今週発表された10月10日付米ビルボードソングスチャートで初登場首位を達成したのはトラヴィス・スコット feat. ヤング・サグ & M.I.A.「Franchise」でした。1年以内に3曲もの首位初登場を成し遂げたのはトラヴィス・スコットが初であり、勢いの凄さを感じます。
最近のトラヴィス・スコットは快進撃が続いています。米マクドナルドは1992年のマイケル・ジョーダン以来およそ28年ぶりに著名人の名を冠したセット、トラヴィス・スコット・ミールを販売。同社の売上は7~9月期において前年比上昇を果たし、トラヴィスが貢献したとアナウンスしています。
【News】
— HIP HOP DNA (@HIPHOPDNA_JP) 2020年10月9日
トラヴィス・スコットとのコラボの影響でマクドナルドの業績がアップしたと報じられる。
メニューに名前が載った著名人としてはマイケル・ジョーダン以来https://t.co/aV6VhjwSTa
また上記記事にもありますが、トラヴィス・スコットはクリストファー・ノーラン監督の映画『TENET テネット』に主題歌「The Plan」を提供。ノーラン監督に『長年のパズルを完成させる最後のピースとなった』と言わしめるトラヴィスの声は今のエンタテインメント業界に欠かせないものとなっています(『』内はクリストファー・ノーランが語る新作「TENET テネット」におけるトラヴィス・スコットの役割。「パズルを完成させる最後のピースとなった」 | HIP HOP DNA(8月19日付)より)。映画は世界中で大ヒットし、日本でも3週連続で週末興行収入ランキングを制しています。
そこからの「Franchise」リリースであるわけで、勢いづかないほうがおかしいのかもしれません。しかし実際の数字は好いとは言えず、初登場週におけるストリーミングは1940万にとどまっています。トラヴィス・スコットがこの1年で初登場首位に送り込んだ他の2曲は首位獲得週において、キッド・カディとのユニット”ザ・スコッツ”名義による「The Scotts」が4220万(5月9日付)、単独名義での「Highest In The Room」が5900万(は昨年10月19日付)を獲得しており、「Franchise」の低下は明らか。しかも今作は所有指標の大きさが首位獲得に大きく貢献したことから、次週の所有指標、そして総合順位の急落は避けられません。
そこでトラヴィス・スコットは急遽と言えるかもしれません、この「Franchise」リミックス版を現地時間の8日木曜までに送り込んでいます。
🔥超豪華REMIX解禁
— ソニーミュージック洋楽 (@INTSonyMusicJP) 2020年10月8日
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トラヴィス・スコットの全米No.1新曲「FRANCHISE」にさらにフューチャーが参加した最強Remixがドロップ⚡
🗣トラヴィス・スコット
🗣ヤング・サグ
🗣M.I.A.
🗣フューチャーhttps://t.co/1KIq7LDOdP
このリミックスで新たに招聘されたのはフューチャー。一方オリジナルバージョンから参加しているM.I.A.のパートはごく僅かとなってしまいました。というのも。
トラヴィス・スコットの全米No.1ヒット”FRANCHISE”のリミックスが公開。一部のリスナーから不評だったM.I.A.のパートが大幅に削られ、代わりにフューチャーとトラヴィスが新たなパートを加えています>>>https://t.co/GiYTobkaZv pic.twitter.com/6Aj8xa8lhe
— The Sign Voice (@thesignvoice) 2020年10月8日
(余談ですが、マクドナルドや『TENET テネット』の業績が好調だからといって新曲の人気が押し上がるわけではないこと、芳しくないことにははっきりとその態度を示すことに、アメリカの国民性が表れていると思う自分がいます。)
この「Franchise」リミックスの追加投入がチャートにおいてどこまでテコ入れとなるかは解りませんが、チャートアクションに注目したいところ。というのも、米ビルボードソングスチャートの予想家のひとり、Talk of the Chartsは「Franchise」が不名誉な記録を作りかねないと指摘しているのです。
"FRANCHISE" by @trvisXX, @youngthug & @MIAuniverse is currently on pace to fall out of the Top 40 on the Hot 100 next week, which would break "TROLLZ"'s historic #1 to #34 drop.
— Talk of the Charts (@talkofthecharts) 2020年10月6日
首位獲得から翌週最も急落したのはシックスナイン & ニッキー・ミナージュ「Trollz」の1→34位(7月4日付)。尤も、1月4日付で首位を獲得したマライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You」が翌週100位圏外となりましたがこれはクリスマスソング一掃に因るもの。いわゆるフィジカル施策を用いた反動により記録を更新してしまった「Trollz」を破ることがあるならば、まさに不名誉と言えるかもしれません。ただし上記指摘ツイートはリミックス投入前のものなのです。
今回のリミックスが既に用意されリリースを待つのみだったのか、それとも急造なのかは解りません。しかし次週10月17日付のデジタル2指標の集計期間が8日木曜まで(ラジオエアプレイは11日日曜まで)であることを踏まえれば、このリミックスがある程度の下げ止まりに貢献することは確実と言えます。
リミックス投入がチャートへのカンフル剤の役割を果たすことは以前から弊ブログにて紹介しています。今回の追加投入はリミックスの楽しさや文化の伝播よりチャートへのカンフル剤の側面が強くないかという違和感は拭えませんが、それでも今作の動向には注目せざるを得ないのです。