ではなぜ、ビルボードジャパンではダウンロードのウェイトを上げているのでしょう。ビルボードジャパンではアルバムCDセールスにおいて、シングルCDとは異なり複数買いを考慮した係数(売上枚数が極端に高い場合、作品毎に調整するために用いる数値)を用いていない模様です(係数については【Billboard JAPAN Chart】よくある質問 | Special | Billboard JAPANをご参照ください)。しかし、アルバムでも複数種販売が一般化し、シングルほどではないにせよユニークユーザー(実際の購入者)数が売上枚数と乖離することは珍しくありません。他方ダウンロードは基本1種類であり、ダウンロードサイト毎に買うという熱烈なファンの方がいらっしゃると仮定しても、売上枚数とユニークユーザー数の乖離はほぼないものと思われます。この実情を踏まえて、ウェイトの差を設けたのではないかと結論付けたのですが、いかがでしょう。
とはいえサブスクリプションサービス解禁、およびYouTubeチャンネルで公開されたミュージックビデオは「A・RA・SHI」「Love so sweet」「Happiness」「truth」「Monster」の5曲のみ。これではスピッツが「優しいあの子」を公開したときとさほど変わらない気がします。それでも大きな話題になるのは、ジャニーズ事務所がこれまでデジタルに明るくなかったことの反動ゆえでしょう。
10月12日付アルバムチャートで初登場首位を獲得したのがダベイビー『Kirk』。自身の名字を冠した作品が自身初となる首位に。前作『Baby On Baby』は今年3月1日のリリースゆえ、わずか半年での新作リリース自体がダベイビーの勢いを物語っています。そして前作収録曲で、悪名高きヒップホップ界の大御所(にして現在収監中)であるシュグ・ナイトの名を借りた「Suge」が米ソングスチャート7位を記録したことで、今回のアルバムへの期待やダベイビーの認知度がさらに高まったと言っていいでしょう。
アルバム『Kirk』は初登場で首位を獲得。前作『Baby On Baby』が最高7位だったため、わずか2作目且つメジャーデビューした年にアメリカを制覇したわけです。そして今作の『週間ユニットは145,000で、そのうちアルバムの純粋な売上枚数はわずか8,000枚、ストリーミングによるユニット数が136,000と、全体の9割以上を占め』(上記ビルボードジャパンの記事より)、”所有<接触”の差が明確になっています。
その結果。
All 13 tracks from @DaBabyDaBaby's 'KIRK' are charting on this week's Hot 100.
女性ラッパーの最長首位記録であるイギー・アゼリア feat. チャーリーXCX「Fancy」(2014)まであと1週に迫ったリゾ「Truth Hurts」。ダウンロードは前週比19%アップの30000、ラジオエアプレイは同2%アップの1億2200万で2指標を制覇。ストリーミングは同1%アップの2780万で1ランクアップの6位に。この勢いもあって、次のシングル「Good As Hell」も43→28位に上昇、初のトップ40入りを果たしました。
「Truth Hurts」は2017年にリリースされ、TikTokでチャレンジモノがヒットしたり今年ネットフリックスの映画に用いられたことでブレイク、アルバム『Cuz I Love You』(2019)に追加収録された経緯がありますが、こちらは2016年春にリリースされたEP『Coconut Oil』に収録され(ゆえにミュージックビデオも3年前に制作)、一方で『Cuz I Love You』には未収録。今年のMTVビデオミュージックアワードで「Truth Hurts」と共に披露されたのがこの「Good As Hell」でした。ダウンロードは前週比16%アップの12000で同指標8位、ストリーミングは同10%アップの1140万で同50位に再浮上、そしてラジオエアプレイは同50%アップの2410万で同40位に初登場。レーベルが「Good As Hell」を次のラジオ向けシングルと位置付けたことで、さらなる上昇が期待されます。
今週4位のリル・テッカ「Ran$om」は自己最高位をキープしたのみならず、ストリーミングは4310万を獲得し、前週比6%ダウンながら同指標7週目の首位を獲得。2013年1月以降のストリーミングチャートにおいて、「Ran$om」はデビュー曲における長期政権記録で9位タイとなりました。ちなみに3位は先述の「Fancy」(13週)、2位はデザイナー「Panda」(2016 14週)、そして1位はリル・ナズ・X feat. ビリー・レイ・サイラス「Old Town Road」(2019 20週)。「Old Town Road」の強さが際立ちます。