昨日は4月15日付米ビルボードソングチャートの速報をお伝えしました。
速報ではトップ10が発表されますが、前週初登場で首位を獲得したJIMIN「Like Crazy」はその中に入っていませんでした。前週のチャートは下記エントリーをご参照ください。
そして日本時間の昨夜発表されたソングチャートの全容をみると、「Like Crazy」が45位に急落したことが判明。これはクリスマス関連曲を除く首位からの急落記録更新となります。
"Like Crazy" by #Jimin from @BTS_twt breaks the record for biggest fall from #1 on the Billboard Hot 100 in HISTORY as it falls to #45.
— Pop Data (@PopDataMusic) 2023年4月11日
The record was previously held by "willow" by #TaylorSwift when it fell to #38 during Christmas 2020. pic.twitter.com/IHJjGESnoV
この急落については、前週から当週にかけてチャートポリシー(集計方法)が変更になったのではという見方もあります。
米ビルボードソングチャートの予想担当者による4月15日付チャートの予想例を下記に掲載。この段階ではJIMIN「Like Crazy」がトップ10内をキープするだろうとみられていました。
— winston (@WinstonNuo) 2023年4月9日
Billboard Hot 100 Final Predictions - April 15th, 2023 pic.twitter.com/fX1K2hPSrA
— Chart Essentials (@ChartEssentials) 2023年4月8日
予想では「Like Crazy」がストリーミングにおいて前週から2割近くダウン、ダウンロードはおよそ半減、そしてラジオはおよそ2~3倍に伸び、ダウンロードが牽引する形でトップ10内をキープするとみられていました。「Like Crazy」は最終的に最新4月15日付でもダウンロード指標を制しましたが(下記ツイート参照)、その数値は不明です。
This week's top-selling songs:
— billboard charts (@billboardcharts) 2023年4月10日
1. #Jimin Like Crazy
2. @JellyRoll615 Need A Favor
3. @MorganWallen Last Night
4. @MileyCyrus Flowers
5. @laineywilson Heart Like A Truck
そして予想の根拠となるデータについて、ダウンロードについては示されなかったという指摘があります。
"Like Crazy" by #Jimin from @BTS_twt remains at #1 on this week's Billboard Digital Song Sales chart with 14.8k sales (down 94%*). pic.twitter.com/USuTZV4Oz2
— Pop Data (@PopDataMusic) 2023年4月11日
*Billboard didn't report the percentage nor the digital sales last week.
— Pop Data (@PopDataMusic) 2023年4月11日
So the percentage was manually made with the 254k cipher from last week, but such number included physical sales which don't count for this chart.
JIMIN「Like Crazy」のダウンロードは最終的に14万前後とみられますが、それでも今回ポイントが大きく落ち込みました。その落ち込みについて、このタイミングでチャートポリシーが変更になったゆえであるとの見方が登場しています。ともすれば先述したデータ未提示がチャートポリシー変更に基づいたものと言えるかもしれません。
米ビルボードによる4月15日付ソングチャートが登場する前、主に韓国のアイドルや音楽等に関する記事を執筆するDJ泡沫さんが以下のツイートを発信しています。
billboardのHOT100のルールがまた変更されたようで、DL販売に関して1人につき1回のみになったとの事。普通に考えればDL購入1人1回は当たり前ですが、数年前までDLの複数購入(買った曲を削除して買い直す行為)もカウントされていたのが1週ごとに1人1回までになり、今回はついに1人1回になったとのこと
— DJ泡沫 (@djutakata) 2023年4月10日
正確には同じメアド・同じ名義のカードでのDLが1回までになるということで、中国のアイドルファンが中国でよくやっているデジタルでの積み行為は基本ダメになったってことですね。
— DJ泡沫 (@djutakata) 2023年4月10日
チャートポリシー変更に関するソースは明示されていませんが、別のツイートにてこのように述べています。また問い合わせされた方への回答の一端として、以下の内容も発信しています。
今回の変更があったとしても今後も1回は1位を獲れるのではないかと思います。複数購入については米ビルボード上は以前はそこまで影響なかったですがKPOPファンダムが流入してから影響が大きくなり、抱き合わせ商法・フィジカルのカウント制限など徐々に制限されてきてますので自然な流れだと思います。
— DJ泡沫 (@djutakata) 2023年4月11日
自分は前週のチャートが登場する直前、JIMIN「Like Crazy」が首位を獲る可能性を踏まえつつも指標構成に偏りが出る可能性を考慮し、チャートポリシー変更の議論が必要ではと記しました。加えて今年度初週にはテイラー・スウィフト「Anti-Hero」がダウンロード30万超えを記録しましたがその施策にも違和感を覚え、早急の議論を促しています。
(上記リンク先には2021年度以降の首位獲得曲における各指標の数値等も紹介。「Like Crazy」や「Anti-Hero」とロングヒット作品を比較することで、接触指標群の重要性が理解できます。)
今回のチャートポリシー変更は(それが事実ならばと仮定する必要はありますが)、以前の変更をさらにタイトにしたものだと考えます。そして前回の変更のきっかけとなったのはBTS「Butter」だと捉えています(下記エントリー参照)。尤も米ビルボードは前回のチャートポリシー変更について公式にアナウンスしていませんが、この二度のチャートポリシー変更が事実ならば、自分は支持を表明します。
今回のチャートポリシー変更を納得し難いと考えるJIMINやBTS、テイラー・スウィフト等のコアファンは少なくないでしょう。ただ現在の音楽チャートは接触指標群のヒットこそ真の社会的ヒット曲であるというスタンスであり、その中で所有指標に著しく偏った曲が瞬間的なヒットに終わるならばその作品は社会的ヒット曲とは言い難いというのが私見です。音楽チャートの信頼度にもつながるゆえ、この変更は自然と考えます。
Congratss, Kanii! 🎉 This week he lands on the #Hot100 for the first time with his viral TikTok hit, "I Know." https://t.co/w9go76WExN
— billboard (@billboard) 2023年4月10日
最新4月15日付米ビルボードソングチャートではTikTokのバズを機にKanii(カタカナ表記不明)「I Know」が初の100位以内エントリーを果たしましたが、その際ストリーミングは前週比16%アップの670万、およびラジオは同238%アップの367,000を記録しています(上記ツイート内記事より)。ダウンロードを除けば、前週のJIMIN「Like Crazy」におけるストリーミング1000万、ラジオ64,000と似た水準と言えるのではないでしょうか。
ダウンロードの値を適正な形に近づけたのが今回のチャートポリシー変更だと捉えています。この変更により、特にコアファンの熱量が高い歌手の作品が米でヒットすることは難しくなったと言えます。コアファンが行うべきは真の社会的ヒット曲とは何かを共有し、接触指標群を高める(つまりライト層に浸透させる)にはどうすべきか考え実践することでしょう。
一方で、米ビルボードによる直近二度のチャートポリシー変更は公式にアナウンスされていないため、毅然とした対応とは言えず不信感が生まれるのは自然でしょう。それが一部歌手のファンの反発を招きかねないと考えるに、チャートポリシー変更の有無およびチャートのスタンスは明らかにすべきです。
そして今回紹介した速やかな変更はビルボードジャパンも踏襲してほしいと願っています。前週、BiSH「Bye-Bye Show」が首位から100位圏外へ急落したことを機にビルボードジャパンソングチャートのチャートポリシー変更を提案したばかりであり、尚の事です。