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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【ビルボードジャパン最新動向】最新ソングスチャート上位4曲の強さと気掛かりな点、そして重要なこととは

毎週木曜以降は最新のビルボードジャパン各種チャートについてお伝えします。

10月3~9日を集計期間とした最新10月12日公開分(10月17日付)ビルボードジャパンソングスチャートは、SKE48「絶対インスピレーション」が初登場で首位を獲得しました。

SKE48「絶対インスピレーション」総合首位獲得の原動力は、ポイント全体の8割以上を占めたフィジカルセールス指標。ここ3作品における初週売上動向は234,600枚(「あの頃の君を見つけた」)→274,744枚(「心にFlower」)→298,021枚(「絶対インスピレーション」)と順調に伸びています。ただし「絶対インスピレーション」は2曲同様に、次週総合100位圏外に急落する可能性が高いでしょう。

CHART insightをみると、フィジカルセールス(黄色で表示)が首位なのに対し、ルックアップ(オレンジ)は22位と大きく乖離しています。ルックアップはパソコン等にCDをインポートした際にインターネットデータベースのGracenoteにアクセスされる数を示し、売上枚数に対する実際の購入者数(ユニークユーザー数)やレンタル枚数を推測可能とするもので、「絶対インスピレーション」はコアファンに支えられているといえます。

ロングヒットしているAdo「新時代」はシングルにてフィジカルをリリースしておらず、またロングヒットの可能性が芽生えたYOASOBI「祝福」やなとり「Overdose」は共にストリーミング(青)や動画再生(赤)といった接触指標群が強い状態です。SKE48「絶対インスピレーション」はダウンロード(紫)こそ300位以内に入り加点されたものの接触指標群は300位にも達しておらず、ロングヒットの要件を満たしていません。

ゆえに次週、SKE48「絶対インスピレーション」が総合100位以内から脱落する可能性は非常に高いでしょう。週間ソングスチャートを制することは素晴らしい一方で、社会的ヒット曲はいずれもロングヒットすることでその地位に至っています。ビルボードジャパンがロングヒットの重要性を流布すると共に、フィジカルセールス指標のウエイトを下げることも検討していいのではと提案させていただきます。

 

さて前週はなとり「Overdose」やTani Yuuki「もう一度」における動画再生指標の欠損の可能性を記しました。

最新ソングスチャートにおいて、2曲共に欠損状態から脱出していることに安堵しています。

なとり「Overdose」はラジオ(黄緑)やカラオケ(緑)が強くなればさらなるブレイクに至れる可能性を以前指摘しました(【ビルボードジャパン最新動向】なとり「Overdose」トップ10入り…上昇の要因と、さらなるヒットに必要なこと(9月29日付)参照)。ラジオは上昇してきている一方でカラオケはまだ加点対象となっていませんが、JOYSOUNDでは10月16日に配信がはじまるため(DAMは現段階で未配信)、次週以降に注目しましょう。

 

最新のビルボードジャパンソングスチャートではYOASOBI「祝福」が14→2位に上昇しています。以前ブログエントリーで躍進の可能性を示唆していましたが、実際その通りとなりました。

機動戦士ガンダム 水星の魔女』オープニング曲であるYOASOBI「祝福」は10月1日土曜にデジタルリリース。テレビアニメが日曜17時の放送ゆえ、それに近いタイミングで解禁日を設定したものと思われます。ストリーミング6位、動画再生4位と接触指標群も強い一方でダウンロードは2→1位となり、売上も23,298→30,499DLと推移しています。

今作「祝福」のヒットで、YOASOBIがヒットチャート最前線に帰ってきたといえるかもしれません。彼らもTwitterで喜びの声を発信しています(コアファンの連帯やライト層への訴求につながるであろう、YOASOBIのSNSにおけるポジティブな発信はやはり巧いと思うのです)。

タイアップ先の放送時間を踏まえ、ビルボードジャパンの集計開始日である月曜0時に「祝福」を解禁したほうがよかったかもしれません。接触指標群の伸びが若干鈍化してもダウンロードで5万前後を売り上げれば、総合ソングスチャートでSKE48「絶対インスピレーション」を逆転できたでしょう。それでもYOASOBIはグローバルチャートも視野に入れ、同チャート集計開始日である金曜に近い解禁日設定を行ったものと考えます。

 

そして前週まで通算6週に渡って総合ソングスチャートを制していたAdo「新時代」は、今週3位に後退しました。

ここにきてラジオやTwitter(水色)が大きくダウンしていますが、獲得可能な6指標がすべて100位以内に登場し続けているのは立派といえます。ただしポイントは1割を超える減少となっており、その点が気掛かりです。

チャートインの早い順に『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』収録曲のチャートアクションを示した上記表をみると、「新時代」のポイント前週比が今週最も大きく落ち込んでいることが解ります。

接触指標群の充実がロングヒットの鍵とお伝えしましたが、「新時代」はストリーミングが7週連続で再生回数前週比1割前後のダウンにて推移しています。それでも前週まで1千万回再生を突破していたのは凄いことですが、年間ソングスチャート上位進出のためには新たな施策等が必要となるでしょう。新曲の好調なチャートアクションも過去曲を支えることにつながりますが、「リベリオン」が安定しないことは気掛かりです。

 

ビルボードジャパンソングスチャートでは週間チャートでの上位進出のみならず、ロングヒットし年間チャートで上位進出することがより重要です。仮に週間チャートで順位を下げたとしても、ポイント前週比をチェックし下がり幅が大きくなければ順位面での再浮上も十分考えられます。次週は強力な新曲がこぞって上位にエントリーする可能性が高いため、今回紹介した曲の次週の推移を注視していきましょう。