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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【ビルボードジャパン最新動向】なとり「Overdose」トップ10入り…上昇の要因と、さらなるヒットに必要なこと

毎週木曜以降は最新のビルボードジャパン各種チャートについてお伝えします。

最新9月28日公開分(10月3日付)ビルボードジャパンソングスチャートはAdo「新時代」が2週ぶり、通算5週目の首位を獲得しました。

フィジカルシングル未リリースにつき6指標が加算対象となるAdo「新時代」は、そのうち5指標が5位以内に登場。特にストリーミングの強さが際立ち、再生回数は7週連続で1千万回超えを達成しています。累計再生回数は既に1億5千万回を突破したことが、下記ツイート内リンク先から判ります。

 

さて今回、急激に力をつけてきたのがなとり「Overdose」。26→10位と急浮上し、ポイント前週比は170.7%と大きく伸ばしてきました。「Overdose」については総合ソングスチャート、Streaming Songsチャート(およびストリーミング指標)等多くの記事で言及されています。

この曲のブレイクのきっかけはTikTok、そしてユーザー生成コンテンツ(UGC)。TikTok Weekly Top 20ではポイントが前週のおよそ2倍となり、5→2位に上昇しています。

そしてUGCに基づくTop User Generated Songsチャートでは遂に首位を獲得。ビルボードジャパンが総合ソングスチャートの記事にて『“JAPAN HOT 100”での合算対象ではないが、YouTubeの「踊ってみた」や「歌ってみた」動画の再生数を用いた“Top User Generated Songs”では前週2位に初登場し、当週では、なんと3週連続で1位を守っていたAdoの「新時代」を破り1位に』と紹介。「Overdose」の凄まじい勢いが解ります。

 

Overdose」は9月7日にリリースされていますが、なとりさんその一部をTikTokで5月14日に公開していました。

@siritoriyowai_ Overdoseという曲です。#バズれ #おすすめにのりたい #japanesemusic ♬ Overdose - なとり

なとり「Overdose」のTikTok動画を検索すると(なとりが製作したOverdose | TikTok (ティックトック) で人気の曲参照)、現時点でコムドットのゆうたさんによる作品が最上位に登場します。この動画の公開が8月15日ということを踏まえれば、音源リリースが如何に待望とされていたかが容易に想像できるでしょう。そしてインフルエンサーが振り付けをつけただろうこととその拡散は、Tani Yuuki「W/X/Y」等を想起させます。

@com.yuta0305 表情固すぎ人間🧑#コムドット #コムドットゆうた #一重日記 ♬ Overdose - なとり

なとりさんによるTikTok先行公開は、ともすれば"こういう曲ができました"的な意味合いもあったものと思われますが、結果的に先行公開となったこの曲が正式リリース前にバズを起こしたことは、米で顕著なチラ見せ公開施策を想起させます。

 

さらには「Overdose」においてはインストゥルメンタルバージョンも配信されており、YouTube動画の概要欄にもリンクが掲載されています。これがUGCの"歌ってみた"動画の増大につながることは確実で、現に様々なカバー版が登場しています。

 

ともすれば、なとり「Overdose」の勢いはAdo「新時代」に迫る可能性を秘めているのではと感じます。TikTokUGCのヒットがサブスク聴取にきちんと移行し(最新ビルボードジャパンソングスチャートのストリーミング指標は6位)、Twitter指標は54位に上昇していることで口コミの拡大も見て取れます。そしてヒット曲の勢いをさらに増幅させる歌唱分析動画も昨日登場しており、さらなる認知上昇の可能性は十分です。

 

なとり「Overdose」がさらに伸びるには、今の強みがさらに拡大することも必要ですが、弱点と言える部分の克服もまた必要でしょう。

フィジカルシングル未リリースにつき6指標が加算対象となるなとり「Overdose」ですが、強い指標とそうでないものとがはっきりしている印象です。カラオケは後から伸びる指標ですが、現時点でカウント対象となるDAMJOYSOUNDの双方にて未配信であることから、早急な解禁が求められます。

またラジオが300位未満でカウント対象外という状況は勿体ないと言わざるを得ません。この指標が歌手のブレイクタイミングで最も伸びにくいことは、2年前の瑛人「香水」やYOASOBI「夜に駆ける」のブレイク直前の指標構成を踏まえて指摘しています。厳しい物言いとなりますが、ラジオ局が"ヒットの可能性が高い曲をいち早く察知しOAする"というアンテナを磨く必要もあるでしょう。

そして動画再生指標。カウント対象となる300位圏内に入ってはいるものの、100位未満という状況はあまりにも惜しいと思うのです。ともすればUGC投稿者の中に「Overdose」のURLを貼付していない可能性も考えられますが、なとりさん(本家)のミュージックビデオがともすればリリックビデオや公式オーディオと誤って受け止められ、それが再生回数の増加につながりにくいのではとふと感じた次第です。

この動画再生指標の上昇の目的のため、また自分がふと感じた動画の受け止め方(誤認)を防ぐ意味でも、ミュージックビデオの別バージョンを用意することが必要かもしれません。レコード会社未所属、自主制作であろうことはSNSアカウントとほぼ同じレーベル名から判るゆえ追加動画作成は容易ではないかもしれませんが(またこれがラジオの強くなさの一因とも言えますが)、検討することを勧めます。

 

 

TikTok先行チラ見せとバズ、インフルエンサーによる振り付けの追加、UGCの大量アップ等で次なる大ヒット曲候補に名乗りを上げた、なとり「Overdose」。既にAdo「新時代」をUGCで上回ったことで、この数週の動向が俄然楽しみになってきました。