日本レコード大賞が昨日開催され、Mrs. GREEN APPLE「ケセラセラ」が大賞を受賞しました。
Mrs. GREEN APPLEの「ケセラセラ」が、「第65回 輝く! 日本 #レコード大賞」にて、日本レコード大賞を受賞いたしました。
— Mrs. GREEN APPLE (@AORINGOHUZIN) 2023年12月30日
楽曲に出会ってくださった皆さま、本当にありがとうございます💐✨
#MrsGREENAPPLE pic.twitter.com/7F22in3oVX
上記は「ケセラセラ」における、2023年度ビルボードジャパン年間ソングチャート集計期間最終週までのCHART insight。ストリーミング指標(青で表示)が高く推移し、総合順位(黒)が安定していることが解ります。またカラオケ(緑)指標も40位以内に入っており、曲のロングヒットに貢献しています。
結果的に、Mrs. GREEN APPLE「ケセラセラ」は2023年度のビルボードジャパン年間ソングチャートで23位にランクイン。またソングチャートとアルバムチャートを合算したトップアーティストチャートでは、Mrs. GREEN APPLEが2位に入っています。
ビルボードジャパンソングチャートはストリーミングに強い曲が上位に進出し、そのストリーミングに強い曲はロングヒットしやすいため、年間ソングチャートは2022年度以前のリリース曲が大挙エントリーする傾向にあるのですが、その中にあって2023年リリースの「ケセラセラ」が23位というのは立派な記録であり、この点からMrs. GREEN APPLEの日本レコード大賞受賞は十分納得できるものです。
日本レコード大賞はこの5年でFoorin「パプリカ」(2019年度ビルボードジャパン年間ソングチャート7位)、LiSA「炎」(2020年度年間9位)、Da-iCE「CITRUS」(2021年度年間36位)、SEKAI NO OWARI「Habit」(2022年度年間11位)そしてMrs. GREEN APPLE「ケセラセラ」という、ストリーミングヒットを大賞に選出しています。受賞の納得度は高く、ビルボードジャパンソングチャートが社会的ヒットの鑑だとも断言していいでしょう。
他方、日本レコード大賞については問題点が山積しています。昨年については放送翌日に問題点を記載していますが、その内容が今年改善されたとはいえません。
まず問題だと捉えたのは、対象期間の曖昧さです。この点についてはテレビにてテロップ表示がありましたが、十分ではありませんでした。
それと、#日本レコード大賞 は番組冒頭で『2022年10月以降に発表された全ての音楽ソフトが対象』とテロップ表示しているのですが、新しい学校のリーダーズ「オトナブルー」は2020年5月1日に配信リリースされています。
— Kei (ブログ【イマオト】/ラジオ/ポッドキャスター) (@Kei_radio) 2023年12月30日
ともすれば #日本レコード大賞 の受賞資格は”音楽ソフト”、つまりフィジカルをリリースすることが前提にあるのかもしれません。
— Kei (ブログ【イマオト】/ラジオ/ポッドキャスター) (@Kei_radio) 2023年12月30日
しかし新しい学校のリーダーズ「オトナブルー」のオリジナル版は今月のアルバム(デラックス版)が初出の模様であり、対象作品の時期設定にも違和感を覚えます。
この点に対しては、対象期間外でも期間内に特筆すべき成績を残せば対象になっていると番組内で説明されたことが複数の方から指摘されたのですが、アナウンサーやナレーターが口頭で紹介するのではなく、その旨もまたテロップで明示すべきでしょう。この明示しない問題はテレビのみならず、日本レコード大賞の実施要項や審査基準を記したホームページでも見られず、このような曖昧さが違和感の源にあるものと考えます。
(※実施要項等は変わる可能性があるため、2023年12月31日午前5時台の掲載内容をキャプチャしています。)
実施要項ではアルバム部門について紹介されているのですが、その最優秀/優秀アルバム賞選定は2019年(第61回日本レコード大賞 - 公益社団法人 日本作曲家協会)を最後に行われていません。アルバム部門の軽視ともいえるアルバム部門の廃止、そして廃止理由のアナウンスが見当たらないことも対象期間の曖昧さと同様の違和感と成るものです。
そしてそもそも、日本レコード大賞を選出する方自体に偏りがあります。音楽関係者よりもメディア、それも音楽専門誌等ではなくスポーツ紙やTBS系列局在籍の方が審査委員を占め、そしてそのほぼすべて(もしくは全員)が男性なのです。
#日本レコード大賞 については、その選考者(審査委員)についても確認する必要があります。
— Kei (ブログ【イマオト】/ラジオ/ポッドキャスター) (@Kei_radio) 2023年12月30日
なお審査委員は新聞記者、JNN系列放送局の代表そして音楽評論家の23名で構成され、委員長の #川崎浩 さん、副委員長の #国分敦 さんおよび #田家秀樹 さんはいずれも"評論家"という肩書にて紹介されています。
今年の #日本レコード大賞 審査委員23名を確認すると、その名前からほぼ全員、いやおそらくは全員が男性であると考えられます。これではさすがに偏りが生まれると言われてもおかしくないでしょう。米グラミー賞の変化とは真逆の動きです。
— Kei (ブログ【イマオト】/ラジオ/ポッドキャスター) (@Kei_radio) 2023年12月30日
米グラミー賞、2010年代後半における変化について。
— Kei (ブログ【イマオト】/ラジオ/ポッドキャスター) (@Kei_radio) 2023年12月30日
『主要部門の投票権を持つレコーディング・アカデミーの会員は高齢白人男性ばかりとされてきたが、近年はダイバーシティを意識した増員が行われていると報じられている。』https://t.co/R6ZrlYl6zb
#日本レコード大賞 審査委員23名のうち、委員長および副委員長を除く審査委員20名の顔ぶれ。
— Kei (ブログ【イマオト】/ラジオ/ポッドキャスター) (@Kei_radio) 2023年12月30日
(敬称略。名前の横は所属先を記します。)
・安藤篤人 (東京新聞)
・飯尾史彦 (スポーツニッポン)
・飯島太郎 (RKB毎日放送)
・石井健 (産経新聞)
・石森勝巳 (TBC東北放送)
・伊藤遥 (毎日新聞)
(続く)
#日本レコード大賞 審査委員23名のうち、委員長および副委員長を除く審査委員20名の顔ぶれ。(続き)
— Kei (ブログ【イマオト】/ラジオ/ポッドキャスター) (@Kei_radio) 2023年12月30日
(敬称略。名前の横は所属先を記します。)
・江口敦史 (RCC中国放送)
・大友陽平 (日刊スポーツ)
・小菅昭彦 (時事通信)
・近藤正規 (東京中日スポーツ)
・桜井学 (読売新聞)
(続く)
#日本レコード大賞 審査委員23名のうち、委員長および副委員長を除く審査委員20名の顔ぶれ。(続き)
— Kei (ブログ【イマオト】/ラジオ/ポッドキャスター) (@Kei_radio) 2023年12月30日
(敬称略。名前の横は所属先を記します。)
・島﨑勝良 (東京スポーツ)
・高橋誠司 (報知新聞)
・田村隆行 (HBC北海道放送)
・中本裕己 (夕刊フジ)
・藤澤浩之 (デイリースポーツ)
(続く)
#日本レコード大賞 審査委員23名のうち、委員長および副委員長を除く審査委員20名の顔ぶれ。(続き)
— Kei (ブログ【イマオト】/ラジオ/ポッドキャスター) (@Kei_radio) 2023年12月30日
(敬称略。名前の横は所属先を記します。)
・細井麻郎 (CBC)
・三浦敏彦 (MBS毎日放送)
・山下伸基 (サンケイスポーツ)
・吉田俊宏 (日本経済新聞)
審査委員20名のうち前年からの変更は、産経新聞の清水満氏→石井健氏、日刊スポーツの松本久氏→大友陽平氏、読売新聞の西田浩氏→桜井学氏。所属メディア自体の変更はありません。
— Kei (ブログ【イマオト】/ラジオ/ポッドキャスター) (@Kei_radio) 2023年12月30日
そして、審査委員は委員長、副委員長を含め、ほぼすべてが男性で占められています。
ここまで書いた内容は、昨年の #日本レコード大賞 とほぼ同じです(スレッドは下記に)。つまり、この音楽賞において変化がみられているとは言い難いというのが厳しくも私見です。https://t.co/n9ZX6EgCh1
— Kei (ブログ【イマオト】/ラジオ/ポッドキャスター) (@Kei_radio) 2023年12月30日
グラミー賞が批判され改善に向かったのとは全くもって異なる動きであり、そもそもそのような世界の動きを意に介さない、または批判を聞こうとしないと思われてもおかしくない人選といっていいでしょう。またビルボードジャパンがBillboard Japan Women In Musicを立ち上げ女性の地位向上を目指すこととも相反する動きです。このような地位や権利について考えることも、日本レコード大賞にはみられないといえるでしょう。
VTRの多用も問題です。レコード大賞や新人賞のヒストリーVTRに時間を割くことは、今年の受賞歌手や作品への注目度を減らします。新人賞受賞歌手を紹介しながらその年の最優秀新人賞を紹介しないことも問題ですが、旧ジャニーズ事務所の所属歌手を取り上げる率が高かったことにも疑問を覚えます。受賞自体は事実として、初代社長の性加害問題に伴い変革の最中にある事務所を大々的に取り上げる必要はあったでしょうか。
そして音楽賞についても歪といえます。冒頭で紹介したビルボードジャパンの2023年度年間チャートにおいてはYOASOBI「アイドル」がソングチャートを、YOASOBI自体がトップアーティストチャートを制していますが、その「アイドル」は大賞受賞の条件となる優秀作品賞に入っていません。”特別国際音楽賞”等は受賞していますが、ならば優秀作品賞に含めても何ら問題はなかったはずです。
意地悪な見方と言われかねませんが、優秀作品賞よりも特別部門に選ばれたほうが複数の作品を披露できる等歌手側の思い通りにできるだろうことが、優秀作品賞より特別賞に価値があると歌手側に思わせているのではと考えます。また優秀作品賞は基本的に全組が会場にてパフォーマンスを行う習慣があり(今年のAdoさんを除く)、その会場披露が叶わなければ別の形で賞を授与するという性質もあるかもしれません。
(Adoさんのパフォーマンス映像は今月放送の『CDTVライブ!ライブ!』(TBS)を用いていましたが、後述する”TBS色の強さ”問題を踏まえれば、日本レコード大賞用に別途撮影するのがよかったのではと考えます。)
【審査委員の構成における著しい偏り】やそれに伴う【透明性の低さ】、【対象期間等の曖昧さ】【アルバム部門の廃止】等に代表される音楽賞そのものの歪さ、そしてどんなに安住紳一郎アナウンサーが巧い方だとして大賞発表者として起用することや、日本レコード大賞のX公式アカウントが"@TBS_awards"であるという【TBS色の強さ】も含め、日本レコード大賞自体はほぼ何ら変わっていないと断言していいでしょう。
今年はMrs. GREEN APPLE「ケセラセラ」が日本レコード大賞を受賞したことでいわば大団円となりましたが、ストリーミングに強い曲が大賞を受賞したという妥当性が、賞全体の批判をそらすためのスケープゴートになってやいないかと感じています。さすがに考えすぎかもしれませんが、昨年も同様の旨をブログにて述べています。終わりよければ全てよしという考えもまた、レコード大賞側の自浄を削ぐことになるでしょう。
日本では社会的ヒットの鑑たる音楽チャートとしてビルボードジャパンが君臨してきた一方で、その浸透度は十分ではありません。他方、日本を代表する音楽賞と捉えられているであろう日本レコード大賞は問題が山積し、違和感もまた強く抱かれているものと考えますが、今も自省することなく(と思われてもおかしくない形で)君臨しています。
あくまで私見と前置きしますが、音楽関係者やメディアに日本レコード大賞への違和感を発信する方が少なくないながら、音楽賞を創設し日本の音楽業界を率先して変えようと動く方はほぼいないだろうことに強い悲しみを覚えます。音楽チャートにおいてビルボードジャパンが自問自答を行い時代に即して変化することで今の地位を築いたように、音楽関係者等がフェアで開かれた音楽賞を創設することを強く願うばかりです。
日本レコード大賞にも自問自答を期待したいのですが、ここ数年における同賞の姿勢は客観性を伴う批判に耳を貸さないと感じるに十分でした。最早日本レコード大賞は、ライバル賞が台頭することでしか変われないのではというのが厳しくも自分の見方です。