イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

2020年米ソングスチャートのスタートダッシュを決めるのはドレイクかジャスティン・ビーバーか

昨日のブログエントリーでも述べましたが、米ビルボードソングスチャートは来週までクリスマスソングの大量エントリーが予想されます。

ということは、クリスマスソング一掃後にどの曲が飛び出してくるか、注目すべき点なのです。

12月24日にドレイクが新曲「War」を、ミュージックビデオ込でリリースしたのは大きなサプライズでした。

つい最近首位を獲得したばかりの歌手への和解表明という内容は、ゴシップ好きな人を引き寄せるに十分ではないかと。個人的には、以前付き合っていた彼女の名を記した「Diplomatic Immunity」(2018 EP『Scary Hours』収録)を思い出した次第。ちなみにこのEPに収録されたもう一曲は全米首位をマークした「God's Plan」であり、ドレイクイヤーとも言うべき2018年のスタートダッシュを示した曲と言えます。

 

さて、2020年のスタートダッシュを決めようとしているのはドレイクだけではありません。先日から新曲の登場を匂わせていたジャスティン・ビーバーが遂に動き出します。

12月24日、31日そして来年1月3日に何かが起きることをツイートで匂わせていたジャスティン・ビーバーですが(ツイートはこちら等)、ニューシングル「Yummy」を来年1月3日にリリースすることを日本時間の今日未明(現地時間の24日)にアナウンスしました。1月3日は金曜であり、同日から丸々一週間分のストリーミングおよびダウンロード、1月6日から一週間分のラジオエアプレイが加算される1月18日付米ビルボードソングスチャート(日本時間の1月14日発表予定)で首位を狙えるかもしれません。

ジャスティン・ビーバーは近年、客演参加したルイス・フォンシ & ダディー・ヤンキー「Despacito (Remix)」(2017)で16週首位を獲得するなど勢力的に活動し、客演や(共同)主演曲で存在感を示しています。ビリー・アイリッシュのリミックスに参加し首位獲得に貢献した(ただしストリーミング等でオリジナルバージョンを上回る人気とならなかったためにクレジットには未記載の)「Bad Guy」も含めれば、米でトップ10入りした曲は実に8曲にもおよび、ジャスティン・ビーバーのチャート上での不在はあまり感じられないのですが、しかしながら単独主演作となると、オリジナルアルバムでは2015年11月リリースの『Purpose』以来リリースがありません。米ソングスチャートで頂点に立った3曲を輩出した『Purpose』に次ぐアルバムが果たして登場するかどうかは大晦日の発表を待つことにしようと思いますが、「Yummy」が単独主演曲で次なる頂点に立つのか、曲の内容もさることながら注目です。

マライア・キャリー、ブレンダ・リーのクリスマスソングがワンツーフィニッシュ達成…12月28日付米ソングスチャートをチェック

現地時間の12月23日月曜に発表された、12月28日付最新ソングスチャート。マライア・キャリーによる1994年リリースの「All I Want For Christmas Is You (邦題:恋人たちのクリスマス)」が2週目の首位を獲得、ブレンダ・リー「Rockin' Around The Christmas Tree」が2位に到達し、チャート史上初めてクリスマスソングがワンツーフィニッシュを達成しました。

前週初めて首位を獲得したマライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You」はストリーミングでもクリスマスソング史上最大となる5440万を獲得(前週比19%アップ)、同指標3週連続、通算4週目の首位を獲得しました。ダウンロードは公式ホームページで販売したシングルCD等が加算された前週の反動で前週比44%ダウンの15000(同指標7位)、ラジオエアプレイは同26%アップの4290万(同14位)を獲得しています。

マライア・キャリーが「All I Want For Christmas Is You」で1990年代以降3つのディケイドで首位を記録したことについては前週お伝えしました(→マライア・キャリーのあのクリスマスソングが25年を経て首位獲得、ジュース・ワールド8位再浮上、トーンズ・アンド・アイも遂に…12月21日付米ソングスチャートをチェック(12月17日付)参照)。その際にも書きましたが、今シーズンのクリスマスソングがピークを迎えるのは来週(2020年1月4日付)と予想されるため、同日付のソングスチャートで「All I Want For Christmas Is You」が1位を獲得したならば、マライアは2020年代を含む4つのディケイドで首位を獲得した初の歌手となります。マライアはそれを意識してでしょうか、2019年版のミュージックビデオを前週金曜に公開。再生回数は来週以降、ストリーミング指標に加算されます。

続く2位にはブレンダ・リー「Rockin' Around The Christmas Tree」が1ランクアップし、同曲の最高位を更新。ストリーミングは前週比22%アップの4530万(同指標2位)、ダウンロードは同5%アップの6000(同30位)、ラジオエアプレイは同3%アップの2700万(同33位)となり、米ビルボードは下記ミュージックビデオの登場がストリーミングの上昇に作用したと伝えています。

クリスマスソングについては他にも、バール・アイヴス「A Holly Jolly Christmas」が4ランクアップの6位となり最高位を更新、ボビー・ヘルムス「Jingle Bell Rock」が6ランクアップで9位に到達。トップ10にクリスマスソングが4曲ランクインするのは昨シーズンにクリスマスソングがピークに達した2019年1月5日付以来となります(同日付チャートについては米ソングスチャート、マライア・キャリーのクリスマスソングがストリーミング効果でトップ3入り(2019年1月1日付)をご参照ください)。また今週はワム!Last Christmas」が17位に入り同曲初、ワム!にとって7曲目となるトップ20入りを果たしています(これまでの最高位は25位)。この曲についてはミュージックビデオの4Kバージョンがストリーミングを押し上げたと言えるでしょう。

ブレンダ・リーワム!をはじめとする今年のクリスマスソングの施策については下記ブログエントリーにまとめています。

クリスマスソングが目立つチャートの中、ポスト・マローン「Circles」が3位にダウンしながらもラジオエアプレイでは同曲初となる首位を記録(前週比3%アップの9670万)。ポストにとって同指標を初めて制したことになります。

そして5位にはリル・ウージー・ヴァート「Futsal Shuffle 2020」が初登場。

ストリーミングは4090万を獲得しクリスマスソング2曲に次ぐ同指標3位、ダウンロードは6000で同29位を記録。リル・ウージー・ヴァートにとってはミーゴスに客演した「Bad And Boujee」(1位)、自身の「XO Tour Lif3」(7位)に次ぐ3曲目のトップ10となり、主演曲では最高位を更新しました。TikTok等でフットサルの足さばきを模したダンスチャレンジが人気となり上昇したとみられています。

(勝手ながら紹介させていただきました。問題があれば削除いたします。)

 

最新のトップ10はこちら。

[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (1位) マライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You」

2位 (3位) ブレンダ・リー「Rockin' Around The Christmas Tree」

3位 (2位) ポスト・マローン「Circles」

4位 (6位) アリゾナ・ザーヴァス「Roxanne」

5位 (初登場) リル・ウージー・ヴァート「Futsal Shuffle 2020」

6位 (10位) バール・アイヴス「A Holly Jolly Christmas」

7位 (7位) マルーン5「Memories」

8位 (4位) ルイス・キャパルディ「Someone You Loved」

9位 (15位) ボビー・ヘルムス「Jingle Bell Rock」

10位 (5位) リゾ「Good As Hell」

『Fine Line』が今年3番目のユニット数を記録し今週のアルバムチャートを制したハリー・スタイルズは、「Adore You」(24位)含め7曲が100位以内にランクイン。クリスマスソングの大量エントリーもあってかトップ10入りは果たせませんでしたが、次週以降の動向に注目です。

そのクリスマスソングのピークが来週だと考えれば、史上初となるクリスマスソングのトップ3独占もあり得るでしょう。クリスマスソング以外の楽曲はそれまでにどうやって体力を維持し、クリスマスソング急失速後に施策を用意するかが求められます。ジャスティン・ビーバーが今日動き出すという話も聞こえてきており、”クリスマスソング後”を見据えた戦いが既にはじまっているように感じます。

年間ランキングを発表したオリコンの記事から、オリコンとビルボードジャパンが何を重視しているかを理解する

オリコンの年間ランキングが本日発表されました。

オリコンについては合算ランキングを当該年度より発表しましたが、CDのみのランキングとどちらを優先するか?という疑問をずっと持ち合わせていました。

上記オリコンのリンクを辿ると、一覧でシングルランキングが真っ先に登場するのに対し、合算シングルは11段目。CDを中心としたフィジカルを優先する姿勢を読み取ることが出来ます。また上記ブログエントリーにおけるもうひとつの疑問だったシングルCDセールスへの係数使用は行われていないことから、合算ランキングにおいてもシングルCDが強い曲が制する構造はほぼ変わりません(この点は合算ランキングの計算式が登場した際にも疑問点として記載しました→こちら)。

 

今回のオリコン年間ランキングに対して抱いた感想は、”売上重視”という姿勢。今年は嵐が200億円を超えるセールスを記録したことが全面に訴求され、NHKニュースでもオリコンランキング発表の際にその点を前面に掲げています。

実は昨年度の年間アーティストセールス部門トータル1位に輝いた安室奈美恵さんについても、オリコンは売上金額を大きめに取り上げていました。

対して、12月6日に発表された2019年度のビルボードジャパン年間チャートにおいてもアーティスト別のチャートである【TOP Artists】が存在しますが、これはパッケージセールスのみの売上金額ではなく接触指標群も含むもので、弊ブログでいうところの”社会的ヒットの鑑”と言えます。そしてこのチャートはソングスチャート、アルバムチャートに続いて紹介されるため、オリコンとは大きく異なるのです。

”売上重視”のオリコンと”社会的ヒットの鑑”を目指すビルボードジャパンのスタンスの違いは当該年度振り返り記事ひとつを見ても明確。それが来年リリースされる2組のデビュー曲のランクイン時の対応にも表れるかもしれません。

(勝手ながら紹介させていただきました。問題があれば削除いたします。)

オリコンのスタンスを踏まえれば2組のシングルCDセールスをまとめるのが自然かもしれませんが、個人的にはそれは2組でどちらがより優れているかを示すことにはならないと考えます。売上ランキングが社会的ヒットと乖離している現代とはいえ、競争原理を壊す方策をオリコンが採るならば、オリコンの信憑性はさらに降下の一途だと思うのです。無論これはビルボードジャパンにも当てはまります。シングルCDセールス初加算週の動向はいつも以上に注目しないといけません。

 

ザ・ウィークエンド「Heartless」の米ソングスチャート急落新記録、実はそこまで憂える必要はないのでは

最新12月21日付米ビルボードソングスチャートにおいて、ザ・ウィークエンド「Heartless」が前週の首位から17位に急落し、首位獲得翌週の大幅ダウン記録を更新してしまいました。

上記ブログエントリーにおいて、この記録を『なんとも日本らしい記録』とあたかも不名誉と受け止められかねない表現で記載しましたが、ちょっと訂正したいと思い今日のエントリーをしたためた次第です。

 

たしかに「Heartless」は首位獲得の翌週、デジタル2指標を大きく落としています。ストリーミングは前週比31%ダウンの2060万(同指標2→18位)、ダウンロードは同90%ダウンの6000(同1→28位)の一方ラジオエアプレイは同47%アップの3850万(同38→19位)であり、ラジオエアプレイの上昇が他指標の落ち込みをカバーしきれていません。しかし、これを初登場した週から3週に渡る動向を追いかけると、違う流れが見えてきます。

ザ・ウィークエンド「Heartless」の総合および各指標毎の順位、ならびに数値は上記の通り。

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「Heartless」のリリースは11月27日水曜であり、32位に初登場を果たした12月7日付ではストリーミングおよびダウンロードが2日間、ラジオエアプレイが5日間の集計期間となっています。これを踏まえて各指標の動向を確認しましょう。

まずは前週からの落ち込みが最も激しいダウンロードについて。

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当該指標では"ダウンロード"という表現が用いられてはいますが、公式ホームページで販売されたレコードおよびシングルCD(以下フィジカル)のセールスが前週加算され(上記キャプチャはT H E W E E K N D S H O Pより)、その反動が今週に表れているといえます。初週における2日間の売上が10000に対し今週集計期間フルでの売上が6000ということから、フィジカル以外のセールスはリリース後間もなく購入されたことが見えてきます。

ストリーミングについて、たとえばSpotifyデイリーチャートでは下記の通り。

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The Weeknd - Heartless - Spotify Chart History - kworb.netで日々の再生回数を追いかけることが出来ます。アメリカ(US)における再生回数は極端に落ちているわけではなく、また順位のダウンはジュース・ワールドの訃報やハリー・スタイルズのアルバムリリース(に伴う収録曲)、クリスマスソングなどに抜かれたことも大きいと言えます。

唯一の所有指標であるダウンロードは瞬発的且つ一過性のものであり、リリース直後に上昇し後にダウンする傾向がみられる(そして今回公式ホームページでフィジカルを販売したことがその傾向をさらに加速させた)一方、デジタルによるストリーミングは瞬発力もあれど接触指標で何度も触れられるためにダウン幅が低く、長く残る曲も少なくありません。他方ラジオエアプレイは集計対象局が多いこともあってか瞬発力には長けていませんが、多くの局で支持されるほど緩やかに上昇していきます。ストリーミングが思ったより高くないという見方もあれど(実は「Heartless」の2日後にリリースされた「Blinding Lights」も好調で、両者がバッティングしているだろうことが影響しているとも言えそう)、ラジオエアプレイの上昇に伴い再浮上する可能性は十分です。クリスマスソングが急失速する12月26日以降は順位的にも上昇すると捉えていいのかもしれません。

 

公式ホームページにおけるフィジカルの販売による前週のダウンロード指標上昇は、たしかにビルボードジャパンソングスチャートにおけるシングルCDセールス指標の加算に似ているかもしれません。しかしながら今回「Heartless」が1→17位というワースト記録を更新したとはいえ、日本のような1→100位圏外という状況に陥らないのはストリーミングを構成するサブスクリプションサービスやYouTubeアメリカで定着しているゆえと言えるでしょう。

上記ブログエントリー内で取り上げた音楽プロデューサーの亀田誠治さんの講演にもあるように、アメリカでフィジカル戦略を実施しても急激に落ち込むことが少ないのはストリーミングの充実があってこそ。亀田さんはアルバムを例に取り上げていますが、ソングスチャートにおいてはラジオエアプレイも比較的大きなウェイト占めているわけで、個人的には日本の状況ほど憂える必要はないと思っています。

 

ちなみに、仮に2020年1月4日付米ビルボードソングスチャートまでマライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You (邦題:恋人たちのクリスマス)が首位を獲得し続けるならば、翌週は100位圏外になること必至と考えられます。この週の集計期間は3指標全てクリスマス以降となるため、マライアが「Heartless」の記録を更新するかもしれません。しかしながらこれはやむを得ないことと言えます。

ジャニーズ事務所所属歌手がデジタル解禁に至るかのターニングポイントは2020年1月22日ではないか

昨日のこのつぶやきが、現段階で6万を超えるインプレッション数を獲得しています。

ジャニーズ事務所所属歌手をはじめとするアイドルに関して言及するとインプレッションが増える傾向にあるのは存じ上げていたのですが、まさかここまでとはと驚いています。しかしながら自分のツイートに対して、"ジャニーズはデジタル解禁しなくてもいい、このツイートはおかしい"的な反論等はみられないことから、ジャニーズ事務所所属歌手のファンの方々が、推す歌手のデジタル非解禁の姿勢に対し何かしらの思いを抱いているではないかと感じています。

 

自分がこの件に言及した理由は堂本剛さんのプロジェクト、ENDLICHERIがファンクをベースに素晴らしい作品を連発しているからであり、また音楽フェス出演を機に好事家の間からもENDLICHERIの音楽性の凄さを絶賛する声が多数出ていると感じるゆえ。しかしながらその音楽性を、デジタル未解禁の影響で日本のみならず海外にも轟かせられないのは果てしなく機会損失ではないかと思うのです。今夏アルバム『NARALIEN』リリースのタイミングでこのようなことを書いたのは、堂本さん側が配信したいのではという思いを(勝手ながら)汲んでのことです。

MISIAさんはサブスクリプションサービス、そしてダウンロードでも解禁していますが、仮に堂本剛さん側が配信を固辞する姿勢を採るならばその部分だけが穴あきになるものと思われます。

 

さて、MISIAさんのベストアルバム『MISIA SOUL JAZZ BEST 2020』のリリースは2020年1月22日。この日は堂本剛さんも所属するジャニーズ事務所から、SixTONESそしてSnow Manの二組が同時デビューを果たします。どちらもYouTubeに公式チャンネルが用意されていることから(SixTONESこちらSnow Manこちら)、彼らのデビュー曲がYouTubeチャンネルを持つ嵐同様、デジタル解禁されるのが自然と考えていいでしょう。そう考えるとこの2020年1月22日が、ジャニーズ事務所所属歌手が本格的にデジタル解禁に動く絶好の機会と捉えていいのかもしれません。

仮にその週はデビューする2組を推そうと他の所属歌手は解禁に関する動きをみせないかもしれませんが、堂本剛さんの参加曲ならば解禁という形もあり得るのではないでしょうか。希望の域を越えないと言われればそれまでですが、このタイミングが絶好だと思い、勝手ながら提案させていただきます。

ジャニーズ事務所所属歌手のデジタル解禁については、今年の山下智久「CHANGE」のダウンロードセールスの成功例を上記ブログエントリーに記すと共に、嵐の初のデジタルシングル「Turning Up」がビルボードジャパンソングスチャートにおいて同事務所所属歌手では異例となる7週連続トップ20入りしたこと(下記エントリー参照)もまた成功例と言えます。

そう考えると、シングルCDのみでのリリースという姿勢にこだわらなくとも十分にやっていけると思うのですがいかがでしょう。

 

気掛かりなのは、この二組のデビューシングル表題曲が互いのCDに収録されるため、シングルCDのカウントがセールスチャートでどうなるかということ。ビルボードジャパンソングスチャートではTwitter指標の上昇に伴いそれぞれが既にランクインを果たしている一方、オリコンでは合算されると耳にします。またジャニーズ事務所やレコード会社がデジタルよりもシングルCDセールスを優先するのであれば、SixTONESおよびSnow Manのダウンロードおよびサブスクリプションサービス解禁のタイミングをシングルCDリリースから遅らせるという措置が採られるかもしれません。それらも含めて、2020年1月22日に注目しようと思います。

嵐が海外のリリース手法を採り入れ、デジタルを大きな味方につけている件

サブスクリプションサービス解禁に至る歌手が増えています。本日サザンオールスターズが、メンバーのソロ作品も含め1000曲近い楽曲を配信開始しました。

サザンオールスターズの場合は公式YouTubeチャンネルにおいて、ミュージックビデオフルバージョンでの配信はおろか配信している曲自体少ない状況ではありますが、いずれ動いてくることでしょう。

厳しい物言いを承知で書くならば、最早日本における解禁が世界と比べて”遅きに失した感は否めない”と思うのですが、それでも祭りになるという現象は前週のL'Arc~en~Ciel解禁でよく解ります。

SNSでの口コミ数によるSpotifyバイラルチャートで集計期間最終日に解禁したL'Arc~en~Cielが週間で上位を独占したとReal Soundが報じています。一方、日本における(実際の)再生回数を示すSpotifyデイリーチャートにおいては解禁日に「HONEY」が126位に入ったのみ(そして翌日には200位圏外)。どの曲を聴くかが分散化されていることも考えられますが、解禁が祭りと化したのはテレビを利用した告知が功を奏したためとも言えそうです。

言い換えれば、テレビの存在があって更に大きなバズとなるわけで、L'Arc~en~Cielはその話題作りに長けていたわけです。先述したサザンオールスターズサブスクリプションサービスでも話題を掴み取るには、本日同サービスで解禁されたことを朝の情報番組等で取り上げられることが重要と言えます。

 

さて、いち早くサブスクリプションサービスを解禁した嵐はさらなるステップを歩んでいます。

20年前のデビュー曲に”リプロダクション”を施した「A-RA-SHI:Reborn」が本日サブスクリプションサービスで解禁され、ダウンロードも開始。この告知が昨日夕方に嵐のTwitterアカウントで発信され、わずか半日で7万近くリツイートされています。ビルボードジャパンへのチャートインは来週12月25日水曜発表(12月30日付)。動向が楽しみでなりません。

 

ビルボードソングスチャートを追いかける身として、このような【突然の告知→翌日リリース】という手法をよく目にします。アメリカではシングルをCD等のフィジカルでリリースすることはほぼないため(公式ホームページで販売する傾向は出ていますが)、CDショップを考慮せずともサプライズリリースが可能であり、デジタルリリース時の話題性を高めるべくこのような手法がよく採られるのです。嵐の場合はデジタルシングルの初作である「Turning Up」も(先行5曲を除く)シングル表題曲の一斉解禁のタイミングで突如リリースされ、ビルボードジャパンソングスチャートでは現在までに7週連続20位以内をキープ、アイドルでは珍しいロングヒットとなっています。その熱も冷めやらぬ中、新たな楽曲を投下するというのは実に面白い試みで、間を開けずにシングルをリリースするというのもまたサブスクリプションサービス時代ならではと言えます。

個人的には、既に『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)での初披露が決定している米津玄師さん書き下ろしの「カイト」も、その翌日に解禁されるのではないかと予想しています。デジタルシングルならば元日解禁も当然可能です。

海外で定番化した【突然の告知→翌日リリース】手法を採り入れて曲をサブスクリプションサービスで配信、仮に「カイト」が元日にリリースされるならば今も日本における大きな影響源であるテレビも活用…嵐はデジタルを味方につけたことでその自由度は俄然高まった印象があります。また「A-RA-SHI:Reborn」はラップパート以外英語で歌われていますが、米ビルボードソングスチャートにおけるストリーミング(サブスクリプションサービス再生回数等)およびダウンロードの集計期間が金曜開始ゆえ、それを見越して金曜解禁したのならば嵐が見据えるのは日本のみならずグローバルであると言えるかもしれません。公式YouTubeチャンネルでのミュージックビデオ全曲解禁、そしてアルバム曲のサブスクリプションサービス解禁が成されたならば彼らの音楽活動はもはや完璧と言えるのではないでしょうか。

(追記あり) チャートアクションの取りこぼしを防ぐのは誰の役割か…12月23日付ビルボードジャパンソングスチャートを例に考える

(※追記 (2020年2月27日8時5分):昨年12月23日付ビルボードジャパンソングスチャートにおいてラジオエアプレイ指標に誤りがあり、ビルボードジャパンではチャート公表の翌日に同指標順位および総合ポイント(一部総合順位)が訂正されています。ゆえに今回のブログエントリーでは修正前のデータを記載しておりますことをご了承ください。また今回のチャート更新ミスに関しては後日その理由を推測しておりますので、詳しくはビルボードジャパンの更新乱れ問題の原因を推測し再発防止と求めると共に、チャート更新の改善策を提示する(2020年2月27日付)をご参照ください。)

 

 

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点をソングスチャート中心に紹介します。

 

12月9~15日を集計期間とする12月23日付ビルボードジャパンソングスチャートを制したのは、Official髭男dism「Pretender」でした。

首位獲得は3週ぶり、通算3週目。シングルCDセールスに長けた曲が瞬発的に代わる代わる首位を獲得しながら翌週には急落するビルボードジャパンソングスチャートにあって、ポイント前週比は3週連続でダウンしながらも93~95%の範囲にとどめています。他方前週首位のKinKi Kids「光の気配」はポイント前週比13.2%、21位へダウンしています。

ゆえに嵐「Turning Up」の動向は注目に値するわけです。たとえば昨日発表された、米津玄師さんが楽曲提供した「カイト」は今年の『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)で初披露されるとのことですが。

この曲がその紅白を経て翌日(元日)にリリースされるということもあり得るかもしれません。デジタル解禁を機に、そのようなフレキシブルな戦略を練ることが出来るわけです。

 

今週はOfficial髭男dismが3曲、LiSAさんが2曲トップ10に入っていることもさることながら、sumika「願い」が5位に上昇したことも注目と言えます。

指標毎の構成をみると、興味深いことに気付きます。

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CHART insightをみると、シングルCDセールスは7位ながらルックアップは首位を獲得。ルックアップはパソコン等に取り込んだ際にインターネットデータベースへアクセスする回数を示す指標であり、シングルCDセールスに比べて低いほど売上枚数に対するユニークユーザー数が少ないこと、多いほどレンタルされていることを指すと言えます。「願い」のレンタル上昇は集計期間中に放送された『ミュージックステーション』(テレビ朝日 金曜21時)で披露されたこと、主題歌となった『おっさんずラブ- in the sky-』(テレビ朝日 土曜23時15分)の影響、およびダブルAサイドの「ハイヤーグラウンド」がアニメ映画主題歌に起用されていることなどがありますが、何よりもこのCDが発売と同日にレンタル解禁されたことが大きく影響していると言えます。 

他方気掛かりなのは、この「願い」が動画再生指標を獲得していないということ。

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「願い」のCHART insight(→こちら)について、上記は総合チャート(黒の折れ線で表示)および構成8指標すべてを、下記は総合チャートおよび動画再生指標(赤)のみを抽出したもの…ですが動画再生指標は100位未満(300位圏内)にすら入っていません。

先程のミュージックビデオは11月19日に公開され、今朝の段階で再生回数は302万を突破。ダウンロードやストリーミングが先行解禁された週およびシングルCDリリースやテレビ出演した週で動画再生が伸びるのが自然と考えれば、ミュージックビデオ解禁4週目となる今回の集計期間においては100万近い再生回数を記録したと捉えてもおかしくないと思うのです。

YouTubeのミュージックビデオにおいてはこのようなチャートも存在します。

こちらの集計期間は12月6~12日であり、ビルボードジャパンの集計期間とずれてはいますが、10位のMAMAMOO「HIP」が118万回。YouTubeチャートでは52週以上100位以内に入った曲は殿堂入りとみなし除外される一方でビルボードジャパンソングスチャートの動画再生指標にはその概念(チャートポリシー)はないため単純比較は出来ませんが、集計期間中に100万回再生されたならば、下位であろうとも動画再生指標で300位以内に入るだろうというのが私見です。しかしながら。

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上記キャプチャは、YouTubeにおける「願い」の動画説明欄(”もっと見る”をクリックもしくはタップすると表示されます。今回のチャート分析のために上記をキャプチャしましたが、問題があれば削除いたします)。ここであることに気付きます。

動画説明欄の最後には”この動画の音楽”として著作権者等が記載されることが多く、たとえばOfficial髭男dism「Pretender」においては以下の通り。

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(今回のチャート分析のためにキャプチャしました。問題があれば削除いたします。)

「Pretender」ではレコード会社等のクレジットがなされていますが、「願い」にはみられません。動画再生指標が加算されるためには、日本レコード協会が発行および管理を行う国際標準コード(ISRC)が付番されていることが最低限の条件となり、基準を満たす作品は上記「Pretender」のような著作権者等が記載されていることがほとんどです。ISRC付番作品と著作権者等の記載がイコールとは断定出来ませんが、弊ブログでチャート動向を追いかけるとほぼイコールと言えるものと考えます。動画再生指標加算対象の動画については今月、LiSA「紅蓮華」を例に記載しました。

もしかしたら、sumika「願い」は動画再生指標カウントの条件であるISRCが未付番の可能性もあるのではないでしょうか。それが事実だとして、仮にISRCが付番され動画再生指標が加算されていたならば、ポイント数で混戦する2~4位を上回ることも出来たのではないか…そう思うと非常に勿体無く思ってしまうのです。

 

ISRCの未付番、ショートバージョン等動画再生指標の取りこぼしによりチャートアクションに悪しき影響を与える事例がこの一年間で散見されます。その度に指摘しているのですが、たとえばISRC付番の役割がレコード会社ではなく歌手の所属事務所側にあったとして、専門知識に長けたレコード会社がきちんとサポートする必要があるものと考えます。毎週のチャートをチェックし、取りこぼしがないかを確認し改善させることもレコード会社のマーケティングの役割ではないでしょうか。