イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

KICK THE CAN CREWのワーナーミュージック・ジャパン期作品がほぼ配信終了…2曲のみを残す理由を推測する

KICK THE CAN CREWワーナーミュージック・ジャパン在籍時代の作品、そのほとんどがデジタルプラットフォームから削除されます。

ワーナーミュージック・ジャパン側は上記において『お客様には⼤変ご迷惑ご不便をおかけいたしますが、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます』と結んでいますが、理解し難いというのが私見です。また今回の件を踏まえてサブスクに頼れない等サービス側の非とする反応も一部みられますが、ダウンロードも不可となるためサブスク側の問題ではありません。

 

今回の削除問題、個人的には不可解な点があります。

この2曲4バージョンだけが継続配信されることを腑に落ちないと思う方は少なくないでしょう。しかし、この2曲を残すことには(一応と前置きした上で)一理あるというのが、最新の音楽チャートから解ります。

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3月13日までの1週間を集計期間とする3月16日公開(3月21日付)ビルボードジャパンソングスチャートでは、2004年にリリースされたレミオロメン「3月9日」が19位に浮上(CHART insightはこちら)。以前から安定していたカラオケ(上記CHART insightでは緑で表示)のさらなる上昇に加えて、サブスク再生回数等に基づくストリーミング(青)や動画再生(赤)等の接触指標群が急伸し、総合順位の上昇に寄与しています。

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こちらは「3月9日」の直近150週分におけるCHART insightを、総合および構成8指標の順位およびストリーミング・動画再生のみの2種類で表示。この2年における動画再生指標の伸びは2020年末にレミオロメンの公式YouTubeチャンネルにてミュージックビデオが公開されたことが影響。また2019年秋のサブスク解禁がストリーミング指標に反映されています。

動画再生において、以前は歌ってみた等のユーザー生成コンテンツ(UGC)が加算対象でした。またストリーミングでは、かつてプチリリの歌詞表示回数から再生回数を推定し反映していたため、動画公開やサブスク解禁の前から接触指標群が加算されています。しかし、2019年3月のストリーミング指標で前年までの伸びはみられませんでした。これはサブスクサービスからの音源引き上げが影響しているものと推測しています。

一時的な引き上げには藤巻亮太さんの独立が背景にあるものと上記ブログエントリーにて結論づけました。その後レミオロメンの作品が(再度)サブスク解禁されましたが、しかし推測した背景が当たっていたとするならばレコード会社や前所属事務所側の歌手およびユーザーに対するフレンドリーではない姿勢を感じずにはいられません。無事解禁に至れたことで、「3月9日」は今後も毎年のようにチャートを賑わすでしょう。

 

 

KICK THE CAN CREWワーナーミュージック・ジャパン時代の作品がデジタルプラットフォームから引き上げられる理由は不明ながら、「クリスマス・イブRap」を残したのは季節を彩る曲がサブスク等で聴かれることで音楽チャートにも再登場することを見越したものと推測可能です(昨年のクリスマス曲のチャート動向は下記で解説しています)。ゆえに、夏の終わりを歌う「イツナロウバ」が残ったのも納得はできます。

この2曲を残すことはレコード会社側の判断か、もしくは全曲削除の抵抗としてのKICK THE CAN CREW側の懇願なのかは解りませんが、いずれにせよ2曲以外の作品に即座にリーチできなくなることは悲しいことです。同種の事態が今後起きないことを強く願います。