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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ビルボードジャパンがCHART insightをリニューアル...その内容自体、そして対応を踏まえて提案を記す

ビルボードジャパンは今週、ソングチャートやアルバムチャート等について深堀りするサービス、CHART insightをリニューアルしました。このリニューアルは水曜までに実施されていますが、リニューアルの概要については木曜夕方に公開しています。

なお、グラフ自体も変更されていますが、2021年に開始したCHART insight Plusを基にしたものと考えられます。

 

今回の変更について、メリットも多数あるものと考えますが、そうでない点も想起されます。今回は後者を中心に、そして根本的な問題(と考えること)について提示します。

 

 

CHART insightは誰でも確認可能なサービスですが、有料会員(月額330円)は100位までを確認することができます。以下、リニューアル前後における3月20日公開分のソングチャートのCHART insightを比較します。

・リニューアル前 (3月20日公開分)

 

・リニューアル後 (3月20日公開分)

最大の特徴は、今回のリニューアルにより無料会員が確認できる順位が完全に20位までとなった点です。前後のキャプチャで明らかなように、以前は総合もしくは構成指標がひとつでも20位以内に入った曲は、それ以外の順位が20位を下回っていても100位までの順位が表示されていました。今回、それがなくなった形です。

有料会員と無料会員との差別化(区別の明確化)を行うことも、リニューアルの背景にあるものと考えます。本来は無料会員を20位までの公開にとどめるならばこの措置は自然ですが、本来はもっと前から行って然るべきだったかもしれません。

 

 

今回のリニューアルから抱いた懸念は3つあります。ひとつは、UGC(ユーザー生成コンテンツ)が円グラフに掲載されていることです。

いわゆる"歌ってみた"や"踊ってみた"に代表される動画は、以前は動画再生指標に組み込まれていたものの2021年度から除外され、現在は公式動画のみが対象となります。しかしながら(TikTokも含め)UGCの影響度は低くなく、ゆえにUGCのみのチャート(Top User Generated Songsチャート)も作られているのですが、しかしグラフに織り込むことであたかもUGCがカウントされているという錯覚が生まれかねません。

 

この織り込みは、『円グラフの構成比を当週のポイントからチャートイン以降のポイントに変更』したことが背景にあると考えます。しかし当週から累積への表示変更も懸念する点です。理想のヒットの形に近づけるべく当週の比率を分析し弱点を克服しようとする歌手側に対し、チャートイン以降のポイント表示ではそれが行いにくくなるでしょう。またLINE MUSIC再生キャンペーンの影響度合いも判り難くなると考えます。

そしてそもそも、『円グラフの構成比を当週のポイントからチャートイン以降のポイントに変更』したのか自体、疑問に感じています。

 

加えて、以前ならば総合順位が黒の折れ線グラフで表示されていたものが、リニューアルを経てグレーの棒グラフに代わりましたが、認識し難くなったと感じています。これが3つ目の懸念です。

慣れることでこの3つの懸念に対する見方は変わるかもしれませんが、現時点で抱いた違和感を表明しました。無論、(ビルボードジャパン側が発信している)メリットも多いだろうことを踏まえ、今後もCHART insightサービスを活用していきます。

 

 

このブログではこれまで、無料会員のみが知り得る情報のみを提示してきました。有料会員だけが確認可能なものを発信することは(ルール以前に)モラルに反すると考えるためであり、これは米ビルボードが有料会員向けにのみ発信するチャート(Global Excl. U.S.における11位以下等)においても同様です。

このブログでは今後もこれまで同様、無料会員向けに開示された情報のみを提示していきます。有料会員のみが知り得る情報については、ビルボードジャパン側からの掲載許可をいただかない限りは情報の開示ができなくなるということをご理解、ご了承ください。

(ちなみに水曜14時過ぎにその旨を問い合わせたものの、現時点でビルボードジャパンからの回答はありません。この問い合わせ時には別の指摘も記しており、その内容については後述します。)

 

 

今回、ビルボードジャパンはリニューアルに関する発信に1日以上の時間を要しています。これはCHART insight自体のリニューアルと同等、もしくはそれ以上に気になった点です。

自分が関わる主業務では、システムリニューアルの際はきちんと事前に予告されます。一方でネット時代、特にSNSが主流になった現在ではリニューアルが突然行われ、その説明も十分ではなく、こちらから探ることが増えました。ともすれば自分が籍を置く業界のリニューアル案内が旧態依然なのかもしれませんが、しかしCHART insightをリニューアルした直後でも内容の発信ができなかったのか、疑問は拭えません。

またビルボードジャパンにおいては、直近2週分のソングチャートにおけるポイント未表示が少なくとも6時間続いていました。CHART insightのリニューアルに伴いこちらも不開示となるのではと懸念していたゆえ安堵はしたものの、不具合アナウンス自体が未表示の判明から5時間以上経過してようやく発信されています。

CHART insightのリニューアルに伴い慌てていただろうことは想像に難くないものの、未表示についても有料会員向けデータの活用可否共々水曜14時過ぎに問い合わせていたものです。そしてCHART insightリニューアルのお知らせがもっと前に発信されていれば、不信感の増幅は防げたでしょう。なお3月27日公開分各種チャートでは別の問題もありましたが(→こちら)、こちらの問題はその訂正完了も含め発信されていません。

 

 

ビルボードジャパンに対しては今後、【リニューアル時にはできる限り前もって、遅くともリニューアル直後にその内容を発信する】【問題発生時および解決した際には速やかにその旨を発信する】【CHART insightの円グラフからUGCを除き、且つ最新週の指標構成を表示する】そして【CHART insight有料会員のみが知り得る情報をその有料会員が発信することの可否について、分かりやすく提示する】ことを願います。

特に1つ目および2つ目の願いは、先述したように今の時代にあっては旧態依然の考え方かもしれません。しかしチャートが認知され、信頼を得る(ことで他の音楽ランキング以上にチェックされるようになる)には必要なことだと考えます。