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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

新設されたばかりの2つのグローバルチャート、その最新チャート動向からBTS「Dynamite」について考える

ビルボードが世界的なヒット曲の指標として先週新設した2つのチャートについて、その特徴や疑問点を先週記載しました。

この2つのチャート、グローバルソングスチャート(Global 200)およびグローバルソングスチャートから米を除いたチャート(Global Excl. U.S.)について、米ビルボードソングスチャート(Hot 100)同様に速報が日本時間の火曜早朝(現地時間の月曜)に発表され、日本時間の火曜夕方以降に上位100曲が米ビルボードのホームページにて更新される模様です。最新9月26日付分はGlobal 200が火曜夕方に更新されつつ、Global Excl. U.S.は水曜早朝段階で未更新ではありますが。また、最新9月26日付のHot 100および同日付Global 200ではマシュメロ & デミ・ロヴァート「OK Not To Be OK」が初登場を果たしているため(前者36位、後者32位)、おそらくはGlobal Excl. U.S.も含めて集計期間はHot 100に準じるものと思われます。ただし日本でのストリーミングおよびダウンロードも金曜集計開始なのか、それともビルボードジャパンをデータの提供元としており日本独自の集計期間である月曜を開始日にしているのかは判りかねます。

 

下記ツイートは、その日本時間の昨日発表された2つのチャートのトップ10速報。この速報にはそれぞれの上位5曲における2指標の数値が掲載されています。表にしてみました。

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前週のトップ10速報同様、新設チャートについては構成2指標の数値は上位5曲のみ掲載される模様。今週は両チャート共に5位以内の曲が入れ替わらないため、ほぼ全ての曲がなだらかにダウンしている状況です。

 

注目したいのはBTS「Dynamite」の数値。最新9月26日付米ビルボードソングスチャート(Hot 100)ではとりわけダウンロード指標が大きく牽引し、登場4週目にして2位につけています。

Hot 100におけるBTS「Dynamite」はダウンロードが78000である一方、Global 200では29000、そしてGlobal Excl. U.S.では18000。Global 200から米を除いた分がGlobal Excl. U.S.となるため、グローバルチャートにおける米のみのダウンロードは11000と想定され、Hot 100とはおよそ67000もの乖離が生じるのです。

ともすればグローバルチャートにおいてリミックス版がカウント除外されている可能性が考えられましたが、たとえばイマンベックによるリミックスがTikTokをきっかけにブレイクしたセイント・ジョン「Roses」がHot 100で14位、Global 200で15位に入っていることを踏まえれば、リミックスは合算されるものと考えます。となるとこのダウンロード数の乖離については、カウント対象先にその理由があると思われます。

ビルボードのグローバル・チャートは、“Global 200”と“Global Excl. U.S.”の2種類で、後者が米国のデータを除外(exclude)したチャートとなっている。両チャート共に、各地域の主要デジタル・プラットフォームにおける定額課金型(サブスクリプション)と広告支援型の公式ストリーミング、そしてデジタル・ダウンロードにそれぞれ比重をつけて算出し、ランク付けしたものとなる。

Hot 100においては来月頭までフィジカル施策が有効となっています。レコード等フィジカルを販売し、到着は後日になるものの購入段階で売上にカウントされるほか、その購入段階でダウンロードが可能となりその分も加算されるため、ダウンロード指標の急増につながるのがこの施策の特徴ですが、この施策におけるフィジカル販売場所は主に歌手自身のホームページなのです。また歌手のホームページではダウンロードも行っているため、その歌手のホームページでの売上を含むのがHot 100、含まないのが新設グローバルチャートと言えるでしょう。

(そうなると、”歌手のホームページでの売上計測には不正が生じかねない”という見方も出てくるでしょう。こちらについてはフィジカル施策を実施し米チャートを制したアリアナ・グランデジャスティン・ビーバー「Stuck With U」に対し同日付で「Gooba」が3位止まりとなったシックスナインがクレームを付けたことにおける、米チャートの毅然とした対応をみれば、計測には不正はないものと考えます。シックスナインが首位を逃したのはチャートに不正があったから?…彼のクレームへのアリアナ&ジャスティンおよび米ビルボードの反論、そして私見を記す(5月20日付)をご参照ください。)

 

BTS「Dynamite」の米ビルボードソングスチャート(Hot 100)、そして新設グローバルチャートでの指標を比較して見えてくることは2つ。ひとつは米以外において、ストリーミングが非常に強いということ。これはグローバルソングスチャート(Global 200)とグローバルソングスチャートから米を除いたチャート(Global Excl. U.S.)の双方にランクインした4曲の数値比較から明らかであり、BTSは既に世界でその認知度が高まっている存在と言えるでしょう。日本においても、先週水曜に発表された9月21日付ビルボードジャパンソングスチャートにおいて「Dynamite」はサブスク再生回数に基づくストリーミング指標と動画再生指標(米チャートにおけるストリーミング指標はこの2つを指します)がチャート構成比のおよそ7割を占めています。

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米で「Dynamite」を機にBTSの認知度が高まれば、今後はダウンロードに頼らずともヒットに至る可能性は出てきたと言えそうです。

もうひとつは、先述したように「Dynamite」はダウンロードセールスにおいてBTSのホームページを経由したものが非常に多いだろうということ。昨日のHot 100速報でも記しましたが、BTSは次週のデジタル2指標集計開始日に合わせて「Dynamite」の4つのリミックスを新たに投入してきました。おそらくはHot 100首位返り咲き等再浮上を目的とした施策と思われますが、個人的にはこの点が引っかかり、米ビルボードソングスチャートのチャートポリシー変更もあるのではと考えています。

上記ブログエントリーでは、Hot 100においてリミックスを合算から切り離す方向にシフトさせるのではと想像したのですが、さすがにそれでは1つのみのリミックスを投入する曲についても同様の除外措置を受けてしまいます。となると、歌手のホームページにおける売上を加算させないという流れになるのではと想像した次第。仮にその方向でチャートポリシー変更に至るとすれば、ダウンロード収入が減るとして歌手側が反対するとは思うものの、Hot 100は新設グローバルチャート同様にダウンロードをiTunes Store等デジタルプラットフォームでの売上のみ加算とするとしたほうが、施策をメインとしたリミックス投入につながりにくくなるのではと考えます。