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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ジェイソン・アルディーン「Try That In A Small Town」が米で上昇した背景、そして想起した前大統領参加曲について

日本時間の昨日早朝に発表された最新7月29日付米ビルボードソングチャートではジェイソン・アルディーンによるカントリーソング、「Try That In A Small Town」が2位に初登場。グローバルチャートのうちGlobal 200でも2位につけた一方で米の分を除くGlobal Excl. U.S.ではトップ10に入っていないため、米での支持の大きさがよく解ります。最新チャート、および同曲のミュージックビデオは下記エントリーをご参照ください。

米での強さはカントリーというジャンルゆえともいえます。ただ「Try That In A Small Town」は元々5月にリリースされており、まずはなぜこのタイミングで急上昇を果たしたかをチェックする必要があります。その際、下記コラム(記事)は昨日紹介したヒットの背景を補完するものとして、非常に充実した内容と捉えています。

上記コラムではシェリル・クロウの発言が比較的大きく採り上げられていますが、ミュージックビデオの内容や撮影場所(で過去に起きた事件)に対し違和感を抱く方は少なくないでしょう。そして何より、このミュージックビデオが保守派から支持を集めているという事実は、この曲の急上昇を大きく物語っています。

作品のリリース直後に火が付かず、ケーブルテレビ局のCMTがミュージックビデオの放映を取り下げたタイミングにて保守派が支持を表明したという流れを踏まえれば、この取り下げが彼らの気付きの契機になったといっていいでしょう。そして「Try That In A Small Town」についてFOXニュースや共和党所属の州知事、そして前米大統領が支持を表明したことが、気付きの後押しにつながったものと考えます。

最新のソングチャートではジェイソン・アルディーン「Try That In A Small Town」がダウンロード指標22万を突破。この数値が如何に高いかは、今年度の動向から明らかです(上記表参照)。先述したコラムも踏まえれば、CMTが放映を取り下げた後に所有指標が大きく動いたものと考えます。

 

保守派によると思しき所有行動の高さは、実は以前にもみられています。それが3月25日付にて所有指標を制したドナルド・トランプ & J6プリズン・クワイア「Justice For All」。チャリティシングルながらその収益の行き先が特殊ともいえるこの曲について以前紹介した際、このようなことを記しました。

仮にトランプ氏側がチャート施策に少しでも詳しくなれば、自身のホームページにて音源を配信しリミックス等も用意することで売上を増大させ、米ビルボードソングチャートでも100位以内に到達可能になるのではないでしょうか。そうなると一部支持者の範囲にとどまりがちな新曲リリースの話題は、音楽チャートを介してより拡がっていくものと思われます。

以前のチャート事例では所有指標ばかりが高い状況でしたが、今回の「Try That In A Small Town」においてはストリーミング指標37位となっており、ジャンル的に保守といえるカントリーにあっては高いといえるでしょう(なおカントリーの中でもモーガン・ウォレンやルーク・コムズは若手ゆえか、以前からストリーミングに強く、ゆえに総合上位のカントリージャンル3曲における指標構成は大きく異なります)。

 

上記は今月19日に登場した記事ですが、ここには興味深い記述があります。MetaTokyo株式会社の代表取締役CEO、鈴木貴歩さんは記事についてこのように紹介しています。

ともすれば「Try That In A Small Town」における保守派の動きもまた、スーパーファンの行動の結果といえるかもしれないと感じています。曲に気付くタイミングがミュージックビデオへのCMTによる措置実施後という点からは彼らが本当に曲や歌手のファンなのかという疑いは拭えませんが、措置実施のタイミングで結束し、「Justice For All」のチャート結果も活かしながら今回動いたといえるかもしれません。

ビルボードの予想担当者によれば次週8月5日付米ビルボードソングチャートにてジェイソン・アルディーン「Try That In A Small Town」が首位に立つと(初期の段階で)予想されています。所有指標が引き続き高止まりしていることが首位に据えた理由と思われますが、実際どのような結果になるかを注視したいと思います。

 

 

最後に私見を。

人種差別はあってはなりません。仮にジェイソン・アルディーンの曲やミュージックビデオにおける真の意図がコラムに記されたような白人ナショナリズムだとすれば、ミュージックビデオ、曲そして人となりに対し強い異議を表明します。一方でチャート結果については冷静、客観的に分析し記す必要があると考え、今回のエントリーを掲載した次第です。

ビルボードの予想担当者のうちどれだけの方が結果についての解説を発信しているかは分かりかねますが、”数週の動向を踏まえて真の社会的ヒット曲と成るかを見極めることの重要性”等、チャートの中長期的な見方等についても広く流布したほうがより好いと考えます。