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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【ビルボードジャパン最新動向】4連覇を達成したYOASOBI「アイドル」について、ポイントの伸び率に注目する

5月1~7日を集計期間とする最新5月10日公開分ビルボードジャパンソングチャートはYOASOBI「アイドル」が4週連続で首位を獲得。ポイントをさらに伸ばし、2週連続で2万ポイント超えを果たしました。

 

初登場以降3週連続でポイントが増加、今年度週間最高ポイントを更新したYOASOBI「アイドル」。ダウンロードが伸びたのみならず、記事の以下の部分でも強さを発揮しています。

“JAPAN Hot 100”チャートの加算対象ではないが、「歌ってみた」「踊ってみた」といったユーザーによる動画再生数の増加を測る“Top User Generated Songs”でも、「アイドル」は2週連続で1位となり、対前週25%増の3,668,199再生をマークしている。加えて、カラオケ指標も対前週90%増で9位から3位へとランクアップと、これらからもファンダムが急速に拡大していることが分かり、当週では総合ポイントで2位以下にダブルスコア以上の大差をつけた異次元の強さはまだまだ続きそうだ。

また「アイドル」の強さはTikTokでも継続。

歌ってみた等のユーザー生成コンテンツ(UGC)、TikTokそしてカラオケにおける強さは、前週のブログエントリーで紹介した"活用"の大きさを示すものです。つまりはこの曲がどれだけ大きくヒットしているかを体感している方が多いことが推測されます。

 

さて、気になるのは接触指標群の動向。最初に紹介したビルボードジャパンの記事では『当週も1位となったストリーミング指標(25,433,131再生)や動画指標(8,570,370再生)は前週に比べ若干の微減となった』とあり、実際ストリーミング指標の基となるストリーミング再生回数は前週比98.6%、動画再生回数は同94.9%で推移しています。

一方で、最新チャートの集計期間はゴールデンウイーク期間後半。平日は2日のみとなり、ストリーミング再生回数が伸びる傾向にあります。ストリーミング指標の基となるStreaming Songsチャートではスピッツ「美しい鰭」が前週比111%、Vaundy「怪獣の花唄」が同113%の再生回数を記録する等前週より伸ばした曲が多く、このストリーミングが牽引する形でポイント前週比が伸びた曲が多い状況です。

YOASOBI「アイドル」もポイントを伸ばしましたが、ストリーミング等接触指標群の前週割れがポイント伸び率の高くなさにつながったと考えます。それでもダウンロードやカラオケ指標が伸びたことで最終的にポイントを伸ばした形です。

 

ポイント伸び率の高くなさとして考えられるのは、それまで接触指標が圧倒的に強かったためゴールデンウイークに入り落ち着いてきたという可能性に加え、そのゴールデンウイークにおいては動画の可処分時間が他の娯楽への活用に移行した可能性もあるのではということです。

また、当週はHoneyWorks「可愛くてごめん」シリーズや、18位の新しい学校のリーダーズ「オトナブルー」、14位の有華「Baby you」など、2023年のTikTok定番曲がずらりと並んだ結果となった。

たとえばTikTokのチャートでは「アイドル」の伸び率について記されていないことに加えて、記事内には上記のような文言が登場。定番曲の多さは新陳代謝の多くなさを表しているとも言えるでしょう。そして今年度からスタートしたニコニコ VOCALOID SONGS TOP20における前週からの動きは、あくまで体感と前置きした上で書くならばこれまでになく鈍いものでした。

YOASOBI「アイドル」はUGCにおいて大きく伸びているものの、ともすればゴールデンウイークにおいて動画全体の伸びが鈍化し、それが「アイドル」の接触指標群における微減につながったともいえるかもしれません。

 

(※なお、ニコニコ VOCALOID SONGS TOP20を紹介したツイート、および記事におけるタイトルは誤解を招きかねないものであると危惧します。ゆこぴ「強風オールバック」が"歴代最多首位"とありますが、同曲は連続首位記録において歴代最多(最長)となります。通算で歴代最多の首位獲得週数を記録しているのはKanaria「酔いどれ知らず」の通算6週です。ビルボードジャパンに対し、訂正等を願います。)

 

 

それでもYOASOBI「アイドル」が強いことには変わりありません。その「アイドル」は6月21日にフィジカルリリースされることが昨日アナウンスされました。

加えてこのフィジカルには「アイドル」の英語版(「Idol」)が収録されることも判明。アレンジがオリジナルバージョンと同一ならば「Idol」のデジタルにおけるポイントはビルボードジャパンにおいても「アイドル」に合算されます(なお米ビルボードによるグローバルチャートや米ビルボードソングチャートでは、アレンジ違い等リミックスも合算対象)。ゆえに英語版を先行リリースするか、出すならばいつかについても注目です。

 

YOASOBI「アイドル」の今後の注目点は、まずはゴールデンウイーク終了後の動向が反映される次週5月17日公開分のソングチャートでポイントが前週を上回るか、英語版「Idol」がどのタイミングでデジタルリリースされるか、そしてフィジカルセールス指標が初加算される6月28日公開分で今年度週間最高ポイントを更新するか等、多岐にわたります。

YOASOBI「アイドル」は最新の米ビルボードによるグローバルチャートにおいてGlobal 200で9位、Global Excl. U.S.では4位に入り最高位を更新しています(チャートについてはこちらで紹介)。特に上記ツイートを踏まえれば、YOASOBI側のチャートへの意識が他の歌手より特に高いと感じています。英語版「Idol」を出すタイミングは海外チャートの集計期間初日にあたる金曜が最適と考えますが、運営側がどう判断するかに注目です。