一昨日発表された最新8月3日付ビルボードジャパンソングスチャートではSixTONES「NAVIGATOR」が今年度最多となる5万ポイント超えを達成しましたが、ルックアップ指標の極端な高さに対し違和感を抱いているということについては昨日のブログエントリーでお伝えしたとおりです。
SixTONESCDセールス初加算週のルックアップ指標獲得ポイント
— Kei (@Kei_radio) 2020年7月29日
「Imitation Rain」(41992P)
初週776836枚 3種リリース うち2種はCD同内容
ルックアップ約10% 同指標獲得分 4199P
「NAVIGATOR」(51273P)
初週652277枚 3種リリース 全種CD別内容
ルックアップ約36% 同指標獲得分 18458P https://t.co/Ns859hOG79
チャート構成比に占めるルックアップ指標の割合はCHART insightの円グラフより推測するゆえ、ルックアップ指標による獲得ポイントはおおよそでしかないのですが、それでも前作より「NAVIGATOR」が同指標で4倍強を獲得したことに違和感を覚えるというのが私見です。
この違和感についてのビルボードジャパンの見解を伺いたいと、チャート発表から間もなく(収録されると思しき時間の直前に)”#ビルボードポッドキャスト”と付けて疑問を記載したのですが、昨日朝までに更新されたビルボードジャパンのスタッフによるポッドキャストでは見解が示されませんでした。
しかしポッドキャストでは、「NAVIGATOR」のルックアップ指標によるポイントが歴代最多に近いことを紹介していました。そしてその理由については、CDデビュー前の代表曲3曲を3種のカップリングにそれぞれ収録しているからではと推測されています。
たしかに、前作「Imitation Rain」も3種発売でしたがそのうち2種はCD収録内容が同じであり、「NAVIGATOR」はカップリング曲の特性上、そしてルックアップが増える傾向にあるアニメタイアップ曲であることからルックアップが増えることは予想できます。しかし「Imitation Rain」より初週売上枚数が12万ダウンした状況を考えればルックアップは前作とさほど変わらないものと捉えていたのゆえ、ルックアップが4.5倍というのは驚かされますし、やはり違和感は拭えません。
※追記 (7月31日16時27分):上記の表現に対し、ご指摘をいただきましたので報告いたします。
今回のブログエントリーに、DMにてご指摘をいただきました。「Imitation Rain」は3種リリースながら全曲が揃っているのは1種のみゆえ、3種購入しても通常盤1種のインポートで足りるということです。ブログでは実質2種と書いておりました。訂正しお詫び申し上げます https://t.co/dRIYCwqsvv
— Kei (@Kei_radio) 2020年7月31日
いただいたご指摘を踏まえた上で、あらためて見解を記しています。
一方で、全曲をインポートするには「Imitation Rain」が1種に対し「NAVIGATOR」は3種と3倍になるのですが、今作はアニメタイアップでレンタルも多いだろう一方売上が12万減少とルックアップにはプラスマイナス双方の要素があります。この状況で今作のルックアップが4.5倍というのはまだ疑問が残ります
— Kei (@Kei_radio) 2020年7月31日
このルックアップの急上昇について、強い私見と前提の上で申し上げれば、ファンに因るルックアップ活動が影響しているのではと考えます。
まず気になったのはRTとお気に入り合計で2千を超えるこちらのツイート。ルックアップ指標獲得の方法を記載しているのですが、仮にこの方法を少し加工してiTunesにて”トラックを取得”を繰り返せば、CDの出し入れをせずともルックアップを容易に稼げるのではと考えた次第。仮にファン100人が1日ひとり100回この作業を行えば、チャートの集計期間のうちフラゲ日以降の6日間で6万回のルックアップを獲得できるということになります。1日100回を非現実的だとするならば、1000人がひとり10回ではどうでしょう。先のツイートはRTとお気に入りとで2千を超えているため、その半分がルックアップ活動に参加するというのはそこまで非現実的でないかもしれません。
※追記 (8月6日6時15分):上記のルックアップ獲得手段は正しくないことが、ビルボードジャパンのポッドキャストによって示されました(よって打ち消し線を用いて消去しています)。詳細は巻末のリンク先に掲載しています。
ファンに因る活動が目立ってきたという点では、以前から弊ブログで指摘しているTwitter指標も同様。毎月最終週のTwitter指標20位までを定期的に一覧化したものを最近noteにアップしましたが、この1年で男性アイドルグループ、特にジャニーズ事務所所属歌手が目立ってきていることが解ります。そして最新週のこの指標でトップ10に7曲をSixTONESが送り込んでいることからも明らかなように、SixTONESそして同時デビューしたSnow Manはこの指標で強く、ファンの連帯はこのTwitter指標からも見えてきます。先程のツイートにも7曲が連名のように記載されています。
無論このようなファン活動は他のジャニーズ事務所所属歌手のファンも同様でしょう。しかし今週は「Imitation Rain」でもルックアップ指標の構成比が高くなっているのが目立ちます。
8月3日付ビルボードジャパンソングスチャートは #SixTONES「#NAVIGATOR」が制しましたが、同週は「#ImitationRain」も55→31位に上昇。そしてルックアップがチャート構成比のおよそ3割と高くなっています。たとえば3月2日付や4月27日付と比べても、ルックアップの割合が高いことが見て取れます pic.twitter.com/SdIHM6z0K0
— Kei (@Kei_radio) 2020年7月30日
たとえば「NAVIGATOR」におけるルックアップ活動にはこのようなツイートもみられ、現段階で180ものRTが集まっています。「NAVIGATOR」のルックアップ活動の流れがあるからこそ「Imitation Rain」でも同様の動きが生まれたと考えるのが自然でしょう。
となるとやはり、「NAVIGATOR」のルックアップ指標はファンの活動によって、想定以上に高まったというのが自分なりの結論です。
ルックアップの定義を今一度確認します。
CDをPCで読み取る際などにアクセスする、楽曲やアーティスト名などを表示するためのデータベース「グレースノートメディアデータベース」へ接続した回数です。そのアクセス数をシングル盤はHot100、アルバム盤はHot Albumsに合算しています。パッケージに対するユーザーアクティビティをフォローするデータとして、また日本特有のレンタル動向をフォローするデータとして有効であると考えて採用しました。ルックアップチャートは、シングルチャートよりも若年層をコアとしたアクティビティがフォロー可能で、シングルの一層のセールスの可能性を反映する指標として広く利用されています。
・【Billboard JAPAN Chart】よくある質問 | Special | Billboard JAPANより
この指標からはレンタル動向がある程度把握でき、売上枚数に対する実際の購入者数(ユニークユーザー数)も推測できるものと考えます。しかしこのルックアップがファンの活動により意図的に加算されることがあれば、それらを読み取ることはできにくくなってしまいます。ソングスチャートを構成する8指標のうちシングルCDセールスは一定数以上の売上獲得作品に独自係数を用い、ラジオエアプレイはサンプル局のOA回数に聴取可能エリアの人口を加味、サブスクサービスの再生回数に基づくストリーミングは有料サービスでの再生分と無料のそれとでウェイトを変えるという調整が行われていますが、ルックアップについてはそのような調整を聞いたことがありません。ゆえにルックアップ指標は、言葉は悪いのですが”ザル”と捉えられてもおかしくないと思うのです。
さらに、先のビルボードジャパンポッドキャストの見解には矛盾を孕んでいると感じています。チャート分析や予想を行うあささんのコメントにそれを実感した次第。
『「表題曲ではなくc/w曲を聴くための行動」が表題曲のポイントに加算されていることになり、ルックアップ指標の欠点が表面化』
— Kei (@Kei_radio) 2020年7月30日
種類ごとにカップリング曲が異なるためルックアップが伸びたとビルボードポッドキャストでは分析されていますが、だからこそあささんの指摘はかなり重要だと感じます https://t.co/IDZCqBdZ18
複数種販売で種類毎にカップリングが異なるにも関わらず表題曲が同じゆえルックアップは表題曲の加算対象というのは、たしかにおかしいと考えるに至りました。これらを踏まえれば、ルックアップ指標は改善される必要があるでしょう。
今回のSixTONES「NAVIGATOR」のルックアップの上昇はファンによる可能性が高いという結論は、自分なりの推測でしかないと言われればそれまでですが、ビルボードジャパンが今回のルックアップ上昇の理由を同様に考えているならば、そしてルックアップの抱える諸問題に気付かれたならば、ビルボードジャパンはルックアップ指標のチャート構成比に対するウェイトを大きく落としてもよいのではと考えます。以前からTwitter指標においても同様の見解を弊ブログに記載していたこともあり、ビルボードジャパンソングスチャートはTwitterおよびルックアップを抜いた6指標化、外れた指標は別途チャートを作成する(TwitterはアメリカのSocial 50のような形で)というのは如何でしょうか? これは極端な例だとしても、そのケースも想定してチャートポリシー変更を議論すべきではないかと考えるに至っています。
好きな歌手のチャート成績を好いものにしたいという思いは勿論理解できますが、それがチャートの設計思想を大きく超え、社会的ヒットの鑑となってきたチャートの信頼を損ねるまでに至るならば、ファンによる過度な接触が可能なものについては是正すべきというのが私見です。アメリカでは歌手側が所有指標を過度に拡大せんとフィジカル施策を行ったことが目立ち始めチャートが社会的ヒットの鑑として機能しなくなったのを受け、10月からこの施策を認めないという判断を下しています。
日本においても年一、ニ回のペースでチャートポリシー変更が行われていますが、実はここ数ヶ月で他の作品にもルックアップの過度な上昇が見られるという声があることから、年度の切り替えを待たずに早々に判断を下す必要があるのではと考えます。ビルボードジャパンがルックアップ指標の見直しを議論のテーブルに乗せることを願います。
最後にファン活動に対する私見を。先にも申し上げた通り、好きな歌手のチャート成績を好いものにしたいという思いは理解できます。しかし、仮にルックアップ活動が事実だとして、他の歌手のファンがこの取組をみたらやりたいと思うでしょうか。むしろ、言葉は悪いですがえげつないと思われるだけでしょうし、そのマイナスイメージは歌手側に対し抱いてしまうはずです。そして逆に、自分が好まない歌手のファンがルックアップ活動を熱心に行い如実な効果を得たとしたらどう思うでしょうか?
特にジャニーズ事務所所属歌手についてはそのほとんどが(それこそデジタルに明るくなったはずの嵐「カイト」ですら)デジタル未解禁ゆえ、シングルCDセールス加算初週にCD関連指標以外でポイントを稼げないことからTwitterやルックアップ活動でポイントを支えたいという気持ちを抱くのは解ります。しかし、CDセールス2週目以降に他指標が稼げず急落する傾向が毎回見られることを踏まえれば、Twitterやルックアップ活動ではなくデジタルを解禁しストリーミングや動画再生を上げることのほうが有効なのは間違いありません。ルックアップへの熱意が強いならば(それ自体相当な手間ゆえ尚の事)、その熱を事務所側へのデジタル解禁打診に向けては如何でしょう? CDはもはやファン向けのグッズとしての側面もあるゆえデジタル解禁してもCDセールスが極度に落ちることは考えにくく、むしろデジタル解禁によりダウンロードやストリーミング、動画再生の指標群が加算されるのみならず、特に歌手のファンではないものの楽曲が気になるというライト層の増加(ゆくゆくはコアなファンに昇華する可能性も)につながり、そして歌手のイメージが向上することは間違いないはずです。
ファンの持つパワーをより好い方向へ用いることを、心から願います。
※追記 (7月31日9時55分):今回の件について、後にいただいた当該エントリーへの反応も踏まえ、ビルボードジャパンのポッドキャスト宛に質問を投げかけました。次週の更新時に回答をいただくことを願い、こちらにもその質問内容を添付します。
#ビルボードポッドキャスト では #SixTONES「#NAVIGATOR」のルックアップ指標が歴代屈指の高さと紹介。
— Kei (@Kei_radio) 2020年7月30日
そこで次回ポッドキャストで
・歴代何位の多さか
・およそ何枚が取り込まれた計算となるか
・ルックアップに係数はあるか
・今回の高さは自然と考えるか
を回答していただけたならば幸いです https://t.co/dRIYCwqsvv
本日のブログエントリーに対する反応を基に、#ビルボードポッドキャスト へ追加の質問をさせていただきます。
— Kei (@Kei_radio) 2020年7月31日
・一つのCDを何度も出し入れする等により連続でインターネットデータベースへアクセスされれば、そのアクセスのすべてがルックアップのカウント対象となるか https://t.co/KHIc3C0I7O
回答をいただけた/いただけなかったにかかわらず、次週のブログエントリーにてあらためて報告する予定です。
※追記 (8月6日6時15分):今回のルックアップの件に対し、ビルボードジャパンがポッドキャストにて見解を示しています。要約ならびにポッドキャストのリンクを掲載しましたので、下記リンク先(8月6日付ブログエントリー)をご参照ください。