イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

2021年度 私的邦楽ベストソングスを選びました

毎年行っている私的選曲集、今回は2021年度版です。

 

<2021年度私的邦楽ベスト (2021年12月19日作成)>

◯ 作成時のルール

 ・昨年12月から今年11月にかけて発売されたシングル、またはアルバムからのリード曲で、基本的にはミュージックビデオが制作された曲から選出しています。ミュージックビデオ未制作ながらアルバムのリード曲としてラジオオンエアされた作品も含まれます。

 ・1組の歌手につき主演曲は1曲のみ。客演曲はその限りではありません。

 ・1枚のCD-R(79分弱)に収まるように編集しています。

 ・歌手名の前の数字はプレイリストを考慮した曲順です。順位ではありません。

 

参考として、昨年はこちら。

2021年度の上半期、および下半期の邦楽ベストソングスはこちら。

 

それでは紹介します。

 

 

・2021年度 私的邦楽ベストソングス

(下記動画の中にはショートバージョンやコレオビデオ、リリックビデオそしてオーディオ動画が含まれています。)

 

01. Sexy Zone「RIGHT NEXT TO YOU」

02. Awesome City Club「勿忘」

03. GRAPEVINE「Gifted」

04. Salyu「Taxi」

05. 三浦大知「About You」

06. SIRUP「Thinkin about us」

07. AISHA「キミのせいで」

08. 米津玄師「Pale Blue」

09. 吉澤嘉代子「刺繍」

10. 藤井風「旅路」

11. エス・ティ・ワイ「涼感ノスタルジア

12. Vaundy「花占い」

13. CAPSULE「ひかりのディスコ」

14. millennium parade × Belle「U」

15. Official髭男dism「Cry Baby」

16. BE:FIRST「Gifted.」

17. 宇多田ヒカル「君に夢中」

18. MISIA「Higher Love」

 

 

ざっくりと上半期→下半期の流れでプレイリストを作成しています。またSexy Zone「RIGHT NEXT TO YOU」のみサブスク未解禁のため、冒頭に据えることにしました(サブスク未解禁曲の置く位置は昨年と同様であり、巻末で紹介するSpotifyのプレイリストを遮断しかねないための判断となります。)。

 

まずはそのSexy Zone「RIGHT NEXT TO YOU」。好事家の評判も素晴らしく、セクゾにとって新たな代表曲になったのではないでしょうか。YouTube掲載のミュージックビデオでは割愛された2番出だしの3連符も含め、海外の流行を貪欲に自らのものにする姿勢に魅了されました(その2番はダンスプラクティス動画で確認できます)。またこの1年におけるジャニーズ事務所所属歌手のR&Bアプローチには目を見張るものがあるのです。

Awesome City Clubは「勿忘」で大ブレイクし、大晦日は『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)にも出場。パフォーマンスにおいて、インスパイア源となった映画『花束みたいな恋をした』で主人公が選んだ道の如く、決して視線を合わせない演出を貫いたのが見事でした。

GRAPEVINEは社会の切り取り方、シニカルな表現に長けている気がします。月間ベストには「ねずみ浄土」も選んだのですが、上半期そして年間ではよりポップと言える「Gifted」を選出。しかし歌詞の世界には常に絶望が蔓延っているかのよう。この世界観はコロナ禍になった現代、より説得力を帯びているのではないでしょうか。

 

混沌とした空気の中で愛を叫ぶかの如き曲が続きます。Salyu「Taxi」は、藤井風さんのプロデュース等で頭角を現しているYaffleさん、そして小袋成彬さんが制作に関与。こういう漆黒のような音世界にSalyuさんの歌声がより映えます。

三浦大知さんによる「About You」もまたJ-Popとは一線を画す、没入感の高い作品。シングル表題曲の「Backwards」のように世界的流行を自らのものにした作品も魅力的ですが、「About You」の攻めの姿勢を進めてほしいと思う自分がいます。そしてその流れでSIRUPさんの「Thinkin about us」をセレクト。R&Bのみならずゴスペルの空気感を纏う姿は、次代のジャパニーズR&Bの主役を担うに相応しいと言えるでしょう。

上半期、下半期共に選出していませんでしたが、AISHA「キミのせいで」におけるアコースティックなR&Bは自分が大好きなジャンルであり、最終的に年間ベストに選出。日之内エミ「愛だけが」に並ぶ、胸を締め付けられる名曲が誕生しています。

 

米津玄師「Pale Blue」は弦楽の美しさもさることながら、曲の展開(特に最後のサビがワルツ調になるところ)が秀逸で、詞、メロディ、アレンジのすべてでストーリーテラーとしての非凡さを強く感じました。フィジカルセールスに強い一方でストリーミングが伴っていない状況でしたが、米津流ラブソングはもっと評価されるべきではないでしょうか。

「地獄タクシー」や「月曜日戦争」といったポップサイドの印象が強かった吉澤嘉代子さんですが、君島大空さんがアレンジを手掛けた「刺繍」の美しさにただただ魅了されました。「刺繍」のイメージのひとつが青森ということを先程知り、なるほど冬のシーンがよく似合うなと実感しています*1

昨年リリースのファーストアルバム『HELP EVER HURT NEVER』がロングヒットした藤井風さん。「きらり」が2021年度下半期のビルボードジャパンソングスチャートでトップ10入りしたことでさらなるブレイクを果たしたと言えますが、「旅路」は週間チャートでトップ10入りし、続く「きらり」への道筋を作ったと感じています。『にじいろカルテ』(テレビ朝日)の主題歌として、作品の穏やかな世界観に寄り添ってくれました。

 

プロデューサーとして三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBE「R.Y.U.S.E.I.」を特大ヒットに導いたSTYさんが歌手としてリリースした今年の作品はどれも高質。フロウするかのような独特の歌唱は癖になること間違いありません。そしてこの曲で描かれる光景がコロナ禍突入からまもなく2年経過するにもかかわらずまだ戻ってきていないことに、曲名同様のノスタルジアを強く感じてしまいました。

Vaundy「花占い」のキャッチーさには抗うことができません。サビの"1000年の恋"等の言葉はともすれば聴く側に気恥ずかしさをもたらすかもしれませんが、ここまで堂々と歌われるときらびやかなアレンジと相俟って、言葉がストレートに届いてくるのです。

1980年代リスペクト曲が多い現代にあって、CAPSULEのカムバック曲「ひかりのディスコ」は屈指の仕上がりに。サビはメロディのリズムこそ同じでも展開を微妙に変え、フレッシュさを保つ点も◎。また『竜とそばかすの姫』主題歌、millennium parade × Belle「U」における常田大希さんによる隙のないプロダクションに、Belleこと中村佳穂さんの歌声がいい意味で隙というか、新たな風を与えているのは見事です。

Official髭男dismが「Pretender」や「I LOVE...」のようなミディアムポップではない「Cry Baby」で大ヒットを記録したのは大きな意味があると言えます。『東京リベンジャーズ』の人気、音楽番組やYouTubeにおける曲解説に採り上げられる頻度の高さもさることながら、純粋な歌の魅力に因るものが何より大きいと考えます。難易度が高すぎると言われながらも、カラオケ挑戦者が多いのは曲の求心力にほかなりません。

BE:FIRST「Gifted.」についてはここで幾度となく特集しているので割愛します(下記ブログエントリー等をご参照ください)。脱J-Pop的スタンスの曲がヒットを記録したことも含め、もっともっとメディアが採り上げるべき作品だと思うのですが、理想とかけ離れた現実には複雑な思いを抱く自分がいるということをあらためて記しておきます。

 

ドラマ『最愛』(TBS)主題歌の宇多田ヒカル「君に夢中」は、『最愛』において登場人物の様々な形の"最愛"が示されるのと同様に、聴き手に様々な解釈を委ねることができる曲ではないでしょうか。勿論ドラマの主人公の心情も示しつつ、一方では今の社会への風刺という捉え方も耳にしました。聴き手にふくよかな解釈を与える隙間のような存在が、曲の中毒性につながる気がしています。

MISIA「Higher Love」は、藤井風さんが初めて他者へ提供した作品ということに驚きつつ、藤井風さんらしさもMISIAさんらしさも溢れてくる、双方にとっていわばWin-Winの曲と言えるでしょう。本場のゴスペル感、そして多幸感に溢れる一曲であることは、この曲のTHE FIRST TAKEからも伝わってきます。

 

78分強のプレイリスト、どの曲もおすすめです。

 

 

Spotifyのプレイリストはこちら。Sexy Zone「RIGHT NEXT TO YOU」はサブスク未解禁のため含まれていません。

2021年度、素晴らしい音楽に出会えたことに感謝します。