今週水曜発表の7月6日付ビルボードジャパンソングスチャートからカラオケ指標が集計再開となりました。CHART insightから各指標毎の順位を確認できます。
カラオケ指標でトップ10入りした曲のポイントを前週と比較してみましょう。
上記の表は、カラオケ指標が集計取り止めとなった4月20日付チャートの分析の際に使用したものを流用しています。
集計取り止めの際はほとんどの曲がポイントを前週から1割以上落としている一方、集計再開のタイミングでは平均1割程度の上昇に。落ち込みよりも戻りの幅が小さいのは、カラオケにまだ完全には人が戻っていないという証拠と言えそうです。
さて、このカラオケ指標はストリーミング指標と相性が良いことは以前のブログエントリーで述べましたが、最新週においてストリーミング上位曲のカラオケ指標の順位を見ると、ひとつの疑問が浮かびます。
最新ソングスチャートにおけるストリーミング指標上位20曲のうち、上記5曲はカラオケ300位未満となっています。これらの曲の本日付でのDAMおよびJOYSOUNDの配信状況をみると、DAMでは空音 feat. kojikoji「Hug」のみが配信され、JOYSOUNDでは「春を告げる」および「Hug」以外が配信されている状況です。そのJOYSOUNDでは瑛人「香水」が、一時は今月5日配信予定と記載されていましたが既に配信が始まった模様。 DAMでも7月7日の配信がアナウンスされました。
さて、自分は以前カラオケ指標について、このような見方を記しました。
一方、#瑛人「#香水」はカラオケ未配信であり、明後日発表の7月6日付ビルボードジャパンソングスチャートで集計が再開されるカラオケ指標の加点が見込めません https://t.co/7FxVQenidE TuneCore Japan等サービスからの働きかけもさることながら、カラオケサービスが流行を捉え自発的な配信を望みます
— Kei (@Kei_radio) 2020年6月28日
最近はYouTubeやTikTok等動画配信からヒットが生まれ、瑛人さんはレコード会社や芸能事務所にも未所属ながらビルボードソングスチャートを制しています。TuneCore Japan等のサービスがデジタル配信を可能にしたことでチャート上昇の後押しになっている一方、カラオケ配信のサポートについてはさほど多くないだろうことについては以前触れています。そのため、カラオケサービス側の自発的な配信、流行を掴むことを望むと書いたのですが、このような見方に対しこのようなリアクションを間接的ながらいただいています。
このツイートへのリアクションで、"権利者がどのタイミングで配信するのが最も効果的か見極めているからだ(だからまだ配信していない)"という声がありました。果たしてそうなのでしょうか? https://t.co/QG0aykuMs3
— Kei (@Kei_radio) 2020年7月2日
いただいた言葉を踏まえ、ではカラオケサービスは配信曲をどうやって選定するのかを調べる必要があると考えた次第です。
DAMにもJOYSOUNDにも配信曲のリクエスト機能が用意されています。
Q. 配信曲リクエストの選考はどうなっているの?
毎月、リクエスト頂きました楽曲から、以下(一部抜粋)弊社の選考基準によって、いろいろなジャンルから、より多くのお客様にご納得頂ける楽曲配信を目指します。
・音源視聴
・楽曲権利状況
・各媒体の音楽チャート状況
・DAMで配信されているアーティスト様の場合はランキング状況(実績)
・その他(各メディア露出状況、アーティストの活動展開、話題性等)
DAMの配信曲はリクエストも含めてでしょうか、カラオケ最新配信曲一覧が毎週更新されています。一方、JOYSOUNDはリクエスト曲を一部ですが別途一覧化しています。
今年に入ってからの配信決定曲をみると、テレビ番組発のアイドルグループである豆柴の大群「りスタート」や、サブスクでヒットしている神はサイコロを振らない「夜永唄」、ドラマ主題歌の秋山黄色「モノローグ」、TikTokから人気が高まったという点では先駆者的存在と言えるNovelbright「Walking with you」等、チャートでも人気の曲がラインアップ。YOASOBI「夜に駆ける」も2月に配信開始となっています。一覧に添えられたリクエストには熱い思いが込められていることがよく解ります。
YouTubeやTikTok等動画配信からサブスクに波及するという今のヒットの方程式をなぞった曲がカラオケ配信に比較的時間がかかるだろうことはここから察することができます。一方で先述したように、ビルボードジャパンソングスチャートにおけるカラオケ指標とサブスク再生回数を基にしたストリーミング指標との相性の良さを踏まえれば、リクエストが集まる前にサービス側が自らストリーミングヒットを分析し、配信曲を選ぶことは必要ではないかというのが自分の見方です。無論そうなると、インディペンデントで活動する方のヒット曲についての権利関係をどうするかのガイドラインも構築しないといけないでしょうし、この点についてもTuneCore Japan等サービス側がサポートする必要があるのでは、とも考えます。
実際、今のヒットの方程式からはさらなるヒットが生まれつつあります。
LINE MUSIC、現在のリアルタイムソングスチャート1位がTani Yuuki「Myra」。3月にショートバージョンがYouTubeで配信され https://t.co/9fr34DHOFL 歌ってみた動画やMAD等で人気が拡がり7月2日にTuneCore Japanを介して配信開始。そして件のチャートを制している…凄いことです
— Kei (@Kei_radio) 2020年7月2日
1ヶ月半前に公開されたTani Yuuki「Myra」フルバージョンは現段階で581万再生を記録 https://t.co/QCHIHbes32 コメント欄をみるとTikTokで知った方も多く、サブスクサービスで配信を希望する声も多数。なるほど、動画再生の人気によりTuneCore Japanを介した配信に繋がったと言えそうです
— Kei (@Kei_radio) 2020年7月2日
Tani Yuuki「Myra」は7月2日付LINE MUSICデイリーチャートで2位に登場。LINE MUSICがApple MusicやSpotify以上にTikTok等の流行を反映することは以前各サブスクサービス比較の際にお伝えしましたが、「Myra」でもそれが証明したと言えそうです。そしてLINE MUSICを主に利用する層がカラオケに行った際、"歌ってみた"で話題の曲を歌いたいと思うのではないでしょうか。
ならば、カラオケサービスはコストはかかれども、ストリーミング指標上位曲や勢いを見せる曲について、いち早く配信を実行することが重要だと考えます。他社との差別化はもとより、"歌ってみた"をやってみたいという需要に応えるため、そしてカラオケに飽きられないようにするために必要だと思うのです。