ラジオ番組ではこの春、放送時間の短縮化が相次いでいます。この動きから見えてくるものが実に興味深いのです。
J-WAVE『SONAR MUSIC』はこの春から開始時間を1時間遅らせ、3→2時間の番組に。なおJ-WAVEの改編期は1日付となります。
日付変わって4月1日からは、
— SONAR MUSIC (@SONAR_MUSIC_813) 2021年3月31日
SONAR MUSIC、放送時間が22:00からに変わります❗️
より凝縮したSONARにお付き合い宜しくお願いします🌈#sonar813 #jwave
そしてTBSラジオ『TALK ABOUT』。22時開始は変わらずも、終了時間が30分繰り上がり23時30分に。ツイートでの言及はみられませんが、何気に大きな変更と言えます。
『TALK ABOUT』については地方局でもネットされていますが、この春に放送を終了したのが北日本放送(KNB)、そしてRSK山陽放送。この2局が新たに選んだ番組に、『TALK ABOUT』短縮の理由を見出すことができそうです。
北日本放送(KNB)およびRSK山陽放送が新たに用意したのが、渋谷のラジオ(という放送局)で土曜22時~23時30分枠で放送されている『福山雅治と荘口彰久の「地底人ラジオ」』。上記リンク先は地上波ネット局を放送開始の順に並べたもので、福山さんの出身地である長崎県のNBC長崎放送がいち早く開始していることがわかりますが、2局は以前からOAしていたものの『2021年4月3日より放送日時変更』し、土曜22時枠の座に就かせたことになるのです。
この『福山雅治と荘口彰久の「地底人ラジオ」』には、さらに興味深い事実が。
2020年10月より、放送時間が毎週日曜 22:00から毎週土曜 22:00へ変更。同時にAbema RADIO、NBC、HBC、RKK、RKB、SBS、OBS、rfc、MBCは渋谷のラジオと同時刻でのネットとなり、これに併せてオープニングテーマ曲にかつて福山と荘口が出演していた「福山雅治のオールナイトニッポンサタデースペシャル・魂のラジオ」でも使用していたラモーンズの「Do You Remember Rock'N'Roll Radio?」を採用した。
ニッポン放送にて2000年から15年に渡り放送されていた『福山雅治のオールナイトニッポンサタデースペシャル・魂のラジオ』は土曜夜の番組であり、オープニングテーマを当時の番組と同一とすることでその頃からのリスナーにとっては『福山雅治と荘口彰久の「地底人ラジオ」』もまた90分枠であるという認識が自ずと生まれることでしょう。また、ニッポン放送との関係性も良好であることがみえてきます。
そのニッポン放送にて『福山雅治のオールナイトニッポンサタデースペシャル・魂のラジオ』を放送していた土曜23時30分枠は現在、『SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル』がOA。『TALK ABOUT』を放送するTBSラジオ以外の局はすべて23時半からSixTONESの番組をネットしている状況です(一部は23時から30分枠を別番組としていますが)。
『TALK ABOUT』にとっては差し替えられネット局のライバルとなった『福山雅治と荘口彰久の「地底人ラジオ」』の尺に合わせて、そして地方局の『SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル』が多くの局でネットされている現状を踏まえ、尺を90分にする必要があったものと考えます。無論、地方局を意識せず120分枠にこだわるのもアリでしょうが、放送途中で抜けるよりもきっちり23時30分で終わらせたほうが地方局にとっても好いでしょう。『TALK ABOUT』にとっては苦しい決断だったかもしれませんが、30分短縮はTBSラジオが地方局と良好な関係を築く上で有効に作用するものと考えます。
『福山雅治と荘口彰久の「地底人ラジオ」』を放送する渋谷のラジオはコミュニティFM局ですが、人気コンテンツは県域放送局でも採用されます。そのコミュニティFMで多く流れるのがJ-WAVEなのですが、たとえば自分の住む地域のコミュニティFMでは平日22時まで局独自の番組が流れており、地元局では3月まで『SONAR MUSIC』が番組途中から飛び乗る形となっていました。ともすれば他のコミュニティFMも同様かもしれず、ならば『SONAR MUSIC』の決断もまた地方局への配慮と言えるかもしれません。
首都圏ラジオ局によるこの春の改編が”地方局への意識”に基づくものならば、新たに始まった番組の登場にも納得がいきます。
ニッポン放送はこの春から平日24時台に『オールナイトニッポンX(クロス)』を新設し、平日は22時から明け方までオールナイトニッポンブランドで統一されました。ブランド力の高さで地方局を制覇せんとの意気込みが感じられます。
TBSラジオは日曜8時からの2時間枠で、32局ネットによる新番組『地方創生プログラム ONE-J』をスタート。この2時間枠は新設されたもので、TBSラジオが地方局との繋がりを深めんとする狙いを感じずにはいられません。尤も、TBSラジオでこの番組の後に放送される『安住紳一郎の日曜天国』もネットすればますます地方との深まりが強くなるものと考えますが、『安住紳一郎の日曜天国』がradikoタイムフリーに長らく非協力的だった姿勢を踏まえればそれは難しいのかもしれません。
この春のラジオ局改編は、地方を制するものが勝つ時代の幕開けと言えるでしょう。