イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

松本隆トリビュートにおける歌手のセレクト&選曲からみえてきた、ある条件とは

松本隆 作詞活動50周年トリビュートアルバム 「風街に連れてって!」』が今週リリースされました。B'zの参加というトピックに驚きましたが、ベテランから川崎鷹也さん、YOASOBIのikuraこと幾田りらさんまでが揃った注目のコンピレーション作品と言えます。

 

さて、この企画について興味深いプレイリストが公開されています。

トリビュートアルバムの製作総指揮を担当した亀田誠治さんと音楽ジャーナリストの柴那典さんによる解説を経て、アルバムに収録されたカバーバージョンとオリジナル版とを続けて聴く流れになっていますが、注目はカバーバージョンとオリジナル版の双方がすべて解禁されているということ。これはかなり大きなことではないでしょうか。

 

カバーやトリビュートされる作品は今回のアルバム収録曲に限らず、日本でサブスクサービスが始まる前のものが主体であり、近年の作品こそサブスク解禁が増えた一方で過去の作品は未だ解禁されていないものが多いと感じています。

昨年秋に作曲家の筒美京平さんが亡くなり、2018年にリリースされた作品集の収録曲について昨秋の段階でサブスクが解禁されていたかをまとめた表を上記ブログエントリーに掲載しましたが、その解禁率は半分強にとどまっていたのです。ちなみに今作でB'zがカバーした桑名正博「セクシャルバイオレットNo.1」も筒美さんが手掛けています。

トリビュートアルバムのリリースやアナウンス、また悲しいことですが訃報が流れた際、オリジナル作品にも注目が集まるのは自然なこと。ゆえに、今回のトリビュートアルバム収録曲のオリジナルバージョンがすべて解禁されていることが如何に素晴らしいかがよく解るのです。これが今作における注目ポイントのひとつ。

そしてもうひとつが、今回トリビュートを担当した歌手がすべてサブスクを解禁していること。先述したB'zのサブスク解禁は今年5月21日とつい最近ではあるのですが、仮に彼らが未解禁のままだったならば、トリビュートアルバムに参加していたとしてもB'z版の「セクシャルバイオレットNo.1」のみ未解禁のままだったかもしれません。

 

これは邪推と前置きして書きますが、『松本隆 作詞活動50周年トリビュートアルバム 「風街に連れてって!」』の担当スタッフ、そして亀田誠治さんも、トリビュートに参加する歌手そしてカバーされる曲の双方がサブスク解禁されていることが選ぶ際の最低条件にあったのではないでしょうか。それゆえ今回のプレイリストが成立するのです。

今回のトリビュートアルバムが商業的にも、そして評価の面でも成功すれば、トリビュート企画がさらに登場することでしょう。それはすなわち、時代に関係なく曲がサブスク解禁されること、およびサブスク未解禁の歌手が動くことにつながるでしょうし、そう願う自分がいます。 

 

最後に。トリビュートアルバムはデジタル解禁と共に、フィジカルでも存在感を放っています。昨今このような開封動画をよく見かけますが、公式が行っているのは興味深いですね。デジタル/フィジカル双方で訴求する作品としても注目です。