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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

嵐「カイト」がトップ50復帰…獲得ポイントの大半を占めるデジタルの整備、解禁こそ重要である

最新8月4日公開(8月9日付)ビルボードジャパンソングスチャートにおいて、フィジカル関連指標初加算に伴いジャニーズWEST「でっかい愛」が制したことは昨日お伝えしました。

一方で「でっかい愛」とダブルAサイドの位置付けである「喜努愛楽」は、最新ソングスチャートで100位以内に入っていません。

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ダブルAサイドシングルの場合はフィジカル関連指標がどちらか1曲にしか加算されないことから、「喜努愛楽」はTwitter指標の獲得のみにとどまっています。また動画再生が今週加算されていないのは「でっかい愛」でも同様でした。

 

ジャニーズWESTが仮にデジタルを十分に解禁していたならば、「喜努愛楽」は100位以内への進出があり得たでしょう。KAT-TUNは今年「Roar」、そして「Flashback」をデジタル解禁し、前者は2週連続トップ10入り、後者は100位以内エントリーを果たすに至っています*1。最近のダブルAサイドシングルではKing & Prince「Beating Hearts」も100位以内未達ゆえ、デジタルの重要性がよく解るのです。

 

 

そのデジタル解禁の重要性を示すには、嵐「カイト」がまさに好例でしょう。

下記は最新8月4日公開(8月9日付)ビルボードジャパンソングスチャートにおける「カイト」のチャート推移(ビルボードジャパンのCHART insight)であり、上は初登場時から最新週までの85週分、下は直近の11週分を示しています。

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NHK2020ソングとして東京オリンピック中継で毎日流れている「カイト」は、前週100位以内に復帰を果たすと今週はトップ50入り。構成指標においてダウンロードが最も高いのはメディア露出が最も反映されやすい指標ゆえと言えますが、この勢いは他の指標にも表れています。

実際、嵐はこの2ヶ月でよりチャートを上昇しやすい状況を作り上げてきました。

活動休止前のライブを収めた映像盤が先月末にリリースされ、Blu-rayは今年度最高となる初週セールスを記録しています。またその12日前にはカップリング曲等をコンパイルした『ウラ嵐BEST』を4作同時にデジタルリリース。こちらも嵐の音楽ニーズを高めることに有効に作用したと言えるでしょう。

先述したライブ盤に話を戻すと、リリースを記念してセットリストのプレイリストやSpotify独自機能である再生時の映像機能(Canvas)を用意したのも巧い試みと言え、「カイト」は直近のSpotifyデイリーチャートで100位以内に入っています。最新のビルボードジャパンソングスチャートではストリーミングが加点されながらも100位には満たない状況ですが、次週の浮上が期待できます。

そして5月下旬に用意されたライブ映像もまた功を奏しました。この動画を用意したことで「カイト」ははじめて動画再生指標が加算されたのです。これまでは『NHK紅白歌合戦』での映像がNHKの公式YouTubeアカウント発でアップされながら、動画再生指標にはカウントされていませんでした。そしてこの指標も、今週100位以内に登場しています*2

 動画の用意、そしてフィジカルリリースと同時ではなかったものの後日デジタル解禁を実施しデジタルに前向きになったことで、「カイト」は今回オリンピックのタイミングでダウンロードやストリーミング等の上昇につながりました。

 

 

リリースから時間を経過した作品が話題になる可能性、現在ではより高まっています。TikTokの流行によって、リリースから40年以上経ったフリートウッド・マック「Dreams」が世界的な再ブレイクを昨年果たしましたが、一方日本では過去の作品が再ブレイクしやすい環境とは言えないと考えます。「Dreams」を紹介したブログエントリーにて、このようなことを述べました。

TikTokに用いられる曲、バズを起こす可能性のある曲に発売時期は関係ないはずです。だからこそいつ何時でも光が当たってもいいように、デジタル環境を整備することが必要ではないでしょうか。

特にジャニーズ事務所においては未だ大半の作品が(以前所属していた方を含めて)未解禁の状況ですが、嵐においてはデジタル環境の整備が間違いなく今回の再浮上につながりました。最新8月4日公開(8月9日付)ビルボードジャパンソングスチャートにおいて「カイト」はフィジカル関連とラジオ、Twitterという4指標の獲得分がポイント全体の4分の1にとどまっており、デジタル未解禁ならば100位以内復帰はなかったはずです。

 

NHKで頻繁に使われていて耳にする機会も多いから再浮上したというのは間違いではありませんが、より浮上できる環境を整えたこと、そしてデジタルに前向きな姿勢が再浮上をもたらしたことは間違いありません。言い換えれば、デジタル未解禁が如何に勿体ないことかがよく解るのです。

*1:「Flashback」はデジタル限定のカップリング曲。

*2:動画再生指標は国際標準レコーディングコード(ISRC)付番の作品がカウント対象となります。レコード会社や芸能事務所の未付番により加算を逃してしまうこともありますが、放送局が用意する動画ではこのISRC未付番と思しき現象が散見される印象があります。放送局側の意識改革は必要でしょう。