イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

『NHK紅白歌合戦』で最も注目されたのは藤井風…Spotifyデイリーチャートから読む

昨年大晦日放送の『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)。リアルタイム視聴率については歴代ワーストを記録してしまいましたが、その評判は上々の模様です。

この第2部における34.3%という数字はあくまでもリアルタイム視聴率を指します。個人的にはこの数字よりも総合視聴率のほうが番組の評判や質とリンクするものと考えており、1週間後に発表されるであろうこの数字を踏まえて、番組側もさることながら視聴者(もしくは全く観なかったという方も含めて)も省みる必要があると考えます。

 

さて、紅白の評判は放送終了直後にアップされた記事で確認できます。

『紅白が「今の時代における歌番組」として至極真っ当にスケールアップしている』(音楽ジャーナリストの柴那典さんによる記事より)、『2021年の『紅白歌合戦』(以下、紅白)は、最高だった』(音楽評論家のスージー鈴木さんによる記事より)という評価が、音楽関係者の方々から発信。紅白の意義等がよく解る内容となっています。

自分は実況しながら観ていたのですが(”#NHK紅白”を付けてつぶやいていました)、一部演出、そして前半を中心とする曲の著しい短尺化には疑問を抱いています。その一方で、歌手のパフォーマンス(それこそNHKの演出等における音楽の魅せ方も含め)がそのマイナスを凌駕し、総合では2021年の紅白も好かったという結論を抱いています。個人的には先に取り上げたお二方も紹介していた、こちらの二組がとにかく見事でした。

(本来ならば、NHKによる公式YouTubeアカウントがアップした紅白の映像をティザーであれども紹介したかったのですが、それら動画はブログ等にきちんと貼り付けられない仕様となっています。これは紅白の魅力を紹介する際の障害になりかねず、NHKには再考を求めます。歌番組におけるパフォーマンスのフルバージョンでのアップは日本でも、少しずつですが始まっています。紅白にはその検討についても強く希望します。)

 

そして、藤井風さんや中村佳穂さんについては多くの視聴者も釘付けにしただろうことが、音楽チャートからも見て取れます。1月2日までを集計期間とする1月5日公開分(1月10日付)のビルボードジャパンソングスチャートは1月7日に発表されるためにそのタイミングであらためて記載する予定ですが、今回はデイリーチャートの再生回数が可視化されるSpotifyの動向をみていきます。

 

まずは『輝く!日本レコード大賞』(TBS 2021年12月30日放送)において大賞や最優秀新人賞、特別賞を受賞し披露された曲の推移をみてみましょう。参考として1位および200位の再生回数や、期間中最上位をキープしたKing Gnu「一途」、ならびに2021年度ビルボードジャパン年間チャートチャートを制した優里「ドライフラワー」についても掲載します。

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(期間は2021年12月27日から2022年1月1日まで、また黄色の表示は2021年12月31日付および2022年1月1日付において再生回数前日比が90%以上を記録した曲を示します。これらは下記表においても同様です。)

晦日については再生回数前日比が概ね1割以上、元日には2割以上ダウンする傾向となったSpotifyデイリーチャートにおいて、奮闘しているのがDa-iCECITRUS」。日本レコード大賞受賞については大晦日におけるブログエントリーで私見を記していますが、前日とほぼ変わらぬ推移は注目の高さを裏付けています。またレコード大賞関連曲は全体に比べて再生回数前日比が高い傾向にあることも解ります。

その「CITRUS」は元日の再生回数前日比が他の曲とさほど変わっていません。年越し音楽特番に出演したこと等も踏まえて1月2日以降の動向も確認する必要がありますが、これは大晦日、元旦と立て続けにSpotify全体の再生回数がダウンしたこと、そして紅白関連曲の伸びに押されたことも原因として考えられます。

 

では紅白関連曲の動向はどうでしょうか。

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(DISH//「猫」については参考として、THE FIRST TAKEバージョンも掲載しています。)

晦日における再生回数前日比が100%を超える曲や、大晦日になってSpotifyデイリーチャート200位以内に再登場(初登場の可能性も)した作品もみられます。そしてその勢いが元日にも継続する曲が少なくありません。際立っているのが藤井風さん、millennium parade × Belle(中村佳穂さん)、BUMP OF CHICKENおよびまふまふさんであり、BUMP OF CHICKENを除く3組は柴那典さんが記事にて言及されています。

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その中でも、藤井風さんは驚異的な動向を示しています。12月30日にはSpotifyで200位以内にランクインしていたのが「きらり」のみでしたが、大晦日、元日と3曲ずつ200位以内に再登場。特に紅白でサプライズ登場後に披露された「燃えよ」においては、元日の再生回数前日比が163.7%を記録しているのです。

 

紅白の終了直前にこのようなことをつぶやきましたが、いわば紅白によって藤井風さんや中村佳穂さんは広く日本国民に"見つかった"といえるのではないかと考えていました。無論1月2日以降のSpotifyの動向や、Spotifyも含む複合指標に基づいたビルボードジャパンソングスチャートの状況をみないと最終的な判断はできないとして、しかしながら藤井風さんの衝撃は間違いなく大きいということがSpotifyで可視化されました。

昨日の藤井風さんによる生配信はアーカイブ化され、本日8時の段階で150万近い再生回数を記録しています。紅白を経て藤井風さんが2022年の顔になるのではないかと考えるのは、決して大袈裟なことではないでしょう。