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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

最新5月14日付米ビルボードおよびグローバルのソングスチャートからみえてくる様々なトピックをまとめる

最新5月14日付米ビルボードおよびグローバルのソングスチャートについては昨日速報を紹介。このブログでは毎週、米ビルボードによるソングスチャート速報記事を(勝手ながらではありますが)翻訳し、紹介しています。グローバルの動向を伝えるのはおそらくここのみではないでしょうか。

今回のチャートひとつをとっても、気付くことが様々あります。ということで今回は、最新5月14日付米ビルボードおよびグローバルのソングスチャートからひとつかみ。チャートの見方に役立てられたならば嬉しいです。

 

 

アメリカとアメリカ以外での人気ジャンルの違いを知る

最新の米ビルボードソングスチャートはアルバム共々フューチャーが制覇。初登場での同時制覇は現在までに5組/7週分のみであり、フューチャーの勢いの凄さがよく解ります。

米ソングスチャートを制したフューチャー feat. ドレイク & テムズ「Wait For U」は、グローバルチャートのうちGlobal 200でも2位に初登場を果たした一方、Global 200から米の分を除いたGlobal Excl. U.S.においてはトップ10入りを逃しています。

Global 200とGlobal Excl. U.S.とで順位を比べた際、前者が高いほうが米での人気が高く、後者ならば米以外での人気が高いと捉えることもできます。その点において今週双方のチャートで初のトップ10入りを果たしたカロルG「Provenza」のみならず、アニッタ「Envolver」はGlobal Excl. U.S.にもランクインしていることから、ヒップホップは米で、ラテンは米以上に海外での人気が高いジャンルと考えていいのかもしれません。

 

 

K-Popの人気の高さ、一方で米での強くなさを思う

PSY feat. SUGA(BTS)「That That」が最新のグローバルチャートで共にトップ10入り。Global 200では5位、Global Excl. U.S.では2位に初登場を果たしています。

順位を比較すればK-Popが米以外でより人気であることが判りますが、このふたつのチャートから米での人気が推測可能。2指標の数値をみるとストリーミングはGlobal 200が6700万、Global Excl. U.S.が6150万、ダウンロードは前者が29600、後者が18800を獲得しており、Global 200からGlobal Excl. U.S.を差し引くと米の分はストリーミングが550万、ダウンロードは10800と予測できるのです。

グローバルと米ビルボードのソングスチャートにおける主な違いは、グローバルチャートにおいてラジオ指標がない、主要デジタルプラットフォームに絞って集計する、そしてフィジカルセールスや歌手のホームページにおけるダウンロードを含まない点です。

K-Popはこれまで米において所有指標に強い一方で接触指標が芳しくないという傾向でしたが、「That That」もその流れに収まってしまった感があります。無論2週目の動向も注視する必要がありますが、この動向からはBLACKPINKのLISAによる「Money」の動きが如何に特殊で、優れていたかをあらためて感じるのです。

(上記はエクスクルーシブパフォーマンス動画。)

 

 

ハリー・スタイルズもチャート施策を実施している

最新のグローバルチャートではふたつとも、ハリー・スタイルズ「As It Was」が5連覇を達成しています。

米では初登場で首位を獲得した翌週にジャック・ハーロウ「First Class」にその座を譲りながら翌週カムバックを果たし、前週も首位に。今週はフューチャーが勝るという予想家の見方が大勢を占めていたものの、最終盤になって「As It Was」が追い上げを見せたことが米ビルボードの記事から判ります。

Harry Styles’ “As It Was” dips to No. 2 on the Hot 100, after three weeks at No. 1, with 60 million in airplay audience (up 14%), 25.7 million streams (down 9%) and 16,300 sold (up 78%, good for top Sales Gainer honors). The track hits No. 1 on Digital Song Sales – becoming Styles’ third leader, after “Sign of the Times” and “Watermelon Sugar” (for a week each in April 2017 and August 2020, respectively) – aided by the May 4 release of a download option with alternate artwork.

“Alternate Artwork”はすなわちジャケット違い。ハリー・スタイルズは「As It Was」のデジタル向け別ジャケットバージョンを5月4日水曜、すなわち集計期間6日目に発売しており、ともすれば米ビルボードで総合首位の座をキープできないだろうという予測に基づいた緊急のテコ入れ施策ではないかと思うのです。

上記はAs It Was - Digital Single Download Alt Cover – Harry Styles USより。5月5日木曜というチャート集計期間最終日までの期間限定、且つ米のみでの販売という状況は、まさにチャート対策と言えるでしょう。そしてこちらがハリー・スタイルズの公式ショップ限定での販売というところも注目です。

最新のグローバルチャートにおけるダウンロード指標から米における「As It Was」の売上は8500と推測。Global 200もGlobal Excl. U.S.でも前週比は大きく動いていない一方、米ビルボードソングスチャートにおけるダウンロードは前週比78%アップの16300となっています。別ジャケットバージョンがiTunes Store等のグローバルチャート加算対象主要デジタルプラットフォームで販売されていないだろうことがここから判ります。

歌手側のチャートへの意識やこだわりは、ここから如実に伝わってきます。そして施策はトップアーティストでも実施しているのです。

 

 

・ラッパーもK-Popアクトも…チャートへの意識の高さを感じる

最新の米ビルボードソングスチャートを制したフューチャーや、ふたつのグローバルチャート共にトップ10入りを果たしたPSY等、チャートアナウンスから程なくしてチャート成績についてSNSで感謝の意を述べる方は少なくありません。

ハリー・スタイルズが「As It Was」で施策を実施したのも、チャートで好位置を収めることが価値のあることと考えるゆえではないでしょうか。

個人的には日本の歌手もチャートをきちんと意識して発信して欲しいと思わずにはいられません。同時に、歌手にとって魅力的なチャートになること、広く社会への認知を拡げることをビルボードジャパンは意識し、実行してほしいと考えます。