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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

旧ジャニーズ事務所はデジタルへ明るくなるか、2024年初頭の動きから見極める

元日付エントリーにて、このようなことを記しました。その際、Number_i「GOAT」が旧ジャニーズ事務所側の変化を促す可能性について示唆しています。

2024年の日本の音楽業界においては、【日本の楽曲が海外でヒットするか】【日本で海外の楽曲がヒットするか】、そして【旧ジャニーズ事務所(現STARTO ENTERTAINMENT)がきちんと変わり、日本のエンタテインメント業界全体も変われるか】という3点を注視していきます。

元King & Princeの3名によるTOBE移籍後、Number_iとしての初作となる「GOAT」はストリーミングでヒットの兆しをみせています。上記ミュージックビデオは本日5時の時点で1420万回再生目前まで迫っており、注目度の高さが解ります。

ともすればこのようなことを、Number_iやTOBE滝沢社長は旧ジャニーズ事務所所属時代にやりたかったのではと感じています。ヒップホップ的要素を高めるという意味もありますが、デジタルリリース、デジタルに明るくすることもまた目指していたのではというのが私見です。

 

ジャニーズ事務所所属歌手は、特にフィジカルシングルの初週セールスが20万枚を見込める歌手ほどデジタル未解禁の状態を続けているのですが、今年(まだ6日目ではあるのですが)の動きからはデジタルに明るくなろうとする兆しが感じられます。今回は関ジャニ∞SixTONESそしてTravis Japanの動きを紹介します。

 

 

まずは関ジャニ∞。1月1日以降、段階的にデジタルを解禁することがアナウンスされています。無論サブスクのみならず、iTunes Store等でのダウンロードも解禁されます。

1月3日に公開されたTHE FIRST TAKEには関ジャニ∞が出演し、「ズッコケ男道」および「友よ」の二曲を披露していますが、このチャンネルへの登場はデジタル解禁したことを訴求する意味も持つものと考えます。

 

関ジャニ∞のデジタル解禁において、注目したいのは二点。ひとつは、THE FIRST TAKEで披露した「ズッコケ男道」は七名在籍時代の作品であり、同曲や八名時代のデビュー曲等もデジタル解禁の対象であるということ。以前ならば脱退したメンバーについては触れないというのがメディアを含む業界の不文律となっていたと感じていますが、きちんとアーカイブを残すという姿勢に変わってきたことは好い流れです。

もうひとつは、関ジャニ∞が以前実施したキャンペーンからいい意味で脱却できたということ。関ジャニ∞は5年前、アプリにて自身の曲を聴くことができるキャンペーン”十五催”を行っています。ただこれはアプリ以外では聴くことができないことに加えて、既にフィジカルを持っている方でも廉価盤(十五催ハッピープライス盤)を購入しシリアルコードを入手することが条件となっていました。

シリアルコードは既に有効期限が過ぎている模様であり、このアプリが現在も有効に機能しているかは分かりかねますが、サブスク的な要素を持つこのキャンペーンはライト層への浸透が難しく、且つさらなるフィジカル購入を促すというものでした。今回のデジタル、特にサブスクにおける解禁はライト層には勿論、フィジカルへの負担が大きくなりかねないコアファンにもありがたいものではないでしょうか。

このようなアプリはSexy Zoneでも実施していますが、逆にいえばデジタル解禁に踏み出すことへの足かせになる可能性もはらんでいたのではというのが私見です。関ジャニ∞のデジタル解禁はSexy Zoneのようなアプリ内音源解禁の実施歌手、そしてメンバーチェンジが行われた全グループへのデジタル解禁の後押しになるのではないでしょうか。

 

 

さて、THE FIRST TAKEでは1月5日にSixTONESが登場し、「こっから」をパフォーマンスしています。一方でSixTONESは、未だデジタル解禁が行われていない状況です。SixTONESはこのチャンネルにて、2022年の元日にデビュー曲「Imitation Rain」、1月12日に「Everlasting」を披露していますが、デジタル解禁には至りませんでした。

基本的にTHE FIRST TAKEに登場する歌手はデジタルを解禁しており、披露曲は動画再生回数のみならず、オリジナルバージョンのダウンロードやストリーミングの上昇にもつながりやすいといえます。SixTONESのデジタル未解禁はチャンネルからデジタルへの波及につながらないという点で非常に勿体なく、このことは昨年大晦日YouTube生配信にて同時接続数が日本最大の133万超えを記録したSnow Manにも当てはまります。

そしてTHE FIRST TAKEにおいても、デジタル未解禁歌手の起用はチャンネルの信頼度に関わるでしょう。このチャンネルは海外からのアクセスも大きいのですが、日本では旧ジャニーズ事務所所属歌手のデジタル未解禁を多くの方が理解する一方、海外の方にはその事情が分からないはずです。THE FIRST TAKEで気になったとして音源をデジタルで確認できない状況は、歌手のみならずチャンネルの不信感にもつながりかねません。

その状況下でTHE FIRST TAKE側がSixTONESを今一度起用したのは、SixTONESがアルバム『THE VIBES』を1月10日にリリースすることが背景にあるでしょう(発売元がTHE FIRST TAKEの運営に携わっている模様であり、リリースタイミングで起用しやすいこともあるはずです)。そして本来元日に公開予定だった関ジャニ∞共々、コアファンが多くまた広く世間に知られる歌手を年始に起用しチャンネルを訴求する目的も考えられます。

それでも、関ジャニ∞とは異なりSixTONESは未だデジタルを解禁していません。ただSixTONESは披露曲「こっから」のミュージックビデオが高い再生回数を誇ったことでデジタル解禁されたならば大ヒットに至れた可能性を持ち合わせています(下記エントリー参照)。YouTubeにて先行配信した実績もあり、SixTONES側、レコード会社側共にデジタル解禁したいと考えているのではないでしょうか。その思いが叶うことを願います。

 

 

さて、旧ジャニーズ事務所所属歌手においてデビューの段階からデジタルに明るかったTravis Japanは、ファーストアルバム『Road to A』を引っ提げたコンサートツアーを1月4日に開始。この『Road to A』は昨年12月27日公開分のビルボードジャパンアルバムチャートでフィジカルセールスおよびダウンロード共に制し、総合でも首位に。7,412DLは、2023年度以降のダウンロード指標首位作品で八番目に高い数値となっています。

そのTravis Japanは今回のコンサートツアーにて観客の撮影を許可する時間を設けています(撮影のSNS等での掲載は不明ですが、既に複数のアップを確認しています)。海外のライブでは最早自然となった撮影(からのSNS等での転載)ですが、日本ではまだまだであること、そして旧ジャニーズ事務所側がメディアでのネット記事等にて長らく掲載を認めてこなかった状況にあって、Travis Japan側の判断は特筆すべきことといえます。

尤もコンサートにおける観客の撮影OKという動きは昨夏のジュニアによる公演でもみられていますが(ジャニーズJr.、総勢200人出演のドーム公演完走 史上初の動画撮影解禁・サプライズ発表も<セットリスト> - モデルプレス(2023年8月20日付)参照)、音源デビューを果たしたTravis Japanによる撮影解禁は珍しいといえるかもしれません。

 

 

SixTONESのデジタル解禁についてはどうなるか分かりかねますが、一方で関ジャニ∞のデジタル順次解禁やTravis Japanのコンサートにおける撮影許可については、旧ジャニーズ事務所側の変革と感じるに十分でしょう。

ジャニーズ事務所側の"勝てるところでだけ勝てればいい"、そして批判しないメディアは所属タレントを優先的に起用することで"自分たちが勝てればいい"という、双方の保身というスタンスが優先され続けた結果、デジタル未解禁という時代錯誤の手法に固執させてしまったものと捉えています。

今回の提案を機に、基本的にフィジカルに絞っていた音源の発信をダウンロードやサブスクに拡げること、またYouTubeでの公開についてはフルバージョンとし、広い意味でデジタルに明るくなることを望みます。

ジャニーズ事務所については初代社長による性加害問題の解決が必須ですが、長年に渡る旧ジャニーズ事務所側の厚遇といえる環境がデジタル未解禁にもつながったと考えるに、その環境の変革は必須です。今回のように好い点をきちんと評価し、後退の動きには批判を提案を行うことで、旧ジャニーズ事務所、そしてメディアを含むエンタテインメント業界全体の自省と改革を促す必要があります。今後も注視していきます。

 

無論、旧ジャニーズ事務所側がデジタルに明るくなれば、Number_iメンバーのKing & Prince在籍時における作品も解禁されるはずであり、「GOAT」に至る流れ(たとえば「Magic Touch」や「ichiban」等ヒップホップ要素の強い曲)もサブスク等で確認できるようになるでしょう。