イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり) 米ビルボードの”リカレントルール”があのクリスマスソングを除外? チャート動向を注視せよ

11月になりました。彼女の季節がやってきます。

ハロウィンが終わると街の装飾が一気にクリスマスに変わるかの如く、マライア・キャリーは今年も動画を投稿。今年”も”と書いたのは、昨年も同様の掲載があったため。

コロナ禍でも巷で「All I Want For Christmas Is You (邦題:恋人たちのクリスマス)」が流れることは間違いありません。アメリカのiTunes Storeによるダウンロードチャートでは11月に入ってすぐ、この曲が100位以内に再登場を果たしています。

 

この「All I Want For Christmas Is You」、昨年遂に米ビルボードソングスチャートを制し、クリスマスシーズンの終わりと共に1位から100位圏外へと急落しています。実はその最後の100位在籍週(にして首位獲得週となった1月4日付(チャートはこちら))がこの曲における最後のランクインであると、チャート速報時に紹介させていただきました。

「All I Want For Christmas Is You」は前週が最後のエントリーになったと米ビルボードは報じています。というのも、一定週数以上チャートインしている曲がある順位を下回ればチャートから除外するというリカレントルールが米ビルボードソングスチャートに存在、20週以上在籍した曲が50位を下回ればチャートに復活できないのです。「All I Want For Christmas Is You」は合計37週在籍した後に100位未満となったため、今後米ビルボードソングスチャートに登場することはなくなりました。それゆえ、「All I Want For Christmas Is You」は前週、有終の美を飾ったと言えます。

リカレントルールとは、チャートで以前からランクインし続ける曲が特定の順位を下回った際にソングスチャートから除外するというもの。チャートに新しい曲が入りやすくなるというメリットがあり、また除外された曲にはリカレント曲向けのチャートも存在するのですが(→Hot 100 Recurrents Chart | Billboard参照。ただし2位以下は米ビルボードの有料会員のみが確認可能)、一方ですべて除外してよいのかという見方があることも事実です。

自分は1月11日付米ビルボードソングスチャートの速報記事(Post Malone 'Circles' Back to No. 1 on Billboard Hot 100, Maroon 5 & Roddy Ricch Reach Top Three | Billboard参照)におけるリカレントルールの基準を読んだ上で”有終の美”と記載したのですが、あらためてリカレントルールについて確認すると、もしかしたら今年もマライアがチャート上で結果を残すのでは?とも思うに至っています。

Billboard, in an effort to allow the chart to remain as current as possible and to give proper representation to new and developing artists and tracks, has (since 1991) removed titles that have reached certain criteria regarding its current rank and number of weeks on the chart. Recurrent criteria have been modified several times and currently (as of 2015), a song is permanently moved to "recurrent status" if it has spent 20 weeks on the Hot 100 and fallen below position number 50. Additionally, descending songs are removed from the chart if ranking below number 25 after 52 weeks. Exceptions are made to re-releases and sudden resurgence in popularity of tracks that have taken a very long time to gain mainstream success. These rare cases are handled on a case-by-case basis and ultimately determined by Billboard's chart managers and staff. Christmas songs have been a regular presence on the Hot 100 each December since the relaxation of recurrent rules, culminating in Mariah Carey's 1994 recording "All I Want for Christmas is You" reaching #1 on the chart in December 2019.

Billboard Hot 100 - Recurrents - Wikipediaより

リカレントルールは1991年の適用開始以来その内容が数度変更され(現段階における最新の改正は2015年)、クリスマスソングにおいては変更の都度ルールが緩和されたことがチャート上昇に影響していること等が記載。そしてリバイバルヒット等、リカレントルールが適用されないケースがあるのみならず、『これらの稀なケースはケースバイケースで処理され、最終的にビルボードのチャートマネージャーとスタッフによって決定される』(太字箇所の和訳)とのこと。特に『』内の表記を見るに、結局は曲毎のアナログな判断が優先されると言えそうです。

 

だからこそ、マライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You」を筆頭とするクリスマスソングが今年再ランクインする可能性はゼロではないのではと考えるに至っています。そのランクインへの機運(たとえばリカレントルールが適用された場合における、市井による”「恋人たちのクリスマス」がランクインしていない”という疑問等)を高めるためもあるのでしょうか、マライア・キャリーは新たなクリスマス動画の登場を予告しています。

マライア・キャリー(MC)に客演するふたりはアリアナ・グランデ(AG)とジェニファー・ハドソン(JH)では?という見方が強く、米ビルボードでもそのように報じています。仮にこの動画が「All I Want For Christmas Is You」の新バージョンであり、アリアナ&ジェニファーが客演参加しているならば、ますますリカレントルールの適用判断は難しいのではないでしょうか。

 

いずれにせよ、米ビルボードソングスチャートで今月中にクリスマスソングがランクインしてくるのは確実ゆえ、その動向に注目していきましょう。それと同時に、米ビルボードが自身のホームページ内でリカレントルールの説明をしっかりと行い、分かりやすい場所に提示してほしいと強く願うのです。

 

 

※追記 (11月24日6時9分)

マライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You」が11月28日付米ビルボードソングスチャートで29位にリエントリーを果たしました。米ビルボードは同曲へのリカレントルールを適用しなかったことになります。