イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ジョングク、共演者やリミックスでの人選からみえてくる"ポップの王者"への強い意志

BTSのジョングクによるソロアルバム『GOLDEN』からの先行曲およびリード曲からは、ポップの王者になろうとする強い意志を感じています。

実は上記ポストをつぶやいた直後、11月29日放送の『アフター6ジャンクション2』(TBSラジオ)にて同種のアプローチによる特集が行われていました(前週に予告があったと思われますが、自分はチェックしていませんでした)。音楽ジャーナリストの高橋芳朗さんによる解説はポッドキャストでも確認できますので、是非チェックしていただきたいと思います。

 

『アフター6ジャンクション2』ではジョングク「Standing Next To You」を軸に、マイケル・ジャクソンのアプローチを施した歌手の作品が続々と紹介されていましたが、その「Standing Next To You」から、自分は特に『Off The Wall』(1979)、そして収録作品の中でもタイトル曲における芳醇なソウルミュージックを想起。特に2番の後にてブラスが挿入されるパートから、そのことを強く感じた次第です。

加えて、12月1日にリリースされた『Standing Next To You」のリミックスにはアッシャーが参加。メロディを崩して歌うアッシャーの余裕っぷりからは王者の風格がうかがえます。

来年開催のスーパーボウルハーフタイムショーを務めることが決まっているアッシャーは今年、サマー・ウォーカーおよび21サヴェージとの「Good Good」がヒット。今月開催されたソウル・トレイン・ミュージック・アワードでは3部門を受賞しています。

アッシャーも、そのダンススキルの高さ等からマイケル・ジャクソンフォロワーと言える存在。個人的に、「Climax」(2012)における官能的なファルセットがプリンスっぽさもありながらマイケルも想起させ、「Butterflies」(2001)のような儚さも漂わせていると感じています。

今年でデビュー30年を迎えたアッシャーが「Standing Next To You」リミックスにて登場したことは、アッシャーからジョングクへ、王者から新たな王への戴冠式と考えるのは、決して大げさではないはずです。

 

ジョングク『GOLDEN』からのセカンドシングルでジャック・ハーロウをフィーチャーした「3D」のアレンジは、ネプチューンズ作品を明らかに想起させるものでした。そしてこの曲のリミックスにて、ソロデビュー作でネプチューンズを起用したジャスティン・ティンバーレイクを迎えています。

イン・シンクジャスティン・ティンバーレイクによる初のソロアルバム『Justified』(2002)においては、収録曲の半数以上をファレル・ウィリアムスとチャド・ヒューゴによるネプチューンズが制作。「3D」を一聴して浮かんだのは、数多のネプチューンズによるヒット曲の中でもジャスティンによる「Like I Love You」だったのですが、「3D」リミックスでのジャスティン登場はその想起が正しかったことを証明するものでした。

マイケル・ジャクソンの死後にリリースされた作品集『Xscape』(2014)では、元々1980年にポール・アンカと共作し録音された「Love Never Felt So Good」が、刷新された上で収録。そのリミックスに迎えられたのがジャスティン・ティンバーレイクであり、同曲は米ビルボードソングチャートで最高9位を記録しています。「3D」でのジャスティン起用は、最終的にマイケルへつながる道を作り上げたと言えるでしょう。

(なおジャスティン・ティンバーレイクマイケル・ジャクソンアプローチとして、『アフター6ジャンクション』にて高橋芳朗さんが紹介していたのは「Take Back The Night」(2013)でした。同曲のYouTubeこちら。)

 

そしてラトーをフィーチャーした「Seven」については、以前ヒットの理由を分析したエントリーを掲載しています。

当時のエントリーでも述べたように、ラトーは大ヒットした「Big Energy」(2021)においてトム・トム・クラブ「Genius Of Love」(1981)を引用しているのですが、その「Big Energy」のリミックス版では同じく「Genius Of Love」使いの「Fantasy」(1995)を大ヒットさせたマライア・キャリーを、DJキャレド共々迎えています。

おそらく「Seven」においてより重要なのは、Y2Kサウンドといえる2ステップのアレンジや、言葉遊び的な歌詞がTikTokでのバズを招いた点といえますが、最終的にマライア・キャリーにたどり着く点を個人的には興味深く感じています。米ビルボードソングチャートで19曲もの首位曲を持つ女王を招いたラトーを「Seven」で迎えたことは、ジョングクの(リミックスや客演の人選も含めた)ポップの王者への意志を感じるのです。

加えて、最新の米ビルボードソングチャートにおいては「3D」に参加したジャック・ハーロウによる「Lovin On Me」が初の首位に輝き、そしてマライア・キャリーは「All I Want For Christmas Is You (邦題:恋人たちのクリスマス)」が4位に上昇。それらからジョングクの作品群を思い出し(マライアからの想起は難しいかもですが)、たどり着く方もいらっしゃるかもしれません。最新チャートはこちらにて米記事を翻訳しています。

 

 

ポップの王者を目指し、マイケル・ジャクソン等の後継者に成ることは、それを広く周知させることでストリーミングやラジオといった接触指標群を獲得するという意味でも重要と考えます。特にラジオにおいてはアジア人歌手のヒットが難しいという保守的な側面が強いゆえ、尚の事です。

その意図もありつつ、しかしジョングクにおいてはポップの王者に意識的になろうとしているのではなく、自身の好きな作品がそれだったのではとも感じています。尤も彼のバイオグラフィーは存じ上げないため想像の域は出ないものの、その好きな思いや憧れが『GOLDEN』、そしてリミックスでの起用を生んでいると思うのです。

 

 

最後に。今回紹介した作品は、Spotifyにてプレイリスト化しています。