イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

2020年上半期、私的邦楽ベストソングスを選びました

今年個人的に気に入った曲でプレイリストを作成しました。

<2020年上半期私的邦楽ベスト (2020年7月3日作成)>

◯ 作成時のルール

 ・昨年12月から今年6月にかけて発売されたシングル、またはアルバムからのリード曲、またはミュージックビデオが制作された曲を主体に選出(ミュージックビデオ未制作ながらアルバムのリード曲としてラジオオンエアされた作品を一部含む)

 ・1組の歌手につき主演曲は1曲のみ。客演曲はその限りでない

 ・80分弱に収まるように編集。歌手名の前の数字はプレイリストの流れを考慮した曲順であり順位ではない

昨年は上半期と下半期を分けず年間を通してまとめましたが、今年サブスクサービスをSpotifyに切り替えたことで、その軽さや日々更新もしくは追加される新曲プレイリストを毎日のように追いかけるようになりました。今年1月から毎月、その月の私的ベストを洋楽も含む形で選んでいますが、そこで選んだ曲を中心に作成しました。

では上半期ベストを紹介。曲名の隣に(●月 ■位)とあるのはその月のベストソングに選んでいますので、詳細は下記リンク先からご参照ください。

 

01. KinKi Kids「KANZAI BOYA」

02. Official髭男dism「I LOVE...」(1月 5位)

03. SASUKE「Part. 2」(3月 9位)

04. 竹内アンナ「I My Me Myself」(2月 5位)

05. 香取慎吾 feat. WONK「Metropolis」(1月 4位)

06. たなかいも。「いしやきいもの歌」(6月 10位)

07. chelmico「Limit」(2月 4位)

08. 平井堅 feat.あいみょん「怪物さん」(3月 6位)

09. CHARA + YUKI「楽しい蹴伸び」(2月 1位)

10. 三浦透子「おちつけ」(4月 次点)

11. 木梨憲武麻布十番物語」

12. 三浦大知「COLORLESS」

13. 宇多田ヒカル「誰にも言わない」(5月 2位)

14. 泉川貴広 feat. Jermaine Holmes「Life Is Your Thoughts」(3月 3位)

15. millennium parade x ghost in the shell: SAC_2045「Fly with me」(4月 1位)

16. 藤井風「罪の香り」(5月 1位)

17. NakamuraEmi「東京タワー」(1月 1位)

18. あいみょん「裸の心」

19. Omoinotake「夏の幻」(6月 2位)

 

これまでの私的トップ10ソングスに選出しなかった曲について解説。木梨憲武麻布十番物語」および三浦大知「COLORLESS」は昨年12月の作品。木梨憲武さんは昨年バイラルヒットが複数生まれたタイミングで言及しています。

三浦大知「COLORLESS」の攻めの音、自分への自信と受け手への問いかけは最新曲「Yours」にも通じるもの。エンターテイナーが社会に向けて問題提起することが他国より極めて乏しく、表明した者がバッシングすら受ける状況にあって、三浦大知さんの姿勢は至極前向き、軽やかにでも確実にエンターテイナーとしての手本たる役割を果たしているように思います。

KinKi Kids「KANZAI BOYA」はサブスク未解禁ゆえ私的トップ10ソングスでは紹介できませんでしたが、ENDRECHERI流ファンクネスと恩師への愛ゆえのパロディが高い次元で融合したもの。パロディにおいては「麻布十番物語」も、そして元ぼくのりりっくのぼうよみことたなかさんによるたなかいも。「いしやきいもの歌」も絶品で、こういう遊び心は大好きです。

三浦透子「おちつけ」は4月のトップ10ソングスにおいて次点だったのですが、選出後もかなり聴きました。J-WAVEチャートでトップ3入りを果たしたのも大きかったですね。曲提供とプロデュースを担当したTENDREさんはCHARA + YUKI「楽しい蹴伸び」も手掛けており、今後ますます注目したい存在です。

そして「裸の心」の正統派バラードとしての隙のなさ、あいみょんさんのボーカルの説得力に惹かれました。この曲についてはロングヒットの理由を以前分析しましたが、最新のビルボードジャパンソングスチャートで集計を再開したカラオケ指標において36位という高位置にいることは、ロングヒットのための施策の賜物と言えるでしょう。

 

サブスク未解禁の「KANZAI BOYA」を除き、プレイリストにまとめていますので是非。

下半期も素晴らしい曲に出逢えることを心から願っています。

トラヴィス・スコット×フォートナイトで話題となったバーチャルライブ、日本の歌手で誰が最初に開催するか

Mrs. GREEN APPLE、ベストアルバム『5』が8日水曜にリリース。その訴求方法が面白いので紹介。

昨日公開された「WanteD! WanteD!」の新たなビデオには元欅坂46平手友梨奈さんが登場。公開直後、Twitterでは平手さんがトレンド入りを果たしています。

そしてその前日にはゲームとのコラボレーションも発表。それも『あつまれ どうぶつの森』と組んだのですから凄いことです。

今月1日には既にゲーム内でイベントが開催、『抽選で選ばれた30名のファンが「ミセス島」を訪問し、バンドの歴史を堪能した』とのこと(『』内は上記記事より)。近いうちに、ゲーム内で歌手がライブを披露しユーザーが楽しむというイベントが行われるかもしれない…そう思った方は少なくないかもしれません。

 

ゲーム内のライブは既に開催されています。『フォートナイト』でのバーチャルライブは大きな話題を集めました。

ラヴィス・スコットのライブで披露された、キッド・カディとのザ・スコッツ名義による「The Scotts」は、フィジカル施策も相俟って初登場で米ビルボードソングスチャートを制覇。翌週早くもトップ10落ちしたことからこの曲が社会的ヒットに至れたかと言われれば断言しかねるのですが、5月9日付ソングスチャートでは「The Scotts」ほかに2曲、トラヴィス・スコットの曲が50位以内に再登場し、ライブの影響力の大きさが実感できます。またフォートナイト内で初めてライブを開催したマシュメロも結果を残しています。

不特定多数のユーザーが同時参加できる環境が整っているゲームでバーチャルライブを披露すると音楽チャートでも結果がついてくるという事象が生まれました。トラヴィス・スコットのライブにおいては同時接続者が1230万に達しており、ゲーム業界にとっても音楽業界にとっても、バーチャルライブが有益なイベントとなったことは間違いないでしょう。

 

Mrs. GREEN APPLEの『あつまれ どうぶつの森』コラボではバーチャルライブはありませんが、日本の歌手でどなたが仕掛けてくるかに注目。『全世界で配信開始されたNintendo Switch用ゲーム「ニンジャラ」とのコラボレーションをきっかけに実現した』というこの曲が牽引しそうな気がします(『』内は下記記事より)。

記事では『今後はゲーム内でのコラボレーションも予定されている』と結んでいます。ニンジャラは現段階で既に200万ダウンロードを突破しており、ともすれば大きなうねりを生み出すかもしれませんね。

ビルボードジャパンソングスチャートにカラオケ指標が復活しながら未加算の曲が散見される理由、そして打開策を考える

今週水曜発表の7月6日付ビルボードジャパンソングスチャートからカラオケ指標が集計再開となりました。CHART insightから各指標毎の順位を確認できます。

カラオケ指標でトップ10入りした曲のポイントを前週と比較してみましょう。

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上記の表は、カラオケ指標が集計取り止めとなった4月20日付チャートの分析の際に使用したものを流用しています。

集計取り止めの際はほとんどの曲がポイントを前週から1割以上落としている一方、集計再開のタイミングでは平均1割程度の上昇に。落ち込みよりも戻りの幅が小さいのは、カラオケにまだ完全には人が戻っていないという証拠と言えそうです。

 

さて、このカラオケ指標はストリーミング指標と相性が良いことは以前のブログエントリーで述べましたが、最新週においてストリーミング上位曲のカラオケ指標の順位を見ると、ひとつの疑問が浮かびます。

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最新ソングスチャートにおけるストリーミング指標上位20曲のうち、上記5曲はカラオケ300位未満となっています。これらの曲の本日付でのDAMおよびJOYSOUNDの配信状況をみると、DAMでは空音 feat. kojikoji「Hug」のみが配信され、JOYSOUNDでは「春を告げる」および「Hug」以外が配信されている状況です。そのJOYSOUNDでは瑛人「香水」が、一時は今月5日配信予定と記載されていましたが既に配信が始まった模様。 DAMでも7月7日の配信がアナウンスされました

 

さて、自分は以前カラオケ指標について、このような見方を記しました。

最近はYouTubeTikTok等動画配信からヒットが生まれ、瑛人さんはレコード会社や芸能事務所にも未所属ながらビルボードソングスチャートを制しています。TuneCore Japan等のサービスがデジタル配信を可能にしたことでチャート上昇の後押しになっている一方、カラオケ配信のサポートについてはさほど多くないだろうことについては以前触れています。そのため、カラオケサービス側の自発的な配信、流行を掴むことを望むと書いたのですが、このような見方に対しこのようなリアクションを間接的ながらいただいています。

いただいた言葉を踏まえ、ではカラオケサービスは配信曲をどうやって選定するのかを調べる必要があると考えた次第です。

 

DAMにもJOYSOUNDにも配信曲のリクエスト機能が用意されています。

Q. 配信曲リクエストの選考はどうなっているの?

毎月、リクエスト頂きました楽曲から、以下(一部抜粋)弊社の選考基準によって、いろいろなジャンルから、より多くのお客様にご納得頂ける楽曲配信を目指します。

・音源視聴

・楽曲権利状況

・各媒体の音楽チャート状況

DAMで配信されているアーティスト様の場合はランキング状況(実績)

・その他(各メディア露出状況、アーティストの活動展開、話題性等)

配信曲リクエスト - DAM とも[club DAM.com]より

DAMの配信曲はリクエストも含めてでしょうか、カラオケ最新配信曲一覧が毎週更新されています。一方、JOYSOUNDはリクエスト曲を一部ですが別途一覧化しています。

今年に入ってからの配信決定曲をみると、テレビ番組発のアイドルグループである豆柴の大群「りスタート」や、サブスクでヒットしている神はサイコロを振らない「夜永唄」、ドラマ主題歌の秋山黄色「モノローグ」、TikTokから人気が高まったという点では先駆者的存在と言えるNovelbright「Walking with you」等、チャートでも人気の曲がラインアップ。YOASOBI「夜に駆ける」も2月に配信開始となっています。一覧に添えられたリクエストには熱い思いが込められていることがよく解ります。

 

YouTubeTikTok等動画配信からサブスクに波及するという今のヒットの方程式をなぞった曲がカラオケ配信に比較的時間がかかるだろうことはここから察することができます。一方で先述したように、ビルボードジャパンソングスチャートにおけるカラオケ指標とサブスク再生回数を基にしたストリーミング指標との相性の良さを踏まえれば、リクエストが集まる前にサービス側が自らストリーミングヒットを分析し、配信曲を選ぶことは必要ではないかというのが自分の見方です。無論そうなると、インディペンデントで活動する方のヒット曲についての権利関係をどうするかのガイドラインも構築しないといけないでしょうし、この点についてもTuneCore Japan等サービス側がサポートする必要があるのでは、とも考えます。

 

実際、今のヒットの方程式からはさらなるヒットが生まれつつあります。

Tani Yuuki「Myra」は7月2日付LINE MUSICデイリーチャートで2位に登場。LINE MUSICがApple MusicやSpotify以上にTikTok等の流行を反映することは以前各サブスクサービス比較の際にお伝えしましたが、「Myra」でもそれが証明したと言えそうです。そしてLINE MUSICを主に利用する層がカラオケに行った際、"歌ってみた"で話題の曲を歌いたいと思うのではないでしょうか。

 

ならば、カラオケサービスはコストはかかれども、ストリーミング指標上位曲や勢いを見せる曲について、いち早く配信を実行することが重要だと考えます。他社との差別化はもとより、"歌ってみた"をやってみたいという需要に応えるため、そしてカラオケに飽きられないようにするために必要だと思うのです。

7月6日付ビルボードジャパンソングスチャートから見えてくる、ジャニーズ事務所所属歌手のポイント"上振れ"と"漏れ"

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点を紹介します。

6月22~28日を集計期間とする7月6日付ビルボードジャパンソングスチャート、前週首位のKinKi Kids「KANZAI BOYA」から入れ替わり、ジャニーズWEST「証拠」がシングルCDセールスを武器に総合チャートを制しました。

 

さて以前、今週のチャートにおいてはジャニーズ事務所所属歌手が大挙ランクインすると予想しました。

ジャニーズWEST「証拠」の首位登場は予想出来ましたが、獲得ポイントは想像以上でした。一方でその他の歌手の作品においても予想外の出来事が多かったので、その内容を記載するとともに、ポイントが予想を下回った曲については自分なりに改善策を書き記してみます。

 

ジャニーズWEST「証拠」はなぜ予想以上にポイントを獲得出来たのか

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「証拠」は2018年以降のシングルCD表題曲で最大となる27852ポイントを獲得。前作「Big Shot!!」より1万近く上乗せしています。この「証拠」については気になる点が。

ルックアップについてはビルボードジャパンソングスチャートの予想も行うあささんが『過去作比高騰で上振れ』とつぶやいており、そのツイートを機にやり取りさせていただきました。レンタルを遅らせた理由については推測の域は出ませんが、Twenty★Twenty「smile」や嵐「Face Down : Reborn」とリリースがバッティングすることで不利になりかねないと見越したゆえではないかと考えます。これがレンタルで済まそうとした方を所有に移行させた一因と考えられますが、ルックアップの上振れは他にも理由がありそうです。

 

② Twenty★Twenty「smile」、もうひとつの接触指標の用意が必要だったのでは

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8月のCDリリースに先立って、ジャニーズ事務所所属の15組によるユニット、Twenty★Twentyのチャリティソング「smile」が22日月曜に配信リリース。集計期間をフルに活用したことでトップ5入りを果たしました。この曲、週前半3日間と集計期間全体での2指標の動向をみると。

・ダウンロード 週前半3日間 55970DL・1位(先ヨミ記事より)

       →集計期間全体 68971DL・1位

・ストリーミング 週前半3日間 97.3万回再生・19位(先ヨミ記事より)

        →集計期間全体 1817773回再生・32位

※集計期間全体の数値はこちらの記事を参照

所有指標であるダウンロードは後半4日間で13000程度にとどまっていますが、これはCDセールスにおいてもフラゲ日や発売日当日以降下がる傾向があり、想定内だったかもしれません。一方で接触指標のストリーミングは前半3日と後半4日でほぼ同等の再生回数となっています。解禁初週に接触指標で高位置にいるのは、ジャニーズ事務所所属歌手のデジタル解禁に注目が集まっている証拠と言えます。

ストリーミングが好調ならば、もうひとつの接触指標である動画再生もある程度の数値が見込めたのではないでしょうか。CD同梱の映像盤に収録されるミュージックビデオはまだ完成していないかもしれませんが、たとえばリリックビデオを公開することは出来たかもしれません。オーディオのみのビデオでもよいのでどれかひとつでも公式動画をアップしていたならば、1万ポイント獲得も夢ではなかったと思うのです。

気掛かりなのは、所有指標が次週以降失速すれば、ストリーミングが勢いを維持出来たとしてもCDリリース前に総合チャートで勢いが衰えかねないこと。何かしら次の策を練る必要があると感じています。

 

KinKi Kids「KANZAI BOYA」は実験的にデジタル解禁してよかったのでは

前週首位のKinKi Kids「KANZAI BOYA」は57位に急落してしまいました。

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50位未満はポイント未表示ですが今週の50位が1804ポイントであることを踏まえれば、「KANZAI BOYA」が50位のポイントに近いと仮定してもCDセールス加算2週目のポイント前週比は8.9%。ここ3作のシングルCD表題曲における11~14%台から大きく落ち込んでいます。

「KANZAI BOYA」のCDリリースと同じ6月17日、堂本剛さんによるプロジェクトのENDRECHERIが過去のファンク作をデジタル解禁しています。今回のKinKi KidsがENDRECHERI的アプローチを施したならば、「KANZAI BOYA」に限り実験的にデジタルで解禁してもよかったのではと思うのです。ENDRECHERI流ファンクネスを気に入った方が「KANZAI BOYA」を聴く流れが生まれるのではないかと(逆もまた然り)。その動きを作れば双方の評価がより高まり、今週の急落を招かずに済んだと言えるかもしれません。

 

④ 嵐「Face Down : Reborn」、レディー・ガガとの関連性を訴求してほしかった

②でリリックビデオについて触れましたが、嵐のRebornシリーズ最新作である「Face Down : Reborn」にはきちんと用意されています。

リリースは6月26日金曜。金曜リリースはRebornシリーズでは通常シフトですが、「A-RA-SHI」が8558ポイント、「Love so sweet」が4997ポイントで初登場を果たした一方、「Face Down」は3477ポイントと低く、初登場20位にとどまっています。

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この「Face Down : Reborn」を手掛けたのはブラッドポップ。レディー・ガガの最新アルバム『Chromatica』に大きく関与し、アリアナ・グランデとの「Rain On Me」は未だ日本のラジオでも大量OAされ、ビルボードジャパンソングスチャートにおけるラジオエアプレイ指標では5週連続で2位以内をキープしています。ブラッドポップが邦楽を手掛けたというのは大きなトピックと言えるはずです。

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嵐と(プロデュースしたブラッドポップが手掛けた)レディー・ガガとの関連性については、Twitterにて"嵐 Face Down レディー・ガガ"で検索してもほとんど出て来ません。朝の情報番組やワイドショーでほぼ扱われなかったものと推測されることから、「Face Down : Reborn」の訴求が出来ていたか、音楽業界における一大トピックが認知されていないのではという疑問を抱かずにはいられません。レディー・ガガファンを「Face Down : Reborn」の接触に誘致する(無論逆もまた然り)という流れがさほど生まれなかった気がします。

また気になるのは動画再生指標が300位以内に入っていないこと。再生回数が純粋に300位に満たなかったかもしれませんが、次の⑤の理由と同じであれば早急な処置が必要です。

 

SixTONES「NAVIGATOR」、動画のISRC付番を今一度確認してほしい

7月22日にCDリリースとなるSixTONES「NAVIGATOR」。ショートバージョンながらミュージックビデオが6月25日木曜夜に解禁されています。

再生回数は日曜朝までに200万を突破しているのですが、最新チャートにおいて「NAVIGATOR」は前週から11ランクダウンし59位に後退。そして動画再生指標は加算されていないのです。

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ビルボードジャパンソングスチャートの動画再生指標において加算対象となる動画は、国際標準レコーディングコード(ISRC)が付番されたもの。実は前作「Imitation Rain」でも動画がアップされた後、この指標がしばらくの間未加算だったことを思い出した次第。

となると、動画再生指標についての意識付けを徹底することが必要だと思うのです。ISRCは後からでも付番可能ですので、早急の実施を希望します。

 

 

ジャニーズWEST「証拠」を除いては提案の形となりましたが、実に勿体ない獲得ポイント"漏れ"が目立ったゆえ。Twenty★Twenty「smile」やENDRECHERIの作品群からジャニーズ事務所のデジタルへの前向きさを感じていたため、漏れをなくしより訴求出来る体制を築き上げてほしいと切に願います。

2020年6月の私的トップ10ソングス+α、選びました

1月からはじめた【私的トップ10ソングス+α】企画。前の月にリリースされた曲を中心に、しかしその縛りは出来る限り緩くした上で選んでみました。ミュージックビデオ等動画がない曲は巻末のプレイリスト(Spotify)でチェックしてみてください。過去の私的トップ10ソングスについてはこちらをご参照ください。

 

 

10位 たなかいも。「いしやきいもの歌」

4月に配信、5月にCD化。つい先日知って驚いた曲。元"ぼくのりりっくのぼうよみ"ことたなかさんが石焼き芋を売り出したという話は耳にしていたのですが、そのテーマソング的位置づけの曲が素晴らしいのです(昨年にはライブを行い、今年元日リリースの香取慎吾さんのアルバムにも参加しているので完全に音楽を止めたわけではないんですよね)。香取さんのアルバムで好相性をみせたWONKのメロディやコードを思わせるお洒落な曲でありながら、石焼き芋をフィーチャーした歌詞といういい意味でのミスマッチにハマりました。

 

9位 GOOD BYE APRIL「人魚の鱗」

ズルすぎます、アレンジや曲進行がANRI「悲しみがとまらない」なんですから。「人魚の鱗」から続けて聴いたり、この曲をバックトラックにして「悲しみがとまらない」を歌ってみてひとりで盛り上がってしまいました。上記動画はライブ配信の模様ですが、この曲に合わせてサングラスを装着したボーカルの倉品さんに対し、コメント欄に"オメガトライブ"が散見されるのも納得。

 

8位 テヤナ・テイラー feat. イマン「Wake Up Love」

カニエ・ウェストのレーベルから登場したR&B歌手による3枚目のアルバム『The Album』に収録。ブラック(・アイヴォリー)「808」を引用しミッシー・エリオット&フューチャーをフィーチャーした「Boomin」も素敵ですが(90年代後半のティンバランドサウンドをまぶすのも最高)、楽曲的にはこちらがお勧め。というかアルバムがかなり素晴らしいとのことで、じっくり聴き込もうと思います。

 

7位 ハルカトミユキ「最愛の不要品」

彼女たちの音に触れるのははじめてですが、かなり惹き込まれました。声質的にBONNIE PINKさんっぽい印象もあり、m-floと組んだ「LLove Song」の"陰"的な感じと言えば通じるでしょうか。

 

6位 YOHLU「FLIGHT LIGHT」

福岡を拠点に活動する3人組、YOHLUによる関口シンゴさんのカバー。纏う空気はまさしく都会の夜。COLTECOもそうですが、福岡にはソウルフルなユニットが多いのでは? 大好きな街なのでまた行ってみたくなりました。

 

5位 ジェシー・ウェア「What's Your Pleasure?」

ニューアルバムのタイトルトラックは、カイリー・ミノーグ「Can't Get You Out Of My Head」の2020年版といった趣き。それにしても上半期で3曲目のエントリーなのでどれらけジェシー・ウェアのことが好きなのか自分、と思ったのですが、アルバムは米ピッチフォークで10点満点中8.3の高評価を得ているので、今作でさらに化ける可能性が。

 

4位 ケンジー feat. シーア「Exhale」

先月16歳を迎えたばかりというダンサーで歌手、女優としても活躍するマッケンジージーグラーによるダンスナンバー。シーアの助太刀も頼もしいのですが、サビのシンセの大胆な音使いが格好悪さと紙一重の格好良さ。しかも後半にはジャスティン・ティンバーレイク「Like I Love You」を模した音が施されるのもツボ。

 

3位 三浦大知「Yours」

こちらについては以前記載しました三浦大知さんによる攻めの曲といえば昨年末の「COLORLESS」も見事でしたね。あとは、よりインパクトのあるリリース戦略をスタッフサイドにお願いしたいところです。

 

2位 Omoinotake「夏の幻」

ミュージックビデオ未制作につきタイアップ先のドラマの予告動画を貼付。音楽ジャーナリストの柴那典さんが今年リリースのミニアルバム『モラトリアム』を称賛していたことを機に彼らを強く意識するようになったのですが、こんなに情感たっぷりの、それでいてやさしい夜風のような音を奏でてくれるとは。夏の恋歌に新たな傑作が。

 

1位 H.E.R.「I Can't Breathe」

Black Lives Matter運動はアメリカのみならず世界中に波及。日本における差別の存在も可視化し、差別をなくすためにどうするかを自発的に考えるきっかけになっています。この運動からは、ビヨンセやアンダーソン・パーク、デイトリック・ハッドン等様々な曲が生まれていますが、個人的に最も刺さったのがH.E.R.のこの曲。白人警官の差別の犠牲になったジョージ・フロイドの言葉を用いているのですが、個人的に最も刺さったのがH.E.R.のブレス音。動画の52秒のところで聴こえるのですが、まるで銃を撃つ準備(コッキング)に聞こえてしまい、命の重みをより強く感じてしまうのです。

 

 

以下、次点として10曲。

・君島大空と塩塚モエカ「サーカスナイト」

paris match「Mr. Deckard」

・Shin Sakiura feat. AAAMYYY「NIGHT RUNNING」

・ブルーノ・メジャー「I'll Sleep When I'm Older」

・デイム D.O.L.L.A feat. ラファエル・サディーク「GOAT Spirit」

ジョン・レジェンド feat. ジェネイ・アイコ「U Move, I Move」

・キアナ・レデ「Dear Mr. President」

・リアン・ラ・ハヴァス「Weird Fishes」

・ルーテン「Control」

・MOMOLAND「Starry Night」

Black Lives Matter運動関連ではキアナ・レデ「Dear Mr. President」もランクイン。いや、関連曲は沢山ありますので、聴き込まないといけないと強く感じています。またMOMOLAND「Starry Night」はK-Popにシティポップが極々自然に溶け込み、それでいてきちんときらびやかでもあるのが見事だと思うのです。

 

Spotifyのプレイリストはこちらに。

今月も素晴らしい音楽に出逢えることを願っています。

「Rockstar」が首位返り咲き、新鋭が好調なチャートアクションをみせる7月4日付米ビルボードソングスチャート…一方で「Trollz」の急落をどう捉えるか

ビルボードのソングスチャートをチェック。現地時間の6月29日月曜に発表された7月4日付最新ソングスチャート、ダベイビー feat. ロディ・リッチ「Rockstar」が返り咲き、通算3週目の首位を獲得しました。

ストリーミングは前週比5%ダウンの3790万で同指標6週目の首位、ダウンロードは同7%ダウンの12000(同指標2位)、ラジオエアプレイは同27%アップの3970万(同指標12位)を記録。上記ミュージックビデオが26日金曜に公開されたこと、さらに28日日曜に開催されたBETアワードでもセンセーショナルなパフォーマンスを行ったことで、次週はストリーミングを中心にさらなる伸びを示すかもしれません。下記パフォーマンス動画のサムネイルをみると、彼らが何を訴えているかがよく解ります。

"Black Lives Matter"にちなんだ動きでは、ビヨンセ「Black Parade」が37位に初登場。これでビヨンセにとって通算40曲目となるトップ40入り達成です。ダウンロードは18000を獲得し、この指標を制しています。

なお、ラジオエアプレイのトップはザ・ウィークエンド「Blinding Lights」(総合3位)で前週比3%アップの7680万を獲得。同指標12週目の首位となっています。

 

新鋭の伸びが目立つチャートとなった今週。TikTok人気を受けてトップ10入りしたセイント・ジョン「Roses」は4ランクアップし4位へ。ストリーミングおよびダウンロードは共に前週比3%ダウンするものの、ラジオエアプレイは同19%アップの4190万を獲得し同指標11位に。

8位および9位は共に初のトップ10入り。しかも、ミュージックビデオのサムネイルにあるレモネードのパックで解るように、ヒップホップのプラットフォームであるリリカル・レモネードが制作。ジュース・ワールド「Lucid Dreams」(2018 2位)のミュージックビデオで一躍時の人となったコール・ベネットが手掛けている作品群です。

ジャック・ハーロウ「Whats Poppin」が10ランクアップし8位へ。ストリーミングは前週比21%アップの1980万(同指標5位)、ダウンロードは同92%アップの5000(同指標23位)、ラジオエアプレイは同23%アップの2600万(同指標29位)と全指標が2桁成長を達成。これは6月24日水曜にこの曲のリミックスが登場したことによるもので、リミックスにはダベイビー、トリー・レーンズそしてリル・ウェインが参加。ストリーミングおよびダウンロードの集計期間後半2日分(ラジオエアプレイの同5日分)にリミックスも加算されたことが、大きな伸びに繋がっています。

 

9位にはリル・モジー「Blueberry Faygo」が前週から2ランクアップ。ストリーミングは前週比1%ダウンの1760万(同指標11位)、ダウンロードは同6%アップの3000(同指標50位未満)、ラジオエアプレイは同14%アップの3650万(同指標13位)とこちらも好調。「Blueberry Faygo」では1990年に最高10位を記録したジョニー・ギル「My, My, My」がサンプリングされています。「My, My, My」は公式ビデオがないため、ライブ映像でチェックしてみてください。

 

新鋭が活躍する一方、もはや中堅の域に入ったといえるポスト・マローンは「Circles」が10位にカムバックを果たし、史上最長となるトップ10入り週数を39週に伸ばしています。

 

最新のトップ10はこちら。

 
 
 
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#Hot100 (chart dated July 4, 2020)

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[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (2位) ダベイビー feat. ロディ・リッチ「Rockstar」

2位 (4位) ミーガン・ジー・スタリオン feat. ビヨンセ「Savage」

3位 (5位) ザ・ウィークエンド「Blinding Lights」

4位 (8位) セイント・ジョン「Roses」 

5位 (7位) ジャスティン・ビーバー feat. クエイヴォ「Intentions」

6位 (6位) ドージャ・キャット「Say So」

7位 (3位) リル・ベイビー「The Bigger Picture」

8位 (18位) ジャック・ハーロウ「Whats Poppin」

9位 (11位) リル・モジー「Blueberry Faygo」

10位 (13位) ポスト・マローン「Circles」

 

さて、前週初登場で首位を獲得していたシックスナイン & ニッキー・ミナージュ「Trollz」は今週、34位に急落しています。前週初登場で首位を獲得した際のブログエントリーにおける表題に回答するならば、真の社会的ヒットとは言えないというのが厳しくも私見です。

前週も触れましたが、YouTubeをブログにきちんと貼り付けることが出来ない、且つYouTubeでしか観られない仕組みにも違和感を覚えています。「Trollz」がストリーミングのうちサブスクでは順位が高くなく、YouTubeが強すぎるというバランスにも疑問を抱くのは自分だけではないでしょう。

「Trollz」はストリーミングが前週比62%ダウンの1380万(同指標18位)、ダウンロードが同92%ダウンの9000(同指標7位)、ラジオエアプレイは同97%アップするも230万(同指標50位未満)。ダウンロードの急落は前週のフィジカル施策の反動と言えますが、前週3位に初登場したリル・ベイビー「The Bigger Picture」が7位にとどまったのとは対象的な動きです。

首位獲得曲の大幅ダウンといえば、昨年12月21日付でザ・ウィークエンド「Heartless」が17位に急落し記録を更新したばかりでした。こちらもフィジカル施策の反動が表れた形です。

その「Heartless」と入れ替わる形で首位を獲得したマライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You (邦題:恋人たちのクリスマス)」は3週間その座に就いた後、1月11日付で急落、しかも100位圏外へと消えてしまいました。実際、首位獲得曲における大幅ダウンの記録保持曲はこちらになります。

しかしながらこれはやむを得ないこと。同週はクリスマスが過ぎたことでチャートからクリスマスソングが一掃されているのです。マライア・キャリーはこの記録に対してこんなコメントを残しています。

「Trollz」は、首位獲得曲の大幅ダウン記録では史上2位となったわけですが、マライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You」とはその意味合いが異なるのです。このような記録を達成し、今後ラジオエアプレイが上昇するなどして再浮上するということがないならば、果たして「Trollz」は社会的ヒット曲と言えるでしょうか。1位を目標にすることは理解出来ても、そのために超短期的な戦略を施し、且つ目立つため等を目的として平然と他者非難を行うこと(それも米ビルボードが不正を行ったという糾弾すら辞さない)を是とするシックスナインのやり方には閉口するというのが率直な私見です。

ビルボードには、フィジカル施策に特化しチャートを急上昇しながらその効果が切れると急落する曲が今後乱発されないよう、チャートポリシーの見直しを行って欲しい、少なくとも議論して欲しいと強く願います。

これからはインストゥルメンタルバージョンの時代? インスト版のリリースが増えていくだろう理由を考える

Official髭男dismが昨年の大ヒットアルバム『Traveler』のインストゥルメンタルバージョン(以下、インスト版)を配信リリースしました。

このリリースから半日後、強力なタイアップ曲3曲を含む『HELLO EP』を8月5日にリリースすることをアナウンスしています。

次作の発売までにインスト版を聴いて待っていてほしいという思いもリリースの目的としてあるのかもしれませんが、これからはインスト版の登場がムーブメントになっていくではないか?と個人的には感じています。

 

最近のインスト版のリリースは『Traveler』に限りません。さかいゆうさんが今月リリースしたシングル「Soul Rain」には、3月発売のアルバム『Touch The World』全曲のインスト版が同梱されています。

また4月にアルバム『シン・スチャダラ大作戦』をリリースしたスチャダラパーは、3種類全てに代表曲のインスト版を同梱。和楽器、オルゴールおよびボサノヴァバージョンにアレンジが施されており上記2作品とは傾向が異なりますが、ファンにはたまらない作品かもしれません。

 

このインスト版のリリースからは、歌手側のこだわりが感じられます。

『楽器のプレイを楽しむもよし!』といえば、近年は『関ジャム 完全燃SHOW』の影響で楽器のフレーズにスポットが当たることが増えています。Official髭男dism「Pretender」は昨年の年間ベストに選出され、最近の放送ではギタープレイの格好良さも紹介されています。曲を多面的に聴いて楽しむという見方がこの番組で生まれていることから、インスト版の存在はそのこだわりをさらに楽しむ上で有効ではないでしょうか。「Pretender」をはじめとする『Traveler』のこだわりは、インスト版リリースのタイミングで音楽コンシェルジュのふくりゅうさんも解説されています。

 

また、『歌うもよし!』といえば、歌ってみた動画の人気が浮かびます。昨日、ブログ【選択の痕跡】のしょーごさんが”なかなかない”と言っていた(ことを機に互いの見方を意見交換したのですが)、様々な「夜に駆ける」のカバー動画をYOASOBI自身が紹介するというのが面白かったですね。

個人的には香取慎吾さんの歌声の器用さに注目したいところ。『20200101』でも感じていたことですが、さらに強固になりました。

歌ってみた動画といえば、最新のビルボードジャパンソングスチャートでシングルCDセールスが加算され4位に上昇したあいみょん「裸の心」については、TikTok等での歌ってみたキャンペーンの開催がCDリリースまでの熱の持続に繋がったものと考えています。キャンペーンの目的もあってか、「裸の心」のインスト版も配信されています。

歌ってみた動画人気の高まり、”歌ってみた文化”の確立と言っても過言ではない動きは瑛人「香水」の大ヒットにも表れています。このように、関ジャム 完全燃SHOW』がもたらした曲の多面的な見方、そして歌ってみた文化…このふたつの醸成が、インスト版のニーズを高めているものと考えます。

 

Official髭男dismについてはさらに、今年2月にリリースされたライブアルバムが好調に推移しており、こちらにも注目したいところ。

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ライブアルバムはオリジナルアルバム以上にコアなファン向けという特性がありますが、注目は上記チャート推移(CHART insight)においてオレンジの折れ線グラフで表示されるルックアップの動向。CDセールス加算2週目までは、パソコン等にCDを取り込んだ際にインターネットデータベースにアクセスされる回数を示すルックアップにレンタル分が加算されず、レンタル解禁に伴い3週目(解禁から2日分が加算)にルックアップが上昇することは昨日のブログエントリーでも記載しました。その中で、Official髭男dismのライブアルバムはCDセールス加算3週目に急上昇し、以降最新週に至るまでルックアップは20位以内をキープしています。オリジナルアルバムもルックアップが強いことから合わせ借り(そのような言葉はないでしょうが)が行われているだろうことも考えられますが、彼らの演奏能力の高さや生声の素晴らしさを機にライブアルバムにたどり着いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。生の魅力を知るという意味では、ライブアルバムの人気もまた『関ジャム 完全燃SHOW』がもたらした曲の多面的な見方の高まりの結実と言え、インスト版の人気と幾分リンクする気がします。