ディスコの伝説的プロデューサー/アーティスト、ジョルジオ・モロダー30年ぶりとなるリーダー作が春にもリリース…ということで、モロダーが参加したダフト・パンク『Random Access Memories』(2013)以降、ディスコティークは現在もムーブメントの真っ只中にあるといえるでしょう。昨年もたくさんの好曲が誕生し、たとえばその流れを組んだ槇原敬之「Fall」や松井寛 feat. 宇多丸「Universe of Love」などは昨年の私的邦楽ベストに挙げています。
で、一昨年から昨年にかけてリリースされた楽曲の中で、未だ(その楽曲が収録された)アルバム発売の兆しがないものがあるので紹介します。つまりは、【アルバムのお蔵入りはやめて!】という個人的な意思表示。アメリカの場合は先行シングルの売上が乏しいとアルバム発売に至れないことが多く、どんなに有名な歌い手でもお蔵入りに陥りかねないことがあるのですが、日本でもそれに似た状況が生まれてきたなあと。
・DJ Cassidy feat. Robin Thicke & Jessie J「Calling All Hearts」(2014)
ジェイ・Z&ビヨンセ夫妻の結婚式などで回したセレブリティDJ、初のリーダー作『Paradise Royale』からの先行シングル。一昨年の大ヒット曲「Blurred Lines」が全米チャートを制したロビン・シック(そういえば「Blurred Lines」もマーヴィン・ゲイ的アプローチのディスコティークでしたね。似過ぎてる!とマーヴィン・ゲイの遺族側に訴えられ審理へ…と泥沼化していますが)、そしてアリアナ・グランデやニッキー・ミナージュと共に「Bang Bang」にて昨夏全米3位を獲得したジェシー・Jを客演に迎え、理屈抜きで気持ち良いディスコティークを作り上げたのですが…。
蓋を開けてみると、全英では最高位6位と検討するもののアメリカではチャートインの記録はなく。続けてリリースしたのがR&B界の帝王、R・ケリーを招いた「Make The World Go Round」でしたが、こちらに至っては英米ともにチャートインせずじまい。おそらくはそれを理由に『Paradise Royale』はお蔵入り直前となっていると思われます。
ところが、アルバムの参加メンバーが実に豪華なのです。これは聴き逃せない面子です。
デビュー作にR.ケリー(R. Kelly)、アッシャー(Usher)、メアリー・J.ブライジ(Mary J. Blige)、ニーヨ(Ne-Yo)、シー・ロー(CeeLo Green)、ジョン・レジェンド(John Legend)、ナイル・ロジャース(Nile Rodgers)など豪華な面々が参加予定であることが明らかになった。
(中略)
このアルバムは「1978年から1982年あたりまでの踊れるR&B」をテーマにしているとのことで、さらに、ナイル・ロジャースを始めとして、アース・ウィンド&ファイアー(Earth, Wind & Fire)のフィリップ・ベイリー(Phillip Bailey)、ヴァーディン・ホワイト(Verdine White)、ラリー・ダン(Larry Dunn)や、クール&ザ・ギャング(Kool & The Gang)のロバート“クール”ベル(Robert “Kool” Bell)ら、また、ワーワー・ワトソン(Wah Wah Watson)、レイ・パーカー・ジュニア(Ray Parker, Jr.)、フレディ・ワシントン(Freddie Washington)、マーカス・ミラー(Marcus Miller)、ンドゥグ・チャンクラー(Ndugu Chancler)、ジョン“JR”ロビンソン(John “JR” Robinson)、パトリース・ラッシェン(Patrice Rushen)といった錚々たるベテラン勢も加わり、ホーンやストリングスのアレンジは大御所ジェリー・ヘイ(Jerry Hey)が担当と、実に豪華絢爛。そのためか、このアルバム制作のドキュメンタリー映像も準備中なのだとか。
・R.ケリー、アッシャー、メアリー・J、ニーヨ、ナイル・ロジャースらがDJキャシディのデビュー作に参加へ | bmr (2014年1月19日付)より
こうなると、興味が無いとして無視するほうが無理だという話。なんとか状況が好転してくれるといいのですが。
・Serena「CHANGE!!」(2013)
本人出演のミュージックビデオが短尺なので、Fishboy出演のこちらを。フル動画がないのはなんだか勿体無いですね(これは邦楽全体の問題でもあるけれども)。
『ショムニ2013』(フジテレビ系)エンディングテーマ、「ピンクの弾丸」でデビューしたSerenaさんのセカンドシングル。前作に続きアレンジに先述した松井寛さんを起用…という段階でピンと来た人は多いはず。松井寛さんが近年手掛ける東京女子流を想起させるような、”黒さ”が漂うディスコティークなのです(東京女子流よりは音は軽めで前向きなメッセージ性があります)。「ピンクの弾丸」では松井寛さんが作曲も担当していましたが、「CHANGE!!」ではアレンジに専念、作曲はコモリタミノルさんが担当という、これはこれで実に豪華な布陣、なのですが。
タイアップ先のドラマ、『夫のカノジョ』(TBS系)が極度の低視聴率により打ち切りになり、それもあってかセールスチャート最高145位(「ピンクの弾丸」は39位)と低調に。セールスだけが全てではないと思いつつも、この数字には驚かされました。
この「CHANGE!!」のカップリング曲、「You & I」も実に注目すべきナンバーでして、まるでMISIA「THE GLORY DAY」を彷彿とさせるゴスペルライクな作品だと思っていたら、「THE~」同様に鷺巣詩郎さんによるアレンジなんですね。そういえば、松井寛さんは「つつみ込むように…」のアレンジを手掛けてたわけで、事務所やレコード会社側は彼女を”MISIA的”な歌手に育てていこうとしたのかな、と。声はソウルっぽくないけど、堂々とした歌いっぷりには将来性を感じました。
昨年春にダブルAサイドのサードシングルをリリース。そのうち一曲はアニメ『宇宙兄弟』(読売テレビ/日本テレビ系)主題歌になったにもかかわらずセールスチャート132位という結果に。その後の動きがないなあと思って調べてみると…。
突然ですが、皆様にお知らせがあります。
私、Serenaは
この夏から暫く、ニューヨークへ音楽の勉強に行ってきます!!
・お知らせ|SerenaオフィシャルブログPowered by Ameba (2014年6月27日付)より
既に半年以上前に、留学のため(リリースとしての)音楽活動を休止していたんですね。残念です。
将来が楽しみな歌い手だったので、留学後は歌手活動を再開してほしいところ。以前よりディスコティークやR&Bが間違いなく似合うようになると思います。いやそれ以前にそもそもリリースを再開出来るのか…そして出来たとして、留学”以前”の作品群をアルバムの形で聴くことが出来るのかは全くもって不透明なわけで。シングルはレンタルでも比較的早く中古販売等に回され手に入れられなくなりがちなので(レンタルの棚に余裕がない店舗は特に)、アルバムというまとまった形で出して欲しい、そう願っています。