数を示す指標。上記CHART insightの青の折れ線グラフで表示)、および動画再生(YouTubeおよびGYAO!の動画再生回数を示す指標。赤で表示)の接触指標群が充実しているか否か。「片隅」はストリーミングが100位未満ながら300位以内に通算2週ランクイン、そして動画再生は一度も300位以内に達していません。

実は「片隅」のチャートアクションが芳しくないと判った段階で、「片隅」における問題点を記載したエントリーをアップしました。その際は所有指標も低いとは記載しましたが。

今回「I'm Here」における施策が所有指標の(それもCDに特化した)拡充であり、「Blizzard」で好調だった接触指標群の立て直しどころか半ば無視と言っても過言ではない状況、それでいてCDショップのフラゲ日を意識しないかの如きキャンペーンの設定は巧いとは言い難く、納得出来ない自分がいます。

 

 

海外ではミュージックビデオを公開していない曲が最新米ビルボードソングスチャートで首位に立ちましたが、そのロディ・リッチ「The Box」はリリックビデオを公開したばかりであり、ミュージックビデオの登場は間もなくと思われます。敢えて公開を遅らせる手法を採ったと言われるかもしれませんが、ならばMTV等で既に登場しているはずであり、単純に制作スケジュールの問題や、曲が思った以上に早くヒットしたことが原因と考えます。

また、サブスクリプションサービスを公開しないという手段を採る歌手はアメリカではほとんどいなくなりました。テイラー・スウィフトは以前、サブスクリプションサービス開始数ヶ月が無料になることで歌手側に対価が支払われない点を理由に一時サービスから曲を引き上げる等距離を置き、アルバム『Reputation』(2017)までは発売からサブスクリプションサービス解禁までタイムラグを設けていましたが、『Lover』(2019)では同時解禁となっています。

その代わりといっていいでしょう、テイラーは4種類のCDデラックス・エディションを用意。初週ミリオン達成とはならなかったものの、CD施策が初週功を奏しているのは明らかです。

アメリカではCD施策を採る歌手が今後増えるものと予想されます。グッズやチケットを同梱しあたかもCDはおまけというやり方に対してはチャートのカウント方法にメスが入ってきていますが、それでもCD施策が増えると考えるのは、あくまで音楽業界の土台はサブスクリプションサービスであるため。これは音楽プロデューサーの亀田誠治さんも語っていたことであり(下記ブログエントリーにて紹介)、テイラー・スウィフトもサービスの存在を無視出来なくなったゆえに『Lover』の同時解禁に踏み切ったものと考えます。

 

ミュージックビデオやサブスクリプションサービスの存在が欠かせないアメリカの音楽業界の最高賞であるグラミー賞の受賞を以前から夢だと語る三浦大知さんにとって、今回「I'm Here」で採ったやり方はその夢を潰えさせかねない矛盾を孕んでいるものと思わずにはいられません。Instagramライブを観た方のツイートを辿ると今回の施策に対し三浦さん自身が納得いかないところがある模様で、だとすれば自分が昨年記載した(三浦さんの所属事務所である)ライジングプロダクションの方針転換という悪い意味での予感が的中したことになります。

そしてその施策はあくまでCD売上を主軸にするという旧態依然の考えが根っこにあるわけで、その考えに芸能事務所側が立っている以上は三浦さんがこれ以上飛躍出来ないのではないかと強く危惧します。

 

今回の「I'm Here」における施策は動かすことが出来ないでしょう。ならば今回の結果をきちんと検証することは絶対に必要です。仮にCDが予想以上のセールスを記録したとしても接触指標群が伴わなければビルボードジャパンソングスチャートでロングヒットには至れず、社会的ヒットになったとは言えません。三浦大知さんがグラミー賞を目指すならばその夢の実現のために何をすべきか、ライジングプロダクションは今一度考えてほしいと切に願います。

(追記あり) ジャスティン・ビーバー「Yummy」を抑えロディ・リッチ「The Box」が初の首位獲得…1月18日付米ソングスチャートをチェック

ビルボードのソングスチャートをチェック。現地時間の1月12日月曜に発表された、1月18日付最新ソングスチャート。ロディ・リッチ「The Box」が初の首位を獲得、ジャスティン・ビーバー「Yummy」は2位発進となりました。

カリフォルニア州コンプトン出身、21歳のロディ・リッチは今週ソングスチャートで「The Box」が初制覇、さらにアルバム『Please Excuse Me for Being Antisocial』が首位に返り咲きを果たしました。ソングス/アルバム同時制覇は昨年3月9日付でレディー・ガガブラッドリー・クーパー「Shallow」および同曲を収めた映画『The Star Is Born』サウンドトラックが達成した以来となります。

「The Box」の強さは何よりもストリーミング。前週比60%アップの6820万を獲得し同指標を制しています。上記リリックビデオは1月9日公開ゆえ今回の集計期間(ダウンロードおよびストリーミングが1月3~9日、ラジオエアプレイが1月6~12日)には1日のみの加算となり、ミュージックビデオすら公開されていない状態でのストリーミング指標および総合での首位獲得となるのです。この6820万という数値はマライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You」が今年1月4日付で獲得した7220万以来の好記録であり、遡ればあのリル・ナズ・X feat. ビリー・レイ・サイラス「Old Town Road」が昨年8月3日付で7250万を獲得して以来。「Old Town Road」は昨年4月20日付で1億4300万を記録していますが、「The Box」はミュージックビデオのリリース如何では1億超えもあり得るかもしれません。他指標では、ダウンロードが前週比79%アップの11000(同指標8位)、ラジオエアプレイは同196%アップの1090万(同指標50位未満)となっています。

2位にはジャスティン・ビーバー「Yummy」が初登場。

1月3日リリースの「Yummy」はダウンロードが71000を獲得し同指標首位発進、ストリーミングは2930万となり同指標2位、そしてラジオエアプレイでは5090万を獲得、前週から28ランクアップし10位となり早くもトップ10入りを果たしています。ダウンロードはテイラー・スウィフト「You Need To Calm Down」が昨年6月29日付で79000を獲得して以来となる高水準ですが、これはジャスティン・ビーバーの公式サイトで「Yummy」のレコードやカセットが販売された分が上乗せされたことに因ります。

「Yummy」は首位こそ逃したものの、ダン+シェイとの「10,000 Hours」を5位に押し上げる原動力となり、ジャスティン・ビーバーはトップ5内に2曲を送り込みました。昨年9月21日付でポスト・マローンが、ヤング・サグを迎えた「Goodbyes」を3位に、「Circles」を4位にランクインさせて以来の記録達成です。そのポスト・マローン「Circles」は今週3位にダウンしましたが、ラジオエアプレイは前週比1%アップの1億130万を獲得し同指標4週目の首位獲得となりました。

最新のトップ10はこちら。

[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (3位) ロディ・リッチ「The Box」

2位 (初登場) ジャスティン・ビーバー「Yummy」

3位 (1位) ポスト・マローン「Circles」

4位 (2位) マルーン5「Memories」

5位 (9位) ダン+シェイ&ジャスティン・ビーバー「10,000 Hours」

6位 (4位) ルイス・キャパルディ「Someone You Loved」

7位 (7位) トーンズ・アンド・アイ「Dance Monkey」

8位 (6位) リゾ「Good As Hell」

9位 (5位) アリゾナ・ザーヴァス「Roxanne」

10位 (10位) セレーナ・ゴメス「Lose You To Love Me」

次週はロディ・リッチ「The Box」がストリーミングでどこまで上昇するかのみならず、ロディが客演参加し今週1ランクアップの11位となったマスタード「Ballin'」のトップ10入りなるか、またそのマスタードと主従関係が逆転した「High Fashion」(今週35位に入り初のトップ40入り)は…等、ロディ・リッチの勢いに注目しましょう。

また先週10日にリリースされたセレーナ・ゴメスのアルバム『Rare』からソングスチャートへの大量エントリーも見込まれます。リード曲で首位を獲得した「Lose You To Love Me」(今週10位)、そしてタイトルトラックでアルバムの冒頭を飾り、ミュージックビデオが公開されたばかりの「Rare」の動向が特に気になるところ。

無論、ジャスティン・ビーバー「Yummy」の動向がどうなるかも注目ですが、次週はダウンロード指標の大幅ダウンが予想出来ることから、トップ10をキープ出来ない可能性もゼロではないかもしれません。

 

なお、アルバムチャートでは今週からYouTubeにアップされたオフィシャルオーディオもカウント対象となっていますが、ソングスチャートではYouTubeのユーザー生成コンテンツ(UGC)も加算対象となりました。詳細はビルボードジャパン等の記事で記載され次第あらためて紹介しますが、この動きはビルボードジャパンソングスチャートをなぞるものであり、非常に面白い流れだなと感じています

(※追記 (18時48分):ビルボードジャパンの記事にて、今回のYouTubeにおけるUGCのチャートポリシー変更について紹介されていました。上記における誤りについては訂正の上、以下に内容を引用いたします。

この「ミュージック・ビデオ(オーディオ、リリック含む)の再生回数」についてだが、今週1月18日付チャートより動画共有サービスYouTubeにおける一般ユーザーのコンテンツ=UGC(User Generated Content)動画の算出方法が簡素化され、チャートにカウントされる動画は「song-UGC」、除外されるものは「non-song UGC」と表記される。「song-UGC」には、一曲としてみなされるだけの内容・長さが必要となっている。

また、これまでは(YouTubeなどの)広告支援を含むオンデマンド・ストリームと同等だった「song-UGC」は、プログラム配信(リスナーではなくサービスによって選曲が行われているパンドラなどのネット・ラジオのストリーム数)と同じ比重となる。加えて、有料/サブスクリプションでのYouTubeビデオ・ストリームとYouTube Musicのオーディオ・ストリームが分けられ、その他の有料/サブスクリプションでのストリームと同等の比重となる。これは、現在ストリーミングとしてカウントされている3種のレベル※の内、最も高いレベルとなっている。[※有料(1再生=1ユニット)、広告支援(1再生=2/3ユニット)、プログラム配信(1再生=1/2ユニット)]

これはHot 100のみならず、R&Bソング・チャートやラップ・チャート、カントリー、ラテン等の“Hot”と提示された主要チャートやストリーミング・チャートにも反映される。

【米ビルボード・ソング・チャート】ロディ・リッチ、ジャスティン・ビーバーを抑え自身初の首位に | Daily News | Billboard JAPAN(1月14日付)より

メディア、レコード会社、芸能事務所…動画への意識の改善は必要

NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)放送前後を集計期間とする1月13日付ビルボードジャパンソングスチャート。25位には紅白で初披露され、米津玄師さんが書き下ろした嵐「カイト」が初登場を果たしました。

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Twitter指標は2位となり、『NHK紅白歌合戦』での初解禁効果は大きいと思う一方、放送翌日には動画が解禁されながらも動画再生指標は未ランクイン。上記CHART insightにおいて動画再生指標は赤の折れ線で示されるのですが、出てきません。

動画の左側を見ても明らかなように、この「カイト」スペシャルムービーはNHKYouTubeアカウント発。この”NHKYouTubeアカウント発の動画は動画再生指標未カウント”というのは、昨日書いたFoorin「パプリカ」と同じであり、動画再生指標のカウント対象となる国際標準レコーディングコード(ISRC)が未付番であることは想像に難くありません。「パプリカ」については昨日記載しました。

(※ちなみにはてなブログYouTubeのURLを貼付すると、通常は上記のようにブログエントリー上で動画が見られるようになるのですが、NHKYouTubeアカウント発の動画は埋め込みコードを用いないと上記のような貼付が出来ません。嵐「カイト」については下記のように。)

(これも非常に不便なのです。)

 

さらには、デビュー前ながら昨年の『NHK紅白歌合戦』に出演したSixTONESおよびSnow Manについては、デビュー曲がTwitter指標を武器に既にチャートインしているのですが、両曲ともミュージックビデオが昨年末の段階で公開されながら動画再生指標がカウントされていないのは非常に気掛かりです。

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先述した通り、ビルボードジャパンソングスチャートの動画再生指標のカウント対象となるのは、ISRCが付番されている動画。両曲とも共にYouTubeバージョンとなっていますが、だからといって付番しないというならばそれは理由にならないと思います。またSnow Manはエイベックス所属にもかかわらずミュージックビデオは歌手自身のアカウントから発信されるという珍しいパターンなのですが、エイベックスのノウハウが活かされないためにISRC未付番につながったのかもしれません。

 

ビルボードジャパンソングスチャートが社会的ヒットの鑑にどんどん近づいてはいるものの、無論そのチャートがすべてではありません。ただし、たとえば昨年リリースの曲で同年の年間ソングスチャート最高位(3位)を記録したOfficial髭男dism「Pretender」はオリコン年間シングルCDセールスランキング(→こちら)では100位以内にも入っていませんが、昨年のヒット曲であること、『NHK紅白歌合戦』に出演したこと、ヒゲダン自身がブレイクを果たしたことに異論を差し挟む方はほぼいないはずで、ビルボードジャパンソングスチャートを重要視し同チャートで実際ヒットに至らせるのは重要な意味があると言えます。CDセールスとは異なり上位登場が直接的な利益を意味しないかもしれませんが、フェスで重要アクトの位置付けとなったり、テレビ番組で長尺を与えられる等につながるだろうことを踏まえれば、やはり重視する必要があると考えます。

昨日も書きましたが、レコード会社によるビルボードジャパンソングスチャートのポイント取りこぼし(さらにはその状況を放置すること)は大きな問題であり、所属歌手に対して大変失礼です。Foorin「パプリカ」や嵐「カイト」についてはNHKISRC未付番であることを確認し、付番しない理由を問い、遅れたとしてもすぐに付番させるよう働きかけることが必要です。この姿勢は芸能事務所側も持ち合わせなければなりません。

そして今回はNHKの姿勢を疑問視しましたが、NHKのみならずメディア全体が付番への意識をしっかり持つことが必要です。アメリカでは定番化しているテレビ出演直後のパフォーマンス動画の公開(そしてその動画がチャートに加算される仕組み)はいずれ日本でも主流になっていくかもしれず、それまでにISRC付番のマニュアルを作らないといけないでしょう。

 

メディア、レコード会社そして芸能事務所の三者が、管理する音楽をきちんと社会に流布させる責任およびそのための自身の役割を強く意識することが必要です。