イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり) チャートアクションの取りこぼしを防ぐのは誰の役割か…12月23日付ビルボードジャパンソングスチャートを例に考える

(※追記 (2020年2月27日8時5分):昨年12月23日付ビルボードジャパンソングスチャートにおいてラジオエアプレイ指標に誤りがあり、ビルボードジャパンではチャート公表の翌日に同指標順位および総合ポイント(一部総合順位)が訂正されています。ゆえに今回のブログエントリーでは修正前のデータを記載しておりますことをご了承ください。また今回のチャート更新ミスに関しては後日その理由を推測しておりますので、詳しくはビルボードジャパンの更新乱れ問題の原因を推測し再発防止と求めると共に、チャート更新の改善策を提示する(2020年2月27日付)をご参照ください。)

 

 

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点をソングスチャート中心に紹介します。

 

12月9~15日を集計期間とする12月23日付ビルボードジャパンソングスチャートを制したのは、Official髭男dism「Pretender」でした。

首位獲得は3週ぶり、通算3週目。シングルCDセールスに長けた曲が瞬発的に代わる代わる首位を獲得しながら翌週には急落するビルボードジャパンソングスチャートにあって、ポイント前週比は3週連続でダウンしながらも93~95%の範囲にとどめています。他方前週首位のKinKi Kids「光の気配」はポイント前週比13.2%、21位へダウンしています。

ゆえに嵐「Turning Up」の動向は注目に値するわけです。たとえば昨日発表された、米津玄師さんが楽曲提供した「カイト」は今年の『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)で初披露されるとのことですが。

この曲がその紅白を経て翌日(元日)にリリースされるということもあり得るかもしれません。デジタル解禁を機に、そのようなフレキシブルな戦略を練ることが出来るわけです。

 

今週はOfficial髭男dismが3曲、LiSAさんが2曲トップ10に入っていることもさることながら、sumika「願い」が5位に上昇したことも注目と言えます。

指標毎の構成をみると、興味深いことに気付きます。

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CHART insightをみると、シングルCDセールスは7位ながらルックアップは首位を獲得。ルックアップはパソコン等に取り込んだ際にインターネットデータベースへアクセスする回数を示す指標であり、シングルCDセールスに比べて低いほど売上枚数に対するユニークユーザー数が少ないこと、多いほどレンタルされていることを指すと言えます。「願い」のレンタル上昇は集計期間中に放送された『ミュージックステーション』(テレビ朝日 金曜21時)で披露されたこと、主題歌となった『おっさんずラブ- in the sky-』(テレビ朝日 土曜23時15分)の影響、およびダブルAサイドの「ハイヤーグラウンド」がアニメ映画主題歌に起用されていることなどがありますが、何よりもこのCDが発売と同日にレンタル解禁されたことが大きく影響していると言えます。 

他方気掛かりなのは、この「願い」が動画再生指標を獲得していないということ。

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「願い」のCHART insight(→こちら)について、上記は総合チャート(黒の折れ線で表示)および構成8指標すべてを、下記は総合チャートおよび動画再生指標(赤)のみを抽出したもの…ですが動画再生指標は100位未満(300位圏内)にすら入っていません。

先程のミュージックビデオは11月19日に公開され、今朝の段階で再生回数は302万を突破。ダウンロードやストリーミングが先行解禁された週およびシングルCDリリースやテレビ出演した週で動画再生が伸びるのが自然と考えれば、ミュージックビデオ解禁4週目となる今回の集計期間においては100万近い再生回数を記録したと捉えてもおかしくないと思うのです。

YouTubeのミュージックビデオにおいてはこのようなチャートも存在します。

こちらの集計期間は12月6~12日であり、ビルボードジャパンの集計期間とずれてはいますが、10位のMAMAMOO「HIP」が118万回。YouTubeチャートでは52週以上100位以内に入った曲は殿堂入りとみなし除外される一方でビルボードジャパンソングスチャートの動画再生指標にはその概念(チャートポリシー)はないため単純比較は出来ませんが、集計期間中に100万回再生されたならば、下位であろうとも動画再生指標で300位以内に入るだろうというのが私見です。しかしながら。

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上記キャプチャは、YouTubeにおける「願い」の動画説明欄(”もっと見る”をクリックもしくはタップすると表示されます。今回のチャート分析のために上記をキャプチャしましたが、問題があれば削除いたします)。ここであることに気付きます。

動画説明欄の最後には”この動画の音楽”として著作権者等が記載されることが多く、たとえばOfficial髭男dism「Pretender」においては以下の通り。

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(今回のチャート分析のためにキャプチャしました。問題があれば削除いたします。)

「Pretender」ではレコード会社等のクレジットがなされていますが、「願い」にはみられません。動画再生指標が加算されるためには、日本レコード協会が発行および管理を行う国際標準コード(ISRC)が付番されていることが最低限の条件となり、基準を満たす作品は上記「Pretender」のような著作権者等が記載されていることがほとんどです。ISRC付番作品と著作権者等の記載がイコールとは断定出来ませんが、弊ブログでチャート動向を追いかけるとほぼイコールと言えるものと考えます。動画再生指標加算対象の動画については今月、LiSA「紅蓮華」を例に記載しました。

もしかしたら、sumika「願い」は動画再生指標カウントの条件であるISRCが未付番の可能性もあるのではないでしょうか。それが事実だとして、仮にISRCが付番され動画再生指標が加算されていたならば、ポイント数で混戦する2~4位を上回ることも出来たのではないか…そう思うと非常に勿体無く思ってしまうのです。

 

ISRCの未付番、ショートバージョン等動画再生指標の取りこぼしによりチャートアクションに悪しき影響を与える事例がこの一年間で散見されます。その度に指摘しているのですが、たとえばISRC付番の役割がレコード会社ではなく歌手の所属事務所側にあったとして、専門知識に長けたレコード会社がきちんとサポートする必要があるものと考えます。毎週のチャートをチェックし、取りこぼしがないかを確認し改善させることもレコード会社のマーケティングの役割ではないでしょうか。