コロナ禍による緊急事態は、様々な作品の延期をもたらします。
このたび、2021年3月5日(金)より公開を予定しておりました『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』の公開延期が決定しました。⁰新たな公開時期につきましては、映画公式HPおよびドラえもんチャンネルにてお知らせいたします。
— 【ドラえもん公式】ドラえもんチャンネル (@doraemonChannel) 2021年1月29日
詳細は映画公式HPよりご確認ください。https://t.co/7R3gSXGWAW pic.twitter.com/UyPXVccrg0
真っ先に想像したのは、今作品の主題歌となったOfficial髭男dism「Universe」がどうなるのかということでした。
当初の公開日に合わせてスケジュールを組み、年明け間もなくラジオ解禁→デジタル解禁という流れを踏んでいた「Universe」。しかし公開延期に合わせてリリースも遅らせることは今のところない模様です。おそらくはCDに同梱するオンラインライブの映像盤を考慮してのことと思われます。
気になるのは、「Universe」がどのようなチャートアクションを示すかということ。現在はテレビアニメ版『ドラえもん』のエンディングテーマとなっており、映画が公開される頃まで起用され続けるものと思われます。
ビルボードジャパンによるチャート推移(CHART insight)からは、サブスクの再生回数を基とするストリーミング(青の折れ線で表示)や動画再生(赤で表示)といった接触指標が、それほど高くはないものの好調に移行。加えて、ラジオエアプレイが曲を大きく牽引しています(それでも、チャート構成比をみればストリーミングのポイントが如何に大事かが解るのですが)。CD関連指標が加算されればもうひとつ大きな山を築けそうです。
映画版ドラえもんについては、前作『ドラえもん のび太の新恐竜』(2020)も公開が3月6日→8月7日に延期。その主題歌となったMr.Children「Birthday」もチャート上で大きな煽りを食ってしまいました。しかし、チャート推移をみれば公開延期だけが煽りの理由ではないと考えます。
「Birthday」は「君と重ねたモノローグ」共々、ダブルAサイドシングルとして2020年3月4日にCDリリース。CD関連指標のポイントは「Birthday」に加算されています。しかしながらデジタル関連指標がCDのそれに追いつかず、「Birthday」はトップ10入りわずか1週、100位以内では7週の在籍にとどまるほか、映画公開週やその翌週(ビルボードジャパンソングスチャートにおける2020年8月17~24日付)では各指標が再浮上したものの総合100位以内への復帰は叶いませんでした。
上記CHART insightより、総合順位およびストリーミング、動画再生、ルックアップ(オレンジの折れ線で表示)のみを抽出したものが上記。ルックアップはCDをパソコン等に取り込んだ際にインターネットデータベースへアクセスされる数を示すもので、レンタルCDの数を推測できるという側面があります(購入CDの取り込みも含まれます)。ここから見えるのは、購入はせずとも接触したいというライト層のニーズがレンタルには反映されているもののサブスクはそれほどでもないこと、サブスク解禁がCDリリースよりも遅れていること(ダウンロードも含めたデジタル解禁は3月23日であり、CDリリースからおよそ3週遅れ。公式サイトより)、そして動画再生指標未加算であるということ。動画についてはミュージックビデオが制作、解禁されていないということがその理由です。
公開延期はその作品の主題歌がしばらくの間、日の目を見る機会が減る事態となります。ミュージックビデオを制作するかは歌手側の意向が最優先されるためこちらがどうこう言える場にないのは承知で、しかしながらたとえばリリックビデオ等を制作し公開していればチャートアクション、さらには楽曲や歌手への注目度がもう少し違っていたかもしれません。そして動画の件や、さらにはデジタル解禁遅らせ策も含め、ともすれば”ミスチルの作品はデジタルに出ていない”的イメージが浸透し、サブスク再生回数の多くなさにも反映されてしまったのではというのが自分の見方です。
事実、「Birthday」等を収録した最新アルバム『SOUNDTRACKS』は未だにデジタル解禁されていません。
ビルボードジャパンアルバムチャートを構成する3つの指標のうち、唯一の接触指標がルックアップに当たります。『SOUNDTRACKS』はそのルックアップがCDセールスに比べて好調であり、一方でダウンロードが未だ加算されていません。Mr.Childrenは以前からCDセールスを第一義とする姿勢が見られ、それが必ずしも悪いとは思わないのですが、しかしチャート上ではその姿勢が不利になっているだろうことを、「Birthday」そして『SOUNDTRACKS』の例から痛感しています。
Mr.Childrenとは逆に、とりわけ接触指標を充実させている(そしてその結果として数々の大ヒットを生み出した)Official髭男dismにおいて、「Universe」のチャートアクションは「Birthday」より高くなるものと考えます。ただし映画の公開日が未定である以上、Official髭男dismにおいては前面に押し出す作品を次の作品に切り替えることも必要かもしれません。