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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

前大統領参加曲が最新米ビルボードソングチャートにあと少しでランクイン…その背景と今後の可能性を考える

最新3月25日付の米ビルボードソングチャートにおいて、米ビルボードはトップ10速報とは別にダウンロード指標のみの記事を用意しています(翻訳したブログエントリーには米ビルボードの記事も貼付しています→こちら)。この発信自体が異例と考え、今回取り上げます。

 

最新の米ビルボードソングチャート、ダウンロード指標を制したのはドナルド・トランプ & J6プリズン・クワイア「Justice For All」。33,000ダウンロードを記録しました。

「Justice For All」はストリーミングは442,000、ラジオは25,000と他指標は高くありませんでしたが、ソングチャート100位未満を示すBubbling Under Hot 100では3月25日付(→こちら)にて4位に初登場しており、実質104位と言えます。

 

さて、今回のダウンロード指標記事の登場を異例と紹介したのは、米ビルボードソングチャートトップ10速報記事にて各指標の首位獲得曲がすべて紹介されるわけではないため。とりわけダウンロードは最も記載されない傾向にあります。

加えて、本来3月25日付米ビルボードソングチャートの速報記事は日本時間の3月21日火曜早朝にアップされるはずが、処理の遅延を理由に一日近く先送りとなりました。ゆえに構成指標のチャートが先行発信されたことでより際立ったという印象を持ち合わせています(このブログエントリーの最初に貼付したツイートが発信されたのは、日本時間の3月21日午前3時26分となっています)。

 

さて、ダウンロード指標を制したドナルド・トランプ & J6プリズン・クワイア「Justice For All」については収益が寄付されるとのことですが、その寄付先がポイント。記事のサブタイトルには『Proceeds from the song benefit those incarcerated for the Jan. 6, 2021 attack on the U.S. Capitol. (この曲の収益は、2021年1月6日の連邦議会議事堂襲撃事件で収監された人たちに寄付されます。)』と書かれています。

“Justice for All” is a recording of former U.S. President Trump and a group of men imprisoned for their involvement in the Jan. 6, 2021, attack on the U.S. Capitol in Washington, D.C. In the song, he recites the U.S. Pledge of Allegiance, mixed with the J6 Prison Choir singing “The Star-Spangled Banner.”

「Justice for All 」は、トランプ前米大統領と2021年1月6日に起きたワシントンDCの連邦議会議事堂襲撃事件に関与した罪で投獄された男たちが、曲中で米国忠誠の誓いを唱え、J6プリズン・クワイアが歌う「星条旗 (原題:The Star-Spangled Banner)」に混じって、録音されています。

 

According to CNN, and as reported by Variety, the J6 Prison Choir requested that Trump be part of the song. He agreed and recorded his audio at his Mar-a-Lago residence in Palm Beach, Fla. Per Forbes, the prisoners recorded their vocals by phone and the track was “reportedly produced by a major recording artist who [has] not [been] identified.”

CNNによると、またヴァラエティが報じたように、J6プリズン・クワイアはトランプ氏をこの歌に参加させることを要請。トランプ氏は承諾し、フロリダ州パームビーチにあるマー・ア・ラゴの住居で音声を録音しました。フォーブスによると、囚人たちは電話でボーカルを録音し、トラックは「"特定されていない"メジャーなレコーディング・アーティストがプロデュースした」とされています。

(※ 翻訳の際、DeepL翻訳ツールを用いています。なお一部単語についてはブログ用に修正しています。)

記事には連邦議会議事堂襲撃事件の詳細が記されていますが、その事件の被告が獄中で歌った曲にトランプ氏が参加し、収益が被告側に回るということになっています。

 

今回のリリースとその結果について、売上が決して少なくない点を自分は特に注目しています。

昨年度以降の米ビルボードソングチャート、首位獲得曲の3指標動向および各指標首位獲得曲の数値を再掲。ドナルド・トランプ & J6プリズン・クワイア「Justice For All」が獲得した33,000は十分な売上と言えます。マイリー・サイラス「Flowers」が非常に強い状況ですが、2022年度以降では3万台は高いほうと考えていいでしょう。

その中で、今年度初週にテイラー・スウィフトが「Anti-Hero」で獲得した327,000という驚異的な数値は様々なリミックスの用意や歌手側のホームページ先行配信等、施策の用意が背景にあります。ライバルの首位獲得阻止もまた、施策用意の目的と推測しています。

 

ドナルド・トランプ & J6プリズン・クワイア「Justice For All」はダウンロードが強い一方で接触指標群が強くはなく、総合ソングチャート100位以内到達に至りませんでした。米ビルボードの記事を踏まえるにミュージックビデオの一部メディア独占配信等、トランプ氏の強さが発揮できる場所を優先的に用いたことが大きなヒットに至りにくかったものと考えます。ただしこの曲は各種デジタルプラットフォームでも解禁済です。

仮にトランプ氏側がチャート施策に少しでも詳しくなれば、自身のホームページにて音源を配信しリミックス等も用意することで売上を増大させ、米ビルボードソングチャートでも100位以内に到達可能になるのではないでしょうか。そうなると一部支持者の範囲にとどまりがちな新曲リリースの話題は、音楽チャートを介してより拡がっていくものと思われます。そしてその収益が寄付のみならず様々な資金につながるでしょう。

 

「Justice For All」の指標制覇がその先につながる可能性について、個人的には憂慮しています。