イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ストリーミング解禁とロングヒットは比例する…条件の似た2曲を数値面から再検証する

一昨日の星野源さんのストリーミング解禁に触れた際、金曜を解禁日としたのは主演映画『引っ越し大名!』の公開タイミングゆえではと推測しました。

後にコメント欄にて、”ワールドツアーの発表に合わせた解禁ではないか”という意見をいただきました。

ブログアップ後に知ったこの発表を受けて、星野源さんが音源解禁を”海外仕様”に設定したと捉えた次第。海外では金曜解禁が標準化し、米ビルボードソングスチャートにおけるデジタル2指標の集計期間は金曜からとなるため。次作のリリース日が仮に金曜解禁だとしたら、星野さんは世界を見据えていると言えるかもしれません。日本ではチャートの集計期間が月曜からとなるため、ストリーミング解禁の影響は来週および再来週のチャートをチェックして判断したいと思います。

 

 

さて、ストリーミングが主にチャートにどのような効果や影響を及ぼすかについては以前、あいみょん「今夜このまま」とback number「HAPPY BIRTHDAY」を比較して記載しました。

ミュージックビデオの公開手法も大事であることや、さらにストリーミングがセールスを駆逐しないことについてはサカナクションおよびBUMP OF CHICKENの最新アルバムを例に記載しました。星野源さんがストリーミング解禁したことにより、”アルバムが売れなくなる”という危惧感が一部から聞こえてきたのですがそれはほぼ杞憂であり、むしろ、さらなるロングヒットが期待出来ると言っていいでしょう。

それが証拠に、以前比較した2曲について"数値"の面で比較してみると非常に解りやすいのです。

 ※各指標について

 ・P:総合ポイント

 ・前週比:総合ポイントの前週比。前週および当週共に50位以内にランクインした場合のみ計算(50位未満は総合ポイントが表示されない)

 ・上記の理由により50位未満、総合ポイントで比較不能時は?で表示

 ・各指標について

  (詳細はビルボードジャパンの自問自答 | Special | Billboard JAPANをご参照ください)

   CD:シングルCDセールス

   DL:デジタルダウンロード

   ST:ストリーミング

   RA:ラジオエアプレイ

   LU:ルックアップ

   TW:Twitter

   MV:動画再生

   KA:カラオケ

   (※カラオケ指標は2019年度より導入のため、2018年12月10日付より加算対象となっています。)

 ・各指標毎順位において

   [-]:ランク圏外(101~300位)

   [ ]:(ブランク):ランクインせず(カウント対象前を含む)

   [?]:未表示もしくは計算不能

※これらはCHART insight | Billboard JAPANから曲名をクリックすると確認可能

 

  順位 P 前週比 CD DL ST RA LU TW MV KA
2018/10/1 -             -    
2018/10/8                    
2018/10/15 -           -    
2018/10/22 -           -    
2018/10/29 -       9   -    
2018/11/5 7 4209   3 2 3   43    
2018/11/12 11 3877 92.1%   7 1 6   79    
2018/11/19 9 4513 116.4%   11 1 3   69    
2018/11/26 4 7206 159.7% 17 6 1 1 29 58 12  
2018/12/3 8 5506 76.4% 42 6 1 6 60 98 6  
2018/12/10 7 4819 87.5% 72 10 1 7 - - 7 41
2018/12/17 9 5132 106.5% 81 9 1 11 5 93 9 28
2018/12/24 6 5039 98.2% 79 11 1 9 3 - 10 24
2018/12/31 7 5333 105.8% 85 9 1 18 4 91 9 21
2019/1/7 5 5133 96.2% 82 11 1 49 4 - 9 20
2019/1/14 7 5240 102.1% 50 11 2 8 4 - 11 22
2019/1/21 6 4706 89.8% 88 17 2 18 4 85 8 20
2019/1/28 8 4380 93.1% - 21 2 80 5 18 12 15
2019/2/4 7 3667 83.7% - 26 2 - 5 92 11 12
2019/2/11 9 3387 92.4% - 29 2 - 10 - 17 13
2019/2/18 8 3375 99.6% - 28 2 78 12 - 20 13
2019/2/25 8 3357 99.5% -   2 45 9 70 14 13
2019/3/4 6 3909 116.4% - 29 2 76 16 70 7 14
2019/3/11 9 3622 92.7% - 34 3 80 13 - 6 14
2019/3/18 12 3205 88.5% - 35 3 - 26 - 8 14
2019/3/25 10 3277 102.2%   42 3 - 36 - 8 14
2019/4/1 14 2599 79.3%   37 3   37 - 9 15
2019/4/8 13 2383 91.7%   48 3   40 - 11 18
2019/4/15 15 2348 98.5%   38 3   51 - 12 19
2019/4/22 19 2191 93.3%   39 5   56 - 14 18
2019/4/29 12 2607 119.0% - 20 4   54 61 7 18
2019/5/6 17 2216 85.0%   41 6   58 - 11 18
2019/5/13 15 2366 106.8%   33 7   43 - 12 20
2019/5/20 16 2107 89.1%   49 7   73 - 12 20
2019/5/27 21 2051 97.3%   62 9   84 - 13 19
2019/6/3 17 2024 98.7%   59 9   81 - 11 21
2019/6/10 24 1947 96.2%   77 9   95 - 12 21
2019/6/17 24 1906 97.9%   94 10 - - - 15 24
2019/6/24 29 1878 98.5%   - 11 - - - 22 28
2019/7/1 28 1751 93.2%   - 12   89 - 22 36
2019/7/8 25 1754 100.2%   - 13   - - 20 37
2019/7/15 27 1733 98.8%   - 12   - - 22 39
2019/7/22 28 1685 97.2%   - 14 - - - 23 42
2019/7/29 38 1571 93.2%   - 15   - - 26 42
2019/8/5 43 1566 99.7%   - 15   - - 31 46
2019/8/12 41 1567 100.1%   - 17   - - 32 47
2019/8/19 41 1527 97.4%   - 18   - - 44 47
2019/8/26 44 1542 101.0%   - 17   - - 36 48
2019/9/2 48 1470 95.3%   - 19   - - 39 45

 

  順位 P 前週比 CD DL ST RA LU TW MV KA
2019/1/14 -           79    
2019/1/21 -           -    
2019/1/28 -       10   81    
2019/2/4 -       28   -    
2019/2/11 -       19   -    
2019/2/18 -       20   26    
2019/2/25 -       26   -    
2019/3/4 2 9744   1 - 7   73    
2019/3/11 2 12913 132.5% 4 1 - 1 2 37   -
2019/3/18 5 7109 55.1% 17 1 - 12 2 48 - 42
2019/3/25 6 6210 87.4% 25 2 - 17 1 60 - 42
2019/4/1 3 7488 120.6% 33 1 - 2 1 33 31 14
2019/4/8 3 7329 97.9% 37 1   1 2 23 4 11
2019/4/15 7 4720 64.4% 56 1   7 3 56 18 5
2019/4/22 9 3594 76.1% 72 3   30 4 53 7 6
2019/4/29 11 2628 73.1% 77 4   - 11 63 8 5
2019/5/6 18 2187 83.2% - 5   95 13 - 27 4
2019/5/13 11 2644 120.9% 94 6   79 9 - 41 4
2019/5/20 21 1827 69.1% - 9   - 14 99 - 4
2019/5/27 27 1761 96.4% - 14   91 20 - - 4
2019/6/3 22 1685 95.7% - 9   - 23 88 - 4
2019/6/10 27 1669 99.1% - 9     24 - - 4
2019/6/17 27 1441 86.3% - 10     25 -   5
2019/6/24 33 1578 109.5% - 16   - 29 - 61 3
2019/7/1 46 1355 85.9% - 21     43 - 60 6
2019/7/8 53 - 19   - 36 - - 9
2019/7/15 72 - 22     41 -   10
2019/7/22 79   19     53 -   10
2019/7/29 79   28     55 -   11
2019/8/5 95   38     80 -   11
2019/8/12 89   36     77 - - 11
2019/8/19 100   46     96 - - 11
2019/8/26 -   35     92 -   11
2019/9/2 -   40     - -   11

2曲の大きな差はストリーミングと動画再生の2指標にあることは以前記載しましたが、他の条件がさほど変わらない状況(ドラマ主題歌、オリジナルアルバムからの最後の先行シングル、アルバムのチャート動向が似ている、等)でありながらも、しかしポイント前週比は歴然とした差が。あいみょん「今夜このまま」がHot100初登場以降前週比80%未満がわずか2週なのに対し、back number「HAPPY BIRTHDAY」は5週。前者がこれまで一度も50位未満にならず44週連続在籍しているのに対し、後者は50位以内在籍18週、Hot100は25週のランクインにとどまっています。

back numberはストリーミングの解禁をベストアルバム『アンコール』(2016)までにとどめています。仮にアルバム『MAGIC』(2019)もきちんと解禁していたならば、カラオケで23週連続20位以内に入る「HAPPY BIRTHDAY」が今も上位にとどまったことは容易に想像出来ます。解禁済の楽曲のうちストリーミングで最も好調な「高嶺の花子さん」(2013)が最新9月2日付ビルボードジャパンソングスチャートで過去2番目に高い順位となる25位に入り、ストリーミング指標11位の影響を強く受けているだけに尚の事です。それでも同曲はミュージックビデオの公開をショートバージョンにとどめたゆえか動画再生指標が300位未満と大きく乖離しており、彼らにおいてはミュージックビデオ公開手法という別の問題も出てくるのですが。

 

実は今、「HAPPY BIRTHDAY」と似た流れになりそうだと危惧する曲があります。それがRADWIMPS「愛にできることはまだあるかい」。映画『天気の子』使用曲の中で最上位にランクインしているのですが、7月29日付で4位に登場しながらもその6週後には早くもトップ10落ちしてしまいました。

 

  順位 P 前週比 CD DL ST RA LU TW MV KA
2019/4/22 92             14    
2019/4/29 -           -    
2019/5/6                      
2019/5/13                      
2019/5/20                      
2019/5/27                      
2019/6/3                      
2019/6/10                      
2019/6/17                      
2019/6/24                      
2019/7/1                      
2019/7/8                      
2019/7/15 -           -    
2019/7/22                    
2019/7/29 4 9055   1   22   12 6  
2019/8/5 3 10005 110.5%   1   2   23 1 -
2019/8/12 5 7222 72.2%   1   6   28 1 66
2019/8/19 5 6397 88.6%   1   6   31 2 59
2019/8/26 7 5769 90.2%   2   17   53 3 28
2019/9/2 11 3926 68.1%   2   28   71 4 24

ポイント前週比80%未満が既に2回発生していることが気掛かりです。映画『天気の子』は現段階での最新映画興行収入ランキングで首位に返り咲き、興行収入は107億円を突破しているのとは対照的な動きに見えるため、尚の事。

「愛にできることはまだあるかい」はシングルCD未リリースゆえ、シングルCDセールスおよびルックアップの2指標がない状況ですが、ポイント前週比にはさほど影響しないものと思われます。こちらはミュージックビデオがフルバージョンで掲載されていることから、やはりストリーミング未解禁が原因とみていいでしょう。RADWIMPSの場合は一部ストリーミングで解禁していますが、こちらには『天気の子』または『君の名は。』の楽曲も収録されていません。

 

ストリーミング解禁/非解禁の判断は歌手側にあり、判断は自由です。しかしストリーミング解禁がCD等セールスに必ずしも悪影響を及ぼすわけではないこと(それどころか、戦略や工夫次第では前作を超えることも十分あり得ます)、楽曲が長く愛されていくことを踏まえるに、やはり解禁したほうが好いのではというのが数値の面からも見えてきました。ミュージックビデオフルバージョン解禁も含めた接触(指標群)の充実がチャートにも有効に作用していくことは間違いありません。

「サマーヌード」「若者のすべて」…”フラッシュバック”な夏曲がテレビで特集&ラジオ中心にヒット中

今夏の『ミュージックステーション』(テレビ朝日 金曜20時)では”夏の名曲ライブ”と銘打ち、懐かしの楽曲がが披露されてきました。キマグレン「LIFE」(2008)、フジファブリック若者のすべて」(2007)、CHEMISTRYPoint of No Return」(2001)と続き、トリを飾ったのは昨日放送、真心ブラザーズによる「サマーヌード」(1995)でした。

この披露のタイミングで、5年前の弊ブログエントリーへのアクセス数が伸びています。2年前の再掲版を下記に。

 

ミュージックステーション』が夏の定番曲、それも主に夏を思い出したり振り返るタイプの楽曲を特集した理由は解りかねますが、この時期はラジオでもこのようなテーマを含む”夏の終わり”な楽曲がヒットしています。Musicman-netの記事によると。

今週、2019年8月28日発表のラジオ・オンエアチャート(集計期間:2019年8月19日〜8月25日プランテック調べ)では、テイラー・スウィフト「ユー・ニード・トゥ・カーム・ダウン」が首位を獲得。先週14位から急上昇した。

(中略)

なお、お盆休み明けで一時期の暑さも落ち着いた今週、ラジオから流れてくる“夏ソング”も色合いを変えはじめた。筆頭株となる井上陽水「少年時代」は、先週162位から38位へ急上昇。リクエストも倍増した。

クリスマスも桜の季節も、その色合いが最も濃くなるのはストリーミング等よりラジオエアプレイだと捉えていますが、夏(の終わり)についても同じことが言えそうです。

さらには、ビルボードジャパンソングスチャートの指標のひとつであるラジオエアプレイにおいて、先述したフジファブリック若者のすべて」が上昇。最新9月2日付でラジオエアプレイ16位を獲得したのみならず、同指標がチャート構成比の3割強となり総合でも67位に。CHART insightからは、夏が来るたびにラジオエアプレイ中心に伸びていることがわかります。

(※なお、Musicman-net記載のラジオ・オンエアチャートとビルボードジャパンのラジオエアプレイ指標のチャートは内容が異なります。データ提供元は共にプランテックではありますが、前者は純粋なラジオエアプレイ回数を、後者はオンエア回数にエリア毎の人口と平均聴取率を加味して算出しています。)

 

Musicman-netの記事にもあるように、まさに”夏の終わり”な森山直太朗さんの楽曲が伸びていたり。

また自分が好きなRHYMESTERによる「フラッシュバック、夏。」も彼らのラジオ番組でOAされる機会が増える時期。

夏の終わり、いわば”フラッシュバック”な夏曲を自身で探してみるのも好いのですが、時流に合わせた選曲のプロたるラジオ局や番組にBGMを委ねてみるのも面白いかもしれません。

星野源が遂にストリーミング解禁…デジタル解禁は待ったなしの状態に

遂に。

しかもApple Music限定で、日本人初となるBeats 1 Radio『Pop Virus Radio』も用意。

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この徹底っぷりは素晴らしいですね。

 

星野源さんは自身の作品を解禁する以前から、サブスクリプションサービスを使用しています。

記憶が正しければ、星野源さんと交流のあるRHYMESTER宇多丸さんが自身のラジオ番組で、サブスクリプションサービスを自身が使用しその良さを感じていながら自身の作品は解禁していないことへの矛盾や葛藤を抱えていたと話していたはず。もしかしたら星野さんもそうだったのかもしれません。

星野源さんがこのタイミングで解禁した理由を推測するに。

昨夏デジタル限定でリリースされビルボードジャパンソングスチャートを制した「アイデア」は月曜ダウンロード配信開始でチャートの集計期間をフル活用していたので、今回の金曜解禁という事態に驚いたのですが、主演映画のプロモーションに合わせてだとしたら面白いですね。

 

さて、ストリーミング解禁となると”アルバムが売れなくなるのでは?”という疑問をよく耳にします。それについてはメディア展開の巧さも相俟ってではありますが、サカナクション『834.194』が前作『sakanaction』(2013)と変わらない売上を誇っており、その疑問は杞憂と言えるかもしれません。

そして、昨日堂本剛『NARALIEN』についてデジタル解禁の必要性(この場合はストリーミングというよりもダウンロードへの言及が中心ですが)を記載し、ファンの方はデジタル解禁を望んでいるのかどうか疑問を投げかけたのですが、読んでくださったファンの方々から直接いただいたレスポンスは、デジタル解禁を待ち望む声が圧倒的でした。

実はファンもデジタルを待ち望んでいる…その心理を知ることが出来たのは嬉しい発見でした。

 

日本を代表する歌手のストリーミング解禁により、もはやデジタル解禁は待ったなしの状態となりました。ストリーミング解禁がアルバム売上をむしろ伸ばす可能性について書きましたが、そのためには星野源さんのBeats 1 Radio『Pop Virus Radio』やサカナクションのメディア等での展開のように、ただ解禁するだけではなくその解禁効果を最大限に伸ばす工夫が必要であり、それをひっくるめての戦略が今後求められます。そしてデジタル解禁を望むのはライト層だけではない、ファンもだということを芸能事務所やレコード会社側は強く意識する必要があるはずです。

最新9月2日付ビルボードジャパンチャートから、ジャニーズ事務所運営レコード会社のリリース手法を思う

8月19~25日を集計期間とする、9月2日付のビルボードジャパン各チャートが昨日発表され、ソングスチャートはHey! Say! JUMP「ファンファーレ!」が制しました。

「ファンファーレ!」は7月29日付で首位となった日向坂46「ドレミソラシド」以来となる、シングルCDセールスおよびルックアップ指標の同時制覇を達成。パソコン等に取り入れた際インターネットデータベースへアクセスした数を示すルックアップは、シングルCDセールスと実際の購入者数(ユニークユーザー数)が乖離していないかやCDレンタル数がどれくらいかを推測するために欠かせない要素。ここ最近のシングルCDセールス上位陣でルックアップに乏しい例が少なくなかったため、「ファンファーレ!」のシングルCDが”多くの方に聴かれている”と言えるかもしれません。特に前週首位に立ったNMB48「母校へ帰れ!」がシングルCDセールス1位に対しルックアップが17位と大きな差が生じていたこともあり、尚の事です。

ちなみに以前記載したのですが、ジャニーズ事務所所属且つ同事務所が運営するレコード会社に所属する歌手のシングルCDは、この春からレンタル解禁をアルバム同様発売の17日後に遅らせる措置を採り始めています(ただし、9月11日リリースの嵐「BRAVE」は同日解禁を実施する模様)。外部レコード会社に所属する歌手については1分のティーザー的ミュージックビデオ公開やフル尺のダウンロード等を実施し少しずつデジタルに明るくなる(そしてダウンロードや動画再生指標がチャートに加算されている)のとは相反する動きであり、『自社内でコアなファンの囲い込みを徹底させる一方、ライト層はCDを購入しない限り受け付けない(と言っても過言ではない)体制を徹底させてきている』(6月3日付ビルボードジャパンソングスチャート首位曲からはじまる、ジャニーズ事務所所属歌手のシングルCDの展開手法を疑問に思う(5月30日付)より)のがジャニーズ事務所運営レコード会社の現状と言えます。それでもHey! Say! JUMP「ファンファーレ!」のルックアップが強いのは購入されたCDの多くがきちんと取り込まれているからでしょうし、『前作「Lucky-Unlucky」は初週売上199,377枚で、本作は初週売上を4万枚超伸ばして』いることから、レンタル解禁を遅らせたことが売上につながった可能性も(『』内は上記ビルボードジャパンの記事より)。ライト層を受け付けない接触手段の減少を実施して売上が伸びたならば、ともすれば今後この動きは強化されるかもしれません。

 

さて、接触手段の減少ある意味功を奏したかもしれない「ファンファーレ!」に対し、堂本剛さんのニューアルバム『NARALIEN』のリリース手法はなんだか勿体無いと思っています。前週初登場で首位を獲得したのですが今週は20位へと大きく後退してしまいました。

『NARALIEN』においては”逆風”も。日本を代表する夏フェスのひとつ、SUMMER SONICでの16日の東京公演が予定されていたのですが、台風の影響により屋外ステージが中止したあおりを受けて堂本剛さんの出番はなくなりました。公演終了後の19日月曜にワイドショー等で取り上げられていれば、そして屋外ステージに観に来ていた堂本さん目当てではないライト層も魅了出来ていたならば売上増が見込めたかもしれません。なお2日後の大阪公演は無事行われました。

一方で上記記事の表題にあるように、ジャニーズ事務所運営のレコード会社所属歌手としては異例となる動画広告展開も行われたそうですが、現在はInstagramの発信源(アカウント)自体が無くなった模様です。

 

前作『HYBRID FUNK』(2018)から続くファンク道を極めた流れについては、丸屋九兵衛さんの寄稿を読むとよく分かります。

『HYBRID FUNK』は好事家を中心に評判となり、堂本剛さんさんをジャニーズ事務所所属だからと甘く見る音楽通の方は最早皆無に近いと思うのですが、しかし手に取りにくい問題も。レコード会社がストリーミングやダウンロードを解禁していないためアルバムCD購入以外の接触手段がレンタルに限られること(そのレンタルは今週末解禁)に加え、『HYBRID FUNK』そして今作『NARALIEN』共々3種リリースされその3種とも収録曲が少しずつ異なることから、彼の楽曲を全て集めるには3種全て手にしないといけないのです。収録曲の差異については上記『NARALIEN』の特設サイトおよび『HYBRID FUNK』のディスコグラフィーをご参照いただきたいのですが、どれを選ぶか迷うというより、選択するのが面倒になってどれも選ばなくなる…そんな心理が芽生えてもおかしくないと思います。全種揃えると1万円以上かかることも心理的な枷となっていそうです。

(ちなみに先述したHey! Say! JUMP「ファンファーレ!」も3種リリースであり、全種手に取らないと彼らの楽曲を全て手に入れることは出来ません。この手法はアイドル中心に用いられていますが、しかしシングルでは目立ってもアルバムではなかなか採り入れられていないように思います。)

堂本剛さんが奏でるファンクは丸屋九兵衛さんのお墨付きもあり海外でも通用すると思うのですが、しかしデジタルに明るくない姿勢のみならず、ファン以外の間口(買いたいと思う欲求)を狭めていると思わせかねない販売手法が、折角の才能の伝導を堰き止めてやいないかと思うのです。初週にファンの多くが3種全て購入したであろうその反動もチャートの大幅ダウンに影響したかもしれず、この手法は実に勿体無いと思います。

 

収録曲が全種異なる仕様については一本化してほしいと思うのですがそれとは別に、どうしてもCDでの購入を促したいならば、たとえば先日取り上げた森口博子GUNDAM SONG COVERS』(2019)のように、先行曲をダウンロードおよびストリーミングで解禁しながらもアルバム全体のデジタル化を遅らせる措置を採るのが効果的なのかもしれません。

尤もこの施策自体には疑問を抱くのですが、デジタルに懐疑的にみえるジャニーズ事務所の、それも同社運営レコード会社側がデジタルでの宣伝を行い、実はデジタルに意欲的かもという意志が見えることから、この手もありではないかと思うのです。何より堂本剛さんの音楽性を広く伝えたいならばやはり配信して海外に轟かせる手段を採るべきではないでしょうか。ストリーミング非解禁でダウンロードのみだとしても、ダウンロード購入画面で試聴出来るようになるだけで、彼の音楽性の認知度は飛躍的に上昇すると思うのですが。

MTVビデオ・ミュージック・アワード受賞、カミラ・カベロに次ぐ活躍なるか? フィフス・ハーモニーから登場したノーマニに注目

日本時間の昨日発表された8月31日付米ビルボードソングスチャート。

ショーン・メンデス & カミラ・カベロ「Señorita」が首位の座を射止めたことで、プロデュース&ソングライトを担当したベニー・ブランコにとって米ソングスチャート8曲目の1位獲得となります。彼の作品群は以前まとめていますのでよろしければ。

また、カミラ・カベロにとっては2曲目となる全米制覇を達成。元フィフス・ハーモニーのメンバーながらグループとしては首位獲得自体成し得なかったわけで、先に脱退した彼女の成功を活動休止中の他のメンバーはどう思っているのか気になるところではあります。

 

そのフィフス・ハーモニーの現メンバーの中で、ここに来て台頭してきたのがノーマニ。

映画『Love, Simon (英題)』のサウンドトラックに収録されたカリードとの「Love Lies」(2018)が米ソングスチャート最高9位、そしてサム・スミスとの「Dancing With A Stranger」(2019)が同7位を獲得。特に後者はラジオエアプレイを制したこともあり、その名は広く知れ渡ったはずです。

その認知度をさらに高めるであろう出来事が。日本時間の昨日午前に行われたMTVビデオ・ミュージック・アワードで、シンガー/ラッパーのブラック(6lack)をフィーチャーし昨秋リリースした「Waves」が最優秀R&Bビデオ賞を受賞しました。

 

さて、これまで紹介した楽曲群はいずれも客演を含むため、ヒットしたのは客演陣の影響も?という意地悪な見方が出るかもしれません。活動休止中のフィフス・ハーモニーにおいても、唯一のトップ10ヒットとなった「Work From Home」(2016 4位)にはタイ・ダラー・サインが客演参加しているわけで。彼女はそれを見抜いているのか、今月16日にリリースした新曲「Motivation」は客演なしで挑んでいます。

プロデュースおよびソングライトを手掛けたのはイリア・サルマンザデ。アリアナ・グランデ「No Tears Left To Cry」や「God Is A Woman」(共に2018)などで知られる方ですが、今回共にソングライターに携わったのが「No Tears Left To Cry」の共同プロデューサーであるマックス・マーティン、そしてアリアナも参加。「Motivation」は最新8月31日付米ビルボードソングスチャートで33位に初登場し上々の滑り出しとなりました。MTVビデオ・ミュージック・アワードでは同曲をパフォーマンスしておりチャート上昇の可能性は高く、客演参加なしで結果を残したならばカミラ・カベロに次ぐ大活躍と言い切って間違いないでしょう。

フィフス・ハーモニーとしての活動再開は遅れるかもしれませんが、今はノーマニの動向を見守っていきたいと思います。

ビリー・アイリッシュが1週で陥落、新たな首位はショーン・メンデス&カミラ・カベロ…しかし来週はテイラーが? 8月31日付米ソングスチャートをチェック

ビルボードソングスチャート速報。現地時間の8月26日月曜に発表された、8月31日付最新ソングスチャート。前週リル・ナズ・X feat. ビリー・レイ・サイラス「Old Town Road」から首位の座を奪ったビリー・アイリッシュ「Bad Guy」はわずか1週で陥落。新たな首位に立ったのはショーン・メンデス & カミラ・カベロ「Señorita」でした。

「Señorita」はショーン・メンデスにとって初、カミラ・カベロにとってはヤング・サグをフィーチャーした「Havana」で首位となって以来2度目の1位獲得となりました。ラジオエアプレイは前週比6%アップの1億240万(同指標3位)、ストリーミングは同3%アップの3750万(同指標4位)、ダウンロードは同4%ダウンの22000(同指標5位)と、どの指標も首位には至っていませんが堅調に推移し、我慢のゴルフの如き展開で首位に躍り出た形です。とはいえ、下記”リハーサルビデオ”の投入もストリーミングの推移に効果を与えたかもしれません。

現段階で540万回再生されたこのビデオは、デジタル2指標の集計期間初日にあたる8月16日に公開されたもの(ラジオエアプレイは8月19日からの1週間が集計期間)。なるほど、ここにも”仕掛け”が施されています。

ショーン・メンデスとカミラ・カベロといえば以前にも「I Know What You Did Last Summer」が2016年初頭に20位を獲得しており、相性の良さはお墨付きなのですが、この”デュエット”での首位は今年2曲目。レディー・ガガブラッドリー・クーパー「Shallow」が3月9日付で首位を獲得して以来となります。1年に2曲ものデュエット曲が首位となったのは1987年以来となり、その際はアレサ・フランクリンジョージ・マイケル「I Knew You Were Waiting (For Me)」およびビル・メドレー & ジェニファー・ウォーンズ「(I've Had) The Time Of My Life」が首位となりました。

今週2位に沈んだビリー・アイリッシュ「Bad Guy」は、前週の集計期間終盤に投入したヴァーティカル・ビデオ(スマートフォン仕様の縦型ミュージックビデオ)によるストリーミング、および公式サイトにおける同曲のカセットシングル発売効果によるダウンロードの効果が今週も見られたのか、こちらも堅調に推移。ストリーミングは前週比1%ダウンの3890万(同指標3位)、ラジオエアプレイは同3%ダウンの9110万(同指標6位)、ダウンロードは同1%アップの20000(同7位)となりました。「Señorita」との差は特にラジオエアプレイに表れたと言っていいでしょう。なお、前週のチャート紹介(「Old Town Road」が遂に陥落、ビリー・アイリッシュ「Bad Guy」が首位を獲得した理由は新たな”投入”にあり…8月24日付米ソングスチャートをチェック(8月20日付)でカセットシングルの紹介を省いてしまったのですが、カセットシングルがダウンロードに加算されるのは恥ずかしながら知りませんでした…今後、もしかしたらこの施策を用いる歌手が出てくるかもしれません。

3位にはリゾ「Truth Hurts」が最高位を更新。ダウンロードは前週比17%アップの26000(同指標2位)、ラジオエアプレイは同4%アップの9910万(同指標4位)、ストリーミングは同6%アップの2840万(同指標6位)で全指標上昇、次の首位候補に躍り出ました。このリゾに逆転を許したリル・ナズ・X feat. ビリー・レイ・サイラス「Old Town Road」が4位に交代。総合では2週間前まで19週連続、ストリーミングでは前週まで20週連続で首位の座を保持していたのですが、ストリーミングも遂に陥落し前週比5%ダウンの5070万(同指標2位)、ダウンロードは同12%ダウンの23000(同4位)、ラジオエアプレイは同17%ダウンの2840万(同指標35位)と大きく後退。特にラジオエアプレイが低水準となり、仮に今後もリミックスを投入しストリーミングを伸ばしたとしても、延命措置こそあれ首位の座は射止められないでしょう。

その「Old Town Road」が20週守り続けたストリーミング首位の座を奪ったのがリル・テッカ「Ran$om」。総合でも5位に上昇しました。

ストリーミングは前週比21%アップの5230万で同指標首位、ダウンロードは同8%アップの5000(同39位)、ラジオエアプレイは同21%アップの1500万ですが同指標50位未満に。今後のチャートアクションはラジオエアプレイの伸びにかかっています。

 

最新のトップ10はこちら。

[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (2位) ショーン・メンデス & カミラ・カベロ「Señorita」

2位 (1位) ビリー・アイリッシュ「Bad Guy」

3位 (4位) リゾ「Truth Hurts

4位 (3位) リル・ナズ・X feat. ビリー・レイ・サイラス「Old Town Road」

5位 (8位) リル・テッカ「Ran$om」

6位 (5位) カリード「Talk

7位 (6位) クリス・ブラウン feat. ドレイク「No Guidance」

8位 (7位) エド・シーラン & ジャスティン・ビーバー「I Don't Care」 

9位 (9位) ポスト・マローン feat. ヤング・サグ「Goodbyes」

10位 (10位) ショーン・メンデス「If I Can't Have You」

ラジオエアプレイは今週もカリード「Talk」(総合6位)が制覇していますが、前週比3%ダウンの1億2120万とダウン。また今週はトップ10の顔ぶれは変わらず、同日付のアルバムチャートを制したヤング・サグの楽曲が入ってくることはありませんでした。

 

さて来週は、テイラー・スウィフトがアルバム『Lover』収録曲が大挙エントリーする予感がします。アルバムリリース日にミュージックビデオを公開したタイトル曲「Lover」は前週にシングル化、今週のチャートで19位に初登場を果たしています。

ダウンロードは35000をマークし同指標首位を獲得、同指標での首位獲得曲数を18に伸ばし最多記録を更新しています(ちなみに2位はリアーナの14曲)。テイラー・スウィフトは日本時間の今日、MTVビデオ・ミュージック・アワードのオープニングアクトに登場しますが、おそらくこの曲を披露してくれるのではないでしょうか。それ次第では次週「Lover」のトップ10、いや首位獲得もあり得ると考えています…ということは前週弊ブログにて予想しました。

ただ…次週のアルバムチャートで『Lover』がユニット数(セールスに単曲ダウンロードのアルバム換算分およびストリーミングのアルバム換算分を加えた計算単位)でミリオンを突破すると読んでいたのですが、昨日付の記事によると。

業界筋の予想によると『ラヴァー』は、8月29日までの集計週を反映した9月7日付の“Billboard 200”で70万ユニットを獲得し、1位デビューを果たすことが有力視されている。

予想を大きく下回る数値に驚いています。もしかしたら首位獲得は難しいかもしれません。

TOKYO FMは『村上RADIO』の推しが強すぎるあまり、様々な犠牲を生んでやいないか

首都圏ラジオ局は今日から1週間が聴取率調査週間。聴取率を獲得すべく”スペシャルウイーク”と化すかは局により判断が分かれていますが、聴取率獲得のために手段を選ばないニッポン放送の姿勢を以前から問題視しています。

このレギュラー番組休止の方式はニッポン放送だけと捉えていましたが、これに今回TOKYO FMが倣ってきました。一言で言えば圧倒的なまでの”村上春樹推し”なのです。

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村上春樹さんがDJを務める『村上RADIO』は、不定期放送ではあれど毎回聴取率調査週間にOAされ、JFN38局がほぼ同時刻(日曜19時台)にOA。これにより、同時間帯にレギュラー番組がある放送局はその週の差替が余儀なくされます。

しかも今回は2週連続で『村上RADIO』が用意され、その第1弾は昨日放送。つまり地方局ではその分も差替が発生してしまうこととなるわけです。

しかしこれは地方局の問題であり、TOKYO FMでは日曜19時が『TOKYO FMサンデースペシャル』枠である程度の自由が利くため、同枠で『村上RADIO』を放送することが問題ないと言われればそれまでです。

しかしこれはさすがにどうかと思います。

番組が休止になること、それもスペシャルウイークに…という事態はニッポン放送の姿勢を強く想起させます。差替対象番組はあたかも聴取率を獲れないとでも局が言っているかのようで、DJやスタッフに失礼です。しかもニュース等を扱う生ワイド番組が休止というのは、番組を時計代わり等に用いるリスナーにも無礼ではないでしょうか。そして差替してまで放送するのが『村上RADIO』の再放送というのですから、『村上RADIO』がどれだけ推されているのか、逆に言えばそれ一辺倒なのかがよく分かります。ちなみに日曜18時台も昨日と来週が休止となり、9月1日の放送は昨日放送の『村上RADIO』の再放送というのですから驚かされます。

ディズニーファンが納得するのかは不明です。

 

このように、TOKYO FM聴取率を主な目的に『村上RADIO』を強く推しはじめたことで地方局にも、そしてレギュラー番組を持つ方にもしわ寄せが来ている事態に、弊ブログで度々指摘しているニッポン放送と同様の姿勢を感じ、TOKYO FMに対し強い不信感を抱いています。

 

不信感といえば。TOKYO FMでは先日、不適切な会計処理について発表していました。

問題はまだ途中段階であり、『9月下旬をめどに過年度決算を修正する』とのこと(『』内は上記記事より)。であれば、経過状況はきちんとホームページで報告するのが好いと思うのです。しかし。

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現段階でTOKYO FMのトップページにはこの問題に関する情報が一切掲載されていないようです。

何も堂々と大きく貼れと言っているのではなく、そのほうが好いと捉えているのですが…こういうところから、地方局にも制作側にもリスナーにも厳しいTOKYO FMの”局の一部には甘い”という姿勢が見えてくるようで、非常に残念に思います。

問題の解決は勿論のこと、”推し”を一度聴取率調査週間から手放さない限り、TOKYO FMの姿勢は改善しないかもしれません。