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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

浜崎あゆみのコンテスト開催で注目、米のチャート戦略にも欠かせない"リミックス"を日本で広めるべき理由

リミキサー界隈がにわかに盛り上がっています。

現在、彼女の告白を基とする小説をベースにしたドラマ『M 愛すべき人がいて』(テレビ朝日 土曜23時15分)が話題となっており、そのタイミングでベストアルバム『A COMPLETE~ALL SINGLES~』(2008)が再浮上。以前から価格を1000円未満という安価にて発売していることもあり(本日現在952円)、前週発表の5月11日付ビルボードジャパンアルバムチャートで9位、ダウンロード指標では3位に入りました。彼女の音楽に注目が集まる最中でのリミックス企画なのです。

リミックス(企画)について、こちらのツイートに大きく頷いた次弟。勝手ながら取り上げさせていただきます(問題があれば削除いたします)。

 

思えば2000年前後のCD全盛期、浜崎あゆみさんやMISIAさん等がリミックスアルバムや、シングルCDのカップリングに複数のリミックスを収録しリリースするという手法を採っていました。MISIAさんはLGBTへのサポートをごく初期から始めており、その段階でゲイカルチャーに欠かせないハウスミュージックを積極的に採り入れ、ヘックス・ヘクター等大物リミキサーを起用しています。

また海外では、たとえばアリスタレコードに所属するホイットニー・ヒューストンやデボラ・コックスといった歌ヂカラのあるいわゆる歌姫(ディーヴァ)が常にハウスリミックスを用意したり、またR&Bでは時にオリジナルのメロディラインを大きく変えてリミックスを施すことも行われています。ジャネット・ジャクソンは米ビルボードソングスチャートを制した「Together Again」(1997)において、オリジナルとは別に2種類のメロディを用意したR&Bリミックスを発表したことはその代表例と言っていいでしょう。

ちなみにブランディ「Full Moon」(2002)のようにリミックスのみで10曲超え且つオリジナルバージョン未収録というものも存在しますし、ホイットニー・ヒューストンの2枚組ベストアルバム(2000)の海外発売分はオリジナルバージョンのベストとリミックスベストがコンパイルされたものでした(日本では内容が異なります)。なおSpotifyでは海外版が配信されているのでこの機会に是非。

しかし現在はCDのニーズが減り、さらにクラブカルチャーは以前ほど勢いがない(それどころか、新型コロナウイルスの影響もあって風前の灯火と言われてもおかしくない危機的な)状況といえます。そんな状況にあって、アメリカではここ数年リミックスのニーズが高まっているのです。最新の米ビルボードソングスチャートで新鋭の2組がワンツーフィニッシュを果たしたのは、双方の曲にリミックスが新たに投入されたため。ドージャ・キャット「Say So」にはニッキー・ミナージュが、ミーガン・ジー・スタリオン「Savage」にはビヨンセが招かれています。この客演参加型のリミックスが話題となり、獲得ポイント全体においてオリジナルバージョンを上回ったことで、最新では2曲共に客演参加者がクレジットされることになりました。

ビルボードソングスチャートのチャートポリシーでは、オリジナルバージョンにリミックスが合算されることから、リミックスを投入してチャートの活性化を図ることがよく行われていますが、一方で日本の場合は合算不可となっています。下記ブログエントリーでは合算について説明したポッドキャストのリンクも掲載しています。

このブログエントリーで紹介した、あいみょんさんが曲提供したDISH//「猫」(2017)は、後に一発録り企画"THE FIRST TAKE"でアコースティックバージョンとして披露され、評判となって音源化。前週5月11日付ビルボードジャパンソングスチャートで初登場を果たしたのですが、実は当初オリジナルバージョンとTHE FIRST TAKEバージョンとが合算されて13位と表示されていました。しかしこちらの問い合わせもあってか(それ以前にビルボードジャパンが気付いた可能性のほうが高いとは思いますが)、最終的には26位にTHE FIRST TAKEバージョンが初登場、63位にオリジナルバージョンが前週より19ランクアップという形に訂正されました。これで解ったことは、ビルボードジャパンが合算で集計が可能だということ、そして別バージョンがオリジナルバージョンを活性化させる効果があるということではないでしょうか。

 

個人的には、オリジナルバージョンに新たにリミックス等別バージョンが登場した際は合算したほうが好いと以前から唱えています。別バージョンの投入は今年に入り、嵐やザ・チェインスモーカーズが行い(後者には新田真剣佑さんが参加)、共に一定の成果を上げたことから、今後投入策が増えることも考えられ、ならば尚の事合算したほうがよいのではと記載しました。

合算を求める理由として、以前記した内容を再掲します。

1つ目は日本において、チャート上で合算されないことでリミックスや客演という文化が育ちにくいため。2つ目はアメリカで通用する洋楽やK-Popの戦略が日本のチャート上では成立せず楽曲が成功を収めにくくなり、最終的に日本を主要な音楽市場とみなさなくなる可能性があるため。そして3つ目は、日本の音楽業界で"仕掛け"という戦略や気概が生まれにくいため。

そして理由はこれだけではありません。最新の米ソングスチャートを制したドージャ・キャットや2位のミーガン・ジー・スタリオンの知名度が向上したり、ドレイクにフィーチャーされて「Pain 1993」が7位に入ったプレイボーイ・カルティは今回が初のトップ10入りとなり、ドージャやミーガン共々注目を集めるはず。また基本的に、歌モノのリミックスにはラッパーが多くフィーチャーされることから、特に海外に比べて盛り上がりに欠けている印象がある日本のヒップホップの底上げにも繋がる可能性があります。そして客演のみならずリミキサーも知られていくことでしょう。最新米ソングスチャートでトップ10入りしている2曲にはメジャー・レイザーがリミックスを施しており、その名がさらに轟いたはずです。

リミックス出来る環境を用意することで、リミックスしたいという思いが多くの方に生まれます。冒頭の浜崎あゆみさんの企画が発表されて間もなく、Instagramでフォローする音楽家が早速制作に乗り出しており、またYouTube投稿等のハードルが高くなくなったことで、プロを目指す目指さないにかかわらず、また既に実績を上げている方までもが積極的にリミックスを制作するかもしれません。そうなれば未来の音楽家が育つことにも、リミックスという文化の醸成にもつながり、さらにはリミックスをかける場としてのクラブのニーズも高まるものと考えます。

 

【リミックスや客演文化の醸成】【海外作品の日本市場での流通拡大】【チャートの仕掛けや戦略の活性化】【新鋭歌手の認知度向上】【ヒップホップの人気拡大】【リミキサーの育成】【クラブカルチャーの復興】…すべて上手くいくことはないかもしれませんが、リミックスは何もチャートのみならず、音楽(市場)全体のカンフル剤になる可能性があると断言していいでしょう。そしてその発表の場として、リミックスをまとめたサブスクのプレイリストがCDの代替になるものと考えます。

楽家やレコード会社側のリミックス制作促進、そしてビルボードソングスチャートのチャートポリシー改正について、前向きな検討をお願いしたいところです。

ドージャ・キャット feat. ニッキー・ミナージュ「Say So」がミーガン・ジー・スタリオン feat. ビヨンセ「Savage」との争いを制し初の首位獲得…5月16日付米ビルボードソングスチャートをチェック

ビルボードのソングスチャートをチェック。現地時間の5月11日月曜に発表された5月16日付最新ソングスチャート。『フォートナイト』効果で前週首位に初登場を果たしたトラヴィス・スコットとキッド・カディによるユニット、ザ・スコッツの「The Scotts」は12位へ後退、ドージャ・キャット feat. ニッキー・ミナージュ「Say So」が初の首位に立ちました。

「Say So」は今週、ニッキー・ミナージュを客演に迎えたバージョンがストリーミングおよびダウンロードの2指標で集計期間フルに加算(ラジオエアプレイは2指標と集計期間にズレがあることから、前週客演有りバージョンが3日分カウントされています)。全体ではニッキー参加版が上回ったことから客演有りのクレジットとなり、両者にとって初の首位獲得を果たしました。

上記"ダンスビジュアル"と称したミュージックビデオ、さらに2ランクアップし2位につけたミーガン・ジー・スタリオン feat. ビヨンセ「Savage」については、米ビルボードが今回のチャートをこの2曲が争っていると紹介した記事を基に一昨日ブログエントリーに記載しています。

リミックスや動画の追加によるオリジナルバージョンへの合算、さらには自身のホームページでのフィジカル販売が大きく功を奏し、「Say So」そして「Savage」が躍進する結果となりました。

・「Say So」

 ストリーミング 3030万 (前週比87%アップ 同指標4位)

 ダウンロード 66000 (前週比966%アップ 同指標1位)

 ラジオエアプレイ 9620万 (前週比6%アップ 同指標2位)

・「Savage」

 ストリーミング 4210万 (前週比53%アップ 同指標1位)

 ダウンロード 50000 (前週比90%アップ 同指標2位)

 ラジオエアプレイ 5130万 (前週比27%アップ 同指標14位)

 「Savage」は前週の集計期間半ばでビヨンセのバージョンが追加されたことで初のトップ10入りを果たしたため今週は伸びが鈍かったということもありますが、「Say So」はストリーミングの差をダウンロード、それ以上にラジオエアプレイでカバーしたことで逆転出来たものと考えます。しかしながら「Savage」のラジオエアプレイでの大幅な伸びはビヨンセ効果と言えるかもしれません。

「Say So」によりドージャ・キャット、そしてニッキー・ミナージュにとっても初の首位獲得となりました。ニッキーが初というのは意外かもしれませんが、109曲目のエントリーにして初の首位獲得は、ジャスティン・ビーバー「What Do You Mean?」(2015)が47曲目のエントリーで首位に至ったという記録を大きく塗り替えました。ニッキーの初登場はリル・ウェインに客演参加した「Knockout」(2010年2月20日付)であり、10年と3ヶ月で頂点に君臨したことになります。ちなみに前週ザ・スコッツ名義による「The Scotts」で首位を獲得したキッド・カディも初登場から11年で首位に至っており、10年以上の時を経て頂点に立った歌手が2週連続で登場したことになります。また109曲目のエントリーは女性で最多となり、全体でもエルヴィス・プレスリーに並びました。

ソロの女性歌手同士によるコラボでの首位獲得は今回が6曲目。バーバラ・ストライサンド&ドナ・サマー「No More Tears (Enough Is Enough)」(1979)、ブランディ&モニカ「The Boy Is Mine」(1998)、クリスティーナ・アギレラリル・キム、マイヤ&ピンク「Lady Marmalade」(2001)、リアーナ feat. ブリトニー・スピアーズ「S&M」(2011)、イギー・アゼリア feat. チャーリーXCX「Fancy」(2014)に次ぐ記録となりました。

 

さて次週は「Say So」「Savage」共に、フィジカル販売効果が薄れる可能性があることから全体的な数値の伸びは鈍化するか、もしくは下降する可能性もあります。他方、今週3位につけたザ・ウィークエンド「Blinding Lights」はラジオエアプレイで5週目の首位を獲得、しかも前週比4%アップの1億1450万を獲得しており未だ伸びていることから、もしかしたら次週の首位争いに絡んでくるかもしれません。

 

今週はドレイクがミックステープ『Dake Lane Demo Tapes』をアルバムチャートに送り込んだことで収録曲が複数トップ10入りし「Toosie Slide」が首位争いに?と予想していたのですが、アルバムチャートは初登場2位となり、チケットバンドルによりセールスを伸ばしたケニー・チェズニー『Here And Now』に僅差で破れています。

『Dake Lane Demo Tapes』の初動223000ユニットのうち201000がストリーミング再生回数のアルバム換算分となり、そのストリーミングはソングスチャートにも波及したものの「Toosie Slide」は1ランクダウンし4位へ。一方でプレイボーイ・カルティをフィーチャーした「Pain 1993」が7位に初登場を果たしました。

ストリーミングは3100万を獲得し同指標3位、ダウンロードは3000となり同指標46位に入ったことで、総合で7位に登場。プレイボーイ・カルティにとっては「Magnolia」(2017)の29位を大きく上回る自己最高位をマーク、そしてドレイクにとっては38曲目(主演作で25曲目、客演で13曲目)のトップ10入りを果たしました。この38曲目という記録はマドンナに並ぶ最多タイとなり、以下ビートルズの34曲、リアーナの31曲、マイケル・ジャクソンの30曲と続きます。仮にミックステープが大ヒットしたならば今週マドンナ超えもあり得たのですが、今年リリース予定となるオリジナルアルバムの収録曲にて、その記録更新が期待されます。

ダベイビー feat. ロディ・リッチ「Rockstar」がトップ10へのカムバックを果たしています。2週前に9位に初登場、前週は14位となっていましたが今週9位に返り咲いた形。ストリーミングは前週比17%アップの2830万(同指標5位)、ダウンロードは同36%アップの9000(同指標7位)、ラジオエアプレイは50位未満ながら前週比136%アップの570万を獲得しています。ロングヒットのフェーズに入るにはラジオエアプレイの上昇が必須と言えるでしょう。

 

最新のトップ10はこちら。

[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (6位) ドージャ・キャット feat. ニッキー・ミナージュ「Say So」

2位 (4位) ミーガン・ジー・スタリオン feat. ビヨンセ「Savage」

3位 (2位) ザ・ウィークエンド「Blinding Lights」

4位 (3位) ドレイク「Toosie Slide」

5位 (5位) ロディ・リッチ「The Box」

6位 (7位) デュア・リパ「Don't Start Now」

7位 (初登場) ドレイク feat. プレイボーイ・カルティ「Pain 1993」

8位 (8位) ポスト・マローン「Circles」

9位 (14位) ダベイビー feat. ロディ・リッチ「Rockstar」

10位 (9位) ジャスティン・ビーバー feat. クエイヴォ「Intentions」

ポスト・マローン「Circles」はトップ10入り最長記録を36週に更新、どこまで続くかも気になります。そして次週は今回のトップ3の動向もさることながら、前週金曜にリリースされたアリアナ・グランデジャスティン・ビーバー「Stuck With U」がどの位置に登場するかにも注目。Spotifyでは金曜から2日連続で米デイリーチャートを制していますが5月10日日曜には4位に後退しており、総合で首位争いに絡むのは難しいのかもしれません。

 

瑛人「香水」がさらなるヒットのフェーズに入るために必要なアプローチを考える

前週発表の5月11日付ビルボードジャパンソングスチャートで5位に急伸した瑛人「香水」について、インディペンデント歌手の配信を支えるTuneCore Japanの紹介を軸に記載しました。

明後日の最新チャートでは「香水」のさらなる躍進が予想されます。そもそも「香水」は『人気の発端は演奏動画だったが、現在TikTokでは様々なタイプの動画が増え始め、汎用性の高いBGMとしてもユーザーたちに愛されている』として、5月3日までを集計期間とするTikTokソングスチャートで15位に入り、初のトップ20入りを果たしています(『』は下記記事より)。次週は間違いなく伸びることでしょう。

TikTokのヒットはサブスクの再生回数を基とするストリーミング、およひ動画再生といった接触指標群に波及します。そのストリーミングでは次回5月18日付ビルボードジャパンソングスチャートの途中経過において、Official髭男dismを抑えて首位となっています。このまま同指標を制すれば3ヶ月ぶりに首位が入れ替わります。

総合では、YOASOBI「夜に駆ける」が平均すると5週続けて前週比120%前後での伸びをキープした一方、瑛人「香水」は前週が同284.0%の急伸を果たしています。次週はこの数値まではいかなくとも、「夜に駆ける」を超えるポイント前週比になることは間違いないでしょう。

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さて、ここから先は今後の話。ストリーミングでのヒットが総合チャートで大ヒットする兆しが徐々に生まれてきている印象がありますが、では実際にヒットに至るためにさらに必要なものは何か…それを上記CHART insightから察することが出来ます。

 

ひとつはラジオエアプレイ。CHART insightでは黄緑の折れ線グラフで示される指標であり、全国32のFMおよびAM局のオンエア回数を基にエリア別の人口や聴取率を加味して出される指標ですが、瑛人「香水」は同指標で未だ300位以内に入ったことがありません。YOASOBI「夜に駆ける」は300位のラインを行ったり来たりしています。他方、2週連続で総合ソングスチャートトップ10入りを果たしたヨルシカ「花に亡霊」は、最新週においてラジオエアプレイを制しています。

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ラジオエアプレイで上昇しやすい曲として、洋楽においては新作の期待値が高い歌手のニューアルバムからのリードトラックが該当するでしょう。邦楽においても同様ですが、その他期待の新人がラジオ局の後押しを受けてというパターンが多い気がします。ヘビーローテーションを設けている局の選曲基準もそこにあるように思いますし、新曲はいち早くオンエアする傾向がある一方で他指標よりも早く失速するのも特徴と言えます。

ヨルシカもYOASOBIも、かなりざっくりとした見方ですがネット発の歌手という位置付けでは同じでしょう。その両者でラジオエアプレイに大きな差が生じているのはヨルシカが数枚アルバムをリリースしたことがある一方YOASOBIにはないという実績の差があるのかもしれません。さらに、ヘビーローテーションの設定にはレコード会社や芸能事務所の働きかけがゼロではないと思われ(サンプル盤の発送等もその一環でしょう)、その働きかけの大小がラジオエアプレイに反映されるのではないかと考えます。その点において、冒頭で申し上げたTuneCore Japanのインディペンデント歌手へのサポート内容(→こちら)にはラジオ局向けの対策に関する文言が見当たりません。

ただ、ラジオ局でかからないのは歌手側の問題とは言い切れません。働きかける側ではなく、ラジオ局自体に現在そして未来の流行を発信するという自負や責任があるかも気になるところです。リクエストは少なからず来ているでしょうし、またTikTokの流行も無視出来ない存在になっているだろうことを踏まえれば、ヒットの芽をいち早く察知し、率先してオンエアするという姿勢が求められているはずです。サブスクでヒットを続けるちゃんみな「Never Grow Up」(2019)のヒットの初期にラジオの存在があったと以前分析しており、尚の事そう思うのです。

たとえばこの週末発表されたJFL系5局(J-WAVEFM802ZIP-FM、FM NORTH WAVEおよびCROSS FM)の音楽チャートをみると、瑛人「香水」がランクインしているのはCROSS FMのみ(5月10日付で18位に初登場)。この点からも、ラジオ局の嗅覚に疑問を覚える自分がいます。

 

そしてもうひとつはカラオケ指標の上昇。新型コロナウイルスに伴う緊急事態宣言の発令でカラオケ指標の集計が現在取り止められていますが、TikTokで演奏動画から火が付いたことを踏まえれば、カラオケへの自粛傾向が弱まれば歌う人が徐々に増えるものと考えられます。しかし5月10日現在、DAM、そしてJOYSOUND共に瑛人「香水」は登場しておらず、現状のままでは集計が再開されたとしてカラオケ指標を獲得することが出来ないのです。

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もしかしたら既に作成中なのかもしれませんが、これもラジオエアプレイ指標同様、DAMおよびJOYSOUND側がいち早く流行を察知することを願います。TuneCore Japanのカラオケへの取組を調べると昨年春のこの記事が出てきましたが、事前募集されたミュージックビデオの中から厳選しJOYSOUNDのみで配信という状況であり、充実しているとは言い難いというのが私見です。

 

 

インディペンデント歌手においては、サブスクやダウンロードといった配信についてはTuneCore Japanの存在が非常に大きいということを先週お伝えしました。またYouTubeおよびGYAO!の再生回数を基とする動画再生指標においては、ミュージックビデオの制作というハードルはあれど、誰でも比較的容易にアップしやすいことも解っています。TuneCore JapanにはYouTubeコンテンツ収益化サービス(→こちら)もあり、サポート体制も整っています。しかし、一方でラジオやカラオケにおいてはハードルが高いのではないかというのが自分なりの結論です。レコード会社に属する歌手の場合、メジャーとインディの差は宣伝力やその予算と言われていますが、レコード会社に属さないインディペンデント歌手側は尚の事、ラジオやカラオケへのアプローチ自体が難しいのではないでしょうか。インディペンデント歌手のアプローチの難しさ、しかし一方ではTikTokやサブスクのヒットが増え総合ソングスチャートでも上がりやすくなっていること、SNSの普及で流行をより早く抑えないといけないこと等を踏まえれば、ラジオやカラオケは相手からのアプローチを待つのではなく自ら掴みに行き、なんならインディペンデント歌手とラジオもしくはカラオケとの橋渡しシステムを構築するくらいのことをしなければいけないのではないかとすら思うのです。

次週の米ビルボードソングスチャート、首位の座に就くのはミーガン・ジー・スタリオンかドージャ・キャットか? 首位獲得を目指す両者の戦略とは

次回の米ビルボードソングスチャートでは、ドレイクが5月1日にリリースしたミックステープ『Dark Lane Demo Tapes』がアルバムチャートで初登場することから、収録曲がソングスチャートでも大挙エントリーを果たすことは間違いありません。しかしそのドレイク、思わぬ逆境に立たされています。

デジタル、特にストリーミングに強いドレイクが、フィジカルに長けたベテランカントリー歌手のケニー・チェズニー『Here And Now』に僅差で敗れるかもしれないのです。ドレイクはこれまでに5枚のオリジナルアルバムをすべて、ミックステープでは『If You're Reading This It's Too Late』(2015)以降すべて米ビルボードアルバムチャートで首位に送り出しているゆえ、仮に2位という結果に終わるならば緊急事態と言えるでしょう。そしてその状況は、ソングスチャートにも波及されます。本来ならばアルバムの勢いで先行曲の「Toosie Slide」が首位にカムバックを果たしてもおかしくないのですが、しかし米ビルボードではこのような報道が。

次週の首位争いはミーガン・ジー・スタリオン「Savage」とドージャ・キャット「Say So」という新鋭ふたりの対決という構図になったと、米ビルボード自身が報じているのですから、「Toosie Slide」が3位以下になることはほぼ間違いないでしょう。この状況はいい意味で予想外でしたが、対決に至るには理由があります。それは両者がきちんと戦略を立てているため。そしてその戦略は、米ビルボードソングスチャートが様々なバージョンを合算するというチャートポリシーに沿ったものです。

 

ミーガン・ジー・スタリオンは「Savage」にあのビヨンセを迎えたリミックスを用意し、4月末に発表。その結果、最新5月9日付米ビルボードソングスチャートで4位にランクインしたことは以前お伝えした通りです。

次回、5月16日付の米ビルボードソングスチャートの集計期間はストリーミングおよびダウンロードが5月1日金曜から、ラジオエアプレイが4日月曜からの1週間。「Savage」のビヨンセ追加版がフルで、そして5月7日にはメジャー・レイザーによるリミックスが追加投入され、こちらのリミックスもわずかながら次週のチャートに加算されます。

メジャー・レイザーによるリミックスは4月25日付米ビルボードソングスチャート(解説はこちら)において、ドレイク「Toosie Slide」からザ・ウィークエンド「Blinding Lights」が首位の座を奪還した際にも貢献していたわけで、リミックスの重要性、起用されるメジャー・レイザーの人気が良く解ります。

 

一方のドージャ・キャット「Say So」は5月1日にニッキー・ミナージュ追加版が公開。

翌日にはこのリミックスの"ダンスビジュアル"なる動画が公開。

さらに先週はじめにはライブパフォーマンスの動画も公開しています。

 

日本時間の5月10日日曜7時過ぎに両者のTwitterアカウントをチェックしてみたところ、プロフィール欄に掲載されたURLは「Savage」「Say So」それぞれの客演参加版音源を提供するサービス一覧に行き着くわけで、所有や接触の促進に徹していることが解ります。ドージャ・キャットにおいては名前にも宣伝を入れ込む徹底っぷり。

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SNSでの訴求はプロフィール欄以外でも共通しており、双方ともリミックスを広く知らしめるべく"リミックスパーティー"なるハッシュタグを用いています。ミーガン・ジー・スタリオンはそのハッシュタグが含まれるツイートを紹介する形で、間接的に使っています。

 

この結果、米ビルボードではソングスチャートを構成する3指標が大きく伸びると予想しています。

ストリーミングもさることながら、突出しているのはダウンロードの伸び。これは両者のホームページにてフィジカルが販売されているため。購入の段階でダウンロードが可能になり、後日フィジカルが届く仕様となっています。

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共通項の多い2曲の対決の結果は、5月16日付米ビルボードソングスチャートで明らかになります。現地時間の11日月曜、日本では12日火曜の早朝に公開予定。どうなるか、非常に楽しみです。

アリアナ&ジャスティンも…”三連リズムのバラード×デュエット”名曲5選

昨日突如届けられた、アリアナ・グランデジャスティン・ビーバーによるデュエット曲「Stuck With U」。

リリースの目的が素晴らしいですし、またミュージックビデオからも温かさが伝わってきます。

YouTubeで上記動画もしくはリリックビデオ(→こちら)を開くと、歌手名の下には”募金活動”と表示されます。再生回数による収益も寄付に回るということなのでしょうか、素敵な取り組みです。

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(募金活動の表示を紹介する目的で画面をキャプチャしました。問題があれば削除いたします。)

 

さて、「Stuck With U」を聴いて真っ先に思ったのは、このような”三連リズムのバラード×デュエット”という形式の曲って少なくないよなあということ。

エド・シーラン「Perfect」(2017 アルバム『÷ (Divide)』収録)は、シングルカットしチャートを浮上した後にビヨンセを招いたデュエットバージョンを投入し米ビルボードソングスチャートを制しました…ということは、ビヨンセをフィーチャーした昨日のブログエントリーで取り上げたばかりです。

 

テイラー・スウィフトはアルバム『Lover』(2019)がアルバムチャートで初制覇を果たした週にトップ10入りした表題曲について、後にショーン・メンデスを迎えたデュエットバージョンを用意。スノードームを背景とするリリックビデオ(→こちら)は、デュエットバージョンというアプローチ共々上記「Perfect」を彷彿とさせます。

 

2017年から翌年にかけてヒットした「Perfect」、その1年後の「Lover」、そして今回の「Stuck With U」とおよそ1年おきに”三連リズムのバラード×デュエット”が、それも男女ともに数々のヒットを飛ばしてきた歌手によって紡がれるというのは面白い傾向だと思います。個人的には、10年以上遡るとはいえセカンドアルバム『The Diary Of Alicia Keys』(2003)から翌年シングルカットされ米ビルボードソングスチャートで4位を記録した「If I Ain't Got You」に、アッシャーをフィーチャーしたバージョンもまた素敵なので紹介します。

後にこの二組は「My Boo」(2004)で共演し米ビルボードソングスチャートを制しますが、「If I Ain't Got You」が布石になっていることは想像に難くありません。 

 

ちなみに日本の作品で真っ先に思い出したのは、レキシ feat. 森の石松さん「最後の将軍」(2016)。以前ブログで紹介しています(→こちら)。

レキシは今週、遂に全曲サブスク解禁に至ったことから、この週末にあらためてチェックしようと思います。

ミーガン・ジー・スタリオン、エド・シーラン、レディー・ガガ…客演仕事で実績を残すビヨンセの信頼度の高さを思う

最新5月9日付米ビルボードソングスチャートで4位に入り、初のトップ10入りを果たしたミーガン・ジー・スタリオン「Savage」。この急上昇の要因にはリミックスに参加したビヨンセの存在が大きいことは速報の際に紹介しています。

次週はビヨンセ参加バージョンがストリーミング、ダウンロードそしてラジオエアプレイすべてで集計期間1週間フルで加算されるため、オリジナルバージョンよりポイントが上回れば歌手名のクレジットは”ミーガン・ジー・スタリオン feat. ビヨンセ”となり、ビヨンセにとって2年以上を経てのトップ10カムバックを果たすことになります。しかも、米ビルボードソングスチャートの予想を行う方は「Savage」が次週の1位になると予想していることから、期待が膨らみます。

今日紹介する内容は、前日に更新した日米最新ソングスチャートを紹介するポッドキャスト、【Billboard Top Hits】8回目で紹介したものの詳細版です。

 

ビヨンセは1997年、デスティニーズ・チャイルドの一員として「No, No, No」でデビュー。ワイクリフ・ジョンの客演によるパート2のリリースもあり米ビルボードソングスチャートで3位に輝いて以降、4曲のナンバーワンを含む10曲のトップ10ヒットを輩出。2003年に初のソロアルバム『Dangerously In Love』をリリースすると、現在は夫であるジェイ・Zをフィーチャーした「Crazy In Love」が首位に輝き、現在までに6曲のナンバーワンを含む18曲をトップ10に送り込んでいます。1年に1曲以上はトップ10ヒットを出した計算となり、ビヨンセが如何にヒットを量産しているかが理解出来ます。

とはいえ、ビヨンセの2010年代におけるトップ10ヒットはわずかに5曲、そして主演曲よりも客演参加のほうが多い状況なのです。言い換えれば、ミーガン・ジー・スタリオン「Savage」同様、他の歌手の作品に後から参加し、チャートを押し上げ主演歌手をフックアップすることが目立っている印象があります。それでは2010年代の客演曲を振り返ってみましょう。

 

まずはレディー・ガガのEP『The Fame Monster』(2009)から翌年シングル化された「Telephone」。ファーストアルバムにして4曲のトップ10ヒット(うち2曲はナンバーワン)を送り出した『The Monster』(2008)に次ぐEPであり、ファーストアルバムと2in1でもリリースされたこの作品にビヨンセを迎えたことで、レディー・ガガビヨンセを招ける立ち位置になったという印象を広く知らしめることに成功したのではないでしょうか。

 

コロンビアのレゲトン歌手、J・バルヴィンとフランスのDJ、ウィリー・ウィリアムによる「Mi Gente」(2017)にビヨンセが参加。新バージョンがチャートに大きく反映された同年10月21日付米ビルボードソングスチャートでは前週より18ランクアップし3位に達しました。

ビヨンセ参加版の収益は、プエルトリコなどのハリケーン被災者に対するチャリティに使われたとのこと。今回の新型コロナウイルスに際しても自身が設立した基金から600万ドルを寄付していますが(ビヨンセ、新型コロナウイルス救済に6億円以上を寄付 | BARKS(4月24日付)参照)、積極的に社会貢献活動を行う姿勢は素晴らしいですね。チャートや寄付の内容についてはこちらで解説しています。

 

そして、エド・シーランに2曲目の米ビルボードソングスチャート制覇をもたらした「Perfect」。オリジナルバージョンはアルバム『÷ (Divide)』(2017)に収録されていますが、シングル化した後にビヨンセ参加のデュエットバージョンが送り込まれ、合算されて首位に立ちました。オリジナルバージョンよりポイントが上回っていたため、歌手名のクレジットにはビヨンセも記載されています。初の首位を獲得した、2017年12月23日付米ビルボードソングスチャートの解説はこちら

 

2010年代のビヨンセ、主演作ではジェイ・Zとの「Drunk In Love」(2013 アルバム『Beyoncé』収録)が2位、「Formation」(2016 アルバム『Lemonade』収録)が10位を記録。アルバム『4』(2011)からは1曲もトップ10ヒットが生まれていないのが意外ですが(同作収録曲の最高は「Best Thing I Ever Had」の16位)、しかし主演作のチャート成績以上に客演参加時の存在感の大きさを感じます。さらにはライブパフォーマンスも素晴らしく、たとえば日本でもYouTubeでの生配信により知名度が上昇しているコーチェラ・フェスティバルにおいて、ビヨンセが出演した2018年は”ビーチェラ (Beychella)”と形容されるほど絶賛されているのです。

この模様は翌年映像化され、さらには音源化もされています。

このライブアルバム、『Homecoming: The Live Album』(2019)の巻末に収められたのが「Before I Let Go」。オリジナルはメイズ(feat. フランキー・ビヴァリー)による1981年のナンバーであり、メイズはR&Bを代表するエッセンス・フェスティバルで幾度なくトリを飾っていることから、R&Bを語る上で欠かせないのが「Before I Let Go」と言っても過言ではないでしょう。”ビーチェラ”、そしてそこに至るまでに築き上げたビヨンセの功績は、「Before I Let Go」をカバーするに相応しい存在と言って良いはずです。曲などについては、音楽プロデューサーの松尾潔さんが『松尾潔のメロウな夜』(NHK-FM 月曜23時)で語っておりますので、みやーんさんによる書き起こしを紹介させていただきます。

ビヨンセバージョンはシングル化されてはいないものの、米ビルボードソングスチャートで65位を記録するスマッシュヒットに。このチャートアクションからも、ビヨンセの存在の大きさを知ることが出来ます。

 

 

今回のミーガン・ジー・スタリオン「Savage」でもそうですが、「Mi Gente」も「Perfect」もビヨンセ参加バージョンが追加されたタイミングでチャートを構成する3つの指標がすべて前週を大きく上回る伸びを示しており、チャートで強烈な実績を残しています。客演の数は決して多いとは言えないものの、ビヨンセが如何に影響力を持っているかが良く分かります。そしてそこには彼女の作品なら信頼出来るという受け手の思いが確実に存在していることでしょう。

初のトップ10を果たした瑛人「香水」を支えるサービスとは?…5月11日付ビルボードジャパンソングスチャートをチェック

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点をソングスチャート中心に紹介します。

4月27日~5月3日を集計期間とする5月11日付ビルボードジャパンソングスチャート。前週シングルCDセールスを武器に首位に輝いたHKT48「3-2」は100位圏外に急落し、Official髭男dism「I LOVE...」が2週ぶり、通算6週目の首位を獲得しました。

ゴールデンウイーク前半を集計期間としているからでしょうか、ポイントが伸びた曲が多い印象のある5月11日付ビルボードジャパンソングスチャート。とりわけOfficial髭男dismは「I LOVE...」が前週比104.6%となったのみならず、「宿命」(7位)が100.7%、「パラボラ」(8位)が115.2%、トップ10落ちとなりましたが「イエスタデイ」(11位)が101.2%と前週から伸ばし、「Pretender」(3位)は前週比98.0%とダウンするも微減にとどまっています。「パラボラ」は集計期間中にミュージックビデオが公開されたことも上昇の要因と言えます。

 

今週はLiSA「紅蓮華」が遂に2位に達し最高位を更新したのも注目ですが、瑛人「香水」が5位に急上昇したのがなんといっても大きく、前週初のトップ10入りを果たしたヨルシカ「花に亡霊」(今週10位)、YOASOBI「夜に駆ける」(同6位)を飛び越えてきました。

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「香水」は元々、昨年リリースされた初の配信作となるEPの表題曲。

FANTASTICS from EXILE TRIBE中島颯太さんがカバーしていることなどもあってTikTokから火がついたこの曲ですが、瑛人さん自身は戦略的に仕掛けたことはないと、自身初となるメディアインタビューで答えています。

戦略といえば、ファンとのエンゲージメントに長けたYOASOBIの例を前週紹介しました(ストリーミング強者が結果を出した5月4日付ビルボードジャパンソングスチャート、YOASOBIが一歩抜け出した理由は(4月30日付)参照)。瑛人さんも「香水」のカバー動画を何度かTwitterにて紹介しており、ごく自然にエンゲージメントという仕掛けを行っていると言えそうです。尤も、本人は仕掛けや戦略とは捉えていないかもしれません。

 

さて、インディペンデントで活動するからか、音楽ナタリーでも未だ記事が存在しない瑛人さん。そんな彼の配信に関わったのはTuneCore Japanという、”誰でも自分の曲を世界185カ国以上の配信ストアで配信販売できる”と謳うサービスです。

瑛人さんの曲をiTunes Storeでみると、リリース元は”Eito”とクレジットされています。TuneCore Japanではないところがポイント。

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EP『香水』のリリースの際、TuneCore Japanでは配信先も含めアナウンスを実施。

そのTuneCore Japanは、新型コロナウイルスが未だ強く蔓延る状況において、先月に全サービスの無償提供を実行しました。期間は5月末まで延長されています。

TuneCore JapanのTwitterアカウントでは現在上記ツイートがトップに固定されていることもあり、ここからTuneCore Japanの、インディペンデントで活動する歌手の火を絶やさないという思いが感じられます。さらには歌手がリリースした後も、たとえばチャートイン時やサブスクのプレイリスト入りの際にその旨を紹介することで、アフターフォローを欠かしていません。これもインディペンデントで活動する歌手にとっては嬉しいことです。

 

今回の瑛人「香水」のヒットはTikTok発と言われ、チャートを紹介するブロガーの方やチャートのいわゆる中の人も、この点を大きくフィーチャーしているのが見受けられます。

TikTokでヒットに至るためにはそのための配信が前提となるわけで、TuneCore Japanはまさに縁の下の力持ちと言えるのですが、そのTuneCore Japanはさらに新たなサービスを昨日開始し、ヒットを生み出す環境をさらに強化しています。

 

TikTokからサブスクや動画再生といったストリーミング全体に波及し、遂には総合チャートで上昇するという流れ、米ビルボードソングスチャートではごく自然に見られる現象となっています。

「Old Town Road」の特大ヒットについては昨年度のチャート振り返り時に記載しています。

最近ではドージャ・キャット「Say So」も同様。日本では別の曲が既にチャートインしていましたが、TikTokでのヒットを経て「Say So」の人気も徐々に高まっています。

さらに、3週前に米ビルボードソングスチャートを初登場で制したドレイク「Toosie Slide」は、配信開始直前に敢えてTikTokにて未発表曲だとアナウンスし使わせることで成功に至っています(もしかしたら狙ってリークしたのではないのかもしれませんが、狙ったと分析している方は少なくありません)。現にTikTokでは新記録を樹立しているのです。

能動的な仕掛けがあるか否かの差はあれども、TikTokがヒットにとって重要な要素であり起点になっていることは間違いなく、そしてそこでヒットした曲をサブスクにつなげる動線を用意することも必要となります。その意味で、TuneCore Japanの役割が如何に重要か、そしてサブスクが如何にヒットを後押ししている存在かがよく分かるはずです。今後、瑛人「香水」のようなヒットが生まれてくることは間違いなく、ならば先に取り上げた音楽ナタリーをはじめとするニュースサイトや、「香水」がラジオエアプレイ指標で今週300位未満となっている状況を勘案するにラジオなどの既存メディアも、フレキシブルに紹介しないといけなくなるものと考えますし、チャートを追いかける身としても気を引き締めた次弟です。

 

 

最後に。今週発表された米ビルボードソングスチャート、およびビルボードジャパンソングスチャートを紹介するポッドキャストを更新しました。こちらでは米チャートにおけるビヨンセの力、そして日本のチャートにおけるDISH//「猫」の取り扱いを中心に触れていますので、こちらも是非よろしくお願いいたします。