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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングスチャートなどを紹介します。

2020年下半期の社会的なヒット曲、もしくはチャートを語る上で欠かせない曲10選

今年上半期に社会的にヒットした、もしくはチャートを語る上で欠かせない曲を10曲選んでみました。上半期以前についてはこちらをご参照ください。

邦楽、洋楽共に12月4日に発表されたビルボードジャパンおよび米ビルボードの年間チャートを参照しています。

基本的には今年6~11月リリースの作品を取り上げますが、リリースがそれ以前でもこの時期にヒットしたものであれば取り上げます。

 

2020年下半期の社会的なヒット曲、もしくはチャートを語る上で欠かせない曲10選

 

① LiSA 「炎」

首位登場からわずか6週でビルボードジャパン年間ソングスチャートトップ10入りを成し遂げたその勢いたるや。無論主題歌となった『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の特大ヒットが影響しているのですが、チャートアクションを最大限にするスケジュール等の策が功を奏したこともまた間違いない事実。シングルCDセールス初週65000枚にしてポイント3万超え、首位登場から4週連続で3万ポイント突破、3週連続で構成8指標すべてトップ10入り等多くの記録を残し、最新12月14日付ビルボードジャパンソングスチャートでは2位にダウンするも未だ2万ポイント超えを果たしているのは素晴らしいの一言に尽きます。首位初登場週の動向は下記に。

最新週までの動向を見てもただただ圧巻。2021年度の年間ソングスチャート制覇も期待できるかもしれません。

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② 米津玄師「感電」

150万突破が現実味を帯びてきたCDセールスもさることながら、ダウンロードが19万近くに達し、さらにパソコン等にCDを取り込んだ際にインターネットデータベースにつながる数を示すルックアップでは常時トップ3入りと、年間アルバムチャートにおいて構成3指標すべてが1位となり完全制覇を成し遂げたアルバム『STRAY SHEEP』。この作品から、圧倒的支持を集めたドラマ『MIU404』(TBS)主題歌として先行解禁された「感電」はミュージックビデオ公開時にサムネイル画像を変えて話題になり、動画再生回数は瞬間最大風速を記録。

そして「感電」を収録したアルバムはリリースと同日に、過去の音源をハチ名義も含めサブスク解禁。解禁自体は遅きに失したとしても、米津玄師さんの勢いの凄まじさおよび解禁タイミングの巧さを感じずにはいられませんでした。

サブスクという選択肢が増えた中にあって、先述したように『STRAY SHEEP』はミリオンセールスを記録。サブスク接触からCD所有への流れも生まれていると推測しています。

 

 

あいみょん「裸の心」

上半期の10曲で選んだOfficial髭男dism『I LOVE...』は『恋はつづくよどこまでも』の、先述した米津玄師「感電」は『MIU404』の、そして「裸の心」は『私の家政夫ナギサさん』の主題歌。ドラマはいずれもTBS制作作品であり、同局の人気の高さとドラマ主題歌への勢いへのリンクを感じずにはいられません。

この「裸の心」はショートムービーの公開という面白い試みがなされ、またシングルCDリリースやドラマの口コミでの評判、アルバム『おいしいパスタがあると聞いて』のリリース、そしてテレビでの特集等、様々なタイミングで高ポイントを獲得。アルバム初登場の2週後となる9月28日付で最大ポイントに達したのは特筆すべきことと考えます。

 

 

DISH//「猫 ~THE FIRST TAKE ver.~」

あいみょんさんによる提供曲(そのあいみょんさん自身、シングルCD「今夜このまま」のカップリングにセルフカバーを、ライブバージョンにて収録)。2017年のシングルCD「僕たちがやりました」のカップリングながら、ソニーミュージックが運営している(とは明示されていませんが、出演ラインアップや使用しているヘッドホンを踏まえれば明らかな)一発録りYouTubeチャンネル、THE FIRST TAKEで披露し話題に。後に"THE FIRST TAKE ver."として音源化され、オリジナルバージョン共々ロングヒット。ビルボードジャパン年間ソングスチャートでは27位にオリジナルバージョン、28位にTHE FIRST TAKE ver.がそれぞれランクインするに至っています。

最新12月14日付ビルボードジャパンソングスチャートまでの「猫」2バージョンの動向を踏まえれば、この曲のヒットがさらに解るかと思われます。

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この曲がDISH//の注目度上昇につながり、また以前記載した問題(ただしあくまでDISH//においては、という話ですが)の解消につながりました。さらにはTHE FIRST TAKEというチャンネルに箔が付く結果にも。ただしDISH//は今年の『NHK紅白歌合戦』出場を逃しており、その点においては非常に残念に思っています。紅白出場歌手における見解は下記に。

 

 

⑤ 嵐「カイト」

昨年の『NHK紅白歌合戦』で初披露された、米津玄師さんによる提供曲。7月下旬にシングルCDとしてリリースされ、ファンクラブ限定盤が加算対象となるオリコンではシングルCDとして自身初となるミリオンセールスを記録。

しかし昨秋からデジタルに積極的だった嵐にあって、「カイト」は長らくデジタル未解禁の状態が続いていました。12月11日、アルバム『This is 嵐』収録曲としてようやく解禁されましたが、しかしミュージックビデオは現段階で未解禁のままです。

仮に「カイト」がシングルCDリリースに合わせてデジタル解禁に至っていたならば、ビルボードジャパン年間ソングスチャートでのトップ20内進出も十分あり得たでしょう。年間38位という成績は活動休止前の最後のシングルCDの順位としては高くないと考えます。また上記動画はNHKYouTubeアカウント発であり、Foorin「パプリカ」同様に動画再生指標のカウント対象条件となるISRC(国際標準レコーディングコード)未付番のため一度として動画再生指標が加算されていないことも、非常に勿体なく感じてしまいます。ISRCは後からでも付番可能のため、尚の事です。

結果的に「カイト」は(そしてアルバム『This is 嵐』においても)、所属事務所のデジタルへの姿勢の明るくなさ、もしくはCDセールス最優先という姿勢を示すものとなってしまいました。来年以降デジタルに積極的な活動を採る歌手が(しばらくは)不在となるジャニーズ事務所の姿勢が転換しない限り、同芸能事務所のみならず日本のエンタテインメント業界全体が積極的になったとは言えないと、厳しくもそう捉えています。

 

 

⑥ NiziU「Make you happy」

韓国の芸能事務所JYPとソニーミュージックとの合同オーディションで選ばれた日本人9人組。プレデビュー(と称したのは、12月にリリースした「Step and a step」を実質的なデビューと据えたいからでしょう。このプレデビューという表現には正直違和感を覚えるところではありますが)となる「Make you happy」は7月13日付ソングスチャートで当時ストリーミング再生回数の新記録を樹立し、総合でも同日付以降現在まで一度もトップ10圏外になることなくロングヒット。週間最高2位ながら年間では12位を記録しています。

そして正式なファーストシングルとしてリリースされた「Step and a step」が最新12月14日付において、シングルCDセールス初加算のタイミングで念願の首位を獲得しています。シングルCD初週セールス31万という数字も立派ですが、CD関連指標加算前週に既に1万ポイントを突破している状況から、NiziUの人気がよく解ります。

  

 

BTS「Dynamite」

今年世界中を席巻した曲として真っ先に浮かぶ曲のひとつはおそらくこの「Dynamite」でしょう。日本では8月31日付で7位に登場するとそこから一度も順位を落とすことなく、現在まで通算12週間1万ポイント超えを達成。しかも最新12月14日付で獲得ポイントが最高を更新するという事態に。

アメリカでは4曲目のトップ10入りにして初のナンバーワン、且つ通算3週首位を獲得。日本やグローバル(アメリカ以外)とは異なり所有指標が特化しているという懸念もありますが、最新12月12日付において遂に自身初、さらには韓国人歌手初となるラジオエアプレイ10位を記録。世界の中では認知度が低いと言えたアメリカで、持続的成功の足がかりを築いています。

BTSそしてNiziUについては、 日本のZ世代へのアンケートによる2020年下半期トレンドランキングでアーティスト部門ワンツーフィニッシュを達成。芸能人という括りでもトップ3に二組が入っています。さらにはその他のランキングでも、韓国の文化が柔軟に採り入れられているのを感じずにはいられません。好いものは好いと素直に評価する姿勢がBTSやNiziUの人気に、そして日本でのチャートアクションに表れているのではないでしょうか。

 

 

⑧ BLACKPINK「Lovesick Girls」

米で成功したK-Popアクトのもう一組がBLACKPINK。『The Album』は米ビルボードアルバムチャートで初登場2位を記録。ソングスチャートで大ヒットと言える作品はまだ登場していませんが、デュア・リパ、レディー・ガガ、セレーナ・ゴメスそしてカーディ・Bといった錚々たる面々のフックアップや客演参加を受けて人気が拡大。アルバムからのリード曲となる「Lovesick Girls」は、米ビルボードが9月に新設したグローバルチャートのうちGlobal 200において、10月17日付で全楽曲で初となるストリーミング週間1億超えを達成しており、世界中での人気の高さを物語っています。

 

 

⑨ カーディ・B feat. メーガン・ザ・スタリオン「WAP」

女性がセックスポジティブについてあけっぴろげに謳う曲がようやく米でも大ヒットしたと言えるかもしれません。たとえば1998年に米ビルボード年間ソングスチャートを制したネクスト「Too Close」は、RHYMESTER宇多丸さんのラジオ番組で"馬鹿リリック"として取り上げられるほど下世話とも言える歌詞だったのですが、「WAP」におけるモップ等表現は個人的にその「Too Close」を想起。しかしこの曲の大ヒットこそ、女性の地位向上の証と言えるのです。この曲のリリースが米大統領選挙直前であったこともヒットを加速させただろうということを、かつて馬鹿リリック大行進特集にも参加していた音楽ジャーナリストの高橋芳朗さんが宇多丸さんのラジオ番組『アフター6ジャンクション』(TBSラジオ)にて解説されています。

客演参加しているメーガン・ザ・スタリオン(未だにメーガンなのかミーガンなのか、ザなのかジーなのか、その読み(日本での表記)が定まっていないのですが)は、ビヨンセを迎えた「Savage」で米ビルボードソングスチャートを初めて制し、「WAP」が2作目の首位に。今後さらなる活躍が期待できるラッパーです。

 

 

⑩ ジョーシュ・シックスエイトファイヴ × ジェイソン・デルーロ「Savage Love (Laxed - Siren Beat)」

TikTok発のヒットはもはや枚挙にいとまがないと言えるかもしれませんが、TikTokで流行したインストゥルメンタルを、歌詞を付けてカバーするという現象はこれまであまり見られなったかもしれません。元々はニュージーランドの高校生だったジョーシュ・シックスエイトファイヴの「Laxed (Siren Beat)」を、TikTokで積極的に活動するジェイソン・デルーロが勝手にカバーし、後に両名のクレジットで正式にリリースしたのが「Savage Love (Laxed - Siren Beat)」。その評判により、今夏以降米ビルボードソングスチャートでヒットに至っています。

後に「Savage Love (Laxed - Siren Beat)」は、BTSを迎えたバージョンのリリースにより所有指標を刺激する形で10月17日付で米ビルボードソングスチャートを制覇。ただし所有指標は持続性に欠け、且つ接触指標群が上昇しなければ勢いをキープできないことから翌週には6位にダウン(さらにはBTSの名もクレジットから外れています)。首位獲得は瞬間的なものでしたが、それでもこの曲のヒットはTikTok発の新たなスタイルとなりました。

なお最新12月14日付においては、24Kゴールデン feat. イアン・ディオール「Mood」(→YouTube)が6週目の首位をキープ。こちらもTikTokで火が付いた曲ですが、同曲はロック&オルタナティブソングスチャート、オルタナティブソングスチャートそしてラップソングスチャートを同時に制しており、ジャンルを超越した点においてポスト・マローン「Circles」やザ・ウィークエンド「Blinding Lights」といった2020年度の大ヒット曲を彷彿とさせます。

 

 

 

以上10曲、いかがだったでしょうか。厳しい指摘をさせていただいた曲もありますが、2021年度も社会的なヒット曲が、そして日本のみならず世界でヒットする曲が生まれることを楽しみにしたいところ。そして、ユーザー(リスナー)アンフレンドリーな施策がなくなっていくことを願うばかりです。