イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

"クリスマスはマライア"…「恋人たちのクリスマス」を今年も首位に押し上げんとするマライア・キャリーの施策とは

明日発表される米ビルボードソングスチャートでは、マライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You (邦題:恋人たちのクリスマス)」が首位を獲得するものとみられています。仮にその座を射止めれば3シーズン連続、通算6週目の首位獲得となり、"クリスマスイコールマライア"というイメージがより強固なものとなるのです。

その「All I Want For Christmas Is You」、チャートを駆け上がる要因になりそうなものが今年もいくつか登場しています。

 

何より凄いのが、マライア・キャリーマクドナルドとのコラボレーション。現在米で開催中のこの企画、実に衝撃的なのです。

約30秒のスポットは、彼女の代表曲「恋人たちのクリスマス」のオープニングに合わせてマクドナルドが煌びやかにライトアップされていく様子から始まる。すると赤いドレスを纏ったマライアが登場し、「今年のホリデー・シーズンは、“マライア・ミール”ではなく、“マライア・メニュー”を提供します。それも無料です!」と告知。

(中略)

現地時間12月13日から12月24日まで、米マクドナルドではアプリをダウンロードし、1ドル(約113円)以上の購入を行うと、“マライア・メニュー”と呼ばれる日替わりのメニューからその日のアイテムが無料で提供される。中には、アイテムに加え限定コラボ・ビーニーやTシャツがプレゼントされる日もある。

おそらくはアプリの普及推進を目的とするものだとして、ここまで太っ腹な企画はないと言っていいでしょう。中にはビッグマックが提供されることも。

@mariahcarey

Duet this @mcdonalds classic! (and get a FREE Big Mac today, only in the McDonald’s app!)

♬ original sound - Mariah Carey

このキャンペーンが米でどれだけ人気か、またCMがどれだけの方に届いているかは解りかねますが、CMに「All I Want For Christmas Is You」が使われていることを踏まえれば、チャート制覇も果たしたことで"クリスマスイコールマライア・キャリー(のこの曲)"という印象が強くあり、ゆえにマクドナルドはこの曲がキャンペーンの認知に有効だとして使用したのではないでしょうか。

日本時間で明日発表される12月25日付米ビルボードおよびグローバルのソングスチャートは12月10日からの一週間が集計期間となり、マライア・キャリーマクドナルドのコラボレーションはこのタイミングでスタートしていることから、集計期間後半のブーストが期待されます。

 

さらに、このタイミングでリリックビデオが新たに投入されたのも興味深いと言えます。

これまで複数の動画を公開しながら、実は公式のリリックビデオは存在していなかった模様。現在ビルボードでは公式動画のみがストリーミング指標の加算対象となるため、遅ればせながらでもリリックビデオを投入することはチャート面でも有効となります。動画の公開は来週公開される1月1日付米ビルボードおよびグローバルのソングスチャートに加算され、「All I Want For Christmas Is You」をより盤石なものにするでしょう。

 

 

このブログでは以前、マライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You」の米ビルボードソングスチャートにおける軌跡を紹介しました。時代の変遷に合わせてチャートポリシー(チャート集計方法)が変更され、旧曲や季節を彩る作品が上昇しやすくなったことが首位到達の要因として挙げられます。

マライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You」はそのチャートポリシー変遷を上手く活かし、新たな動画を投入する等施策を積極的に行ってきた印象があります。それがクリスマスイコールマライア、というイメージ浸透の確立に至ったのではないでしょうか。今年はクリスマス商戦で抜きん出たいと意気込む企業とのコラボレーションも生まれたことで、来年以降も同種のキャンペーンが登場するかもしれません*1

 

まずは明日のチャートに注目しましょう。

*1:なおマクドナルドは昨年、28年ぶりに著名人の名前を冠したミール(日本におけるセットの意)を用意しました(最新米チャートを制したトラヴィス・スコット「Franchise」が早くもリミックスを投入した理由(2020年10月10日公開分)参照)。この方針(転換)がマライア・キャリーの参加につながったのかもしれません。